ポケットモンスターJ   作:ユンク

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お仕事

『本日未明、茨城県筑波山にて、ポケモンの一種であるスピアーに襲われ病院に運ばれる事件がありました。命に別状はありませんでしたが、スピアーというポケモンに二回さされると即死する可能性が高いとの事です。政府は戦えるポケモンを所持している、または所持している者の同行があるうえでの入山のみを許可しています。また、全国各地の山や海、河などにもポケモンを所持していない場合は近づかないようにとの事です』

 

 スピアーはこれで何件目だろうな。害虫駆除の名目でこいつだけ排除されそうな気がするよ。

 

『次のニュースです。昨日行われました、三人組みアイドルグループ「シャイン」のライブにて、ナナミさんと、ハルカさんが新しくポケモンをゲットしたとの事でお披露目が行われました。ナナミさんはミニリュウをハルカさんはアチャモというポケモンをゲットしたそうです。リーダーであるヒカリさんはポッチャマというポケモンを既にゲットしています』

 

 原稿を読み終えると、聞いた事があるような名前に組み合わせという。いや、そのまんまだな、その三人とポケモンの映像がスタジオへと切り替わった。

 

『アチャモでしたか、可愛らしいですね』

『ほのおタイプだそうで、火を吐くそうですよ』

『それは凄いですね。ポケモンには未知の力がありますからね』

『ナナミさんのミニリュウはかわいさの中にも美しさがあって……ナナミさんにお似合いですっ!』

『あはは、皆さんはポケモンを捕まえたりされましたか?』

 

 アイドルの手持ちポケモンの話でスタジオは盛り上がっていた。

 ポケモンのゲット方法はテレビでもよくやっていて、それを見た人がどんどんポケモンを捕まえて行っている。

 捕まえ方とは、まず、自分のペットがポケモンになってしまったパターンだ。おそらく日本から原種生物は消え去って絶滅種になってしまっているとの事。その生物たちがポケモンに変わった事で、動物園や水族館は動物や魚たちがポケモンに変わり大参事。ペットとして飼っていた動物たちも何かしらのポケモンになっていた。

 ペットとして飼っていた動物たちは飼い主になついている場合、モンスターボールに入ってもらうだけ。実に簡単だ。

 一方、なつかれていないと、ポケモンになったことで知能も力も格段に上がっているので逃げ出したり、余程嫌われていたのか飼い主に攻撃するポケモンまで現れた。

 人に危害を加えるようなポケモン達は自然に返されることになっている。捕まえたところで、今までの動物の様に管理できないのが問題点だ。

 ずっとモンスターボールに入れたままなど、人の倫理感に背く行為だ。

 

 後は、バトルしてゲットする方法だが、これはポケモンを所持している人だけに進められていて、ポケモンをゲットした場合は双方の合意があればポケモンを持っていない人に渡してもいいとなっている。もちろんそこにはポケモンの意志も反映される。

 残りは大和さんがやったように、仲良くなってゲットする方法だ。これが今のところペットの二番目に多い捕獲方法だ。ハトに餌やっていた人や猫に餌をやっていた人が懐かれてゲットしている人が多い。本来なら迷惑行為にあたるものだがこの状況下ではプラスになっていた。

 

 結局は何が言いたいかというと、ポケモンの問題に対処しきれていないのが現状なのだ。早急にポケモントレーナーの育成が求められている。そのポケモントレーナー育成の第一段階として、役所や警察、消防、救急、自衛隊、民間の警備会社などなどから生徒を募り、俺が講師をする事になった。

 その数、大阪府内だけで取り敢えず五百人。それを47都道府県分。死にそう。

 最初に教えるのはまず、百人だ。その百人から筋のいい人を何人か選んで、残りの四百人に教え、さらにその中から優秀な人を選び他の県への繰り返しだ。

 俺は最初だけ頑張れば後は教え子たちが頑張ってくれるシステムなので、これくらいなら引き受けようと言ったら、早速明日からお願いしますと言われた。

 後、ポケモントレーナーには政府が免許の様なものを発行した方がいいと言うと、そちらも取り掛かるようだった。

 最近は国会でもポケットモンスターに関する法律が粗はあるがどんどんと作られているので、その中にしれっとポケモントレーナーの免許制が明記される事だろう。他にもポケモン関連の保険が出来ていたりする。

 相変わらず公務員の方々は死にそうな毎日を送っていらっしゃる。

 

 学校は全国で無期限休校となっているので、平日の今日でも市役所に向かう。

 冬休みの宿題したのになー。してるよ? 半分だけど。

 今日は父さんが会社に様子見に言っているからレアに乗って通勤だ。ちゃんと許可証を発行してもらいました。無免許ライドだめ、絶対。

 そこの君、動画を取るな。肖像権の侵害だぞ。

 

「おはようございます」

「おはようございます。なんというか、凄い光景ですね。窓から見てましたよ」

「あはは、それはどうも」

 

 霧島さんが苦笑いしながら挨拶をしてくる。

 2メートル弱の犬に乗って通勤なんてありえないからなぁ。

 

「早速ですが、今日は10時に瀬都市立総合体育館で講演してもらいます。内容は海飛君のポケモントレーナーになる上で必要だと思う知識です。昼休憩を挟んで午後四時までを予定しています」

「うん、まぁ、問題ないと思います。一週間で大方の知識を、一週間で一人ずつにポケモンをと言ったところでしょうか」

「ありがとうございます。随分と早いのですね」

「最低限度の知識だけですけどね。全部終わってからもう少し詳しい内容を話す講演会でも不定期に開催しましょう」

「助かります。車で行きますか?」

「いえ、レアに乗って行きます」

「分かりました。今回の参加者名簿がこちらです。資料はこちら。一応、国として、対処法の分かるものと分からない物を纏めて、それらの対処法も教えて頂けると助かります」

「分かりました……これ全部ですか?」

 

 随分と分厚い資料がダンボールに詰め込まれていた。

 

「今日一日でする必要はないので、今回の講座が終わるまでにして頂ければ」

「善処します」

 

 努めて笑顔を作ったが引き攣っていたかもしれない。

 


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