今日も今日とてお話しタイム……
「それで、これはどういう機能でしょう?」
「それはですね」
眼の下にクマを作り、満身創痍の霧島さん。あの日から4日がたち俺は変わらず情報を搾り取られていた。
もたもたしている内に死者がでてしまったり、自衛隊が出動したりとポケモンに対する感情がマイナスに振れかけているのが気がかりだ。
しかし、暗い話題だけではなく、ポケモンが人を助けたという話題やアイドルのマスコットの様になっているポケモンが居たりする。ヒメグマという見事なチョイスをしていた。進化した時が見ものだな。
「進化というものは現在確認されていないのですが、本当にそのようなことが起こるのですか?」
「ええまぁ、ダーウィンの進化論みたいな、自然に適応するため、とかじゃなくて一定のレベルに達したり特定の条件を達成すると姿かたちが大きく変わりますし、ほとんどのポケモンが強力になります」
「学者にその話をしたのですが、ありえないと言われました。しかし、そのような事が起こるのならば興味はある。是非その現場に立ち会わせてくれと」
「うーん、良いですよ。もう直ぐ進化できそうですし」
「ほんとですか!? ありがとうございます」
実は車で家から市役所までの道のりを往復していたところポケマイルがたまっていたので、どうやら徒歩である必要はなさそうだった。
一歩を一メートルの移動に換算している様で、家から市役所まで往復約6キロそれを三日分と朝の分で、二百十マイル溜まっている。それにプラスして車で適当に走ってもらった分とレアとの散歩やバトルするポケモン探しに歩いた分を足すと、四千五百マイル溜まっている。
一日大体百キロほどを車で移動してもらっているので父さんには苦労を掛けているが、燃料に規制が掛かっている今、俺の為に優先的に回してもらっているお蔭で好きなドライブが出来て満足そうだった。愛車はシルビアである。走り屋ではないが。
レアのレベルは現在15レベル。進化させるとしんそくしか覚えられないので、普通はガーディで四十五レベルまであげてフレアドライブを覚えさせたうえでウインディに進化させるのが望ましいのだが……レアは既にフレアドライブを覚えているため、進化させても問題ない。げきりんは、まぁいっか。
「電車が動いてたらなぁ」
「すみません。安全上の問題で再開できないんです。地下鉄にもポケモンが発生してしまって、全国の鉄道はマヒ状態ですね」
「うまいこと言いますね」
「はい?」
「いえ、なんでも」
マヒ状態ね。まひなおし使っても治りそうになさそうだな。
小学校は丁度冬休みだし、この調子じゃ、暫くは休校だろうけど、俺が頑張れば頑張るほど再開が早くなるというジレンマ。
「それではお昼にしましょうか」
「はーい。今日は何食べようかな」
「海飛君は重要人物ですからね。食費は下りてるので高い物食べた方がお得ですよ」
「よし、お寿司にします」
ちょっと高めの食費代ぐらいで日本全体に関わる情報が手に入るのならが安いもんか。
霧島さんに俺の情報の価値を教えて貰うと、この国の経済活動の滞りが解決される時間が一日早まるごとに100億くらいの報酬があっても政府は損しないんじゃないかといっていた。俺の情報は専門機関が調べるよりも半年は早いだろうから、ざっと見積もって一兆八千億円かな。だとよ。一兆八千億だとよ。
日本のGDPは最近600兆超えたからもっと吹っかけても大丈夫だと思うよ。と怖い事も言っていた。そんな事したら印象は悪くなるけどね、とも。
そりゃ、食費に高い物頼んで一万円かかっても、痛くもかゆくもないわな。
因みに賃金は日給二十万です。はい、日給二十万です。前世で苦労して一ヶ月働いた時よりも多いです。今世は天国だ! ありがとう神様、アルセウス様。
「うんま」
「おいしそうですね」
「ふむ。大将、同じのを後二貫」
「はいお待ち」
霧島さんの食費は下りないので遠目に横でお茶を啜っていた。それを見かねた俺は自分の食費代から霧島さんに寿司を食べてもらう事にした。
「悪いですよ」
「いえいえ、最近働き詰めらしいですし。ちょっとくらい高い物食べてもバチは当たりませんて」
「では、頂きます」
昨日までは丼ものとか安いもの、といっても少し良い奴だったが、それで済ましていたのだ。食費が下りるようになったので寿司屋に来たが、霧島さんは付添いで来ても自費なので高すぎて食べる事が出来ずにいた。さすがにそれはかわいそうなので食べてもらう。
それにしても、いくら市役所の中の食堂とは言え、寿司が食べれるという事はこの中を働いている人がいるんだよな。感謝しないと。
まぐろの中トロを口に運ぶ。うまい。大トロはあまり好きじゃないからな。あぶりカマトロを口に運ぶ。たまらん。トロサーモン。とろける。穴子。ふわふわ。いくら。ほたて……はっ! レアの食事忘れてた。
お腹いっぱいに食べた俺は会計を霧島さんに任せて急いでレアのご飯を用意し、レアをモンスターボールから出した。
「グゥア」
「ごめんなさい」
「ガゥ!」
「はい。もうしません」
「ガッ」
「どうぞ、お食べ下さい」
「ガゥ、ハッハゥ」
「レア様。お許しいただきありがとうございます」
「何をしているんですか……」
ご飯を一生懸命に食べるレアの傍で土下座している俺を見て霧島さんは呆れたような声を出していた。
俺が悪いからね。許しを乞わないと今レアが怒ると丸焦げにされるんだよ? 俺マサラ人じゃないから死んじゃう。