ポケットモンスターJ   作:ユンク

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小さな相棒

 今日は自分の手持ちを増やそうと思い、家からほど近い山まで来ていた。もちろんレアに乗って移動してきたので注目の的であったが、もう慣れた。

 

「出来ればくさタイプで強い奴とかいればいいんだけど」

 

 今いる手持ちは水、地面に弱点が集中しているからくさタイプは是非欲しい所だ。くさタイプで強い奴と言えば誰だろうか。ジュカインとか? 補助技で優秀なエルフーンとキノガッサもいるけど、火力が欲しいんだよね。

 確かに眠らせれば強いし、やどりぎのタネは優秀なんだけど、眠り状態は一撃攻撃を当てると起きる確率がぐんと上がるんだよね。

 この前、講習に来ていた人でキャタピー捕まえた人がもうバタフリーに進化させいて、眠り粉の使用感を聞いてみたんだけど、一撃当てると大抵起きるらしかった。起きて暫くは鈍いので二撃当てるくらいの隙はあるみたいだけど、ゲーム見たいにはいかない。

 やどりぎのタネに関しては単純に命中率が悪いのではないかと考えている。すばやい相手にはあてにくそう。

 

「かっこいいからジュカイン欲しいんだよなぁ」

 

 まぁ、結局のところジュカインが欲しい。でも、キモリなんているのか? ヒノアラシやゼニガメを捕まえたって人がいる以上はキモリも居るんだろうけど。

 

「まぁ、何タイプでもいいから強そうなのいないかな」

 

 アルセウスが日本を舞台に選んだ以上カントーとかジョウトで分布が違うのかと思いきや、割と同じようなのを見かける。どうやら、好きな所に縄張りを作っているので、ゲームとは分布が違うようだった。ゲームはあくまでゲームと言うことか。

 

「何かいないかなー」

「ガゥー」

「お、オレンの実だ」

 

 ポケモンが現れた事で日本の植生も大きく変わっていた。きのみが生る木がそこらじゅうに生えているのだ。南国もかくやといったところか。

 おそらくダウジングマシンを使えば地面からポケモンに関係するものも出てくるのだろうが、生憎とダウジングマシンを買う余裕はない。単純にポケマイルが不足しがちだから。

 

「ガウ、ガゥ」

「どうした?」

 

 何かを見つけた様子のレアについて行けば、そこには、なんと。

 

「コリンク?」

「リゥ?」

「ガゥ」

「リィーーーー!」

「あ、ちょっと!」

「ガ、ガゥ」

 

 おい、レアさんや、脅かしてどうするよ。コリンクが逃げたじゃないか!

 せっかく見つけた電気タイプなんだぞ!

 

「おいかけるぞ!」

「ガゥ!」

 

 いそいでレアに跨ると、ちっさいくせに早いコリンクを追いかけるが、木や背の高い草でコリンクを早々に見失ってしまった。

 なんとかレアの嗅覚を頼りに探してみるけれど、相当遠くへ行ってしまったようだ。

 

「仕方がない。諦めるか」

「ガァ……」

 

 電気タイプというのは案外貴重である。今のところ、紅斗君のピカチュウと変電所にいたレアコイルとコイルくらいしか見ていない。是非ともゲットしたかったわけなんだがなぁ。

 気を取り直して他のポケモンを探し始めるも、オタチ、マダツボミ、オニスズメ、ポッポ、スバメとなかなかピンとくるものがいない。

 進化前のポケモンが殆どなのは、単純にレベルが1~5くらいで全ポケモンがスタートしたかららしい。アルセウスによれば、レベルは個体の保存をした時にだけ、リセットされない。主に伝説がこれに当たる。

 一方で、普通のポケモン達は遺伝子を保存し、そこから日本で復元したためにレベルは最初からであり、前の世界に住んでいたポケモン達ではないため記憶も無いとの事。因みに遺伝子を保存するための存在がミュウなんだとか。

 

「ちょっと疲れたな。休憩しようか」

 

 もう三時間ほど歩いた気がしたので、少し開けた場所で持ってきていた弁当をリュックから取り出す。レアのポケモンフーズはアプリのバッグから。アプリのバッグはポケモン関連のものしか預けられないし、容量も制限があった。

 

「はい、これ。待てよ」

 

 レアをお座りさせて、餌を前に置く。そして俺がよしと言おうとしたところでレアのポケモンフーズは何者かに先に食べ始められていた。

 

「あ、コリンクじゃん」

「ガゥ……」

「まぁ、まぁ、また用意するから」

 

 よほどお腹が空いていたのか、コリンクは一心不乱に食べ進め、こちらを気にも留めていなかった。レアの分を用意してやり、やっとありつけたレアは小さなコリンクを少し恨めしげに見ていた。

 どうして戻って来たのかは分からないが、コリンクを餌付けしてみるか。

 

「おーい。美味かったか?」

「リ? リィ!」

「そうかそうか、きのみはいるか?」

「リゥ!!」

「ほら、余り焦って食べるなよ」

 

 元気なコリンクはオレンの実をどんどん齧っていく。余程お腹が空いていたのか。

 

「どうして戻って来たんだ? お腹が空いてたからか?」

「リィ……」

「きのみなら一杯なってるだろ?」

「リゥリ」

「あぁ、届かないのか」

 

 懸命にジャンプして取ろうとしているものの、背の低い木であるポケモンのきのみがなる木にも届いてなかった。

 ふと、少し離れたところに目をやれば背の届かないキノココにマダツボミが木の実を取ってあげているところが見えた。

 

「なぁ、ああやってお願いしたらよかったんじゃないか?」

「リゥ……」

「なにかあったのか?」

 

 流石に、一ヶ月もずっと取れなかった訳じゃないだろうから最近仲が悪くなることでもあったのだろうか。

 

「リゥ、リゥリ、リィ」

「うーん、と空? 飛ぶ? ポケモンか?」

「リィリ、リ、リゥリゥ、リィ」

「どっかに行った? 違う? いなくなった?」

「リゥ……」

 

 どうやら空を飛べるポケモンがどっかに行ったという事を伝えようとしたみたいだな。最近ポケモンとの会話? も出来るようになって来た気がする。

 空を飛べるポケモンにきのみを取ってもらっていたが、ある日いなくなってしまったと。相当仲が良かったのか大分落ち込んでるな。それで食欲もなく今まで食べようともしなかったんだろうか。

 

「コリンク、お前の友達、だよな?」

「リィ……」

「探してやるから元気出せ、な?」

「リィ?」

「ガゥ」

「リゥ!」

 


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