激しい戦闘があった事を物語っている場所で、倒木に腰掛けながらしばしの休息を楽しんでいた。
先程の戦闘時に感じたトロピウスの勇ましさは鳴りを潜め、穏やかな表情でコリンクとレアと接している。くさタイプには穏やかなイメージがあるからなぁ。
もうしばらく楽しみたいところではあったが、日も沈みかけており、この森の奥地からは早く抜け出したかった。
「森の浅いところまでいかないか? もうそろそろ日が暮れはじめる」
「ロォ」
「リー」
「ガァ」
どうやら皆も賛成してくれたらしい。俺はレアに跨って、コリンクはトロピウスの上に乗っかった。落ちないのか心配にはなったが、度々同じことをしていたのか慣れた様子だった。
トロピウスが飛び立つと少し先を進んで先導してくれる。レアは速度を落とすこともなくついていき、行きよりも早くに帰ることが出来た。
それでも、もう夕暮れ時であり早めに家まで帰らないといけない。だけどその前に是非こいつらには仲間になって欲しいな。
「ありがとうな。おかげで早く家に帰れるよ」
「ロォ」
「リーリー」
「あのさ、お前らがよければなんだが、俺の仲間にならないか?」
「ガゥ」
モンスターボールを取り出して見せる。俺の言葉にトロピウスとコリンクは顔を見合わせて一言二言、言葉を交わすとこちらに向き直った。
「リー!」
「ロォ」
「いいの、か?」
「ロォ!」
「リ!」
どうやら俺の仲間になってくれるようで元気よく鳴くと、頭を少し下げた。俺はひこうタイプとでんきタイプのポケモンを手に入れることが出来てものすごくうれしくて、直ぐさまモンスターボールを彼らの額に押し当てた。
小さなコリンクも大きなトロピウスも等しくボールに吸い込まれていき、カチャという音と共にゲット出来た。ボールから出してやると改めてよろしくと伝えた。
明後日には東京へ行く予定だし、仲間が増えれば頼もしい限りだ。
伊丹空港はがらんどうだった。飛行機は暫く再開の見通しはたっていないし、電車もモノレールも止まって公共交通機関のアクセスはバスとタクシーくらい。バスは空港が閉鎖状態なのを理由に空港には止まらないし、タクシーで来るか自家用車で来るしかない。
そんな何もない場所に行く人なんているはずも無く、必要最低限の職員が空港のシステムや旅客機を保守管理しているだけだった。
「おはようございます。内閣府特命担当大臣の
「おはようございます。風見海飛です」
「おはようございます。風見仁です。海飛の父です」
「大まかな説明は事前に行われていますね」
「はい」
「飛行機の中ではもう少し詰めた話をするため、私が来ました」
「今日はよろしくお願いします」
「息子をよろしくお願いします」
「はい。責任を持って息子さんをお預かりいたします」
スーツをピシッと着こなした父さんと同じくらいの年の男の人。まさか大臣自ら迎えてくれるとは思わなかったな。この前にも大臣が来ていたし意外と内閣の人達はアグレッシブなのか。
父さんとは別れて、普段は通らないであろうところを通って滑走路へと出てきた。滑走路には使われていないジェット飛行機が数多く泊まっていたが、そのなかでも今向かっている先に在る4発のプロペラ飛行機は他のと比べてやけにずっしりとした印象を受ける。
「あれに乗るんですか?」
「ええ、空自に頼んでC-130を借りました。あれは頑丈ですからそう簡単に落ちるなんてことはありませんよ。それこそ翼をポキッとおられない限りは、プロペラが全部止まってもよっぽど運が悪くない限り死にませんよ」
「あ、あはは、そうならない事を祈ります」
やけに力説してくれるが、フラグを立てまくっている事に本人は気付いているのだろうか。まぁ、仮にテレビの再現ドラマにあるような飛行機事故が起きてもこれは輸送機らしいので頑丈だし、パラシュートもあるからいざという時は脱出できるらしいし、空中分解したとしてもトロピウスがいるから安心だ。ただ、空中分解となると自分の身を守るので精一杯だけど。
「でもこんな飛行機をわざわざ使っていいんですか?」
「貴方にはそれだけの価値があるということです」
「それはどうも」
「では乗りましょうか」
「ええ。……僕が記憶喪失になったらどうします?」
「聞かなくてもお判りでしょう」
「まぁ、これに乗る事は出来なくなりますね」
政府の人間なんてそんなもんだ。俺が必要なんじゃなくて俺が持っている情報が欲しいだけだからな。でも、この人の返答は少しまずかったかなぁ。俺に警戒心を植え付ける発言は控えた方がよかった。
という訳で東京で行われる会談については表面上のやりとりだけで、あまり深く入り込むのはやめよう。俺が政府にとって価値ある状態を、少なくとも俺が政府の後ろ盾が必要でなくなるまでは維持しないとな。でないと情報を吸いとるだけ吸い取られて、あとは用なしだなんてことにもなりかねない。
ま、そこまで薄情でもないだろうから政府御用達の天下り先ぐらいは融通してくれそうだな。そんなとこに行ってもロクな人間いなさそうだけど。