「レア、ひのこ」
「ガゥ」
あの後家の中にレアを入れて、久々の再開を喜び、容姿がガーディに似ている事から、ひのこを使ってみてもらったのだが……
「出来てしまった……」
「おい! 母さん、レアが火はいたで!」
傍にいた父さんは大慌て、レアは少し得意げな顔をしていた。
それにしてもポケモンが存在していなかった世界にいきなり現実にポケモンが現れるというのはどういう事なのだろう。
「ガゥガ」
「うん? なんだ?」
レアは思い出したように前よりもモフモフになった毛の中に首を突っ込むと、二つの石を取り出した。
「これは……う~ん、うん?まさか!」
目の前に転がる石は見たことがない筈なのに見覚えがあるものだった。
石の真ん中にはDNAの螺旋に似たものが描かれている。
もう一方の石は白が赤に挟まれた模様が入っている。
「こっちはキーストーンに、これがメガストーンか!?」
「ガゥ」
正解という風に頷くレア。
「でもこれはなんのメガストーンなんだ?赤となると、バシャーモか、リザードンか?」
「グァ」
今度は不正解の様で首を横に振る。
「ガァガァ!」
レアは前足でメガストーンを抑えると自分の前に引き寄せる。
「まさか!? ウインディナイトなのか?」
「ガァ!」
レアからは正解という返事が返ってくる。
「まじか……ウインディのメガシンカなんて聞いた事ないけど……」
「ガァン」
胸を張って出来ると言っている様だった。
とりあえず、どういう訳かキーストーンとメガストーンを手に入れることが出来たので内心凄くワクワクしていた。
憧れた、ポケモンが今、目の前にいるのだ。
「レア、おかえり。そして……モフモフさせて」
「ガゥ」
レアが気持ちよさそうに目を細めながら暫く俺にもふられていると、俺の耳にニュースのアナウンサーの声が入って来た。
「新種の生き物でしょうか!? 見たこともない鳥が空を飛んでいます!」
「うん? はぁぁぁあ!? なんでやねん!」
思わず大声を出してしまった。
なんせ、夜にもかかわらず電気を纏いながら空を飛ぶサンダーがテレビに映っていたのだ。
「なんや? 海飛」
「い、いや、なんでも」
ニュースの画面はスタジオに切り替わり、専門家にアナウンサーが見たことあるかと質問するが、見た事ないと即答。
そりゃそうだろう、この世界にポケットモンスターは存在していなかったのだから。
「みたところ、電気を纏っている様でしたが……こんな生物は見たことありませんね」
何故生物の専門家が都合よくいるのかツッコミたいが、俺だって電気を纏って飛ぶ鳥なんて見た事ねぇよ。
画面がまた切り替わり、今度は街の中を映している様だった。
「東京にこんな大きなネズミがいるのでしょうか!?」
アナウンサーは驚きながら実況をする。
カメラはしっかりと紫色のネズミ……コラッタを映していた。
そして次から次へとポケモンが映し出されていく。
ポッポ、マメパト、ヤミカラスなどなど……
「俺、ポケモンマスターになる」
「へ?」
こんな状況なら一度言ってみたかったセリフを言ってもいいだろう。
若干、現実逃避しているようにも見えるが。
父さんの間の抜けた声は無視して、俺は東京に行く事に決めた。
「父さん、俺、東京に行くことにした」
「はぁ、はぁ!?」
父さんは何を急に言い出すんだとか言っているけど、もう決めた事だ仕方ない。
そして、俺はこの世界で最初のポケモントレーナになる。
何故東京に行くのかというと総理大臣に会うためだ。何故かって? ポケモンに自衛隊が出動して銃を向けられているところなんて想像、したくもないからだ。
前世でポケモンが現実に現れたらいいなぁと妄想していたので、こうなった場合は取り敢えず政府に取り合わないと色々と手遅れなことが出て来てしまうのではと考えていた。
因みに俺がいるのはゲームで言うジョウト地方コガネシティ、大阪府である。
「レア、よろしくな」
「ガゥ」
もちろん、レアも連れて行く。
レアもやるきみたいだ。
東京まで旅をして、レアを強くして、仲間を増やす、先ずそこから……
「あ、モンスターボールがねぇぇ!!」
「ガゥ?」
「海飛!?」
レアは首を傾げ、父さんはいきなり大声を出したので驚いていた。
「ポケモンいるのにモンスターボールないとか……どうしよ」
とりあえず、夜も遅いので寝る事にして、自分の部屋に戻ったのだが、自分の机の上にモンスターボールが10個置かれていた。
「え? なんで?」
俺は机の上に置かれたモンスターボールを手に取る。
大きさはソフトボールくらいで、俺の手には少し大きい。
「たしか……ここを押せば」
俺はモンスターボールの中心、ボタンになっているところを押した。
「うお!」
すると、モンスターボールは小さくなり、ピンポン玉サイズになった。
俺は残りのボールも小さくすると、机の上に手紙が置かれているのが目に入った。
「なんだ? これ」
誰からのものか分からなかったが俺の名前が書かれていたので洋封筒を開け、手紙を読む。
手紙には、
「これは私からのこの世界を楽しむための贈り物だ。有効活用したまえ。モンスターボールやその他のアイテムなどは、そちらに出現する様にしておいたから見つけて拾うといい。そして、ポケモン図鑑などの機能が使えるアプリをネットに流しておいた、自分だけで使うもよし、他人に教えて使える様にするもよしだ。“ポケモン”と検索しスマホのストアからダウンロードできる。
因みにお前のガーディも私からの贈り物だ。魂を引き継いでおるから、犬だった頃の記憶もある。
これは私の暇つぶしだ。精々私を楽しませてくれ」
俺はその手紙を読み、思い出した。
最近よく見た夢の内容。
靄が掛かったように思い出せなかった夢が、今ハッキリと思い出した。
そう、異質な空間にアイツと俺の二人。
アイツに平行世界の日本に転生してもらうと告げられ、困惑する。
そして、その世界にポケモンを召喚すると言うのだ。
それに驚くが、同時にポケモンという存在と触れ合えることが出来ると言う事に嬉しくも思った。
今目の前にポケモンがいるのだが……。
どういう事だ、と聞いてみるが特にこれをしろという理由とかは無いようだった。
ただ、お前は不確定要素だといわれた。
そして、アイツは「私の暇つぶしの為にお前を異世界に送る。2020年がスタートだ。精々私を楽しませてくれ」と一方的に言い終えると俺をこの世界へと送ったのだ。
ポケモンという概念が存在しない世界、けれどもポケモンの存在が身近になる世界へと。
「ガゥ」
「レア、いつの間に」
いつの間にか俺の部屋へと入って来ていたレアはモンスターボールに向かって吠える。
「モンスターボール……レア、付いて来てくれるか?」
「ガゥ!」
当たり前だと言うように力強く吠える。
「ありがと、いくぞ、モンスターボール!」
「ガゥ!」
俺はモンスターボールを宙に投げる。
すると、レアはジャンプしてモンスターボールに触れる。
レアはモンスターボールに吸い込まれ、モンスターボールは床に落ちると、カチッと音を鳴らした。
「出てこい、相棒!」
「ガゥ!」
「ぐふっ」
モンスターボールからレア、俺の相棒が出てくると嬉しいのかとびかかって来て押し倒された。
本日二度目だ。
「まったく……明日からよろしくな、俺の相棒」
「ガゥガゥ!」
レアは元気よく返事をしてくれた。
明日からこいつとの冒険が始まる。
ワクワクが、ドキドキが収まらず、思わず口元が緩んでしまうが。
「レア、どいてくれ」
「ガ、ガゥ」
申し訳なさそうにしている姿がかわいかったので撫でて許してあげた。