ポケットモンスターJ   作:ユンク

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メガウインディの描写を少し追加しました。


仲間

 今日はウインディに進化したレアに乗って颯爽と……という事はしないで欲しいと言われたので、しかたなくボールに入れて、存分に遊べるちょっとした山まで遊びに来ていた。

 

「出てこい、レア」

「グワゥ」

「背中に乗せてくれないか?」

「グゥア」

「よしよし、ありがとな」

 

 レアは俺が乗りやすいように伏せてくれた。乗っていいらしい。

 伏せてくれたのは良いんだが、それでも少し身長が足りないせいで乗りにくい。レアのふさふさな毛並みを踏みつけたくもないしなぁ。

 

「せいのっ、うわっ!」

 

 勢いをつければ乗れると思った時期が僕にもありました。

 

「いったぁ」

「ワゥ」

「もういい、どうせ汚れるんだ。家に帰ったらシャワーしてやるから」

 

 勢い余ってレアを通り越して落ちてしまった。

 心配そうにみてくるレアが別に汚れても構わないという意志表示だろうか、右手で土を掻いて左手に掛けていた。レアの汚れた手を見たら後で綺麗にすれば問題なしと思い至った。

 ということで、レアの毛に足を掛けて背に上がる。

 

「レア、痛くなかったか」

「グァ」

 

 踏みつけた時に力を入れるために踏ん張ったので痛くないか心配になったが大丈夫そうだ。そもそも、ポケモンは頑丈だからな。

 

「父さんはどうすればええねん」

「う~ん。待ってて」

「はぁ、はいはい、好きなだけ遊んで来たらええから」

「ありがと、じゃあね」

 

 車で送ってきて貰った父さんをほったらかしてレアは颯爽と駆けはじめた。

 俺が落ちないように気遣って走ってくれているんだろうけど、レアの毛を両手でがっしり掴んでないと振り落とされそうだ。

 でも、

 

「きもちいい! レア凄いな!」

「グルァ!」

 

 獣道を自動車並みのスピードで走るので次々に景色が流れてゆく。

 流石はでんせつポケモンと言われるだけの事はあるな。

 途中には、くさタイプやむしタイプのポケモンも多く見かけた。

 

「レア、止まってくれ」

 

 レアは俺の声に反応してスピードを緩めると止まる。

 そこは森の中でも少し開けているところだった。

 

「早速だけど、メガシンカ試してみようよ」

「グルゥ」

「お、やる気満々だな」

 

 レアは一吠えすると一歩前に出る。

 俺はスマホを取り出し、今現在のレアのステータスを記録しておく。

 

 レベル20 

 

 ほのおタイプ

 

 HP:76

 攻撃:61

 防御:47

 特攻:55

 特防:42

 素早さ:51

 

 性格:やんちゃ

 特性:もらいび

 

 こんな感じかな。

 母さんに作って貰った、キーストーンを入れたブレスレットを掲げる。

 

「行くぞレア! メガシンカ!」

「グルゥ、ォオーン」

 

 レアの首に掛けられたネックレスにはめたウインディナイトが輝き、メガシンカの特徴的なDNAのような文様がレアを包んだ白い光の上に浮かび上がる。

 そして、光が収まると、そこには毛量増し増しのモフモフ天国が……じゃなくてかっこいいです。

 

「グァ」

「スッゲー、モフモフ」

 

 頭からは二本の鹿の様な角が生え、口元には龍のような二本の長い髭が生えている。足や、尻尾には渦巻いたような火がゆらゆらと揺らめいていた。

 なんといっても胸元や、足、その他あらゆる毛が増量されていて、座れば堂々とした神獣の様だ。

中国の伝説にある麒麟に似ているかも。ほら、ビールとかのあれ。

 

「幸せー」

「グァ、グルゥ」

 

 あ、そうだった。ステータスを記録しないと。

 

 レベル20

 

 ほのおタイプ

 

 HP:86

 攻撃:82

 防御:67

 特攻:55

 特防:48

 素早さ:41

 

 性格:やんちゃ

 特性:しんじゅうのこころえ

 

 素早さが下がってるな……特性の『しんじゅうのこころえ』は聞いた事がないぞ。

 ええと……自分の使う物理技の優先度がプラス1される!?

 それ強すぎないか!? 物理技全部先制とれるって事だよな……攻撃も高くなってるし、厨ポケ確定じゃないか。

 でもここは現実だから数値だけで動いているゲームとは違う。つまり、物理攻撃に限って言えば素早さが圧倒的になるので敵に攻撃をさせる暇すら与えずに連続攻撃が出来るという事だ。おそろしや……

 

「お前、ヤバいな」

「グァ~」

 

 時間が来たのか、レアが自ら解いたのか、メガシンカが終了し元の姿に戻った。

 よし、帰ろう。

 

「ん?」

「グァ?」

 

 地面が揺れてる? 地震か!

 

「ィワーーク!」

「うそぉ!?」

「グァ!」

 

 直ぐ近くにイワークが飛び出してきて、その衝撃で俺は体勢を崩して尻もちを着く。そんな俺を庇うようにレアは前に立つ。

 それにしてもデカすぎる。

 

「っ!、くそ、レア、ほのおのうずだ!」

「グァ!」

 

 イワークは突然ほのおのうずに包まれて混乱しているようで、その隙を突いてレアの背に跨るとその場を逃げ出した。

 イワークのレベルが分からないし、イワークへの有効打がないレアには戦うのは厳しい……いや、『きしかいせい』があったか。

 兎に角、ほのおのうず超便利。イワークさんマジこえぇ。

 

「ちょっと、休憩……」

「グァ」

「マジ怖かった。凄く怖かった。死んだと思った」

「グァン」

「ふはっ、くすぐったい。ありがとな、レア。助かったよ」

 

 レアがいなけりゃ死んでたな。そう思えるほどの恐怖が襲った。もしレアを出していなければ、恐怖で足が竦んで、思考が停止して……。

 レアが前に立ってくれたおかげであの状況を切り抜けられたんだ。ありがとう。

 

「グァ」

「ん? まさか……」

 

 レアが振り向いた方向を凝視すると、木が倒れて土煙が上がっているのが見えた。

 怒らせてしまったようだ。

 

「仕方が無い。やるか。このままだと父さんを巻添いにしてしまうし」

「グルァ!」

 

 よし、先ずは弱点を消さなければ。

 

「レア、イワークにもえつきる」

 

 レアがもえつきるを使えば、体内にある炎が放出され、それがイワークに直撃して爆音と煙が立ち上がる。これでレアの弱点は消えた。

 

「レア、メガシンカ!」

「グルゥ、ォオーン」

 

 立派な毛並み、角、髭、その風格。そして、確かな絆が俺を安心させてくれる。勇気づけてくれる。

 

「しんそくで回り込んできしかいせい!」

「グルァ!」

 

 一瞬だった。そう、一瞬。レアが動いたことによる一陣の風に瞬きする間、その僅かな時間でレアはイワークの背後に現れ、きしかいせいを叩きこんだ。

 しかし、イワークは耐えきる。もともと物理耐久は高いうえに、きしかいせいはHPが減れば減るほど威力が上がる技だ。今のレアはHP満タンだから威力もでない。

 しかし、一撃で削りきる必要などない。

 

「しんそくで攪乱! 隙を見てきしかいせいだ!」

 

 イワークは防戦一方。遂に五回目のきしかいせいでダウンした。街で戦った時の様に逃げるのではなく気絶したのだ。

 

「やったな! よくやった! レア!」

「グルァ!」

 

 当然だという風に、メガシンカを解くと歩み寄ってくる。

 暫くレアを撫でて、褒めていた。気絶したイワークを見てどうするものかと悩むが。

 

「ゲットしようか」

「ガァ」

 

 どうやらレアも賛成してくれてるみたいだ。

 モンスターボールを取り出すと、イワークのその巨体には小さなボールをコツンと当てた。

 ボールから赤いレーザーが出るとイワークを吸い込み、数回揺れた後にカチンとボールに収まる。

 

「イワーク、ゲットだぜ!」

「グァ!」

 


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