「次は、ポケットモンスターJのアプリについて話していきます」
紅斗君との楽しい昼食もピカチュウを愛でる休憩時間も終わり、授業を再開した。
今度はアルセウスが作ったアプリについてだ。これは話すことが多すぎて、質問を挟みながら、二回の休憩を挟みながら進めていたのだが、気付いた時には後十分となっていた。
「まだ、このアプリについて話すことはあるのですが、今日はここで一旦終わりにします」
後五分。腕時計を見て呟く。
「宿題、と言ってはなんですが、このアプリを触って疑問に思ったことや分からない事などを纏めて、明日質問して下さい。そこから明日は始めましょう」
こんな感じの締め方でいいかな。
「では、ありがとうございました」
時間の五分前に終了し、俺は控室へと戻った。
喧騒が戻って来たのを控室に行く途中に感じて、紅斗君はまだいるかなと、ふと思った。
俺がこんなにも彼の事を考えているのはある人物と似ているからだ。
控室でお茶を一口、口に含むと帰宅の列に混じっているであろう紅斗君を探した。
「あ、いたいた、紅斗君」
「海飛さん、今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
「まぁ、仕事だからね」
「僕とあまり変わらないのに凄いね」
「まぁ、成り行きというかなんというか。さっき、今度スイーツ食べに行こうって約束したでしょ? でも、連絡先を聞き忘れたなって」
「あ、ほんとだね。LINEでいい?」
「うん……よし、ありがと、また家帰ったら連絡するよ」
「うん。ふふっ」
「どうしたの?」
「あんまり、こんな風に誰かと遊びに行く約束なんてしないんだ。なんだか楽しくて」
「ご期待に添えるように、おいしいスイーツを用意しておくよ」
「ありがとう。楽しみにしてるね」
楽しそうに笑う紅斗君はシルバーのBWMを視界に入れると迎えが来たみたいと言った。そういえば警視監の息子だったな。
「じゃあね。また明日」
「また明日~」
窓を開けて車から手を振る紅斗君に手を振りかえして見送ると控室に戻った。
よくよく考えたらおいしいスイーツでも食べに行かない? とか、そのために連絡先交換しようとか、まるで俺が口説いてるみたいじゃないか。実際そうなんだろうけど。
ま、いいか。それよりもレアのおやつ買いに行かないと。
カラムッチョでも買って帰るか。
「ただいま」
「おかえり。先生をしてるんだっけ?」
「まぁ、そんなところかな」
「大変やね。それにしても海飛ちゃんの自立が早くてお母さん寂しいねんで」
「そんなこと言われてもな」
その辺のサラリーマンより稼いでるからな。今だけは。講師を引き受けたら十万上乗せされたし、日給三十万とか年収一億超える計算だからな。その辺の社長並みだよ。
でも、それもこの騒動が収まるまでだから。収まったら収まったでのんびりするもよし、政府への貸しを使って何かするもよしだな。
どっかの競技場とか使ってポケモンバトル大会を開きたいとは思ってるけど。
「レア、出てこい」
「ガゥ」
「ほら、おやつ」
「グァ!」
食いつきいいな。人間の食べるものだけどポケモンだから大丈夫だろ。あげ過ぎないようにはしないとな。
「それにしても、お前デカいから部屋が三分の一くらい埋まるんだよな。モフモフだから許すけど」
俺はカラムッチョにがっついているレアにもたれかかると枕代わりにした。
スマホを取り出すと紅斗君に家に着いた事と、いついけるかの予定を聞いておく。
早速返信が来た。どうやらいつでも空いてるらしいので講座が休みになる日曜日に行こうと伝えた。
了解のスタンプが押されたのを確認すると画面を閉じる。
「毛繕いでもしてあげようか?」
「グルゥ」
カラムッチョで汚れた口周りを拭いてやり、毛繕いを始める。
いかんせん毛量が多いので疲れるが同時に癒されるので三十分くらいしてやった。レアは気持ちよかったようで目がとろんとしている。暫く寝ておいていいぞと言うと直ぐに眠ってしまった。
「お母さん、風呂入ってくる」
「まだ沸かして無いから、少しだけ待って」
「はーい」
十分程、風呂が沸くまでの時間をテレビを見て潰すことにした。
『依然、ポケモンによる混乱は続いており、営業を再開する店や疎らながら出勤する人もいるなか、公共交通機関はバス、タクシーを除いて未だ運行できておりません。鉄道は線路上にポケモンが飛び出してくる事例が頻発している事から運休。航空便はポケモンが縄張りを作っている空域が出来てしまい、ポケモンからの攻撃を受ける事件が起きたため現在安全を考慮して欠航しているとの事。船舶に関しても同様で、縄張りを作ったポケモンに攻撃される事件が起きたため、全国各地で欠航となっています』
大変だぁ。
アニメのポケモンだと船とか飛行機とか電車とか普通に運行できていたけどあれは何故だろうな。
ポケモンの縄張りを侵さない様に考えて運航していたのだろうか。
暫くは問題が解決することはなさそうだな。
「お風呂、沸いたで」
「うん、入ってくる」
レアが小さい時なら風呂に一緒に入ったりもしたんだが、今じゃあいつだけで風呂場が埋まってしまうな。
だから最近はレアを洗うのは外でなんだよな。
「気持ちいい……」
さっさと解決していかないと、水道とか止まり出したらヤバいな。もう少し頑張らないと。
「俺、もう少し鍛えた方が良いか?」
腹筋を触ってみるが筋肉というより程よい肉が指を押し返してくる。
レアに乗って山を駆けていた時に思ったんだけど、思ったより体力も筋力も使うんだよね。
次の日は筋肉痛になってしまったからな。
今日だって、遅めに走ってもらってはいたけど結構疲れたし、ポケモンだけじゃなくてトレーナーも鍛えた方がよさそうだよな。
マサラ人になるつもりは毛頭ないが。