「それで、どうなっている?」
「見た事もない生物が街で溢れ返っています。犬や猫に似ているが全くの別種や、三十センチを超える芋虫に巨大な蜂型の生物もいます」
「それで?」
「街中がパニックです。謎の生物が車道に飛び出すなどして事故も起きており、生物の毒を貰ったと思われる人も何名か病院に運ばれています」
「新年早々、なんだというのだ……」
私は頭を抱えた。あの光景が脳裏に焼きついたまま離れようとはしない。そこにいた生物が今この日本に出現したのだ。
あれは、夢なのか?
「この生物たちは日本に現存していた生物と入れ替わるようにして現れたようなのです。私の飼っている犬が全く別の見た目に変わっていましたから。ただ、記憶は引き継がれている様です」
「そう言う事か」
「それで、ですね。何と言いますか。普通の生物ではないんですよ」
「というと?」
「電気を発生させることが出来たんです。私の飼っている犬が」
「はぁ?」
「他にも火を吐いたり、水を出したりと、凡そ地球の生物ではありえないことが出来るものもいるとの事です」
「勘弁してくれ……取り敢えず全員集めてくれ」
「はい」
胃薬を飲むと椅子に凭れかかって天を仰いだ。全く、これが夢ならさっさと覚めてくれ。
「あ、あと」
「なんです?」
「これは現実か?」
「頬を抓ってみたらどうですか? 少なくとも私が試した結果は夢ではありませんでしたよ」
苦笑して出ていく秘書の背中に溜め息を吐いて、頬を抓るが覚めない夢に苛立つしかない。
いや、もう認めよう。これは現実なんだ。
新年一発目の閣僚会議が緊急の閣僚会議とは全くめでたくないな。
「早速ですが、在来種と入れ替わるように現れたこれらの生物について現時点で分かっている事を纏めた資料を配布します」
補佐官がこの二時間程度で資料を作り上げたのだが、それだけしか時間が経っていないのだから分かっている事などたかが知れている。しかし、たった一部であろうその部分だけでも十分な話し合いになるほどの危険性が含まれていた。
「毒の成分が分からない? 生物毒であれば毒の成分は分かるんじゃないか?」
「照合した結果、不明との事です」
「となると、治療も出来ないと」
「はい」
農林水産大臣の
虫型の生物に毒は含まれているようだな。この資料を見る限り。
「次に、火、水、電気といったものを発生させることのできる生物も存在が確認されています」
「仮にその生物が暴れ出したりしたら一般市民どころか警察官も手が付けられないんじゃないのかね?」
「その可能性は高いと思われます」
「そうだな、自衛隊には災害派遣、の名目で対処にあたってもらう事になるか」
「災害ですか。総理はこれを災害と?」
「災害以外に思い浮かばんからな」
災害以外になんというのだ。この生物たちのお蔭で日本中が混乱しているのだから十分に災害だろう。それも一過性の台風や豪雨、豪雪にくらべて更に質が悪い。
防衛大臣の
「次なんですが、人型の生物も確認されているとの事です」
「人型!?」
「はい、しかし言語は持ち合わせていない様子です」
「それはやっかいだな。人型だが人ではないか……」
人は人か動物か、美しいか醜いか、有益か有害かで主に判別している。それも、人型となってくれば人々の倫理が嫌悪感を抱きにくくさせる。
つまり、暴れるような生き物だった場合に処分しにくくなるということだ。仮に処分したとしても世間の目は厳しくなる。
「次は……幽霊です」
「何を言っているんだ? 馬鹿な事は言わないでもらいたい」
「それが、幽霊に似たような生物が確認されているんです。実態は全く持って不明ですが一生命体として確立している様なのです」
「という事は何か? 神出鬼没で壁でもすり抜けて人を襲うのか?」
「壁をすり抜けているところは目撃されています」
「なんということだ……」
場が静まり返る。日本の未来が危ぶまれる事態かつその対処法に見当がつかない。当然こんな事態に対するマニュアルなどないし、想像すらしていた人物はいないだろう。と思っていたが案外そう言う人はいるもんだ。
「こういう事態の場合は情報収集が先決じゃないか? 国民には外出を控えるように会見を開く。生物学の専門家を大学や研究機関から招集して有識者会議を開き、各々に協力を求めたらどうだ?」
「
阿戸副総理は冷静だなと感心していたが……その後に「こういうの漫画とかラノベとかの展開みたいでワクワクしてしまった。この状況に似た妄想をしておいて良かった」という言葉を聞いて何とも言えなくなった。
あんたの妄想の中で何回日本は危機にさらされているんだろうな。
朝の七時に記者会見を行う事を決定し、情報を出来る限り集めたが公表できるような内容はたいしてなかった。
しかし、昼飯を掻きこんでいる最中に希望の光が見えた。
「総理、先程大阪府瀬都市役所からこの生物たちに詳しい少年を見つけた。という報告が来ました」
「少年?」
「はい、年は12歳で小学生です。我々でも把握していない様な内容が書かれていたのでもしかしたらと思い」
「直ぐに報告書を見せろ」
「はい、こちらです」
……この生物はポケットモンスター、略称をポケモンと少年は呼んでいる。アプリ、伝説、神話、種族名、技、タイプ……
「この少年を最重要人とする。最大限の待遇をし、最大限の協力を得るんだ」
「はい! 今すぐ伝えてきます」
私はこれを少年の妄想だ、などと言って一蹴するような無能ではない。
いったい何者なんだ、この少年は。しかし、これで情報がもっと集まる。