ポケットモンスターJ   作:ユンク

35 / 38
旅の仲間

 東京は意外と日常に戻りつつあるみたいだ。人はバスや車を使って通勤しているらしい。バスを多用して輸送網を構築しているみたいだ。ただ、そうすれば渋滞は酷い物で、今も足止めを食らっていた。

 

「なかなか進まんなー」

「仕方ないって。電車は動いてへんやから」

 

 電車は未だに運休中である。ポケモンが急に飛び出して来たり、線路上に居座ったりと、どうにもならないのが現状だ。本家はどうやって電車を運行していたのか知りたい。

 

 結局、目的地に着いたのは一時間以上してからだった。通勤時間帯をある程度避けてこれなのだから、酷い物だ。

 高級そうなレストランの前に止まると、中へと案内された。物珍しいのか、響はヒノアラシと一緒にあっちこっちと目が移っていた。俺もチラチラと視線は泳ぐが、そんなあからさまに見たりはしない。なんとなく恥ずかしい。

 個室の中に入ると、テレビでも見たことのある人が座っていた。他にも何人かいるが、よくは知らない。

 

「遠路遥々ご苦労様です。内閣総理大臣の明賀秀二です。本日はよろしくお願いします」

「風見海飛です。よろしくお願いします」

 

 席を立ってこちらに来ると、手を差し出してきた。それに応えて握手をすると、こちらも自己紹介をする。お互いによく知ってはいるが、様式美の様なものだ。

 対して、響はさっきから俺の陰に隠れてだんまりだ。まぁ、予想通りだな。大抵の小学生が大人相手に物怖じせずに話しかけていける訳がない。

 小声で響に取り敢えず自己紹介をするように促してやる。

 

「ほら、自己紹介しなよ」

「え、っと、わ、若金響、です! 十二歳! よろしくお願いします!」

「ははは、元気がよくてよろしいですね。若金君の事はお父様からよく聞いています」

 

 大きな声での自己紹介は子どもらしいというか。年齢を言ってしまうあたり、こういうのには慣れてないんだろうな。政治家の息子って事だから多少は慣れていると思っていたんだが。

 まぁ、響のお蔭で場の空気は大分緩んだように感じた。それに、どうやら響の父親と総理大臣は知り合いらしいな。この場にいるのも納得できる。

 

「積もる話もありますが、生憎とまだまだ多忙な身の為、これからの最重要事項を3つに絞って話し合いたいと思います。そして、その前に、風見さん。この度は本当にありがとうございました」

「顔を上げて下さい。対価は貰いましたし。これからについて話しましょう」

 

 俺がした事全てに対してだと思うけど、頭を下げて来た。誰に求められるでもなく自分でやり始めた事だし、それに見合う対価も貰っている事だし、こちらとしては頭を下げられても少し困る。それに、やり始めた以上最後まで責任を持ってポケモン対策の話をしていかなければな。

 

 全員が席に着くと、補佐官が説明を始めた。

 

「では、この場にお二人をお呼びした事についてですが、風見さんには助手のような役割の人がいるのではと思い、こちらに来ていただきました。事前説明が無かったこともあるのでお気づきかも知れませんが、この話はどちらでも構いません。あくまでも選択肢の内の一つとお考えください」

「助手ですか。一人、私としては心当たりがあるのですが」

 

 全国を旅してポケモンを調査して回る事と関係しているのかな。

 助手だとは思わなかったが、何かあるのかとは思っていた。でも、助手と考えるんじゃなくて、仲間と考えればどうだろうか。響みたいな明るい奴と仲間で、ポケモンと旅をするというのもロマンだな。青春だな。でも、もう一人、紅斗君という心当たりがいる。

 

「どなたでしょうか。響さんは若金議員の了承も得ているので問題ないのですが」

「そうなんですね。こちらとしても相手の両親が何と言うのかは分からないので。ただ、響がいいのなら、助手の話は引き受けますよ」

 

 飛行機の中でこれに関しても説明されたな。学校は行かなくてもいいらしいし、調査と言う名目だから毎日一定額支給されるという事だから、こんな美味い話受けない訳がない。そこに仲間も加わるとなれば、既に期待に胸を弾ませている自分がいる。

 学校に関しては、子どもには教育を受ける権利が憲法で定められているが、学校に行けだなんてのは書かれてないので問題なし。

 親は子どもに教育を受けさせる義務があるとなっている。細かく言えば、教育が受けられる環境を整える義務がある。そこはスマホに教材アプリを詰め込む事によってクリアするらしい。定期的にスマホのアプリを使って試験問題を送って来てその点数で、義務教育レベルの学力があるか判断するらしい。

 要するに勉強もきちんとしておけよという事だ。そこは前世から引き継いだ知識があるから歴史の人物名以外はどうにかなりそうだ。

 冒険しながらも勉強をしなければならないのは現代社会で生きる上での宿命だな。

 

「ええんけ!? 俺さ、ほんまはお前と冒険できるって聞いてここに来たねん!」

「そ、そうか。冒険って危険なのは分かってるのか?」

「もちろん!」

「はぁ」

 

 全く分かってなさそうな返事にため息が出る。そんな俺たちのやりとりを場にいた大人達は苦笑しながら見ていた。

 

「危険なのは風見さんもですから、こちらとしては護衛や監視の人員を配備したいところですが、既に身を守る事の出来るだけの力は持っておられる。逆に人員を送った方が足手纏いになりかねない。なので、こちらは知識の面でサポートすることにしました。衛星電話の方を用意します。遭難や電波の届かない様な山奥などで用がある場合はこれを使って下さい」

 

 衛星電話でもスマホの方でも、ある電話番号にかけると俺たちをサポートしてくれる部署に繋がるらしい。そこから専門家などを通じて知識を教えてくれると言う事みたいだ。正直、山で遭難した場合とかの対処法を細かく教えてくれるのはありがたい。

 

「子どもだけで旅をさせるなんて事が知れたらまずくはないですか?」

「そこは大丈夫です。対策として無料動画配信ツールを使った報告みたいなものを定期的にアップしていけたらと思っています」

「えっ? あえて公にするという事ですか?」

 

 意外だな。もっとこう政府の人間って裏でこそこそやりそうなイメージなのに。でも、この方法なら、ポケモンの事をもっと知ってもらえるし、将来的にバトル大会を開こうと考えている身としては願ってもない話だ。

 

「はい。風見さんの脅威になりうる事はそう起きないと思います。それに、我々も学ぶことは多い。もちろん他の方法もあるので、そちらも検討してもらいますが」

「是非それでお願いします! 響もいいよな?」

「おう!」

 

 残りの方法も説明されたがどれもパッとしないので、配信する事で決定した。編集なんかは映像関係の人達がしてくれるようで、俺たちは素材を送ればそれでいいらしい。完成した映像を見て、問題がなければアップロードなんかも全部やってくれるとのこと。

 これには、他の人だとデメリットの方が大きいように感じるだろう。顔を晒す事になるし、何より子どもである事、そして、その子どもが大きな力を持っている事。これらを危険視されたりして非難の的になるのは明らかだが、それはポケモンに対する理解が進んでいないだけで、今後何年か先を考えた時に、俺の利益になってくれる。

 いや、利益にしてみせると言った方が正しいか。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。