ポケットモンスターJ   作:ユンク

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地震、津波、○○○○○

 紀伊水道沖。和歌山県より約50km地点。

 洋上には白い生物が浮いていた。背中にある黄色の輪は後光を表す様だ。宙に佇む白き神は自身の周りに十七種類の板状のものを展開し、そのなかから幾つかの板を自身の前に並べた。

 しずくプレート、だいちのプレート、ふしぎのプレート。それらが輝き始めると、神もまた輝きを纏い始めた。

 

 一方で海にも変化があった。小さな波は消え去り、やがて視界には大きなうねりとなった壁の様な膨大な海水が押し寄せてきた。

 それを見咎めた神はプレートの一層の輝きを持って、力を奪い去った。やがて壁の様な海水は力なく重力に引っ張られて落下し、また小さな波となって四方に散っていった。

 

「記録したか?」

「バッチリっすよ。流していいっすか?」

「ああ。あまり表に出る気は無かったが、事実くらいは見せてやらんとの」

 

 どこからともなく現れた、白をベースに赤のラインが奔った体の持ち主は軽い口調で神に話しかけた。

 神の許しを受け、先程の映像がインターネットへと流れた。

 

 

 

 

 スマホが鳴り響くと、総理は慌てて車に乗ってどっかにいった。スマホの音が意味するものは地震だ。それも、総理が慌てるほどの。

 

「響、こっちに来て」

 

 普段は威勢がいいくせに、こういう時にはめっぽう弱いようで半べそかいている。しかたがないので、響を庇うように抱き寄せてやった。そばにはレアとトロピウスも寄り添うようにして守ってくれてるし、小さいながらもコリンクも守ろうとしてくれている。

 一番デカいイワークは、俺たちの周りを一周するようにとぐろを巻いている。安心感が半端じゃない。イワークは頼りになる。

 ここまでしてもらったけれども、ここは建物も遠くてひらけているからそんなに心配してないんだけどね。

 自衛隊の人達はこの厳戒態勢に驚いている様な微笑ましい物を見るような視線をチラチラと送ってくる。建物の中から避難し終えるのは流石に早く、揺れが来る前にはほぼ全員が外に出ていた。

 揺れは感じるくらいには大きいけど、建物が壊れるほどかといえばそこまでで、恐らく震度3か4くらいだと思う。取り敢えず情報をスマホで収集しなければ。

 

「和歌山県沖、南海トラフにて大きな揺れ……震度7!? マグニチュード9.3!?」

「ええっ!? 南海トラフなん!? お母さんは大丈夫かな? 皆大丈夫かな!?」

「ちょっと落ち着け、な。スマホは? LINEは使えるか?」

「う、うん」

 

 異常に慌てている人を見ると逆に冷静になるって言うのが分かった。取り敢えず俺も母さんや父さん、友達とか紅斗君の安否を確認したいな。

 

 災害時に於いて、電話は非常に繋がりにくくなる。なんせ大勢の人間が電話回線を使用するためにパンクしてしまうからだ。2011年の災害の時、殆どの人は連絡が付きにくかったと言っている。そして、その経験を活かして問題を解決しようとして今大勢の日本人が使っているアプリ、LINEが生まれた。LINEはインターネットが繋がっていれば電話も出来るしメッセージも送れる。既読機能があればメッセージを返す余裕がなくても生きている事は分かるし、GPS機能でどこにいるのかもわかる。このようにLINEは非常時にも役立つアプリで超が付く程の有能アプリな訳だ。

 

 早速、安否確認の終わった人たちが。父さん母さんは無事。クラスのグループも20人近くは既読が付いているし、紅斗君からも返信が来た。

 

「大丈夫か?」

「う、うん。お母さんは無事みたい。友達も大丈夫やって」

 

 安心したようで、大分落ちついてきた。しかし、南海トラフとなると問題なのは地震よりも津波。早くに情報を収集したかったので、無料動画配信アプリでライブ配信してくれている災害情報のチャンネルを開いた。

 

『……が予想されます。今すぐ沿岸地域にお住いの方は避難してください。到着時間は早い地域で約10分と予想されます。早めの避難をして下さい。津波高ですが、和歌山県、高知県で最大20mが予想されます。その他、三重県、愛知県、静岡県で10mが予想されています。高台や……』

 

 これはとんでもない事になった。前から南海トラフの減災へ向けて様々な事が取り組まれてきてはいたが、ここにポケモンによる混乱がまだ続いている事も考えると、相当まずい事態だ。

 だからと言って何かが出来る訳でもない。たとえ俺が強力なポケモンを何体も揃えていたとしても津波を止めるなんて出来ないだろうし、それこそ伝説でもそんな芸当は……

 

「なぁ、おい、海飛」

「なに?」

「これ、ヒノアラシを出してやろうと思ってポケモン(ジャパン)開いたら、こんな映像流れ出した」

 

 響のスマホを覗くと、そこにはアルセウスと、バカみたいにデカい水の壁。そして、それを何かの力で一瞬にして崩壊させる。もしかして。

 

「ん? ……はぁ? 何してんの?」

「止めてやったのだ。感謝しろ」

「うわっ!? なんでいるんだよ!?」

 

 いきなり後ろから声がするから振り返ってみれば、アルセウスが何故かいる。そして隣にはパルキアも。てかお前らなんなの、デカいよ、目立つよ、簡単に出てくんなよ。

 

「少し話があってな」

「そこのガキ、Jはジャパンじゃないっすよ!」

「お前は黙っておれ」

「だって、結構考え……申し訳ないっす」

 

 一瞬アルセウスから光が漏れたかと思ったら、パルキアの方が図体はデカいのに直ぐに黙った。アルセウスの方が強いってのは分かってるけど。

 というかJはジャパンじゃないのか。てっきり日本の事を指しているのだと思っていたんだけど。

 

「津波、止めてくれたのか?」

「そうだ。だが、それよりも厄介なものを止められなかった」

「ありがとう。……なに? 津波より厄介なのって」

「カイオーガだ」

 

 勘弁してくれ。

 

 

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