「カメ~」
「スバ」
「ガゥ!」
「ズバッ」
俺たちは市役所にあるベンチに座って弁当を食べていた。
そばではレアたちがポケモンフーズを食べている。
「昼からは京都府大学、畿内大学、大阪府大学、東京都大学、東北山大学、基礎生物学研究所、などなど様々な所から研究者が来ていますので、その研究者の方々に進化するところを見せて欲しいのです」
「結構、多いですね」
「大体五十名ほどと聞いています」
聞き覚えのある大学ばかりで、この国のそれこそ最前線の研究者たち相手に進化を見せるとか、既に緊張してきた。
「それと、内閣からも御一人視察に来られます」
「えぇ、聞いてないです」
「すみません。急な事でしたので」
内閣からって、つまりは大臣が来るって事だよな?
大丈夫かよ、でもそれだけ俺がしようとしている事は価値があるというか重要って事か。
弁当を平らげると、市役所にある中庭へと向かった。
そこには既に研究者であろう人たちが集まっていた。中にはザ・研究者な白衣を纏った人までいる。
そして、数人の人に囲まれている人が一人。テレビでもちらっと見たことある顔の人がいた。名前は知らんがな!
その人は俺に気付くと近づいてきた。
「初めまして。環境大臣の
「初めまして、風見海飛です」
名刺貰ったよ。大臣の名刺を貰っちゃったよ。俺は名刺なんてないけど。
「この度は情報提供に感謝します。おかげで初動を誤る事なく迅速な対処をする事が出来ました。本当にありがとうございます」
「いえ、お役に立てたのなら良かったです。ポケモンには思い入れがありまして、人もポケモンも、悲しむような事、にはなって欲しくありませんから、こちらとしても、出来る限りは、協力させていただきます」
悲しむような事と、出来る限りは、をなるべく強調しておいた。ブラックな事はしたくないし、ポケモン達を悲しませるようなことをすれば、協力はできない。
「はい、ありがとうございます」
大臣にもその辺は伝わったようだ。ただの子どもだと侮られることはなさそうだ。
「これは東京のお菓子です。お受け取りください」
「どうも……」
人の良さそうな笑みで袋を渡してくる大臣。本当に伝わったよな? 伝わった?
もしやこのお菓子にも意味があるのか!? 分からん……
単純に差し入れだな。うん。
大臣との挨拶も終わったので、今度は研究者の人達に軽く自己紹介することになっている。
「初めまして、風見海飛といいます。ポケモントレーナーをしていまして、今日はポケモンの進化を実際に、皆さんに見せたいと思います」
五十人以上を前にして言うのは緊張したけど噛むことなく完璧に言えた。
研究者さんたちは興味を持ってくれているのかざわつく。
「では、早速ですが、進化させたいと思います。レア」
「ガゥ」
レアをボールからだすと、それだけで歓声が上がる。ちょっとした演出も必要なのだ。少し気持ちがいい。
スマホをつけ、ポケットモンスターのアプリを開くと、交換しておいた『ほのおのいし』をバッグからとりだす。
研究者の人達にも見やすいように掲げてみせる。
「これが進化する為の条件を満たす石です。他にも様々な石や、レベル、環境の変化など進化への条件は様々ですが、今日は『ほのおのいし』を使って進化をさせたいと思います」
石の真ん中にはゆらゆらと揺れていると錯覚しそうな炎の紋様が秘められていた。
神秘的な石を、レアの元へと近づける。
「レア、『ほのおのいし』だ。立派になれよ」
「ガゥ」
掌に乗せた『ほのおのいし』にレアは前足をポンと置いた。僅かなレアの手の重みは眩い光に包まれた後、ずっしりと重くなった。
「グルアゥ」
「レア! おめでとう!」
立派な毛並みをそよ風になびかせる、俺よりもでかくなったレアがそこにいた。
抱きつけば、モフモフの毛が包み込んでくれて、幸せすぎる。
ちらりと研究者たちを見てみると、唖然としていた。中型犬サイズが人の身長を超える超大型犬になったんだから、そりゃ驚くよ。
俺だってニメートル近くなったレアに驚いてるのに。それにしてもウインディってこんなデカかったっけ。
「
「興味深いが……生憎と分野が違うんでの。こういうのは
「そうだがな。さっぱり見当がつかない」
「儂もじゃ。ポケモンの調査をしているが種類だけで今のところ150匹は越えておるしのぉ……まだデータとして
「そんなにいるのか!? こちらも今回の進化するところを見れたのは大きいな。研究を始めることが出来る。プラターヌ君も働かせないとな」
「フランスから来たんじゃったか。助手だったかの?」
「そんなところだ」
「それにしても……」
「研究者冥利に尽きるな」
「そうじゃな!」
俺は研究者達のざわめきを気にすることなく、モフモフを暫く堪能していた。