今回、少し残酷な場面がありますので注意してください。
中国軍戦闘機三機が日本の戦闘機に撃墜か!?
そんな見出しで始まる新聞が中国国内で溢れかえっていた。日本はそれどころではないのだが、日本国内でも嗅ぎ付けた一部メディアは大々的に報じている。
これが宣戦布告と捉えられる事を止めなければならないため、外務省から中国へと今回の件を説明する者を大使館やらに派遣している。
もちろんパイロットの証言と、現場で起きた現象への説明もして、その上で日本は関わっていない事、ポケモンの可能性を提示する事になる……のだが
「信じてくれないじゃなくて、信じさせろ。こうなったらこの前の龍の動画をインターネット上に上げてもいいからどうにかしろ!」
戦争する余裕なんて日本にない。戦争する可能性が出てくる時点で、私の心の余裕がもうない。
そもそも、日本の攻撃ではないのだから。
「衛星からの通信によりますと、その、人民解放軍の東海艦隊が
「はぁ!? いくらなんでも動きが早すぎるだろう!? 昨日だぞ? 昨日の朝の事なんだぞ!?」
「落ち着いてください。こういう事を想定して常に準備していたのかもしれません。それよりも今は一刻も早く疑いを晴らさないと」
「当たり前だ。外務省の連中はチンタラしてるから、私が会見を行う」
「準備します」
補佐官は急いで出て行った。私も会見で話す内容を纏める為の会議の準備を進める。
それにしても早すぎる。何かこれ以外にも中国が動く原因があるんじゃないか?
今そんな事を考えたところで何も分かる訳ないか。とにかく、事を大きくしない様にしたいが、もう無理だろうな。
「中国軍の戦闘機を撃墜したのは日本ではありません。これは自衛隊の記録からも解る事かと思います。では、何が原因だったのかと言いますと、パイロットの証言もありますように電子機器の故障が原因です。これは中国側の不備、という訳でもないようでして、もちろん日本側が
その事に会場はどよめきに包まれる。常識が通用しない生物だからな。
これで少しは中国も躊躇ってもらえればいいのだが。証拠映像ではないが、可能性のある動画まで上げて自衛隊の記録まで出したのだからこれでも信じないというのは如何にかしてほしい。
会見終了後は、もちろん新聞紙にも載ったし、テレビにも取り上げられた。しかし、中国の新聞には載る事はなかった。
つまり、中国側は日本の弁解を聞き入れなかったという事だ。そして、戦争を仕掛けてくる可能性が依然として高いままだ。
国際社会は日本側の主張を聞いて、中立の立場を一応はとるらしい。しかし、日本の主張の荒唐無稽さが、一部で敵を作っているようでもある。アメリカはと言えば今回は助けを借りれそうにない。後方での支援はしてくれるだろうが。韓国は言わずもがな。友好国とか疑いたくなる。
2020年1月28日
戦争は始まった。僅か一週間で準備を終えた人民解放軍の東海艦隊は日本の領海へと侵入。自衛隊はそんな短期間で準備が出来る筈もなく離島の住民を避難させるのがやっとだった。
日本は無抵抗で与那国島、西表島、石垣島、宮古島を占領された。
日本側に死傷者は出なかったが、日本最西端碑は折られ、一気に領土、領海は狭まった。
これに国民は一部狂人的な反戦団体を除いて、一気に主戦派が多くなった。
しかし、憲法九条は改憲出来ておらず、いくら領土を実効支配されたからといって防衛出動は躊躇われた。というか、自衛隊の準備が全く出来ていないのだ。
2020年1月29日
しかし、この戦争は唐突に終わりを告げた。
人民解放軍、東海艦隊の艦艇と上陸部隊、その殆どが壊滅したためである。
この時の映像がどこからか流出した。
牛のトーテムポールが駆逐艦や輸送艦、最新鋭の空母をハンマーで圧壊し、鳥のトーテムポールが電気を放出することで電子機器を破壊。至る所で爆発が起きる。人魚のトーテムポールが陸の人間を海へと膨大な水を使って引き摺りこみ、少女のトーテムポールは無邪気に人間を強力な念力で引きちぎっている。
阿鼻叫喚の映像はモザイク処理もされるような有様になっており、映像を見た者は絶句した。ポケモンの残酷さが世界中に知れ渡った瞬間である。
中国では謎の四体の攻撃者を、その姿形から悪魔のトーテムポールと呼んだ。
2020年1月30日
中国は日本への宣戦布告を取り下げた。東海艦隊の実に三割が被害を受けたためである。それと、寧波、舟山が悪魔のトーテムポールに襲われ、港の機能が壊滅的な被害を被った事も大きい。それで基地機能を喪失し、援軍として出撃予定だった駆逐艦や潜水艦含め9隻が中破、もしくは大破し東海艦隊は五割の戦力を失った。
日本の戦後初の戦争はあっけなく終わりを迎えた。
この日、映像に写った悪魔のトーテムポールからも推測できるようにポケモンの危険性が指摘されたため、国連にてポケモンの調査を行う事をアメリカが発議。
2020年2月1日
国連で常任理事国が満場一致の賛成。日本は各国から調査機関を受け容れなければならなくなった。
明賀総理は頭を抱えていたという。
2020年2月6日
ポケモンを密輸しようとした中国、アメリカ、ロシアの船が原因不明の故障により航行不能に。日本へ引き返す事案が発生した。
2020年2月8日
同じく密輸に失敗したイギリスの船が……以下略。
2020年2月10日
再度密輸しようとしたアメリカの航空機が墜落。
2020年2月11日
再度密輸しようとした中国以下略。
2020年2月12日
ロシアが以下略。
2020年2月13日
原因を究明するためにアメリカから極秘で学者が来日。
密輸は諦めないらしい。
中国の地名はピン音でルビを振っていますが、日本語読みだと寧波(ねいは)、舟山(しゅうざん)、福鼎(ふくてい)となります。
福鼎がピン音だとフーディンと読むと知り、偶然とは言え驚きました。