「いつまでも凋むことを知らぬ、白と紅の薔薇のように」
「二人は楽しく、ずっと、幸福でありました……」
「……」
「……ふぅ。良き書でした……」
「グリム兄弟による、アッシェンプテル……シャルルペローによる、サンドリヨン……」
「今昔問わずに、様々な文学者たちによって、色々な解釈がされていますが……」
「……いいですね……たまには、童心に帰って絵本と言うのも……」
「子供の頃とは、また違う視点で楽しめますし……とても、探求心がくすぐられてしまいます……♪」
「ふふっ……♪この本を貸してくれたありすちゃんには、感謝をしないといけませんね……♪」
「それに……いいな……この最後のページ……王子様とシンデレラ……とても幸せそうです……♪」
「……私もいつかは……あっ、いけませんね……すぐに物事を、文学で例えてしまう悪い癖を直さないと……」
「何せ、今の私は……暖かくて優しい、包み込まれるような陽射しを求める……「灰かぶり」ですものね……」
「今は、カボチャの馬車に乗るために……邁進していかないと……少し、窓を開けましょう……」
フワッ……
「今日は、とても月が綺麗です……あの方も、同じ景色を見ているのでしょうか……?」
「……そうですね……こんなにも、明るく闇夜を照らす、大きな月ですから……きっと、見ていますよね……」
「うふっ……♪何だかとても……不思議な気分になってしまいます……♪」
「それにしても……この時期にこんな、暖かくて心地よい風が吹くだなんて……」
「……少し、早い春風ですね……まるで……誰かからの、贈り物みたいです……」
------------------------------------------------
「それでは、またどこかで……お会いしましょう……」
「ご清聴、ありがとうございました」
「……お疲れ様。文香、ありす」
「あっ、お疲れ様です……プロデューサーさん……」
「……」
「ん?ありす……?」
「……ありすじゃなくて、橘。です」
「……あぁ〜、はいはい。ご苦労様でした〜、橘大明神様〜」
「だいみょ……何なんですか、それ……」
「とりあえず、二人ともお疲れ様。しっかりと、アイドルをしてたぞ」
「ありがとうございます……少し、緊張してしまいましたけど……とても楽しかったです……♪」
「当たり前です。私は、プロですので」
「よかった。今回の仕事は、二人にぴったりだと思ってな。いつもより、仕事がしやすかっただろ?」
「そうですね。とても、トークが弾みました」
「はい……充実した時間を、過ごさせてもらいました……♪」
「古本市でのトークイベントと聞いて、真っ先に、文香と橘が思い浮かんだんだ。二人とも、本が好きだろ?」
「そうですね……この様々な古本たちから漂う、香り……雰囲気……触れた時の、感触……」
「初めて出会う、新たな書との邂逅……知見を広める楽しさ……探求し続けても終わりのない奥深さ……」
「そして……あっ……すみません……本のことになると、つい……」
「ははっ、聞くまでもなかったな。本当に、本が好きだって言うのが伝わってきたよ」
「文香さん、始まる前から、すごい嬉しそうな顔をしてましたもんね」
「橘はどうだったんだ?」
「はい、古本も好きです。でも……私には、電子書籍がありますからっ……!」ドヤッ
「そうだった。橘は、電子書籍派だったな。俺にもよく、おすすめの書籍を紹介してくれるしな」
「……プロデューサーさんも……電子書籍を読むのですか……?」
「うん。とは言っても、俺は基本的に、スマホのアプリでだけどな」
「……そうですか……」
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「しかし……最近って、便利になったよな。どこでも手軽に、スマホで本を読めるんだからさ」
「そうですね。共有をしてるから、どの場所にいてもすぐに、おすすめの本を紹介出来ますしね」
「えっ、共有……ですか……?」
「あぁ。橘と、お互いにおすすめの本を読めるように、電子書籍のアカウントを共有してるんだよ」
「私の好きな本を、たくさん読んでもらいたいですからね。それに……」
「……プロデューサーさんの好きな本も、もっと……読まさせてもらいたいですし……//」
「そうか?俺は橘と比べて、読書量が少ないから一方的に、勧めてもらってるだけの様な気がするんだが……」
「いえいえ。プロデューサーさんのおすすめも、よかったですよ…?「シンデレラ」とか「白雪姫」とか…」
「おっ、気に入ってくれたか。橘に、ピッタリだと思ってたんだ」
「私に……ですか?」
「定番だけど、やっぱり女の子って、こういうの好きだろ?お姫様にも憧れる年頃だしさ」
「こ、子供扱いしないでください!私は、そんなのではありません!」
「でも、王子様とかには憧れるだろ?」
「それは……そうですね……手を引いて、連れて行ってもらいたいですね……」チラッ
「……あの……プロデューサーさん……その……ご迷惑でしたか……?」
「えっ……?急に、どうしたんだ?文香」
「この前に、胡蝶蘭をあしらった栞を……受け取って、いただきましたよね……?」
「うん。文香が作ってくれた、あの綺麗な栞だな。今も大切に持ってるよ」
「大切にしていただけてるのは誠に嬉しいのですが……その……御荷物ではないですか……?」
「お荷物って……いや、そんなことはないぞ?」
「ですが、その……電子書籍を、利用されてるそうなので……」
「……あっ……そ、それは……」
「……すみません……勝手に押し付けて、ご迷惑をおかけしてしまって……くすんっ……」
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「わわっ!ふ、文香!?お、俺も電子書籍だけじゃなくて、紙の本も大好きだから!ありすもそうだろ!?」
「橘です!……じゃなくてっ!は、はい!私も紙の本が、大好きですっ!」
「ほら!さっきも、お仕事の前にここで古本を、こんなに買っちゃいましたよっ!」
「なっ?俺も、あ……橘も、紙の本が大好きなんだ!だから少し、落ち着いてくれよっ!頼むよ!」
「……本当……ですか……?」ウルッ
「あぁ。それにほら、これを見てくれ」
「……あっ、これは……」
「文香から借りてる本だよ。まだ読み途中だが、作ってもらった栞を使わせてもらってるんだ」
「それに、俺が古本に興味なかったら、この仕事を文香たちに、持ってくると思うか?」
「それは……確かに……」
「な?それに、文香とだってお互いに、おすすめの本を貸しあってるだろ?」
「……!」
「……は、はい……そうですね……♪//」
「だから、この栞がないと困るんだ。それに、今まで文香からもらった栞も、コレクションにしてるしな」
「そうですか……♪……こちらこそ、気に入っていただけて……とても嬉しいです……//」
「……」
「誤解が解けてよかった。これからもよろしくな。じゃあ、解決もしたことだし、事務所に戻ろうよ」
「はいっ……♪」
「よし、行こうぜ。文香、あ……あれ……?橘は?」
「えっと……ありすちゃんならあそこに……」
「ちょっ……!?何でもう、あんな遠くに……おい!ありす!待てって!」
「……」
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「お〜い!ありす〜!」
「……橘……です」
「な、なぁ……急にどうしたんだよ……何だか、怖いぞ……?」
「……気のせいだと思います」
「いいや、さっきと様子が違うぞ。いつも、お前のことを見てるからわかるんだ」
「っ!……む〜//」
「何か、悪いことをしたのなら謝るからさ、機嫌を直してくれよ」
「……てるんですね……」
「え……?」
「……文香さんとも……本を、貸しあってるんですね……私だけだと……思ってたのに……」
「一体何を……あっ、そうか!子供向けの本じゃなくて、もう少し難しい本を、勧めて欲しかったんだな!」
「……えっ」
「文香が読むような本が、読みたかったんだろ?いや〜、絵本は流石に、子供扱いしすぎたな。悪かったよ」
「……そうですね……よい作品ではありましたが……少し、幼稚すぎます」
「それに、あまり私を子供扱いせず……もう少し「オトナ」の女性として、見てください……」
「はいはい、わかりましたよ。次はもっと、大人向けの本を勧めるよ」
「……話は以上です。それでは……」
「……あっ!あそこに、イチゴが!」
「っ……!?い、いちご……!……はっ……!//」
「……ニヤッ……どうです?あそこで、何か食べて行きますか?橘大明神様♪」
「ありすです!……じゃなくて!ば、バカにしないでください!私は、もう大人なんです!」
「た、食べ物で、ご機嫌取りをしようとしたって、そうはいきませんっ……!//」
「ふ〜む……今なら、イチゴ増量中か……それに、スンスン……う〜ん、イチゴの甘い香りが、漂ってるなあ〜」
「あっ……うっ、うぅ〜……」
「でも、しょうがないか〜。女の子を食べ物で釣るだなんて、はしたないことをしたくないしな〜」
「今回は諦めて、事務所に戻るか〜。さあ、行こうぜ」
「……ますか……」
「ん?」
「私を……子供扱いしたことを……反省してますか?」
「うん、そうだな。後悔してるぐらい、反省してるよ」
「じ、じゃあ……言葉だけじゃなくて、その……行動で、示してください……//」
「それじゃあ、反省の意を込めて、パフェをご馳走させてくださいよ」
「し、しょうがないですねっ……プロデューサーさんの誠意を……受け取ってあげます……//」
「はいはい。それじゃあ、さっそく行くか。お〜い!文香〜!」
------------------------------------------------
「わぁ〜……♪//」
「とても……美味しそうですね……♪」
「みんなの分が来たな。それじゃあ、さっそくいただこうか」
「ありがとうございます。でも……よかったのですか……?私まで、ご馳走になってしまって……」
「ははっ、遠慮するな。二人には、いつも頑張ってもらってるから、そのお礼だよ。大明神様も喜んでるしな」
「……//」
「大明神……?仏教における、神の称号の一つですか……?」
「流石、文香は詳しいな。まあ、気にしないでくれ」
「はぁ……?」
「ところで、どうだありす。来て、よかっただろ?」
「……はい//」
「おっ、やけに素直だな。とうとう、名前呼びが認められたか?」
「いえ……おそらくですが……ありすちゃんは、目の前のイチゴパフェに……集中してるだけかと……」
「な〜んだ、やっぱりそうか。そう簡単に、認めてくれるわけないがないもんな。このイチゴ姫は」
「……プロデューサーさんは、その……ありすちゃんのことを、名前で……呼びたいですか……?」
「あぁ、そうだな。やっぱり担当としてはお互いに、下の名前で呼びあった方が、親しみやすいと思うよ」
「それに……」ジー
「……はっ!な、何ですか!そんなに、私のパフェをジロジロ見て……!」
「……さ、さては……イチゴを取るきですねっ!だ、だめです!絶対に渡さないですよっ……!」
「ありすってからかうと、すごい面白いしな」
「そうですか……あの、プロデューサーさん……」
「何だ?」
「わ、私のパフェを、その……もらって……いただけませんか……?//」
「……!」
「えっ!?い、いや、悪いよ……文香のは、文香で食べな」
「そんな、悪いだなんて……むしろ、その……もらっていただけたら……嬉しいです……♪//」
「そうなのか……?そ、それじゃあ……少しだけ……もらうぞ?」
「あっ……ちょっと、待ってください……召し上がっていただくのは、その……こちらの方です……♪//」
「えっ……えぇっ!?」
------------------------------------------------
「こちらって……それ、文香のスプーンのじゃ……」
「はい……♪それとも……ご迷惑でしたか……?」
「いや……別に、迷惑なわけじゃないけどさ……」
「そうですか……♪それでは……あ、あ〜ん……//」
「っ……あ〜ん……//」
「……どうですか……?美味しい……ですか……?//」
「……あぁ、すごく……美味いよ……//」
「「……//」」
「……むっ」
「喜んでいただけて、嬉しいです……♪それでは……えいっ♪」
パクッ
「!?」
「……うふふ……♪プロデューサーさんのパフェも……すごく、美味しいです……♪//」
「あの……文香さん?それって……今、俺がスプーンで……すくったやつでは……?//」
「魔が差したと言うのでしょうか……少し、いたずらしてみちゃいました……♪//」
「……」
「どうか……されましたか……?」
「……いや……少し、驚いてるんだ。文香が、こういうことをするのって、意外だなって思ってさ……//」
「……そうですね。実を言うと……私自身も、驚いてるんです……」
「ひたすら書に耽り……催事や四季の変化に疎く、ただ無為に、去っていく日々……」
「少し、語弊がありましたね……私にとっては有意義でしたが、心のどこかで、虚無感を感じていました……」
「そんな中……このような、華やかな世界に私を導いてくれた……プロデューサーさんのおかげで……」
「……少し……積極的に、なれたような気がするんです……//」
「うん……?まぁ、それは悪いことじゃないけど……でも、文香はアイドルだし、そこら辺は頼むぞ……?」
「……はいっ……♪わかりました……♪//」
「……プロデューサーさん……私のパフェも、食べたいですか……?」
「ん?何だよ橘。気が変わったのか?」
「……はい」
------------------------------------------------
「それじゃあ、橘のだ〜いすきな、イチゴをもらっちゃおうかな〜」
「……っ」
「……な〜んて、冗談だよ。せっかくのイチゴなんだし、たくさん楽しめよ」
「えっ……いらないんですか……?」
「あぁ。だって、二人にパフェを楽しんでもらうために、来たんだ。だから、気にするなよ」
「……今回だけは、特別に……私のイチゴを、食べていいですよ……?」
「だから、気にするなって。橘はイチゴが、大好きなんだろ?」
「……橘じゃなくて……「ありす」……です……//」
「えっ……!?」
「これからは、二人きりの時以外でも、ありす呼びを許してあげます……//」
「二人きり……ですか……?」
「ばっ、ばか!……あ〜もう!このことは、二人だけの秘密だって言っただろ!」
「知りません。それに、よくよく考えてみたら、文香さんだけずるいです」
「えっ……私ですか……?」
「だって……文香さんは「文香」なのに、私だけ「橘」だなんて、不公平です」
「ずるいも何も、たち……」
「ありすです!」
「……ありすが、橘で呼べって言ったんだろ?アイドルとして、公私混同はよくないとか言ってさ……」
「少なくとも……私の記憶では、そんなことを言った覚えはありません」
「……ったく……都合のいいヤツめ……」
「それに、さっきから各々の場面で、私のことを下の名前で呼んでたじゃないですか」
「うっ……それは……そうだけど……」
「これからは、表裏一体です。ですから「ありす」で統一してください。いいですね?」
「……わかったよ。橘だったり、ありすだったり、ゴチャゴチャしてると、周りも混乱するしな……」
「わかってくれたんですね!それでは……はいっ♪私のイチゴを、もらってくださいっ♪」
「……」
「ちょっ……文香も見てるし……それに、恥ずかしいからいいよ……//」
「……文香さんのは、喜んでもらってたのに……私のは……もらってくれないんですか……?」ウルッ
「……ああ、もう……それじゃあ、ありがたくいただきますよ。イチゴ姫様」
「ほ、本当ですか!?嬉しいですっ♪」
「おいおい……さっきのオトナのお姉さんは、どこに行っちゃったんだろうなあ?」
「さぁ、知りませんっ♪」
「ったく……文香、何だか悪いな」
「いえいえ……とても、微笑ましい光景です……♪」
「それでは……はいっ♪どうぞっ♪」
「っ……あ、あーん……」
「……美味しいですか?//」
「……あぁ。美味しいぞ……//」
「「……//」」
------------------------------------------------
「うん。美味しかったな」
「ご馳走様でした……プロデューサーさん……♪」
「プロデューサーさん、ありがとうございました」
「喜んでもらえてよかった。連れてきた甲斐があったよ」
「でも、ありすちゃん……よかったのですか……?私まで、ありすちゃんのイチゴをもらってしまって……」
「そんな。私はみなさんと幸せを、共有したかっただけです。イチゴは、幸せな気持ちにしてくれますから」
「……それに……文香さんは……私の大切で、特別なお友達ですので……♪」
「うふふ……♪ありすちゃんも、私にとって特別なお友達です……これからも、よろしくお願いしますね……♪」
「文香さん……はいっ♪よろしくお願いします♪」
「「ふふっ……♪」」
「ははっ。相変わらず、二人とも仲がいいな。側から見てると、姉妹にしか見えないぞ」
「当然です。文香さんは、私のお姉さんですから」
「ありすちゃんが妹なら……毎日が、楽しそうですよね……♪」
「本当、変に背伸びをしなきゃ、素直でかわいい妹なんだけどな〜」
「むっ。背伸びなんかしていません。いつも、等身大の私です」
「はいはい。ムキになっちゃってかわいいなあ、ありすは」
「……むぅ〜」
「同年代と比べると、博識ではありますが……年相応だと思いますよ……」
「だな。ほ〜ら、ありすちゃ〜ん。もっと、素直になってもいいんだぞぉ〜?」
「……ばかにしないでください……」
「悪い悪い。冗談だって、だから真に受けるな……って……なっ……!?」
「!!」
「……私だって、その……年相応になる時だって……あります//」
「あ、ありす……!?何で、俺の膝の上に乗ってるんだよっ!?」
「プロデューサーさん、今、言いましたよね。素直になっていいって」
「だ、だから……あれは冗談だって……//」
「プロデューサーさんは、冗談かもしれませんけど……私は、冗談じゃありません……//」
「ありすちゃん……大胆ですね……//」
「なぁ……変な冗談を言って悪かったからさ、一旦降りてくれよ。なっ……?」
「……イヤです」
「……ワガママは、いけないと思うぞ?」
「知らないです。女の子を弄ぶようなセリフを、平気で吐く、プロデューサーさんが悪いんです」
「おい!誤解を生むような言い方やめろ!何だよ弄ぶって!」
「……自覚が……ないんですね。文香さんも、呆れてますよ」
「えっ……?わ、私……ですか……?」
------------------------------------------------
「ふ、文香!俺って、そんなことないよなっ!」
「え、えっと……プロデューサーさんは、その……もう少し、言葉を慎まれた方が……いいと思います……」
「うぐっ……!」
「ほら。自覚がないのは、プロデューサーさんだけですよ」
「ふ、文香に言われると……かなり堪えるな……」
「あの……す、すみませんっ……!別に、嫌悪や不快に感じるとか、そういうことではないんです……!」
「むしろ……なんと言いますか……プロデューサーさんの言葉は、とても……」
「……甘美で情熱的なので……動揺してしまう方が、多いのではないでしょうか……//」
「情熱……?俺って、そんなに暑苦しいセリフを吐いてたのか?」
「い、いえ……そういう意味では、なくて……」
「う〜む……何にせよ、指摘された以上は俺も気をつけないとな……」
「……よし!これからは、文香やありすを見習うことにするよ。二人とも、容姿も言葉遣いも綺麗だしな」
「き、きれい……あぅ……//」
「……そういうところですよっ……でも、反省したんですね……?//」
「あぁ。したつもりだよ」
「それでは……反省の意を込めて、私の頭を……な、撫でてください……//」
「えっ……な、何だよ急に……」
「さっきも言いました。今の私は「年相応」だって」
「ですので……本当に反省をしてるのなら、少しぐらい……私を労ってくれても、いいじゃないですか……//」
「くっ……!ただでさえ、この体勢で恥ずかしいのにっ……!//」
「……だめですか……?」ウルッ
「……わかったよ……少しだけ、だからな……//」
「……はい♪では、お願いしますねっ……♪」
「それじゃあ……ほらっ、いくぞ」ナデナデ
「ありすちゃん……よかったですね……♪」
------------------------------------------------
「ありすって結構、髪の毛がさらさらしてるんだな」
「当然です。私はアイドルなんで、身だしなみも完璧です」
「それに……何だか、フルーツの香りがするな。これは……イチゴか……?」
「なっ、何を嗅いでるんですかっ!プロデューサーさんの変態っ!//」
「何だよ変態って!しょうがないだろ!膝にお前を抱えて座ってたら、嫌でも香ってくるわ!」
「ふっ、ふんっ!まあ、いいですけど……//」
「ったく……しかし、ありすは本当に、イチゴが好きなんだな」
「甘くて、美味しいですからね。それに、かわいいですし。何より……幸せな気持ちにしてくれます♪」
「ははっ。確かに、食べると幸せな気分になれるよな、イチゴって」
「……でも……今は、プロ……お、お兄さんに、頭を撫でられてる方が……幸せな気持ちです……//」
「ん?ありすに、お兄さんなんていたっけ?」
「で、ですから!頭を撫でられてる今が、幸せなんですっ!すぐに察してくださいっ!おバカ……!//」
「頭……って……ま、まさか……俺のこと!?何で、俺がお兄さんなんだ!?」
「さっき、文香さんと私のことを、姉妹にしか見えないって言いましたよね」
「あぁ。言ったな」
「ですから……その姉妹を見守る、お兄さんもいたらいいなと思ったんです……//」
「……俺は、どちらかと言うと、保護者じゃないか……?」
「そうですか?私から見れば、文香さんとプロデューサーさんも、仲の良い兄妹にしか見えませんよ?」
「っ……!兄妹……ですか……//」
「おいおい、それはないと思うぞ。文香だって、俺みたいな不釣り合いな兄がいたら嫌だろ?」
「ふえっ……!?あ、あの……そんなことはないですっ……!//」
「ぷ、プロデューサーさんが、その……私のお兄さんだったら、とても……幸福だと思います……//」
「えっ……?そ、そうか……ありがとう?」
「「……//」」
「決まりですね。プロデューサーさんは、私たちのお兄さんです。これからも、ずっと見守ってくださいね」
「……まぁ……頑張るよ……//」
「それでは、文香さんにも、私と同じことをしてあげてください」
------------------------------------------------
「えっ……!?//」
「なっ……!ふ、文香にもっ……!?」
「当然じゃないですか。だって、私たちのお兄さんなんですから」
「な、何を勝手に……それこそ、文香に迷惑だろ!//」
「……いえ……ぷ、プロデューサーさんがよろしければ……私のことを、撫でていただけますか……?//」
「えっ……いや、文香がいいならいいけど……それじゃあ……こっちに来るか?」
「はいっ……お願いしますっ……//」
「……よし、いくぞ……」
ナデナデ
「あっ……//」
「……文香の髪の毛も……結構、サラサラでツヤツヤしてるな……//」
「そ、そうですか……ありがとうございます……//」
「あと、その……文香も結構、いい香りがするんだな。甘いって言うか、柑橘系の香りと言うか……」
「いえ、そんな……トリートメントの香りがするだけかと……それを言うなら、プロデューサーさんも……」
「……爽やかで……「男性を」感じさせる……素敵な香りがしますっ……♪//」
「俺、俺も……?えっと……ありがとう……?//」
「「……//」」
「……プロデューサーさん……こっちの手が休んでますよ。私にも、続きをしてください」
「ん?あ、あぁ……悪いな、ありす。ほら……」
「あっ……えへへ……//」
(膝にありす……腕の中に文香……)
プニッ♪
(ぐっ……や、柔らかいのが……当たってるっ……!……普段、おとなしいけど……文香って意外と……)
(……って!ふ、文香は、純粋な女の子なんだ!そんな、ヨコシマなことを考えちゃだめだっ……!)
(ありすの甘い香り……文香の柔らかいもの……うぅ……い、意識するな!耐えろ、耐えるんだ、俺っ……!//)
「……お兄さんの手……とても大きくて、温かいですっ……♪//」
「……うふふ……♪お兄さんっ……♪//」ギュッ
------------------------------------------------
「……そろそろ、日が暮れてきたな。事務所に帰るか」
「そうですね……」
「ほら、ありす。お前もそろそろ……」
「……」
「……ん?ありす……?」
「……zzz」
「ありすちゃん……気持ちよさそうに、寝ちゃってますね……」
「えっ、まじかよ……やれやれ。普段は背伸びしてるけど、寝顔はやっぱり、年相応だな」
「うふふ……かわいいですね……♪……あの、プロデューサーさん……」
「……私たちって……どういう風に、見られてるのでしょうか……?」
「ん?どうって……アイドルとプロデューサー?」
「そ、そうではなくて……もしかしたら、その……ありすちゃんが言ってた、関係に見えるのかなって……//」
「ははっ、そうだな。ということは、ありすは俺と文香の……あっ……」
「……えっ……そ、それは……つまりっ……//」
「「……//」」
「……あ、ありすが言ってたのって、俺らは兄妹に見えるって話だよなっ!あはは……」
「え、えぇ……仲の良い兄妹に……見えるそうですね……とても仲良しな……//」
「「……//」」
「……あ〜!長時間ベンチに座ってたから、少しキツイな!ちょっと、立ってリフレッシュするか!」
「そ、そうですね……それでは、私も……あっ……」
「っ……!?文香!!」
ギュッ
「……す、すみません……少し……立ちくらみをしてしまって……」
「おい……大丈夫か?具合が悪かったり、体調に異変を感じたら、すぐに言うんだぞ?いいな?」
「ありがとうございます……ところで……プロデューサーさんって、すごく……逞しいのですね……//」
------------------------------------------------
「えっ……あっ、わ、悪いっ!」
「……//」
「その、別に変なことを考えてたんじゃなくて、文香のことが心配で、ついうっかりとだな……!//」
「……うふふ……皆まで言わなくても、わかってます……♪プロデューサーさんは、お優しいですから……♪//」
「……そ、そうか?」
「えぇ……♪プロデューサーさんの優しい一面と、凛々しい一面の二面性を、私は理解してるつもりです……♪」
「それに……「お兄様」に強く抱擁されるのは……とても……安らぎますので……//」
「お、お兄様って……//」
「……冗談です……♪ところで……先程、ありすちゃんの言ったことについて……お話ししましたよね……?」
「えっ?あ、あぁ……話したな」
「その時に……兄妹ではなく、どういう関係に……見えると思ったのですか……?」
「ど、どうって……悪い……これ以上は、言えない……だって……」
「……文香はアイドルで……俺はプロデューサーだから……」
「……やはり……お優しいですね……プロデューサーさんは……♪//」
「でも、そのように思っていただけたのは……私のことを……意識してくださったってことですよね……?//」
「うっ……そ、それは……そうだな……俺は少し、文香のことを……意識してしまったのかもしれない……//」
「そうですか……嬉しいです……♪//」
「でもな。俺に限らず、文香見たいな可憐で綺麗な女の子に、ああいうことをしたら……」
「……意識しない男性なんて……いないと思うぞ……?//」
「うふふ……♪一人の女性として意識していただけて……とても、嬉しいです……♪」
「……では……プロデューサーさん……その……わ、私の魔法を……解いていただけませんか……?//」
------------------------------------------------
「ま、魔法……?」
「はいっ……//」
「魔法……魔法……どのメーカーのステッキが、一番解けやすいんだ……?」
「ち、違うんです!そうではなくてっ……//」
「私と、その……キ、キスをして……いただけませんかっ……!?//」
「キ……はぁっ!?ど、どうしたんだよっ!急にっ!//」
「……今後の、演劇のお仕事のために……予行練習の相手に、なっていただけませんか……?」
「なんか……今日の文香は、積極的だな……でも、俺じゃ……相手になってあげれないと思うぞ?」
「……先程……言ったじゃないですか……何事にも、積極的に挑戦するための勇気をくださったのは……」
「……他の誰でもない……プロデューサーさん、と……//」
「……そんな……俺は、別に……」
「……無理と言うのなら……拒否してくださっても、構いません……それでは……プロデューサーさんっ……」
「なっ……!ちょっ、ちょっと待て!少し落ち着けって文香っ…!//」
「ふふっ……とても、綺麗な瞳です……♪……んっ……」
「……ふぁっ?」
「……っ!あ、ありす……?」
チュッ…♪
「!?」
「ん〜……ぷろでゅーさーさんと……ふみかさぁん?一体、何を……?」
「……い、いや……少し、話をしてただけだ……気にしないでくれ……//」
「はぁ……?」
「……//」
------------------------------------------------
「あ、ありえないです!デタラメを言うのは、やめてくださいっ!」
「あのなあ……どの口が言うんだよ……」
「この私が……無防備に、お外でお昼寝をしてただなんて……ないです!ありえませんっ!//」
「おいおい……さっきまで、気持ちよさそうな寝顔を見せてたヤツが、何を言ってるんだ?」
「なっ……寝顔っ……!やはり……ぷ、プロデューサーさんは、変態ですっ……!//」
「何でだよ!全部、ありすが悪いんだろうがっ!」
「うるさいですっ!も、もう先に、事務所に戻りますからねっ!それではっ!」
「あっ、おいっ!ありす……行っちまった……」
「うふふ……♪ありすちゃん……元気ですね……♪」
「あぁ。そうだな……元気すぎて困っちゃうぐらいにな……」
「……」
「……ふふっ、拒否……しませんでしたね……♪でも……残念です……「直接」では、ありませんでした……」
「……ありすの方に、振り向いたからな……これで、しばらくはお預けだ」
「あの……改めて……私の「方向」を見ていただくことって……出来ませんか……?」
「文香の気持ちは嬉しい。だけど……やはり、俺は文香を含めた、アイドルたちの輝く姿をもっと見たいんだ」
「だから……ごめん。今の俺には、答えは出せない……悪いな……」
「そうですか……ふふっ……プロデューサーさんは本当に、どこまでも……だから、皆さんは……」
「……ん?皆さん…?」
「あっ……すみません……少し、独り言が過ぎました……」
「そうか?まぁ、その……俺らも、日が暮れる前に……事務所に戻ろうぜ?」
「えぇ……そうですね……♪えいっ……♪」
「うわっ!?ふ、文香っ!?だから、そういうことはっ……!//」
「今は……二人っきりです……ですから、事務所に戻るまでの間は……離しません……♪」
「……文香も、女の子なんだから……こういうことは控えてくれよ?俺だって、その……男なんだし……」
「……「勘違い」……されてしまうかもしれないんだぞ……?//」
「うふふ……大丈夫ですよ……♪こういうことは、プロデューサーさんだけにしかしませんので……♪」
「……それに……いつかは「直接」……プロデューサーさんから、温もりが欲しいです……なんて……♪//」
ムニュッ♪
「……っ!」
「きゃっ……ぷ、プロデューサーさん……!?どうしたんですか……?急に、私の手を引っ張って……」
「……」
------------------------------------------------
カチャッ
「あ、あの……これは一体……」
「……文香っ!」
「えっ……きゃっ……!?」
「さて……鍵も掛けたことだし……この事務所には、俺と文香の二人だけだぜ……」
「ふ、二人きり……」
「……俺……もう、我慢出来ない……言っただろ?「勘違い」されてしまうかもって」
「俺だって、男だし……文香みたいな女の子に、あんなことをされ続けたら……耐えられないんだよ……!」
「……先程も言いましたが……あのようなことは、プロデューサーさんにだけしか……しませんよ……?」
「……じゃあ……これからすることも、文香にしかしねえよ……二人だけの、秘密だ……」
「これから……で、でも……そのっ……//」
「プロデューサーとアイドルの関係だって、言いたいんだろ?安心しろよ」
「今は、ただの「一人の男と、一人の女」だ。だから……たっぷり、楽しもうぜ……?」
「……い、いやっ……!やめてください……!私たちはまだ……そんなっ……!//」
「それじゃあ、抵抗してみろよ。この押し倒された状態から、出来るならな」
「……っ……//」
「だいたい、文香が悪いんだぞ……?俺を、こんなことになるまで誘惑したんだしな……」
「ゆ、誘惑だなんてっ……!私はただ……プロデューサーさんのことが……//」
「さてと……そろそろ、始めようぜ。俺も……文香の温もりが欲しいんだ……」
「……ふあっ……温もり……//」
「……ま、拒否権はないけどな。文香がくれないのなら、俺からもらいにいってやるよ」
「それに、俺は独占欲が強いんだ。だから……もう絶対に、離さないからな「俺だけ」の文香……」
「あうっ……そ、そのっ……やさしく……お願いします……//」
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「……そして……夜の誰もいない事務所で、プロデューサーとアイドルの、禁断の逢瀬が始まるのです……」
「男性の力強さと、逞しさを感じながら……自分が次第に、女だと言うことを再認識し始め……」
「快楽と愉悦が入り乱れた饗宴に……二人は身を委ね、溺れていくのでした……」
「……」
「……やはり……難しいですね……官能小説というものは……」
「文字にすればするほど……恥ずかしくなってきて……このノートは、誰にも見せれませんね……//」
「急に手を握られた時に、何事かと思いましたが……あの後、少し……お叱りを受けてしまいました……」
「でも……仕方がありませんね……私も、あの時は少々、はしたない部分があったと思いますし……」
「……私ってば、ますます大胆になってきていますね……♪少し前まででは……考えられないぐらいに……//」
「優しくて、暖かくて……時には、凛々しく……一緒にいるだけでつい……心がときめいてしまいます……♪//」
「……しかし、それは「皆さん」も同じです……視線を……独占したいと言う気持ちも……」
「ですので……官能小説の中だけでも「野生的」な一面を、私だけに見せてくださいね……ふふっ……♪」
「ある意味で、プロデューサーさんより……独占欲が強いかもしれませんね……だって、こんなにも私は……」
「……ふぁ……あ、いけません……つい……では、そろそろ寝ましょう……夜も遅いですしね……」
「眠りについたら……来てもらえるのでしょうか……」
「……毒リンゴを食べてしまった、お姫様……そして、駆けつけて来てくれた、白馬の王子様……」
「羞恥心を拭い去り、姫のためにと、眠る姫の口に……暖かくて素敵で、濃密な……魔法を……」
「……い、いけません……私ってば……また、そのようなことを……//」
「……でも……きっと、してくれますよね……だって……あなたは、とても優しいですもの….…//」
「うふふ……♪もし、眠りから覚めたら……いつまでも、萎むことを知らない……白と赤の薔薇のように……」
「ずっと……隣に、いてもらえますよね……?プロデューサーさんっ……♪」