「……ちゃん」
「……うふふ……♪」
「……ほ……ちゃん」
「……大丈夫で〜す……起きてますよぉ〜……zzz」
「……美穂ちゃんっ!!」
「わわっ!す、すみませんっ……!これは決して、寝てたとかそういうわけではなくてっ……!」
「もうっ……美穂ちゃんてば……」
「……って……あれ?ここは……どこ……?」
「さぁて♪一体ここはどこでしょうか♪それと……ボクのこと、わかる?」
「わかるも何も、あなたは……って……えっ、ええっ!?も、もしかして……」
「……おはよう♪美穂ちゃんっ♪」
「……プロデューサーくんっ!?」
「正解っ♪流石は美穂ちゃんだね♪ボク、嬉しいな♪」
「えっ……ぷ、プロデューサーくんが……動いて、喋ってる……」
「あははっ♪少し、不思議な感じがするけど……「初めまして」で、いいのかな?」
「……えっと……プロデューサーくんとはいつも、部屋でもお布団の中でも、常に一緒だよね?」
「でも……プロデューサーくんとお話をするのは初めてだけど、初対面って言うのは、違和感があるし……」
「……うぅ……何だか、わからなくなってきたよぉ〜……」
「そんなに、深く考えなくていいよ。それよりボクは、美穂ちゃんに伝えたいことがあって来たんだ」
「伝えたいこと……?」
「うんっ♪美穂ちゃん、いつもボクのことを、もふもふしたり、ぎゅ〜っとしてくれてありがとう!」
「えっと……どういたしまして……?」
「優しく撫ででもらったり、思いっきりぎゅ〜っとして、暖かい温もりをくれたりして……」
「……ボクは、美穂ちゃんのおかげで、毎日が幸せなんだ♪と〜ってもね♪」
「……え、えへへ……なんだか改まって言われると、照れちゃうな……//」
「だから、そのお礼も兼ねてこれから、美穂ちゃんには見てもらいたいものがあるんだ」
「見てもらいたいもの……?」
「うんっ♪それじゃあ、ちょっと、目をつむって貰えるかな?」
「えっ……う、うん。こうでいいかな……?」
「大丈夫だよ♪あっ、それと、一つ言っておくね」
「……これから、美穂ちゃんが見た物は……夢か現実か……美穂ちゃん自身で、判断をして欲しいんだ」
「えっ……?」
「それじゃあ……えいっ!」
ポンッ!
「きゃっ!……あっ……また眠く……ねむ……く……なって……zzz」
------------------------------------------------
「……」
「ん……ここは、どこ……?」
「……う〜ん……見た感じ……どこかの部屋みたいだけど……」
「……って……部屋?何だか……見覚えがあるような……」
「あの、スタンドミラー……壁飾り……観葉植物……」
「って、もしかして……ここって、私の部屋?……あっ、そっか……目が……覚めたんだ」
「ということは、さっきのは……夢、だったんだね……ふふっ♪短かったけど、楽しい夢だったな……♪」
「……よ〜し!今日も一日、頑張らなくちゃね!今の私は、輝くアイドルなんだからっ!」
「じゃあまずは、顔を洗おうっと……ん?」
「……う〜んっ……あれ?おかしいな……か、体が動かないっ……!どうしてっ……!?」
「それに……何か、視線が……私って……こんなに、小さかったっけ?」
ガチャッ
「……っ!だ、誰っ!?……えっ……」
「……」
「……蘭子ちゃん?」
「……」キョロキョロ
「何で……私の部屋に、蘭子ちゃんが?それに……蘭子ちゃん……随分と、身長が高くなった?」
「……♪」
ギュッ
「きゃっ!?ら、蘭子ちゃんっ……!?」
「……ふふっ♪」
「ど、どうしたの!?急に、私を抱きしめてっ……!//」
「……ふふふ……汝の、勇ましくも猛々しい魂の鼓動……しかと、我が魂と共鳴せりっ!」
「……?」
「えへへ……プロデューサーく〜んっ♪」
「っ……!?プロデューサーくんっ!?」
「もふもふしてて、気持ちいい♪それに、すごい暖かいなあ♪」
「あうっ……く、くすぐったいよぉ……//」
「まるで我が友……ううん。まるで……プロデューサーくんに、ぎゅっとされてるみたい……♪//」
「蘭子ちゃんの、こんなに幸せそうな顔……初めて見た……じゃなくて!もしかして、私……」
「……♪」
「……プロデューサーくんに、なっちゃったの!?」
------------------------------------------------
「……むぎゅ〜っ♪//」
「うぅ〜……状況が、理解できないよぉ……でも……ただ一つ、理解できるのが……」
「〜♪」
「……蘭子ちゃんに、思いっきり……抱きしめられてるって、こと……かな……//」
「うふふっ♪プロデューサーくん、だ〜いすきっ♪」
「……蘭子ちゃん……そんなに、プロデューサーくんを気に入ってくれたんだね。なんか、嬉しいな♪」
「……今なら、誰もいないし……言っても、大丈夫だよね……コホン……お、お兄ちゃんっ……!//」
「えっ、お兄ちゃん……?」
「えっと……その……あのっ……//」
「……うぅ……こ、このかみの慈愛に満ちた、安息の波動を……しかと賜らせてもらうぞっ!//」
「……??」
「……お、お兄ちゃんに、もっと……甘えちゃうんだからねっ!//」ギュッ
「ふえっ……た、確かに、プロデューサーくんをもふもふしたら、安心するけど……」
「……あれ?そもそも、何で「プロデューサーくん」なんだっけ……?」
「……あのね、もう一つ……言いたいことがあるの……こ、このまま、我……私とね……そのっ……//」
カチャッ
「蘭子ちゃ〜ん、お待たせ〜……って……蘭子ちゃん、どうしたの?」
「えっ……」
「ふぇっ!?な……なな……なんでんなかばいっ!!//」
「……あれって……「私」?」
------------------------------------------------
「……そうだよ。あれは、美穂ちゃんなんだ」
「……って、あれ……?」
「おかえり。美穂ちゃん」
「ぷ、プロデューサーくんっ……?どうして、ここに……?」
「ははっ。急かしちゃって、悪かったね。これが、ボクの見せたかったものなんだ」
「見せたかったもの……」
「今。美穂ちゃんが見たものは、ボクの目線から見た光景なんだよ。いわゆる、回想って言うものかな」
「ほら、最後に美穂ちゃんが、ドアを開けて部屋に入ってきたでしょ?何か、思い出せることはない?」
「……あっ……そういえば、少し前に蘭子ちゃんと、お茶会をしたような気が……」
「そうだね。あの時、美穂ちゃんがお手製のクッキーを作って、蘭子ちゃんと楽しそうに喋ってたよね」
「うん、蘭子ちゃんと楽しく……あれっ?さっきのが回想って言うことは、蘭子ちゃんの、あの行動って……」
「……ふふっ♪ボクね、蘭子ちゃんにすごく、かわいがってもらっちゃった♪」
「あ、あれも……「回想」の、一つなのっ……?//」
「……どうだろうね。でも、他にも見てもらいたいものが、たくさんあるんだ。じゃあ、次に案内するよ」
ポンッ!
「……あっ……zzz」
------------------------------------------------
「……」
「……んっ……また、私……プロデューサーくんに……今度は、どこだろ?」
プニュッ♪
「わわっ!な、何っ!?なんか急に、すごい柔らかいものに包まれたっ……!?//」
「……プロデューサーさ……くんっ……♪//」
「あわわ……何だか、すごい温かくて……柔らかいっ……//」
「……ねぇ、プロデューサーくんっ。今日も、美波……頑張りましたよ?」
「えっ……み、美波さんっ!?ということは、この、温かくて柔らかいものって……//」
「……だからぁ……ご褒美を、くださいっ♪」
「う、うぅっ……私も、女の子なはずなのに……ドキドキしてきちゃったよぉ……//」
「何をして欲しいかって?例えば……こんなことをしたいな……えいっ♪」
ムギュッ♪
「むぐっ……!?」
「……こういう風に、もっと……プロデューサーくんに、甘えさせてくださいっ♪……なんて♪」
「あ、あの、凛々しい美波さんが……こんな……//」
「うふふ……♪すごい、安心します♪まるで……「本当」に、抱きしめてるみたい……//」
「……あれっ?もしかして、私……ものすごい、イケないもの見ちゃってるのかな……?」
「プロデューサーくんは、いじわるです。他の女の子ばかり、甘やかして……私には、頼ってばかりで……」
「……私だって、本当は……こんな風に、もっと……甘えたいんだよ……?」
「……」
「今も……プロデューサーくんは全然、私を甘やかしてくれないし……本当に、いじわるです……」
「……美波さん……」
「だから……いつか、気づいてくれるまでこうして……いえ、この瞬間だけは……」
「……た〜っぷり……甘えちゃうんだからっ……//」
「そうだったんだね……本当は、美波さんも……」
「……ねぇ……プロデューサーくん?もう一つ、美波のワガママを……聞いてくれる?」
「……うん?」
------------------------------------------------
「あの……ね……その……み、美波の口も……甘やかして欲しいな♪……なんて//」
「えっ……ま、まさか……」
「うふふ……今はぁ……プロデューサーくんと美波の、二人だけだよぉ?だから……しよ……?//」
「ちょっ……み、美波さんっ!?そ、そそ、それはっ……!」
「……プロデューサーくんっ……」
「あ、あわわ……!さ、流石に、それはダメですっ!私たちは、女の子同士なんですよっ!?//」
「……あっ、でも……今の私って……よ、余計だめですっ!美波さぁ〜んっ!目を覚ましてぇ〜っ!!//」
「……やっぱり、やめておこっと……流石に、これ以上は色々とよくないし……それに……」
「……初めては……「本当」のあなたに、とっておきたいし……ねっ♪//」
「……あれ?助かった……のかな?」
「ふふっ♪これからは、少しづつ……プロデューサーくんに甘えちゃおっと♪」
「だから……いつかは、気づいて欲しいな……私の気持ちに……」
「……」
「……おかえり。美穂ちゃん」
「あっ……プロデューサーくん……」
「美波ちゃんの回想は、どうだった?」
「……うぅ……ちょっと、刺激が強かったよぉ……//」
「あはは♪美波ちゃんは結構、大胆だからね。流石にボクも、恥ずかしくなっちゃったよ」
「でも……美波さんって、その……実はあんなに、甘えんぼさんだったんだね……」
「気丈に振る舞う人程、内面は意外とわからないものさ。さっきの顔が、美波ちゃんの本当の顔なのかもね」
「確か……美波さんと一緒に、ロケに行った時の記憶だよね?これ……」
------------------------------------------------
「そうだね。あの時、美穂ちゃんが美波ちゃんに、ボクを貸してたよね」
「プロデューサーくんに興味があるって聞いて、つい、嬉しくなって貸したんだけど……まさかね……//」
「みんな、ボクをもふもふって、してくれるからね。あの瞬間が、すごい嬉しいんだ♪」
「……ねぇ、プロデューサーくん。もしかしてさ……「みんな」ってことは……」
「……他の人の記憶も……あるってことなのかな?」
「うん。ボクは正直、記憶力がそんなにいい方じゃないけど、あと、数人分の記憶ならあるよ」
「そうなんだ……でも、プロデューサーくんは何のために、私にこの回想を、見せてくれるの……?」
「ん〜……難しい質問だね。でも……今は、答えれないかな……」
「……そっか……」
「そんな顔しないで。ボクは別に、美穂ちゃんを困らせたいわけじゃないんだよ」
「それに、自ずとわかってくるさ。ただ……一つだけ、言わせて欲しいことがあるんだ」
「ん?」
「ボクはいつでも、美穂ちゃんの味方だよ。絶対に。それだけは、信じてくれると嬉しいな」
「プロデューサーくん……」
「じゃあ次、行ってみようか」
「えっ?あっ……お願いしてもいい……?」
「まかせてよ。それじゃあ、目をつむってくれるかな?」
「うん……」
「……」
------------------------------------------------
「……」
「……ん……次は……誰だろう?」
「って、私……だいぶ、この状況に慣れてきちゃってる?」
「プロデューサーくんの目的は、まだ……わからないけど……」
「今は、私が「プロデューサーくん」だからね!しっかりしないとねっ!……少し、悪い気もするけど……」
「……」
「……あれ?誰もいないのかな……?」
「……」
「……そ〜っ」
ヌウッ……
「きゃっ!?し、下から急にっ!?」
「……誰も……いないよねっ……よしっ!今がチャンスっ……!」
「ピンク色の髪……見ただけで溢れる、カリスマ性……み、美嘉ちゃんだっ……!」
「……//」サッサッ
「手鏡を用意して、髪の毛を整えて……これから、どこかに行くのかな?」
「……ね、ねぇ……どうかなっ。あ、アタシさ、少し……イメチェンを、してみたんだけど……//」
「うわぁ〜♪かわいい〜♪ツインテール美嘉ちゃん、すごい似合うよ〜♪」
「……って……ツインテール?ということは、ここってまさか……あの場所じゃ……」
「……ふ、ふんっ!どうせ、アタシなんか似合わないって、笑うんでしょっ!わかってるんだから!」
「うぅ……かわいいのに……」
「……」
「……そ、そんなことないよ……美嘉//」
「えっ?」
「美嘉のツインテール、すごい似合ってるし、それに……か、かわいいぞっ……//」
「美嘉ちゃん……?ま、まさか……」
「な、何さ!どうせ、口だけなんでしょ!」
「……それじゃあ……俺が、証明してやるよ」
「……プロデューサーくんを、相手に……一人芝居っ……!」
------------------------------------------------
「……ど、どうやって……証明するのさっ!//」
「どうって……決まってるだろ?」
ギュッ
「……これが、俺の感想だ。美嘉……すごい……かわいいぞっ……//」
「わぁ〜……こんなに、乙女な顔をした美嘉ちゃん……初めてみたかも……//」
「それに、自分で自分の肩を抱いて……すごい顔を、真っ赤にしてるし……」
「……き、急に……何よっ……」
「だって……美嘉がかわいすぎるのが、いけないんだぞっ……?//」
「……ふんっ!どうせ、他のみんなにも同じようなことを、言ってるんでしょっ!//」
「バカ……こんなこと……美嘉にしか、言わねえよっ……//」
「じゃあ……アタシも……」
ギュッ…
「ひゃっ…!?」
「こんなこと……プロデューサーくんにしか……しないもんっ……//」
「ううっ……美嘉ちゃんには悪いけど……何だか私まで、恥ずかしくなってきちゃった……//」
「……えへへ……すっご〜い暖かくて、もふもふ〜っ♪//」
「……美嘉ちゃん……こんなにも、プロデューサーくんを愛してくれてたんだね……」
「でも……何でみんな、こっそりもふもふするのかな……?言ってくれれば、いつでも貸してあげるのに……」
「……ずるいよ……何で、アタシはダメで……莉嘉はオッケーなのさ……」
------------------------------------------------
「えっ……莉嘉ちゃん?」
「少しでも、こういうことをしようとしたら、やめろって言うのに、莉嘉だけは……すぐに甘やかして……」
「アタシだって……プロデューサーから見れば、妹みたいなものだし……こういう風にさ……」
「……甘えさせて欲しいし……もっと、構ってもらいたいよ……」ムギュッ
「美嘉ちゃん……」
「……」
「……おかえり。美嘉ちゃんの回想は、ここまでだよ。どうだった?」
「あっ、プロデューサーくん……うん。ツインテールの美嘉ちゃん、すごいかわいかったよ」
「そうだね。あれは、美穂ちゃんがボクを、宿泊先のロッジに連れて行ってくれた時の、回想だね」
「収録前に、奏ちゃんと喋ってて、気づかなかったけど……美嘉ちゃん……ここにいたんだね」
「美嘉ちゃんも、たくさんボクをもふもふしてくれたんだ♪」
「でも、意外だったよ……カリスマギャルなだけじゃなくて、あんな一面が、あっただなんて……」
「美波ちゃんもそうだけど「お姉さん」って色々と、頼られちゃうからね」
「頼られてるうちに、頼る「自分」を抑えて、いつのまにか、抑えてる自分が本当の自分になってるのかもね」
「……あのね……一つ、わかったんだ。みんなは改めて、プロデューサーくんのことが大好きなんだって」
「あはは♪それは嬉しいな。でも……みんなが好きなのは「ボク」だけなのかな?」
「えっ……どういうこと……?」
「ふふっ♪どういうことだろうね♪ささっ、次に行こうよ♪」
「……」
------------------------------------------------
「……」
「……私って……何だったっけ?」
「アイドル……プロデューサーくん……アイドル……プロデューサーくん……」
「……って!ダメダメっ!私は、今を輝く立派なアイドルなんだから!しっかりしないと!」
「……」
「……でも……「ボク」だけ、か……」
カチャッ
「……と、トリックオアトリート〜!」
「わあっ!?な、何っ!?」
「……って、言ってみちゃったりして……えへへ……♪//」
「うわぁ〜♪魔女っ子だぁ〜♪……って!藍子ちゃん!?」
「む〜……プロデューサーくんてば、お菓子をくれないんだ〜。いぢわる〜」
「……それじゃあ……イタズラをしちゃうんだからねっ♪ふふっ♪」
チョコン♪
「きゃっ!何か、頭にっ……って、これは……帽子?」
「うふふっ♪これでプロデューサーくんも、私と同じ、魔女だねっ♪かわいいっ♪」
「あっ……だからあの時、プロデューサーくんに、魔女の帽子が被せてあったんだね」
「……」キョロキョロ
「……ちょっとだけなら……いいよね?……と……とっ……」
「……?」
「と、トリックオアっ……!くろねっ……ぷ、プロデューサーくんっ!!」
「!!?」
「プロデューサーくんをくれないと、その……い、いたずらを……しちゃうよっ!……えへへ♪//」
「あ、藍子ちゃんっ……!?」
「……お菓子を持ってないの?……それじゃあ……お、お菓子より……欲しいものがあるの……えいっ♪」
ムキュッ♪
「わぷっ……!」
「……「温もり」を……ください♪……ふふっ♪プロデューサーく〜んっ♪」
「うぅ……いきなり、ギュ〜ってされるのは……やっぱり……慣れないなあ……//」
「……でも……何だか、今までより少し……「感触」が、少ないような……気のせいかな?」
「う〜んっ♪もふもふです〜っ♪」
「まあ、藍子ちゃんが嬉しそうだからいいか。プロデューサーくんも、喜んでると思うし」
「うふふ……♪変身したプロデューサーくんを見て、美穂ちゃん……びっくりしてくれるかなっ♪」
「……」
「……美穂ちゃんたち……似合ってたな……それに……」
------------------------------------------------
「……プロデューサーくんにも、たくさん……「かわいい」って、褒められてたもんね……いいな……」
「えっ……そ、そんな……藍子ちゃんだって、その魔女の仮装、すごいかわいいよ?」
「みんなの気持ち、わかるよ。だって、私も褒めてもらった時はつい、頰が緩んでしまいましたからね……//」
「……でも、もう少し……プロデューサーくんの視線を、独占出来たらいいな……なんちゃって……♪//」
「……えっ?」
「わかってます……それは、叶わないってことぐらい……だって、プロデューサーくんは……」
「……とても……優しいですからね♪だけど、今は私とプロデューサーくんの、二人っきりです♪」
「だ・か・ら♪この時間だけは……あなたの視線を、独占しちゃいますねっ♪うふっ……♪」
「……藍子ちゃん……」
「藍子ちゃ〜んっ?どこですかぁ〜?」
「……あっ……美穂ちゃんたちが、呼んでる……それじゃあ、そろそろ行くね♪」
「私に、付き合ってくれてありがとう♪プロデューサーくんっ♪」
「……」
「……以上だよ。おかえり、美穂ちゃん」
「……ただいま。今度は、藍子ちゃんだったね」
「うん。これは、事務所のみんなで、ハロウィンパーティーをした時の記憶だね」
「みんなの、楽しそうな声が聞こえてきたり、美穂ちゃんがボクも、ハロウィンに参加させてくれたよね」
「そうだね。みんなにもプロデューサーくんを、もふもふしてもらったりしたっけ」
「藍子ちゃんがボクを仮装させてくれたり、みんながもふもふしてくれたり……あの時は、楽しかったなあ♪」
「でも、何でだろうね。みんなが、プロデューサーくんを愛してくれるのは、嬉しいんだよ?だけど……」
「わざわざ、隠れてもふもふしなくても……言ってくれれば、普通に貸してあげるのに……」
「ふふっ、そうだね。でも、その理由は、美穂ちゃんが一番わかってることなんじゃないかな?」
「えっ、私が……?」
「美穂ちゃんは、何でボクを「プロデューサーくん」って、呼んでくれてるのかな?」
「何でって、それは……あっ……」
「あはは♪ボクって、すごい人気者なんだねっ♪嬉しいな♪……さて、次が最後だけど……どうする?」
「最後……お願い、見せてくれるかな?」
「……本当にいいの?無理をしなくていいんだよ?」
「確かに、後ろめたい気持ちはあるの。でも……全てを見ておかなきゃいけない、そんな気がしたんだ……」
「……そう。ボクは、美穂ちゃんのことが大好きだからね。美穂ちゃんの力になれるなら光栄だよ」
「それじゃあ……目を瞑ってくれる?」
「……うん、お願い」
「……」
------------------------------------------------
「……」
「……「プロデューサーくん」か。ファンの人から初めてもらった、クリスマスプレゼントだったんだよね」
「あの時は、嬉しかったなあ。アイドルになって、間もない頃だったし……」
「それに、不思議だよね。初めてあなたを見た瞬間から、自然と、あの人の顔が浮かんできちゃったんだ」
「だから、その瞬間から名前を……もしかしたら……みんなも……」
カチャッ
「あ、誰か来た……最後は、誰なんだろ……」
「……あ〜、疲れたぁ〜……」
「えっ……杏ちゃん?」
「う〜……飴舐めた〜い、おうちにかえりた〜い……あ、くまのぬいぐるみがある……」
「これって確か、美穂ちゃんのだっけ?……少しだけなら……いいかな……」
「ほら〜、今日も頑張ったぞ〜。だから、杏をねぎらいたまえ〜」
モフッ
「う〜ん……ふかふかで、もふもふだぁ〜……♪」
「……ったく……プロデューサーてば、杏を酷使しすぎだよ〜。ブラックだよっ、労働基準法違反だっ」
「たくさん働いたんだから、これからはた〜っぷりと、杏を甘やかしてもらわないとね」
「そうだな……これから毎日「勤労感謝の日」を制定してもらおっと♪」
「365日、フカフカの堕落クッションで寝ながら、杏の杏による杏のための、絶対王政を敷いてさぁ……」
「「杏を甘やかせ」を金科玉条として、みんなに甘やかしてもらいながら、日々を過ごす……」
「……う〜ん……考えただけでも、垂涎ものですなぁ〜……♪」
「杏ちゃん……ずいぶんと頑張ってたんだね……」
「……ま、それは、しばらくはお預けだけど。杏には、やらなくちゃいけない使命があるし」
「えっ、使命……?」
「杏を応援してくれてるファンや、事務所のみんなのため、そして……」
「……頑張ってくれてるプロデューサーのためにも……アイドルを、続けていかなきゃいけないしね」
「みんなの希望と笑顔のために頑張る。これが杏にとって、そして、輝くアイドルとしての使命だと思うんだ」
「杏ちゃん……すごい……そこまで、みんなのことを考えてたなんて……」
------------------------------------------------
「……という建前は、さておき……杏の使命なんて、決まってるじゃんっ♪」
「……ん?」
「優雅な印税生活だよ、優雅なねっ♪早く私に、悠々自適な、印税生活をさせておくれ〜♪」
「印税……えっ……えぇっ!?」
「今、お仕事を頑張っておけばさぁ、後々、楽になりそうだもんね〜♪」
「CDやグッズとかの印税が、毎月がっぽがっぽ入ってきてさ♪そりゃもう、一生困らないほどね♪」
「そこからさらに、色々な企業とコラボして、ロイヤリティも稼いで、節税もして……そして……」
「……へへへへ……考えただけで、にやけが止まらないよ……♪//」
「……杏ちゃん……私の感動を、返してっ……!!」
「あっ、いっけな〜い♪しゃべり過ぎちゃった♪なぁ〜、プロデューサーくぅん♪」
「今、聞いてたことを黙ってくれたらさぁ、いいことをしてあげるんだけどな〜?」
「……?」
「そうだね〜……あっ!じゃあキミを、杏王国のプリンスとして迎え入れてあげるよっ!」
「!?」
「キミって、ふかふかのもふもふで、気持ちいいんだよね〜♪だから、常に杏の側に居させてあげるっ♪」
「ちょっ……!だっ、だめだよっ!!」
「んふふ……♪これはもう、決定事項だよっ♪」ギュッ
「だ、だめ〜っ!プロデューサーくんは、私のっ……!!」
「それに……あながち、間違えじゃないんだよね〜……「キミ」のためってさ……//」
「だって、ほらっ。印税で食べていけるってことはさ、あくせく、働かなくていいわけでしょ?」
「……そしたらさ、ずっと一緒にぐうたら出来るじゃん……「プロデューサー」と……//」
「えっ……あ、杏ちゃん?」
------------------------------------------------
「……あ〜、はいはい。どうせ、柄じゃないって笑うんでしょ。わかってるよ、そんなこと」
「だけどさ、杏だって一応…花も恥じらう乙女座の女の子なんだし、その……」
「……あ、飴のように甘い時間を……プロデューサーと過ごしたい時だって……あるさ……//」
「杏ちゃん……」
「ま、わかってくれてないだろうね。キミは、超がつく程の鈍感だもん」
「全く……あれだけ甘やかして欲しいって、アピールしてるのにさぁ……本当にもう……」
「せっかく「プリンス」として、迎え入れてあげてるんだからさ……」
ギュッ
「たまには…こうして、杏の隣に居てくれても……バチは当たらないじゃん…//」
「……あ〜もう、なんだか疲れちゃったな〜。もうだめだぁ〜、これ以上は、働きたくないよぅ〜……」
「……」
「だ、だからさ……早く、プロデューサーに……永久就職……させてよ…//」
「……って…何を言ってるんだろ…私……//」
「……あ〜もうっ!この話は終わりっ!頑張ったご褒美として、美味しい飴を要求してこよっと!//」
「とびっきり甘くて美味しい飴じゃなきゃ、もう働かないんだからねっ!プロデューサーっ!!」
「……そこまで……思って……」
「……」
「……お疲れ様。美穂ちゃん」
「あっ……うん。ただいま…」
「これで、全ての回想は終了だよ。今まで、付き合ってくれてありがとうね」
「……ううん。こちらこそありがとう、プロデューサーくん」
「どうだった?最後の回想は」
「……正直…驚いてるよ。まさか、杏ちゃんがあんなに……」
「ははっ、無理もないさ。ボクも聞いた時は、驚いちゃったよ」
「でも……杏ちゃんも、女の子だからね。本当はどこかに、想いを隠してたんじゃないかな」
「言わずとも、察して欲しいってね。流石、花も恥じらう乙女座だよね」
「……あのさ、プロデューサーくん」
「うん?」
「みんなの言うプロデューサーくんってもしかして……「現実」のこと、なのかな…?」
「……」
「……あはは、流石は美穂ちゃんだね。そう、みんな「現実」のボクのことを言ってるのさ。一言一句ね」
「でも…まだ、わからないんだ……なんでプロデューサーくんは私に、回想を見せに来てくれたの?」
「……そうだね。もう、言っても大丈夫そうかな。あのね、これも全て、美穂ちゃんのためなんだ」
「私のため……?」
------------------------------------------------
「正直、ボクをもふもふしてくれた女の子たちを、勝手に晒すのは、迷ってたんだよ?」
「でも、初めて出会った時からずっと、ボクを大切にしてくれた美穂ちゃんになら、大丈夫だと思ったんだ」
「見せてくれたのは嬉しいけど……何だか、その……他の子に悪い気がしちゃって……」
「ふふっ♪やっぱり、美穂ちゃんは優しい女の子だね♪」
「ボクは、アイドルとして輝いてる美穂ちゃんを、ずっと見てたいんだ」
「……でも、ボクがもっと見ていたいのは……恋する、ただ一人の女の子な美穂ちゃんなんだよ」
「えっ……こ、恋っ……!?//」
「うん。美穂ちゃんは毎晩、ボクを抱きながら話してくれてるよね」
「今日はどこに一緒に行ったとか、遊びに行ったとか、こういうところが素敵だった、とかさ」
「いつも嬉しそうに、ボクにお話をしてくれてる美穂ちゃんの顔、アイドルの時以上に輝いてるよ♪」
「あっ……う、うぅ……何だか……恥ずかしいなあ……//」
「だからこそ、みんながどう想ってるのかを美穂ちゃんに見せて、警鐘を鳴らしに来たんだ」
「警鐘……?」
「……みんなが大好きな「ボク」は、一人しかいないんだ。世界中を、どれだけ探してもね」
「とても悲しいことだけど……最終的に「ボク」の隣で、微笑めるのは……「一人」……だけだからさ……」
「っ……!」
「……だから「勇気」を持って欲しいんだ。大好きな美穂ちゃんには、いつまでも笑顔でいて欲しいからね」
「プロデューサーくん……」
「さて、ボクの役目は終わったみたいだね。短い間だったけど、付き合ってくれてありがとう。美穂ちゃん」
「……もう……お別れなの?寂しいよ……まだ、出会ったばかりなのに……」
「ははっ♪面白いジョークを言うんだね♪美穂ちゃんとボクは、いつも一緒にいるじゃないか♪」
「それに……どうやら「プリンス」が来たみたいだし、ボクはさっさと、退散をしないとね♪」
「えっ……ぷ、プリンス……?」
「ふふっ♪ボクは、美穂ちゃんに毒りんごを食べさせた悪い魔女。美穂ちゃんは、眠ってる美しいお姫様……」
「……さて……美穂ちゃんは、どうしたら……起きれるでしょうか♪」
「りんご……お姫様……って…えっ、えぇ〜っ!?」
「それじゃあ、頑張ってね♪ボクは、いつでも側で、美穂ちゃんを応援してるよっ♪」
「ちょっ……ま、待って!!//」
「今度、会う時は………「報告」……待ってるよ♪」
「ぷ……ぷぷ……ぷろっ……」
------------------------------------------------
「……プロデューサーくんっ!!」
「うわっ!?み、美穂……!?……大丈夫か?」
「えっ、プロデューサー……さん?それに、ここは……」
「おいおい、しっかりしてくれよ。ここは女子寮の、美穂の部屋だよ」
「私の部屋……って!何で、プロデューサーさんがここにいるんですか!?//」
「待て!決してやましいことでも、何でもないんだからな!勘違いするなよ!?//」
「……そうなんですか……?」
「ったく……それじゃあ、聞くが。今日、美穂は何をしてたんだ?」
「何って……えっと……お仕事……ですか?」
「何で、疑問形なんだよ……そうだ。それで、仕事が終わったあとは、どうした?」
「えっと……お仕事が終わって……プロデューサーさんの車の、助手席に乗せてもらって、そして……」
「……あれ……?どうしたんだっけ……」
「やっぱりな……随分と、気持ちよさそうだったもんな……お前……」
「気持ちよさそう……ですか?」
「だって、運転中に美穂と喋ってて、声がしないと思って隣を向いたら、思いっきり寝てたんだからな」
「寝て……えっ、ええっ!?」
「しかも、熟睡してるもんだから、女子寮に着いても全然、起きなかったし……」
「だから、ちひろさんと相談をして、美穂の部屋の鍵を借りて、ここまで美穂を運んできたんだよ」
「うぅ……すみませんっ……//」
「まあ、仕事を頑張ってくれてたからな。無理もないさ。どうだ?わかってくれたか?」
「は、はい……でも……むしろ、その……何ていうか……」
「……ぷ、プロデューサーさんと一緒だったから……安心して、つい寝ちゃったのかな……なんて……♪//」
「ん?そうなのか……?でも、疲れてるなら無理……するなよ?」
「えへへ……♪はいっ♪」
------------------------------------------------
「まあ、何もなくてよかった。それじゃあ俺は、そろそろ帰るよ」
「えっ……?」
「今日はありがとうな、体に気をつけてくれよ。じゃあ、また明日……」
「……あ、あのっ!!……少し……お時間、大丈夫でしょうか……?」
「ん?……そうだな……うん。このあとは、特に何もないな。どうしたんだ、美穂」
「あの……私のベッドに、腰を掛けてもらっていいですか?」
「ベット……俺、スーツだけど、いいのか……?」
「は、はいっ!大丈夫ですっ!」
「そうか。じゃあ、失礼させてもらうよ」
「……うふふ♪では……私も、隣に……失礼しますね♪」
「えっ……」
「「……//」」
「……そ、それで……何か、相談とかあるのか……?//」
「そ、そうですねっ!あの……その……えいっ!//」
ギュッ
「ちょっ……み、美穂っ!?何だよ!?急に、腕を絡めてきてっ……!//」
「えへへ♪私の、今度のドラマのお仕事って、恋人の彼女役ですよね?」
「ドラマ……?あぁ……あの仕事か……」
「だから、役作りのために、プロデューサーさんが彼氏役として、私の練習に付き合ってくださいっ♪」
「彼氏役って……こういうことは、同じ女の子に頼んだ方がいいと思うぞ?例えば、卯月とか響子とかにさ」
「それもいいですけど……やはり、役に入り込むために、より、リアルに再現した方がいいと思いますし……」
「……恋人の気持ちや、感触を確かめておくのも、役作りにとっては……重要だと思いますので……♪//」
「か、感触って……//」
「ふふっ……♪プロデューサーくんの腕って、とても暖かいですっ……♪」
「えっ……プロデューサー「くん」?」
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「はいっ♪今のプロデューサーくんは、私の彼氏さんなんです♪ですので……」
「……しばらくは……この体勢で、一緒にいようね……♪ぷ、プロデューサーくんっ……♪//」
「いや……美穂が真面目だっていうのはわかってるし、勉強熱心なのは嬉しいんだぞ?だけど、その……」
「……は、恥ずかしいから……普段通りの呼び方に、戻してくれないか……?//」
「だめですっ♪プロデューサーくんっ♪」
「……っ//」
「プロデューサーくんって、流石は男の人ですね♪ぎゅっとしてると、つい、安心しちゃいます……♪//」
「あ、あぁ……そりゃどうも……//」
「「……//」」
「……何だか、こうしてると私たちって……本当のカップルみたいだね……♪//」
「な、何を言ってるんだ、美穂……俺は、あくまで美穂の、彼氏「役」だろ……?」
「むっ……また、そういういじわるを言っちゃうんだ……そんないじわるな、プロデューサーくんには……」
……チュッ♪
「!?」
「……ちょっと……小悪魔になっちゃいます……なんて♪//」
「ちょっ……!?みっ、美穂……!?//」
「うふふ……どうでしたか……?私の「心のこもった演技」は……♪//」
「し、知るかっ!美穂!お前はアイドルなんだぞ!?な、何だっ!今の行為はっ!!//」
「もう、照れちゃって……♪でも、いいんだよ?プロデューサーくんとなら「その先の」ことをしても……//」
「なっ……!お、俺をからかうのも、いい加減にしろ!もうこれ以上、付き合ってられるかっ!//」
「ええ〜っ……もう少し、演技の練習に付き合ってくださいよぉ〜……」
「知るかっ!あとは、他のアイドルに頼めよ!じゃあなっ!//」
「あっ……行っちゃった……あと……もう少し、だったのにな……」
「……うぅ……何だか、自分からしておいて、急に……恥ずかしくなってきちゃった……//」
「でも……頑張らなきゃね。だって、私は……みんなに負けたくないから……」
「だから、これからも頑張る私を、見守り続けてくれると嬉しいな……ねっ……」
モフッ♪
「……「プロデューサーくん」っ♪」