「……」
「……はあっ!!」
バキッ!
「……くっ……一枚……残ってしまいました……いつもなら全部、瓦を割れるのに……おかしいな……」
「……ううん。何も、おかしくはないですね。まだまだ、未熟な証拠です。もっと……修行しないと……」
「最近ずっと、こんな調子だな……どうしちゃったんだろう、あたし……考えても、仕方がありませんね」
「さて、心頭滅却すれば、火もまた涼し。座禅を組み、精神統一をしましょう」
「空手……精進……心頭……滅却……一心……不乱……」
「……かわいい……アイドル……そうでしたね……今のあたしはあの、憧れていたアイドルでしたね……」
「高校最後の大会を終え、師匠に「空手以外の道に目を向けてみろ」と言われ、始めたアイドル道ですが……」
「かわいい衣装……かわいい仕草……かわいい雰囲気……実に、奥深いですね。もっと、精進をしないと……」
「でも……かわいいって何でしょう、どうしたらもっと、かわいくなれるんでしょう」
「……どうしたら……もっと「見て」もらえるんでしょうか……//」
「って……あ〜!もうっ!あたしらしくないです!ていっ!やあっ!はぁ〜っ!!」
「はっ……!い、いけません……あたしは、アイドル……あたしは、かわいいアイドル……コホン……」
「……みなさ〜んっ♪中野有香ですっ♪今日は、ファンのみんなに、瓦割りをご覧に入れて見せますっ♪」
「じゃあ、いっくよ〜♪えいっ♪やあ〜ん♪痛いぁ〜いっ♪瓦割れな〜いっ♪」
「だ・か・らっ♪キュートなあたしにぃ、みんなの恋色のエナジーを、た〜くさんちょ〜だいっ♪きゃはっ♪」
「……うぅ……わかりません……アイドルの正しい型って、何なんだろう……」
「仕草……?愛嬌……?それとも……あざとさ……?ううっ……考えれば考える程、泥沼にはまって……」
「師匠……あたしは、どうしたらよいでしょうか……」
------------------------------------------------
「……ん〜♪このストロベリーのドーナツ、おいし〜い♪」
「このシンプルなドーナツ、とても好きなんです」
「カスタードクリームがたっぷり入ってて、美味しいですねっ!」
「ははっ、気に入ってくれてよかった。やっぱり、レッスンのあとは甘いものだよな」
「あたし、ちょうどドーナツが食べたかったんだよね〜♪グッドタイミングだったよ♪」
「何を言ってるんだ。法子は一日中、ドーナツのことを考えてるだろ」
「あ〜っ!ひど〜い!あたしだって、ドーナツのことばかり、考えてるわけじゃないよ!?」
「んじゃあ、例えば何を、考えてたりするんだよ」
「そ、それは……その……何というか……何ていうかぁ……あ、アイドルについて、いつも考えてるもん!//」
「おっ、それは頼もしいな。なら、気をつけて欲しいことが、あるんだけどな〜……少し、失礼するぞ」フキッ
「「!?」」
「全く、ドーナツのかけらが頰についてたぞ。これじゃ、かわいい顔が台無し……って、どうしたんだ法子」
「あっ……あわ……あわわっ……//」
「何だよ、そんなに俺を見つめて。俺の食べてるドーナツが、欲しいのか?」
「も、も〜!だから、そんなことないもんっ!プロデューサーの、いぢわるっ!//」
「ははは。そんなに、ムキになるなって。かわいいなあ、法子は」
「……むぅ〜//」
「「……」」
「ゆかりと有香もほら、まだあるから食べな」
「ふえっ!?あっ……は、はい……いただきます……//」
「え、えっと……あ、ありがたくちょうだいします!押忍!!」
------------------------------------------------
「さて……法子は現場に送ったし、有香は別室で、雑誌のインタビューを受けてるし……あとは……」
「……」
「……この眠り姫を、どうするかだな……お〜い、ゆかりさ〜ん?起きてますか〜?」
「……ん……zzz」
「やっぱり……ほらゆかり、俺は仕事をするんだから、離れてくれよ」
「……んっ……」ギュッ
「……ちょっと、失礼するぞ〜……」
「……んんっ……やっ……!……zzz」
「ふぅ……ゆかりの寝相の悪さには、困ったものだな……俺にそんな、腕を絡めて……油断しすぎだろ……」
「……うふふ……//」
「全く……思春期の女の子がこんな無防備じゃ、危なっかしくて放っておけないな」
「……」ニコッ
「あっ、でも、法子も元気すぎて目が離せないし……この事務所のアイドルはみんな、目が離せないな……」
「……」ムスッ
「ふぅ、困ったものだ……しかし……こうして見るとやっぱり、ゆかりってお嬢様って感じだよな……」
(透き通るような、白い肌……清楚さを感じる、甘い香り……確かに感じる、柔らかいもの……)
……ムニッ♪
「……くっ……意識しちゃ、ダメだっ……!……しょうがない。こうなったら最終手段だ。少し、失礼するぞ」
「……ふにゅっ//」
「何だか、誤解を生むような抱っこの仕方だが……誰もいないからいいよな」
「ほ〜ら、ゆかり姫〜。こちらが寝室ですぞ〜っと……よし、ソファーに降ろして、毛布をかけて……」
「ふぅ……これでよしと……さ〜て、残りの作業をしちゃいますかね」
「……好き……なんですっ……//」
「……ん?好き……?まさか、夢の中でまだ、ドーナツを食べてるのか?」
「甘くて……素敵で……とても大好きな……私の……zzz」
「そんなに気に入ってくれたなら、また今度買ってきてやるか、さぁて、仕事仕事っと」
「……ぷろでゅーさーさん……ふふっ……♪//」
------------------------------------------------
「プロデューサーさんっ!ただいま戻りました!」
「おっ、お疲れ様、有香。どうだった?」
「はい!あたしなりに、全力で答えさせていただきましたっ!」
「それはよかった。じゃあ、俺も一つ質問があるんだ。ゆかりってさ、すごい寝相が悪いと思わないか?」
「ゆかりちゃん……?そうですか?ソファーで普通に、寝てるだけのように見えますが……」
「大変だったんだぞ。ゆかりってば、さっきまで寝ぼけてて、俺に思いっきり、密着してたんだから」
「みっ……密着ですか!?」
「あぁ。話をしてたら、いつの間にか寝てしまってたんだ。だから一生懸命、ゆかりを起こそうとしたんだ」
「だけど、引き離そうとしたり、立ち上がろうとしても全然、離れてくれなくてな。困ってたんだよ」
「あのゆかりちゃんが……少し、意外ですね……」
「普段はしっかりとした、清楚なお嬢様って感じなのに、こういう肝心なところは、抜けてるんだよな」
「……言われてみれば……あたしから見ても、その……ゆかりちゃんは少々、天然な部分がありますね……」
「天然すぎて手が焼けるけどな。あっ、でも有香がついてるから安心か」
「えっ……?あたしですか……?」
「天然なゆかり姫には、しっかりものの有香がついてるし、だから安心だな。ははっ」
「そ、そんな……あたしも、その……色々と力不足なところがありますので……」
「謙遜すんなって。有香の強さはどれ程のものか、俺はよく知ってるつもりだよ」
「……あ、あのっ……!プロデューサーさんっ!その……あたしも、女の子ですので……だから……」
「ふぁ……?」
「おっ、姫のお目覚めだ」
「う〜ん……えっと……ここは……」
「おはようゆかり。ここは事務所だぞ」
「あら……?どうして……わたしのへやに……プロデューサーさんが……?」
------------------------------------------------
「お〜い、もう一度言うぞ?ここは事・務・所だぞ」
「ん〜……?……っ!?や、やだ……私ったら……!」
「さっきまで、俺に思いっきり腕を絡めて、密着してたネボスケさんは、どこの誰だっけ〜?」
「みっ、密着……!?冗談はやめてください……!私は、そんなはしたないことは、しないですっ……!//」
「どの口が言うんだか……じゃあ、その格好は何だ……?」
「格好……きゃあっ!?」
「ゆかり姫は、普段からそんなはしたない格好で、過ごしてらっしゃるのかなぁ?ん〜?」
「……〜っ!//」
「まあ、かわいかったからいいけどさ。いっそ、ネボスケゆかり写真集でも出してみるか?なんてな」
「も、もうっ……!プロデューサーさんってば、いぢわるです……!はしたないですっ……!//」
「はいはい。ゆかりはかわいいなあ」
「……む〜っ……//」
「あっ、そうだ。ところで有香、さっき、何を言おうとしたんだ?」
「ふぇっ……!?え、えっと……あのっ……い、いえ!何でもないですっ!//」
「そうか?ならいいんだが……」
「……プロデューサーさん……こ、このような姿を見られてしまったからにはもう、お嫁には行けません……」
「……ですから……最後まで責任を……とってもらいますからね……?//」
「ん……?あ〜、そうだな。俺は俺なりに、ゆかり姫に尽くさせてもらいますよ〜」
「約束ですよ……ふふっ……♪//」
「それじゃあ有香、そろそろ行くか?」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
「取材を受けてもらったばかりなのに悪いな、忙しくて……もし、辛かったらいつでも言ってくれよ?」
「いえいえ、そんな……むしろ、プロデューサーさんと一緒なら、どこまでも頑張れますよ♪……なんて♪//」
「そうか……?でも、無理はしちゃだめだぞ。有香は、俺の大切なアイドルなんだからさ」
「大切……はいっ!ありがとうございますっ!それではさっそく、向かいましょう!」
「あぁ。それじゃあ、そろそろ行くか。また今度な、ゆかり」
「えぇ……お二人とも、頑張って来てくださいね……♪」
------------------------------------------------
「はぁっ!やぁっ!……せいやぁ〜っ!!」
「はい、撮影終了です。ありがとうございました」
「押忍!ありがとうございました!!」
「お疲れ様、有香。頑張ったな」
「あっ、プロデューサーさん!お疲れ様です!」
「いや〜、流石だ。遠くで見てたけど、すごい迫力だったぞ」
「あ、ありがとうございますっ!幼い頃から、空手を続けて来た甲斐がありました!」
「有香の魅力を色んな人に伝えるには、空手が一番だと思ってな。素敵なPVが撮れたよ」
「あ、あたしが、一番ですか……?嬉しいです……♪//」
「メロウ・イエローはそれぞれ個性が出てきたよな。ユニットとしても、個人としても」
「個性……ですか?」
「あぁ、ちょっと、この雑誌を見てくれ」
「ん?えっと……今、人気沸騰中の、三つのkawaii「イエロー」を大紹介……」
「「可憐」なイエローの水本ゆかりちゃん……「幼気」なイエローの椎名法子ちゃん……「強固」なイエローの中野有香ちゃん……」
「どうだ。いい感じに、三人の特色が出てるだろ?アイドルは、個性が大事だからな」
「……可憐……幼気……強固……」
「……」
「ん……?どうかしたか?有香」
「はっ……い、いえ!何でもないです!」
「そうか?なら、いいんだが……あ、そうだ。ところで、あっちの方は順調か?」
「はい!おかげさまで、順調に邁進させてもらっています!」
「よかった。ユニット「メロウ・イエロー」で、初のライブだからな。順調でよかった」
「あと数日なので、緊張はしていますが……初めてユニットで歌えるので、とても楽しみです♪」
「よし!その意気だ!頑張って、ライブを成功させようぜ!」
「はい!頑張ります!押忍!」
------------------------------------------------
「「「みんな〜!ありがとう〜!!」」」
タノシカッタ~! チョウカワイカッタヨ~! メロウイエローサイコ~!
「三人ともお疲れ様。よく頑張ってくれた」
「お疲れ〜♪あ〜、楽しかったぁ〜♪」
「お疲れ様です。ファンのみなさんに無事、笑顔をお届けできました……♪」
「初めてのライブ……手に汗を握りましたが、とても楽しかったです!!」
「無事に、終了してよかった。最高に盛り上がってたな」
「こんなに緊張したのは、空手の県大会に出場した時以来です!でも、全力を尽くさせてもらいました!!」
「あたし、ライブ中にずっと、手が汗ばんじゃってたよ〜……あ〜、緊張したぁ〜……」
「マイクを握る手が、ずっと震えてしまっていて……フルートの演奏会とはまた違う、緊張感でした……」
「大丈夫だ。舞台裏から見てたけど、緊張が見えないぐらい、しっかりとパフォーマンスが出来てたぞ」
「プロデューサーさん……私たちのことをずっと、裏から……見ていてくださったのですね……//」
「当たり前だろ?大切な、アイドルユニットの初お披露目を、最後まで見届けるのは当然のことだ」
「えへへ……♪なんか、恥ずかしいのか嬉しいのか、わからなくなっちゃうねっ……♪//」
「よし!じゃあ打ち上げにいこうぜ。他のアイドルや、関係者のみんなが、主役の登場を待っているからな」
「はい!行きましょう!」
「……その前に……有香。ライブ中に発射された、紙吹雪が髪についてるぞ。俺が取ってやるよ」
「あっ……す、すみません……ありがとうございます……//」
「全く……今の姿は、俺が独り占めだ。だから、他の人には見せちゃだめだぞ」ナデナデ
「……プロデューサーさんに、独り占め……えへへ……♪//」
「……いいなぁ……」
「ん?ゆかり、何か言ったか?」
「い、いえ……何でもないです……//」
「そうか?それじゃあ、そろそろ会場に向かおうか」
「はいっ!む、向かいましょう!押忍!!」
「……そういうことを……恥ずかしげもなく言えちゃうんだよね〜……プロデューサーは〜……」
------------------------------------------------
「ふぅ……やっぱり、この時期になってくると、日が暮れるのが早いよな」
「そうですね。秋風も吹いてきましたし、夏の終わりを改めて感じます」
「ライブも大成功だし、打ち上げも楽しかったし、今日は本当にハッピーで幸せな一日だったよ!」
「よかったな。初ライブが成功して、幸先のいいスタートだ。今後も、一緒に頑張っていこうな」
「はいっ!是非とも、よろしくお願いしますっ!」
「しかし……こうして夜道を歩いていると、さっきまでの盛り上がりが、嘘のように静かですね……」
「ははっ、しょうがないさ。遊園地の閉園時間に感じる、寂しさと哀愁に通じるものがあるよな」
「あるある!楽しかった分、終わり間際にあの何とも言えない、寂しさが込み上げてくるんだよね!」
「それに……何だか、暗くて……少し、怖くなってきてしまいました……えいっ……♪//」」
ギュッ
「!?」
「……あ”〜っ”!ゆかりちゃんだけずる〜い!あたしもこわ〜い!」
「お、おいっ!二人とも、急に何だよっ……!//」
「プロデューサーさん……守って……くださいますよね……?」ウルッ
「プロデューサーが、優しいお兄ちゃんだってこと……あたし、知ってるよ……?」ウルッ
「……ふぅ……しょうがないな……女子寮までだぞ?」
「「は〜いっ♪」」
「まあでも、俺たちには有香がついてるから安心だな。きっと、変な奴が来ても懲らしめてくれるさ。なっ?」
「えっ……?あっ……そ、そうですね……困ってる友達がいたら、助けるのは当然だと思いますので……」
「流石は有香だ。メロウ・イエローは、色んな意味で安泰だな。ははっ」
「……あ、あの……あたしもプロデューサーさんに、その……すみません……やっぱり、何でもないです……」
「ん?どうした?なんか悩みとかあるなら、相談に乗るぞ?」
「有香ちゃん……何か、悩み事でもあるのですか……?」
「悩みだなんて……むしろ、ライブを無事成功させることが出来て、嬉しい気持ちでいっぱいですよ!」
「そう?もし何か悩んでたら、いつでも相談してね?あたしたちは、有香ちゃんの友達なんだしさ」
「そうだな、俺たちは有香の友達だ。だから、何か相談があるなら、いつでも言ってくれよ」
「はい……みんな、ありがとうございます……」
「……」
------------------------------------------------
「本日は、楽しいライブの時間を、ありがとうございました……♪また……よろしくお願いしますね……♪」
「あたしたちがハッピーなら、みんなもハッピーになれるもんね♪今日は、ありがとうっ♪」
「二人とも、今日はありがとう。あとはゆっくり、休んでくれ。じゃあ有香、そろそろ俺たちも行こうか」
「そうですね。今日は、ありがとうございました。ゆかりちゃん、法子ちゃん、また会いましょう♪」
「えぇ……♪それでは、おやすみなさい……お互いに、よい夢を見ましょう……♪」
「おやすみなさ〜いっ♪」
「ふぅ……今日のライブは、三人とも大活躍だったな。幸先のいいスタートになりそうだ。なっ?有香」
「そう……ですね……」
「……」
「……有香……?」
「……っ!」ギュッ
「なっ……!?ゆ、有香!?急に、どうしたんだ……!?」
「……プロデューサーさん……あたしは……女の子らしく、ないですか……?」
「女の子……?何の話だ……?」
「確かに、あたしは今まで空手一筋で、空手以外のことはよくわからずに、日々を過ごして来ました」
「メイクやオシャレだって無頓着で、アイドルになってから初めて、意識するようになりました」
「だけど……ゆかりちゃんや法子ちゃんみたいに、あたしのことも……その……」
「……一人の女の子として……見て欲しいんです……だめ……でしょうか……?」
「有香……そんなの、言うまでもないだろ?有香は十分、かわいい女の子だ。俺が保証するよ」
「本当ですか……?」
「あぁ。有香は、俺が目をつけたアイドルなんだ、かわいくないわけがないだろ?」
「……でしたら、その……証明をしてもらえますか……?」
「えっ、証明……?」
「えっと……あ、あたしと、その……明日……一緒に……」
「?」
「……て、手合わせを、お願い出来ませんか!?」
------------------------------------------------
「手合わせ……はあっ!?お、俺と……!?」
「はいっ!……どうでしょうか……?」
「おいおい……俺じゃあとても、有香の相手なんて務まらないと思うぞ?空手だって、やったことないし……」
「あっ……す、すみませんっ!そういうことではなくてですねっ!その……」
「……一緒に……お買い物に、付き合ってもらえないでしょうか……//」
「あっ、手合わせって、そういう……また、どうしたんだ?」
「……かつて、空手の師匠が言ってたんです。「日頃から感謝の気持ちを忘れるな、それが大事だ」と」
「それで、改めて友達に、感謝の気持ちを伝えようと思い、そのプレゼントを一緒に選んで欲しいんです」
「なるほどな。でも、そういうのは、俺より同じアイドルの子たちに選んでもらった方が、いいと思うぞ?」
「確かに、それもいいですけど……でも、男の人と一緒に探した方がより「実感」が湧くと思いまして……//」
「実感って……まあ、俺でいいなら付き合うよ」
「本当ですか……!?嬉しいですっ……♪……えいっ♪」
「うわっ!?な、何だよ……!?」
「うふふ……♪夜道は怖いですっ♪だから、家までしっかりと、あたしをエスコートしてくださいねっ♪//」
「いや……そりゃ、もちろん送るけど……近すぎじゃないか……?」
「いえいえ♪……あたしも、女の子ですし……「守って」もらいたいんですっ……♪」
「……しょうがないな……ただし、家までだからな?」
「は〜いっ♪わかりましたっ♪……あの……プロデューサーさん……」
「何だ?」
「お、お買い物に行く時も、そのっ……しっかりと、あたしを……エスコートしてくださいねっ……♪//」
「あぁ、出来る限りのことはさせてもらいますよ。有香お嬢様」
「ふふっ……♪お願いします……♪」
「じゃ、改めて、有香の家に向かおうぜ。もう、夜も遅いしな」
------------------------------------------------
「……ふぅ。さて、お風呂から上がったことですし、さっそく、明日のデートの準備を……」
「……ではなく!「お買い物」の準備をしましょうっ!クローゼットを開けてと……//」
「これがいいかな……それとも、これ……?あっ、こっちもいいかも……」
「うぅっ……おしゃれは、難しいですね……空手と違って、正しい型というのがありませんし……」
「唐突に、プロデューサーさんを誘ってしまったものの……どれを着ていけば、いいんだろ……」
「……って!ただ、お買い物に付き合ってもらうだけなんです!特別な意味なんか無いんですっ!」
「……だけど……せっかくなら、その……か、かわいいって……言ってもらいたいですし……//」
有香。その服装、すごいかわいいよ。
そ、そんな……あたしなんか、別に……//
そんなことを言うなって。じゃあ今から、有香がかわいいってことを、俺が証明してやるよ。
えっ……きゃっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?
ほら、俺の腕の中に、すっぽりと入っちゃったぞ。有香はかわいいなあ。
……あぅっ……そ、そんな……いきなり……//
もう、絶対に離さないからな。今から、二人だけの特別な時間を過ごそうぜ……「俺だけ」の有香……。
ふあっ……は、はいっ……よろしくお願いします……♪//
「……えへへ……二人だけの、特別……//」
「って……!あ、あたしってば、何を考えてっ……!だ、だめですっ!煩悩、たいさ〜んっ!!//」
「……本当に、変わっちゃったな……あたし……以前とは、考えられない程に……」
「寝ても覚めても、プロ……ううん……「おしゃれ」や「かわいい」のことばかり、考えて……」
「これが……アイドルというものなのでしょうか……それとも……」
「……さ、さてと!鏡とにらめっこをするのはこれぐらいにして、そろそろ寝ましょう!」
「睡眠不足は、お肌の大敵ですからね!アイドルとして、もっと自覚を持たないといけませんっ!」
「でも……やっぱり、もっと試行錯誤した方がいいかな……?髪型とか、アクセサリーとか、メイクとか……」
「その他にも、色々……ああああっ!もうっ!どうしたらいいか、わかりませ〜んっ!!」
「うぅ……あたしの……おバカっ……」
------------------------------------------------
チュンチュン……
「ふぅ……待ち合わせ場所は、ここですね。プロデューサーさんは……」
「……まだ、来てないみたいですね。少し、早く来すぎちゃったかな……」
「では、来るまで調べ物をしましょう。この近辺の情報を知っておいて、損はありませんからね」
「「お店 かわいい」……って……かわいい……?」
「……かわいい……かわいい……」
「……」
「……「空手 かわいい」……っと……あっ……一番最初に……えへへ……♪//」
「よぉ、有香。待ったか?」
「いえ……むしろ、一番最初に来ました……//」
「一番最初……?他に、誰か来るのか?」
「……ん……?わぁっ!?ぷ、プロデューサーさんっ!?」
「俺は別に、構わないけど……誰が来るんだ?」
「こ、こんにちはっ!本日はお日柄もよく……で、ではなく!あ、あたしはその……別に……あのっ……!//」
「おいおい、落ち着けって。別に、怒らないから話してみな」
「いえ!本当に誤解なんです!ただ、楽しみすぎて、早く来てしまったってことを、伝えたかったんです!」
「そうなのか……?なら、いいんだが……」
「で、ですので……今日は……ぷ、プロデューサーさんとあたしの、二人っきり……ですよ……♪//」
「そうだな。力になれるかどうかわからないけど、今日はよろしく。有香」
「いえいえ!こちらこそ、今日はよろしくお願いしますっ!!……と、ところで、プロデューサーさん……」
「何だ?」
「今のあたしはそ、その……かわいい……ですか……?//」
「あぁ、よく似合ってるよ。かわいい、キュートな女の子って感じだ。それじゃあ、そろそろ行ってみるか?」
「……えへへ……ありがとうございますっ……♪では、改めて、手合わせをお願いしますっ!押忍!!」
------------------------------------------------
「やはり、プロデューサーさんを頼って正解でした♪カタログを見て悩むより、実際に触れた方がいいですね♪」
「頼ってくれるのは嬉しいけど……俺で、本当によかったのか?」
「……言ったじゃないですか……選ぶのに「実感」した方が、よいものを選べるかもしれないって……//」
「まあ、有香がいいならいいんだが……」
「うふふ……♪ところで、このリボン……とても、かわいいですねっ♪」
「あぁ。まるで、有香のためにあるような、リボンだよな」
「……ま、また……プロデューサーさんは、そういうことを言うんですから……//」
「本心から言ってるだけだって。ほらっ、俺が付けてやるよ」
「あっ……よ、よろしくお願いします……」
「じゃあ、少し失礼するぞ……よし、どうだ?こんな感じでいいか?」
「えっと……はいっ!法子ちゃん風に言うと、バッチグ〜ですっ!なんて……♪」
「ははっ、すごい似合ってるよ。やっぱり、かわいい有香には、かわいいリボンだな」
「……カッコよくて素敵なお兄さんに、そう言ってもらえると……女の子として、自信が付きますっ……♪//」
「なっ……!か、カッコいいって……そんな……//」
「「……//」」
「……さ、さて……あっ!これとか、どうでしょうか!プロデューサーさんにも、似合うと思いますよ!//」
「おっ!これなら俺にも……って!これ、有香が付けてるリボンの色違いだろ!俺にそういう趣味はないぞ!」
「あっ……すみません!そういう意味ではなくて、友達とペアグッズとかいいな……と思ったんです」
「あぁ……そういうことか。確かに、友達とお揃いの物を付けてたら、もっと仲が深まる気がするよな」
「……もし、よかったら……あたしたちも、お揃いなんてどうでしょうか……「親友」の証として……//」
「おっ、それは名案だな。じゃあ、俺たちもお揃いにしてみるか!」
「本当ですか!?それでは、さっそく……!」
「……な〜んてな、冗談だよ。「親友」にはもっと、アイドルとして輝いてもらわないとな。だからお預けだ」
「冗談……そうですか……」
「そんなに落ち込むなって。別に物がなくても、俺たちは心で繋がってるだろ?これからもよろしくな、有香」
「心で……は、はいっ……これからもずっと、よろしくお願いします……プロデューサーさんっ……//」
「あぁ。それじゃあ、有香の友達のためにも、素敵なプレゼントを選ぼうぜ。俺と有香の二人でな」
------------------------------------------------
「プロデューサーさん。本日は、私に付き合っていただき、ありがとうございました♪」
「気にしないでくれ。それより、よかったな。素敵な贈り物が見つかって」
「はいっ♪きっと、友達も喜んでくれると思います♪」
「にしても、感謝の気持ちを贈り物で伝えるだなんて、有香って改めて誠実だよな。アイドルとしてもさ」
「いえいえ。親しき中にも礼儀あり、です。礼儀を重んずることも、武道の大切な心得ですので」
「ははっ。そこまで思ってもらえるなんて、有香の友達は幸せだな」
「……プロデューサーさんも……あたしの「親友」です……なので……あ、あたしから、その……//」
「……あら?プロデューサーさんと、有香ちゃんじゃない」
「ん……?あっ、レナさんじゃないですか。こんにちは」
「れ、レナさん……!?こ、こんにちはっ!いつも、お世話になっておりますっ!押忍!!」
「こんにちは♪うふふ……♪相変わらず、有香ちゃんは礼儀正しいわね♪」
「こんな所で奇遇ですね。何か用事ですか?」
「えぇ。ちょっと、アクセサリーを買いにね。二人こそ、仲睦まじそうだけど何をしてるの?」
「俺たちは、有香の友達へのプレゼントを、一緒に選んでたんです。な?有香」
「はいっ!感謝の気持ちを、プレゼントで伝えようと思い、プロデューサーさんに選んでもらっていました!」
「そうなんだ……いいなぁ〜♪私もぉ「お兄さん」から、心のこもったプレゼントが、欲しいなぁ〜♪」チラッ
「……何で、今……俺を見たんですか……?」
「あんっ、いぢわるぅ〜……しょうがないなあ……えいっ♪」
ムニュッ♪
「!!」
「ちょっ……!れ、レナさんっ!?」
「ねぇ〜、私にもぉ、有香ちゃんのような、心のこもったプレゼントをちょ〜だいっ♪」
「ぷ、プレゼントって一体、何を……ていうか、近いですって!//」
「さて「ナニ」でしょうか……♪ヒントは……プロデューサーさんが今、考えてるものよ……♪」
「お、俺は別に……何も考えてなんか…!//」
「ウソつき♪元ディーラーの私に「イカサマ」は通用しないわよっ♪」
「くっ……!//」
------------------------------------------------
「ねぇっ……一緒にぃ、酒の肴をつまみあった仲じゃない……♪だから、いぢわるをしちゃ……イヤよ……?」
「そ、それは……ていうか!あの時は酒の肴なんて、なかったじゃないですかっ!!//」
「エ〜。だってぇ、肴はプロデューサーさんだったしぃ、別に、私はウソは言ってないも〜んっ♪」
「全く……何が肴ですか……酔っ払ったお姉さんたちにどれだけ、俺が苦労したと思ってるんですか……?」
「……むぅ〜……何よぉ、お姉さんたちにたくさん「つままれて」気持ちよくなってたクセにぃ……」
「へ、変な言い方をしないでください!ただ、レナさんの家でお酒を飲んだだけじゃないですかっ!//」
「……レナさんの……お家で……」
「でもぉ、あの時はすぐに、私に付いて来たじゃない♪実は「ナニ」かを、期待してたんじゃないのカナ〜?」
「いや……それは、その……いいワインが手に入ったと聞いただけで、別に変なことは……//」
「うふふ……♪じゃあ、今はいいプロデューサーさんが手に入ったから、お姉さんからプレゼントをあげるわ♪」
「えっ……レナさんから、ですか……?」
「えぇ♪それじゃあ、アツくて素敵なモノを、あ・げ・る……♪……んっ……」
「はあっ……!?れ、レナさん!?何をしてるんですか……!?有香っ!助けてくれえっ!!」
「……お邪魔して、すみませんでした……では、あたしはこれで、失礼させてもらいます」
「なっ……!ゆ、有香……!?」
「うふっ♪有香ちゃん公認ねっ……♪じゃあ、続きをしましょう♪ん〜♪」
「ちょっ……まっ……!//」
「……」
ピトッ♪
「……はいっ♪私のカイロをあ・げ・る♪」
「……えっ……か、カイロ……?」
「言ったじゃない♪アツくて素敵なものだって♪まだ少し、時期的に寒いでしょ?」
「えぇ……それは、まあ……ありがとうございます……」
「……うふふっ……♪「ナニ」だと思ったのかなぁ〜?」
「なっ、何も思ってないです!全く……レナさんはアイドルなんですから、少しは謹んでください……!//」
「ふふっ、ごめんなさいね♪デートの邪魔をしちゃって♪ほら、愛しの彼女のところに行ってあげないと♪」
「彼女……あっ、有香……」
「んもう、ダメじゃない。私ばかりじゃなくて、もっと有香ちゃんのことも見てあげなきゃっ」
「そ、それはレナさんが……とにかく……俺は、有香を追いかけます。では、またよろしくお願いしますね」
「えぇ♪よろしくねっ♪……あ、最後に一つ、いいかしら?」
「何でしょう?」
「……プロデューサーくんになら、もっと……「素」の私を、見せてあげてもいいわよ……♪」
タプンッ♪
「なっ……また、そんなことをっ……!お、俺はもう行きますからねっ!ではっ!」
「まったね〜♪うふふ……かわいいんだから♪……頑張ってね♪有香ちゃん♪」
------------------------------------------------
「有香〜!待ってくれって!」
「……」
「なあ、有香……急に、どうしたんだよ……」
「……ですね……」
「えっ……?」
「レナさんと随分……仲がいいんですね……」
「い、いや……あれは誤解なんだって!レナさんはすぐに、ああいうことをするから……//」
「むぅ……それにしては……随分と、デレデレしてたじゃないですか……」
「まあ、レナさんはとても……じゃなくて!デレデレなんかしてないって!//」
「ふ〜んです……どうせ、あたしなんかより……レナさんの方が、魅力ですもん……」
「そんなことはないって。有香も十分、魅力的な女の子だよ」
「……お世辞なんかいりません……」
「しょうがないなあ……んじゃ、少し失礼するぞ……これでよしと。ほら、こっちを向いてみろよ」
「えっ……プロデューサーさん……?」
「おっ、よく似合うじゃないか。流石は、キュートな女の子だな」
「あ、あの……このネックレスは、一体……」
「有香がプレゼントを選んでる時に、こっそりと選んでみたんだよ。どうだ?気に入ってくれたか?」
「あたしのために……はっ、はい……とても素敵ですね……♪……ありがとうございます……//」
「ははっ、よかった。選んだ甲斐があったよ」
「……その……あ、あたしも、プロデューサーさんに渡したいものがあるんです……少し、失礼しますね……」
「ん……?これって……ネックレス……?」
「はいっ♪実は、あたしも……プロデューサーさんにこっそりと、プレゼントを選んでたんですっ……♪//」
「そうだったのか……わざわざありがとうな、有香。大切にさせてもらうよ」
「ふふっ……♪喜んでくれて、よかったです♪でもこれで……相思相愛に、なりましたね……♪//」
「相思相愛……?何のことだ……?」
------------------------------------------------
「あたしたちの、このネックレス……実は「ペアネック」なんです♪」
「ペア……あっ、本当だ!色が違うだけで、全く同じネックレスじゃないか!」
「どうやら、あたしたち……同じことを、考えてたみたいですね……♪嬉しいです……♪//」
「あっ、あぁ……確かに嬉しいけど……何だか、少し照れちゃうな……//」
「実を言うと、このネックレスにはあともう一つ、秘密があるんですよ」
「ん?まだ何かあるのか?」
「プロデューサーさんと、あたしのネックレスを合わせると……なんと……ハートの形に、なるんです……//」
「おぉ……すごいな……色々な意味で……//」
「まるで……あたしたちの関係みたいですねっ……//」
「そ、そうだな……プロデューサーとアイドル、良好な関係を築いてる俺たち見たいかもな……ははっ……」
「……違います……今のあたしたちは……普通の「男の人と女の人」……ですっ……♪」
「えっ……んんっ……!?」
チュッ……♪
「……ぷあっ……ゆ、有香っ……!?//」
「……ラブはストレート。プロデューサーさんに「一本」を決めてみちゃいました……♪//」
「い、一本……?ていうか、有香……お前っ……//」
「確かに今回は、あたしの友達に気持ちを伝えるための、プレゼント選びだと言いました」
「ですが、その……「親友」でもあるプロデューサーさんに、気持ちを伝えるためでもあったんです……//」
「気持ち……?つまり、それって……」
「師匠から……いえ……これからは、あたしはあたしなりに「アイドル道」を極めていきたいんです」
「ですので……これからも、プロデューサーさんと「二人三脚で」一緒に、歩ませてもらえませんか……?」
「……そんなこと……決まってるだろ?言うまでもなく、俺も有香と歩んで行きたい。これからもずっとな」
「でも、それは「メロウ・イエロー」も一緒だ。シンデレラの舞踏会には、みんなで行きたいんだ」
「だから、その……今の俺には、どう答えていいかわからないんだ……ごめんな……」
「……そうですか……では……えいっ♪」
ギュッ♪
「この瞬間……いえ…せめて、今だけは「あたし」のプロデューサーさんですっ♪」
「うわっ……!?ちょっ……ゆ、有香っ……!?//」
「あたし……これからも、どんな壁でも越えていけるって、自信が付きました♪だって……」
「プロデューサーさんから……たくさんの、恋色のエナジーをもらっちゃいましたからね♪押忍♪」