インフィニットオルフェンズ ラブ&コメディ創作短編集   作:モンターク

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久しぶりなので初投稿です。

なにげにここで初登場の会長さん

一部執筆協力
魔物兄貴(https://syosetu.org/?mode=user&uid=236630




まだ好きと言えていない(オルシャル)

「ゴメンね、手伝ってもらっちゃって……」

 

「気にすんな、こんくれえなんてことはねえ……!」

 

放課後の廊下、赤い夕日が差し込む中をオルガとシャルロットが歩いていた。

二人共織斑先生に頼まれたものと思われる大きな荷物を持っている

 

「でも、よかったの?ミカやイチカと特訓の約束してたんでしょ?」

 

「いいんだ、シャルが困ってるなら助けてやるもの俺の仕事だからよ……それに…」

 

「それに?」

 

「その、なんだ……好きな相手のことを助けてやるのも団長としては当然のことだから…よ……」

 

そう言ったオルガは少し照れていた

それは夕日のせいで見えているわけではなかった

 

「オルガ……」

 

「シャル……」

 

二人しかいない廊下に相手だけを映した瞳。

そこに言葉はいらない

オレンジ色の光景の中、二人の影が重なって――――

 

 

 

 

 

「―――あ、れ?」

 

シャルロットはぼーっとした頭で状況を確認する

ここはIS学園1年生寮の自室(ラウラと共用)であり、時刻は早朝6時前

 

「…………」

 

シャルロットはまだはっきりとしない意識のままだったが、二回ほどまばたきをしたところでやっと現状を把握した

 

「ゆ……め…?」

 

そう、夢であった。

あのロマンチックな光景もすべてシャルロットの頭の中で構築された夢であった。

 

「はあっ……」

 

深い深い溜め息が漏れる。

 

(……せめてもうちょっとだけ見れればよかったのに…)

 

夢の残骸に思いを馳せ、その名残を惜しむ。

だがいつもなら急速に失われている夢の内容も、不思議となかなか消えずに手元に残っていた。

そしてそれを録画した映像をふたたび見るような感覚でもう一度脳内にて再生する。

 

「……///」

 

はっ、とシャルロットは赤くなる。

意識がはっきりするにつれ、夢の内容が内容だけに恥ずかしくなってきている。

 

(が、学校の廊下で……ぼくとオルガが…///)

 

しかし、文字通り夢見心地であった。

胸に手を当てると、ドキドキと心臓の動悸が早くなっていて

いかにも上がっているのがわかる。

 

(ぼ、僕は何を考えているんだろうね……)

 

性別がもとに戻りオルガとは別の部屋になって以降、たまに今のような夢を見ることが多くなっていた。

それだけシャルロットのオルガへの想いが強いとも言える。

 

そしてシャルロットはふと隣のベッドを見てみると

 

「……ラウラは……三日月君のところかな?」

 

隣のベッドにルームメイトの姿はない。

まあそれもそのはず、「嫁」を起こしに行ったのだろう。

しばらくこういうことが続き、シャルロットはもちろん慣れていた。

 

「……じゃあ……もう一回……」

 

今のシャルロットにとっては夢の続きが重要であった

今すぐ眠りにつけば続きから見れるかもしれない。

そんな淡い期待を抱いて、シャルロットは再び眠りにつこうとまぶたを閉じる。

 

(…でもせっかくの夢なら、もっと……大胆でも僕は全然い――)

 

「――な、なにをいってるんだろうね!僕は!」

 

カーッと真っ赤になった顔を隠すように頭の上にまで布団をかぶるがそう簡単に寝ることはできず

高鳴りすぎたその心臓を抑えるのに苦心するシャルロットであった。

 

――――――

 

「はぁ………」

 

数時間後

シャルロットは一人で食堂で朝ごはんを取っていた

あれから結局眠ることができず、自分の心臓の動悸と戦っている間にいつの間にか8時になってしまっていたのである。

 

(結局……続き見ることができなかったなぁ……)

 

夕焼けに佇む二人……甘く、少し酸っぱい夢であった

その夢を再び思い出してると、ふとシャルロットの中には悩みが浮かんできた

 

(そういえば…僕……オルガに「好き」って言えてない……夢のでも現実でも…)

 

あの時――シャルロットの男装がバレた時、オルガとのあの「約束」はできた

だが双方とも直接の好意は出していない。

福音事件、ストライク事件を経ても変わらず……だ。

 

(いつか言わないといけない…よね……でも……)

 

「はぁ……」

 

その悩みにより、再びため息が漏れていた。

朝食の手も微妙に遅いままであった。

 

「……シャルロット?」

 

「ん?……ああ、ラウラ……」

 

そんな様子のシャルロットにラウラが声を掛ける

ラウラの格好は何時も通りの制服姿であった。

 

「席、良いか?」

 

「うん、良いよ……あれ?三日月君は?」

 

「ああ、嫁なら教官の手伝いで先に行ってしまった」

 

「ふーん……そうなんだ」

 

ラウラはシャルにこの場に居ない三日月のことを簡単に説明した後

シャルロットの向かい側に陣取るように座った。

 

「さて……ではいただくとしよう」

 

ラウラは朝食として頼んだソーセージが主食のランチをがっつりと食べ始めた。

なお付き物はコーンスープとパンである。

 

「もぐもぐ……うむこのヴルストはやはり安定しているな……本国で食べるものとあまり変わらない」

 

「ふーん……」

 

ラウラが機嫌よく朝食を取る中、シャルロットは依然変わらず箸が進んでいなかった。

そのシャルロットを見て、ラウラが話しかけた。

 

「どうしたのだ?シャルロット、調子が悪いのか?」

 

「あ、いや……ちょっと……ね」

 

「ほう……オルガ団長についてのことか?」

 

「…!?」

 

ラウラに言い当てられて思わず驚くシャルロット

 

「やはりか……」

 

シャルロットの悩みを言い当てててうんうんと納得するラウラ

一方のシャルロットはなんとかペースを何時も通りに戻し、再び話し始める

 

「た、確かにそうだけど……」

 

「一体どうしたのだ?」

 

「……実は……」

 

シャルロットは悩みの内容をラウラに話し始めた

ただ恥ずかしいので夢のことは伏せていた。

 

「ふむ……まだ告白もしていないということか」

 

「まあそういうこと……だよね」

 

「ああ……私のように告白してみれば良いのではないのか?」

 

「いや、それは……人前で唇奪うのはちょっと……」

 

「うむ…そうか……」

 

流石にラウラのようにいきなりキスをし「私の嫁にする!」はシャルロットにとっては恥ずかしい以上のものである

あれを真似しろというのは流石に無理であった。

 

(ははは……ん?)

 

その話の後、シャルロットはラウラに対し疑問が浮かび、質問し始めた。

 

「……そういえば、ラウラ」

 

「ん?なんだ?」

 

「ラウラってさ、どうして三日月君に惚れたの?」

 

「ミカに?どうして急にそんなことを聞くのだ?」

 

「いや、単純に気になっただけだよ。だって最初はあんなに険悪ムード漂ってたのに」

 

そう、ラウラと三日月の最初の出会いはお世辞にも良いものとは言えなかった

ラウラが転入早々一夏を引っ叩こうとした時に三日月が介入しラウラの手を掴み、止めさせたからだ

 

「まああれは……若気の至りというやつだ!うん!」

 

「若気って……まだあれから数ヶ月しか経ってないんだけどね……」

 

「と、ともかく!私がミカに惚れたのは……あのVTシステムが暴走した後のことだ。ある夢…いや精神世界とも言うのか……ともかくそこでミカからこう言われたのだ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

『ガリガリ?』

 

――三日月……オーガス

――ちょうどいい、一つお前に聞きたいことがある

 

『…何?』

 

何故お前は強くあろうとする?どうして強い?

 

『強さ?……よくわかんないな、そういうの。』

 

──それは……お前にも分からないのか?

 

『ん。……でも、俺が強いんだとしたら、理由は一つだと思う』

 

──理由、なんだ、それは。

 

『俺は立ち止まれない。オルガと、一夏たち……鉄華団と一緒に……そこに辿り着くまで。だから、俺は強くないといけない。弱かったら、途中で止まらなきゃいけなくなるから。』

 

──辛くは無いのか、その生き方は。

 

『別に、普通でしょ?』

 

──そう、か。お前は強いのだな……三日月オーガス。

 

『……ん?そうなの?』

 

──ああ。お前は間違いなく強い。

 

――下手すると教官以上かもしれないな……。

 

『ふーん……じゃあさ。ガリガリも』

 

──?なんだ?

 

『ガリガリも……俺たちと一緒に来てくれる?』

 

──良い、のか?こんな私でも……お前の家族を傷つけようとした私でも。

 

『……ついてくるの?来ないの?』

 

──ああ、わかった。なら……

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

「というふうなことがあってだ…」

 

「そんなことがあったんだ……」

 

「そして目が覚めたら横にミカが居て、私のことを家族と受け入れてくれて、なんと私の左目のことを綺麗と言ってくれたのだ…」

 

「……三日月君らしいね」

 

「今までそんなこと言われたことなかった……そこからだったか…」

 

「………なるほど、ならラウラの気持ちもよく分かるよ」

 

シャルロットもうんうんと頷いた

 

「……嫁は私のモノだ!シャルロットにはあげんぞ!」

 

「いやいや、少し気持ちはわかるってだけでそういうことじゃないから!」

 

ラウラの勘違いにシャルロットは必死に否定する。

 

「でもそれでも……いきなりキスするなんて凄いよラウラは」

 

「うむ、クラリッサからそうするべきという助言をもらったのでな!」

 

(ああ、だから……)

 

ラウラの「私の嫁」発言に端を発するどこかズレている三日月へのアプローチ

ただだからといって三日月は離さず、むしろ受け入れているのである

 

そのことに少し羨ましいとシャルロットは思っていた。

 

(いいなぁ……)

 

――――――

 

(やっぱりラウラみたいにもっと積極的にならないと駄目なのかなぁ……)

 

食事も終え、再び悩みながらもシャルロットは学園の廊下を歩いていた。

確かに三日月とラウラは他人から見れば少し引くレベルだが、確かに「絆」も固く恋仲としては申し分ない

対するオルガとシャルロットの「絆」も引けを取らないくらい固いものの、恋仲としてはまだまだであった。

 

(きちんと「好き」って伝えないと駄目だよね……うん……よし!なら!)

 

シャルロットが心の中で決意した時

 

タダヨウソラノ~ドコ~カトオク~♪

 

どこからか歌が聞こえる。

 

「ん?これって……」

 

シャルロットはもちろん気になり、

その歌が聞こえる方向に足を進めると……

 

キボウノハナ~

 

「だからよ……止まるんじゃねえぞ……」

 

オルガが廊下の真ん中で倒れ、希望の花を咲かせていた。

 

「オルガ!?」

 

すぐさまシャルロットはオルガの近くに駆け寄った

そしてオルガの体を揺さぶり、声を掛ける

 

「大丈夫!?返事をして!オルガ!」

 

「俺は…鉄華団団長……オルガ・イツカだぞぉ……こんくれえなんてこたねえ……!」

 

ぜぇぜぇと息を荒げながらも、なんとかシャルロットに自分は無事だとアピールする。

血だらけで全く無事ではないと普通なら思うが、オルガの場合はこの限りではない。

 

「よかった……でもどうして……」

 

「おっとごめんなさいね、オルガ君」

 

「ん?あなたは……」

 

近くには学園最強として名高い(はずの)生徒会長である更識楯無が居た。

ぱっぱと誇りを払いながら、二人のほうに近づく

 

「あら、シャルロットちゃん!相変わらずオルガ君とラブラブね♪」

 

「は、はあ……あの、これって……」

 

「まあ、ちょっとISで逃げてる時にぶつかっちゃってね」

 

「ISで……って」

 

(また三日月君怒らせたのかな……)

 

生徒会長の楯無と風紀委員の三日月は犬猿の仲のようなものになっており

毎回のように騒動を繰り広げたりしている。なお原因は全部楯無のほうである。

 

「オルガ君に紹介したい人が居たんだけどなぁ……この調子じゃまた別の機会ってことになりそうね」

 

「そ、そうですか……」

 

相変わらずマイペースな楯無にシャルロットは少しだけ引いている。

生徒会長権限があるとはいえ、ISを毎度のように展開している時点でかなり破天荒であることに変わりはなかったりする。

 

「あ、そうだ。シャルロットちゃんに少しだけ話ししておくわ」

 

「な、なんですか?」

 

「いや、オルガ君とシャルロットちゃんがラブラブなのはお姉さん的にも別に構わないことなんだけど……ただ」

 

「ただ?」

 

「オルガ君を狙ってる子は私が知る限りでもかなりいる……だからシャルロットちゃんも気をつけておいたほうがいいわよ?もしかしたらいつの間にかオルガ君を取られるかもよ♪」

 

いつもの軽やかな口調でシャルロットに忠告のように話す。

 

「はぁ、どうも……」

 

「じゃ、またね~♪」

 

楯無はパタパタと扇子で扇ぎながら、そのままへ2年生教室のほうへ歩いていった。

 

「…………」

 

「シャル?」

 

「あ、あ…大丈夫?」

 

「ああ、なんとかな……」

 

「災難だったね……立てる?」

 

シャルロットが手を差し出し、オルガはその手を掴みフラフラとしながらもなんとか立つ

普通なら逆なのかもしれないが、二人にとってはこれが普通であった。

 

「ぜぇぜぇ……じゃあ教室行くか…?」

 

「うん、行こ……じゃあ、手、繋いで良い?」

 

「お、おう……いいぞぉ……?」

 

シャルロットが差し出した手をオルガがしっかりと握る

シャルロットの小さく柔らかい手、オルガの大きい手、少し不釣り合いに見えるが

それが妙に合っていた。

 

(シャルの手、やっぱりあったけえ……)

 

「じゃあいくぞ!皆が……待ってんだ……!」

 

「うん!」

 

そして二人は教室へ向けて歩き出した。

 

(……まだ大丈夫……だと思うけど……でも、想いはいつか伝えないと……!でもどういうタイミングがいいんだろう……?)

 

シャルロットが再び考え事をしているとオルガがその仕草に気になって話しかけてきた

 

「どうかしたか?シャル?」

 

「あ、うん!なんでも!」

 

もちろん、そんな内容をオルガに言えるはずもなく、なんとか誤魔化す。

 

「……そっか、なら良いけどよ」

 

そしてシャルロットが悩んでることをオルガが知るよしもないまま、そのまま教室へ落ち着いた足取りで向かっていくのであった。

 

 

 




オルシャル、ミカラウに変換しないと逆に違和感出る体質になってしまった…


ほんへに関係あるかもナ

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