ポケットモンスターJ   作:ユンク

38 / 38
神託

 衝撃的な事を口走ってくれたアルセウスはこちらの反応を見ている様で、何も話そうとはしない。カイオーガを止められなかった。つまりカイオーガが出てくるという事か? それを止める手段は? 俺の手持ちなんて伝説を相手にできるだけの実力なんてない。そもそも育てきったとして止められる確証もない。

 伝説と言うのはゲーム上であればたとえ1lvのコラッタの体当たりであろうと、1ダメージは与えられる。だが、実際はカイオーガとなると近づく事すらままならなくなる。がむしゃらだって攻撃を当てることが出来ないだろうから論外だな。

 

「カイオーガって、どういうことなんだよ」

「地震によって海底洞窟が崩壊したのだ」

 

 たしか、坊の岬沖だと言っていたな。でも、あそこは震源からは離れていると思うんだが。

 

「地震も止められなかったのか?」

「止められた」

「ならどうして?」

 

 平然と言い返すアルセウスに思わず突っかかってしまった。本来なら津波を止めてくれただけでも感謝するべきなんだ。

 

「エネルギーの問題だ。地震を止めるとなると今の私では殆どの力を使う事になる。津波を止めるのはそれの百分の一で可能だ。まだこの宇宙の法則を理解して間もない。効率が悪いのだ」

「そうか。でも、カイオーガを止めなきゃ結局日本は危ないままだ」

「ああ。その為に貴様には全国を巡って伝説のポケモンを説得してもらう。カイオーガが目覚めるのは4月頃だ」

「どういう、ことだよ」

 

 伝説を説得する? まさか伝説ポケモンを従えてカイオーガと勝負をしろと? そんな事が今の手持ちで出来る筈がない。

 

「問題ない。奴らのいる場所は私が把握している。力を貸すための条件を提示してくる奴もいれば、力で捻じ伏せてみろと言う奴もいるだろうがな」

「そんなの、お前なら全員を説得できるんじゃないのか? というかお前だけでカイオーガ倒せるんじゃないのか?」

「出来るな。だが、私は全てに力を貸さない。この国の命運を握っているのはお前だ。風見海飛」

 

 一方的な通達をしたアルセウスはパルキアと共に空間の裂け目に消えていった。

 日本の命運とか、そんな御大層なものを背負いたくなんてない。だいたい伝説を説得しろったって、今戦力になるのはレアしかいない。そんな状態であと2ヶ月たらずで全国を回るなんて馬鹿げてる。でも、もしも伝説を一体でも仲間に出来たなら、その後の行動が楽になるだろうことも有りうるが。

 その最初が難しいんだろうが。

 

「海飛、海飛! なんか物凄い事するんやろ? それについてってもいい!?」

「いや、危ないし、ダメ」

「なんで! 俺も行くからな! さっきと話違うやんか!」

「さっきの話とは危険度が違う。ヘタすれば死ぬことにもなる。伝説ってのはそれだけ強いんだよ」

「それならいっそ俺もついてく! そんな危ない奴に会いに行くのになんで一人でいこうとすんねん!」

 

 何にも分かってない。危ないからこそ一人で行くんだ。誰も巻き込みたくないから、誰にも目の前で傷ついて欲しくないから。だから、俺だけで、俺とこいつらだけでいく。

 モンスターボールを握りしめると諦めの悪い響を睨みつけた。俺は今自分の事で精一杯なんだから余り絡まないでくれ。

 

「お前を巻き込みたくない」

「何言ってんねん。さっきの話聞いてる限りもう巻き込まれてるやんか」

「……危ないんだ。響は来なくていい」

「じゃぁ、海飛も行くなよ」

 

 どうして食い下がる。伝説を相手にするってことは命にかかわる事になる。映画でだってサトシが何回危険な目にあっていた事か。俺たちはマサラ人ですらないんだから、映画みたいな事が起きたら一貫の終わりだぞ。

 

「俺は行く。さっきのバトルで分かっただろ。お前は足手まといだ。着いてくるとお前は死ぬ」

「っ! 死なない! 俺もバックーも強くなる! だから俺も行く!」

 

 声を低くして脅かしてみても引く気配はない。もうこうなったら相手をせずに一人で行くしかない。コネでも何でも使って着いて来そうだから出来れば納得させたかったけど、俺自身まだ整理が着いてないし、考える為の時間が必要だ。

 

「必要なのはこれから強くなることじゃない。今強い事だ。じゃぁな」

「…………」

 

 もう背を向けたから顔は見えないけど、何も言い返せなくなったんだろう。お願いだから理解してくれ。納得してくれ。

 俺があの時アルセウスにこの世界へ来ることを告げられた日から、俺はアイツの掌の上なんだ。ポケモンがいる世界にこうして居られる代償なんだ。転がされるのは俺だけでいい、玩具にされるのは俺だけでいい。誰も俺の領域に入ってこようとするな。待ってるのはアイツの玩具になる未来だけだ。

 

 総理に話をするために車を出してもらい、官邸へと向かった。そこでアルセウスから聞かされた事、カイオーガによる考えられる被害、そして俺自身のこれからの行動。それらを報告した。それらの事について時間が欲しいと言われたが、俺は時間がないと言って直ぐにホテルへと泊まった。

 

 ポケットモンスターJのアプリ。開いてみると、新しい項目が追加されていてそこに準伝説を含めた伝説のポケモンの位置が示されていた。

 今いる関東周辺には4つのアイコンが。ファイヤー、サンダー、フリーザー。そして。

 

「ミュウツー……」

 

 いるのか、お前も。造られたのか、既に。弄ばれたのか、人間に。

 

 伝説をまず捕まえるなんてのは無理だ。なら準伝説を捕まえに行く事になるが、準伝のなかでも比較的、楽な奴を選ばないといけない。

 アルセウスは言っていた、手を貸す条件を提示してくると。それは力かもしれないと。だが、裏を返せば力以外の条件を提示される事もあるという事だ。

 

「決めた!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。