月軍死すべし   作:生崎

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第二夜 夕

  真っ赤に染まった空と、暗黒に染まった空。二色に挟まれたあやふやな境界線に照らし出される手水舎の骨組みを眺め、面倒臭そうに楠は手に持った箒を動かす。『デート』という名の、地上げ屋のような買い出しをなんとか終え、さっさとやることやってかぐや姫を殴るために楠が手水舎作りに従事した結果だ。

 

  木材の切り出しから組み立てまで、本来なら切り出し、乾燥、加工、組み立てと掛かる膨大な時間を、楠と萃香で一夜城を築くが如くぶっ建てる二人は、大工、材木屋泣かせだろう。

 

  報酬のつもりか、なんだかんだそれなりの酒を人里で買った霊夢からそれを受け取り萃香は居間へ。あうんも針妙丸も同様だ。外周りの仕事をほぼ楠にぶん投げた代わりか、久々に豊富な食材が揃ったとあって、霊夢が手ずから料理をするらしい。そんなわけで誰も彼もつまみ食いに奔走し、表には一人ポツンと楠だけが残された。

 

「なんと言うか、気楽なもんだよな」

 

  誰に拾われることもない言葉をこぼし箒で掃く。そうすれば、箒の穂先が落ち葉を散らす音に紛れてすぐに楠の独り言は散り去った。魑魅魍魎や修羅神仏が人と同じように普通に存在している幻想郷の中にあって、気にした様子もなく生活している霊夢は肝が据わっているのか、価値観が違うのか。楠が聞いてみたところで、「で?」と、興味なさそうな返事が返ってくるだろうことは、霊夢との付き合いがごく短い楠にも、容易に想像ができた。

 

  そんな変わった少女だからこそ、自分の隣に平然として立てるのかと楠は小さく舌を打ちながらも、薄く口角を上げる。

 

  楠は決して友人が多いとは言えない。それは、桐も椹も梓も、他の平城十傑の者たちも例に漏れずだが、コミュニケーション能力が高いだろう桐や梓をもってしても、『普通の』という言葉が冠につく友人はいなかった。生活がおよそ現代人らしくないということも大きな理由としてはあるが、結局どうにも噛み合わないのだ。表面上は他人と合わせられても、深いところでは絶対になにかが異なる。漫画や映画の世界のように、学校に通おうとも、画面を挟んで学園モノのドラマを見ているような感覚。拭えぬ異物感。自分だけ異世界にいるような空気感が、楠の精神を擦り減らす。それがどうにも堪らない。

 

  それも幻想郷(ここ)なら違うのか。と僅かな期待を覗かせた途端、ギリギリと歯を擦り合わせ、楠はその期待を粉々に磨り潰す。

 

  幻想郷とは分母と分子の数が圧倒的に異なるため比較にもならないが、神や妖怪の影が見えないほどに薄くなった外の世界でも、幻想生物は少なくとも存在し、またそれを狩る物も僅かながらにいる。

 

  陰陽師、魔術師、超能力者。不思議な技を振るう者は探せば、世界にはまだまだ居るだろう。そんな者たちと接したことが楠も少しばかりはある。だが、そんな者たちともまた楠は違うのだ。

 

  彼らとは目指す先が違う。

 

  妖怪を(はら)って終わり、ではない。敵を倒して終わり、ではない。なにかを守って終わり、でもない。もっと果てしなく終わりがない、どこにいるのか、敵がいるのか、そもそも本当に存在するのか全てがあやふやで、何のために剣を振るなんて言われても、「知るかクソ!」と逆ギレすることくらいしか楠にはできなかった。

 

  これまでは。

 

  そんな果てしないと思われていた先がようやく見えた。終わりという目的地が目と鼻の先にある。

 

  どうするべきか。どうしようか。なにをしようか。なにをするべきか。

 

  顔も分からぬなよ竹の姫君の姿を思い浮かべるだけで、楠の体に力が入っていく。ミシリと泣く箒に目を落として、楠は鋭く目を細める。

 

  手に持った箒を楠は放り捨てると、苔むした賽銭箱に立て掛けていた二本長短の刀を手に取り鞘を滑らせた。毎日毎日毛ほども面白くないのに繰り返してきた動作。そんな動作をまた今日も繰り返しながら、楠の頬は少し緩んだ。笑って刀を振るったことなど数える程しかない。それも楠がまだ小さい頃の話。歳を重ねる毎に顔は厳しいものになり、不機嫌な顔で刀を振るった。そんなだから楠の人相は悪くなったと言えるのだが、今に至っては少し心が軽い。ただ持ち切れなくなった感情を吐き出すように刀を空気に滑らせる。

 

  技の繋ぎが見ても分からない動き。蜃気楼のようにゆらゆらと両腕を振るう動作は、遠くから見れば踊っているように見えることだろう。

 

  神社の参道でしばらく揺らめく楠だったが、夜空に一番星で染めたような金色の線が流れるのを見て動きを止める。暗闇にところどころ浮き上がった白色に、参道に降りてくる間に暗闇から掘り起こしたような黒色が混じる。藁箒に跨った人影は人里で楠が一度見た。とんがり帽子を手で押さえながら少女は参道に降り立つと、驚いた顔で楠を見る。

 

「霊夢の男か! 神社にまでいるなんて驚いたぜ!」

「別にアレの男じゃねえ、アレはアイツの冗談だ」

「またまた、私は霧雨 魔理沙ってんだ。よろしくな! 霊夢の彼氏!」

「だから違うって言ってんだろうが! 耳ついてんのか!」

 

  楠は刀を鞘に戻しながら、突如降ってきた魔法使いに向けてビッと鞘の先を向ける。刀に慣れているのか恐れた様子もなく、存分に感情ののった笑顔を楠に返した。無感動、無表情な霊夢とは対照的な感情を顔に出す少女に、これはこれでめんどくさそうな奴が来たと楠は疲れた顔になる。

 

「巫女さんなら中だぜ、どうせ巫女さんに用なんだろ?」

「まあそうだったんだけど、用事たって霊夢におまえのことを聞こうと思ってただけだしな。本人がいるならそっちに聞いた方が早いだろ?」

「はぁ? 俺に用? なんでだよ」

 

  全く楠は魔理沙に対して用事はない。別に門番や用心棒を引き受けている訳でもないのだから、来訪者が来たところでどうだっていい。さっさと霊夢の方に行けとさえ思う。だが、魔理沙は動かず、手を銃の形にして楠を指差すと、「霊夢の彼氏だからだぜ」と全く楠にとってありがたくないことを言い切った。

 

「何度同じことを言わせんだ。違えってーの! ふざけろ!」

「いやでも霊夢のやつが男を神社に置くなんて今までなかったしさ。ほんとのところどうなんだ?」

「本当もクソもあるか。言っとくがなあ、俺にだって女を選ぶ権利はあんだぞ」

 

  霊夢は決して性格がすこぶる良いとは言えない。顔は美人だ。まだ成長期だろう首から下は置いておき、それは楠も認めるところ。どころか、太陽の畑の大妖も、天邪鬼(あまのじゃく)な悪童さえそれは認めるだろう。だが、その外面が覆っている中身が重要だ。楠からすれば、当たり屋を十倍は酷くした借金取りであり、幻想郷に来て早々、最初は楠が悪かったとはいえ、借金地獄に蹴り落としたあげく逃がさないというように引き摺り込んでくる少女と恋人になんてなりたくない。だいたい、幼い少女のように普通を望む楠からすれば、手から弾幕など出さず、読書や花を育てるのが趣味で将来はケーキ屋さんなんていういるかいないのかも分からない絵に描いたような女性とこそ、そういう関係になりたいと思っている。

 

「巫女さんと俺の関係はアレだ。悪代官と奴隷とかの方が正しい」

「そういうプレイか?」

「いい加減俺にも限界はあるぞおい、アンタ分かって言ってんだろ!」

 

  「あはは」と笑う魔法使いが、分かっていようともおそらくこのネタでこの先長く弄ってくることを察した楠は、二本の刀を腰に挿すと、放り投げていた箒を手に取り掃き掃除へ戻る。仕事中ですという空気を出せば少女もどこかへ行くだろうと思ってのことだったが、楠はまだ出会ったばかりの魔法少女のことを知らなさ過ぎた。それでどこかへ行くような少女なら、わざわざ霊夢が人里で『デート』などという爆弾を落とすようなことはしない。

 

  魔理沙はどこに行くこともなく、掃き掃除に勤しむフリをしている楠の頭から足先を観察するように眺め、少ししてパチリと指を弾いた。

 

「おお、そういやおまえ人里に貼られてた手配書のやつと同じ服着てるな! 外来人て話だけどおまえもそうなのか?」

「まあな、ただアレと一緒にされたくはねえ」

「ふーん、懸賞金が出るって話だったから霊夢を誘って追ってみようかなんて思ってたんだけど、なあなあ、あの指名手配犯の場所とか知らね?」

「知らねえし知りたくねえし知ってても言いたくねえ」

 

  幻想郷に来てから、楠の手に余るほど面倒ごとがゴロゴロしている。大きくは二つ。一つは言わずもがなだが、なよ竹のかぐや姫。これを避けて通ることはできない。そしてもう一つは、桐のおかげで知ることになった一人の少女。

 

  藤原妹紅。その名を楠は当然知っている。そして、今なお生きているということも勿論知っていた。だが、輝夜と同じくどこにいるのか分からなかった少女だ。有名なかぐや姫ほどではないが、耳にタコができるほどに聞いた少女の名を聞いて、楠が不機嫌になるのは当然のこと。昼間こそキレ気味にはぐらかして話に出すことは(まぬが)れたが、それで忘れてしまうことはできない。

 

  そんな二つの問題の前に博麗の巫女が仁王立ちしている。これ以上歩みを阻むくっつき虫など楠はいらない。

 

「うーん、おまえをエサにすれば出て来たりするか?」

「できるもんなら試すといい、俺も少し体を動かしてえしな。やるか?」

「……いや、やめとくわ。私の経験上こういう時にやる気がある奴っていうのは面倒な奴って決まってんだ」

 

  風見幽香然り、星熊勇儀然り。その名は出さずに魔理沙は断る。刀を持った人相の悪い男。見るからに弾幕を出すようには見えない。そうなると出てくるのは刀しかなく、肉弾戦など魔理沙の望むところではない。楠はストレスの発散ができずに残念そうに小さく舌を打ちながら刀に伸ばしていた手を箒に戻した。

 

「だったらもうさっさと行け、俺に用だってんならもう終わりだろ」

「そうなんだけど、生憎どこにも行くところがないのさ。家に帰るんじゃ今日は収穫がなさすぎだ。妖怪の山も騒がしいし、紅魔館に行こうとしたら今日はやめとけってパチュリーの奴に追い返されるしでさ。これで霊夢のとこもダメとなるといよいよ行く場所がなぁ。寺に行くのもアレだし、地底は遠いし、なんでか知ってるか?」

「知るかよ」

 

  幻想郷に来て二日。未だに楠は博麗神社と人里にしか行っていない。幻想郷の地名など言われてもどこにあるのかすら楠にはさっぱりだ。ぶっきらぼうな楠にやれやれと魔理沙はため息を零しながら、手に持った藁箒をくるりと回して肩にかける。

 

「まあいいや、それで霊夢は中にいるんだって?」

「おう、中で料理してるよ」

「霊夢のやつが⁉︎ へー、人が増えてからは珍しいな! だいたいは居候のやつにやらせるのに。良いこと聞いたぜ、からかってやらなきゃな! ありがとな霊夢の彼氏!」

「この野郎! それで押し通すつもりだな! 俺には北条 楠って名前があんだよ! ……、クソ、行っちまいやがった」

 

  聞こえていたのかいないのか。縁側まで飛ぶように魔理沙は走っていくと、縁側に跳び乗り障子を開けてすぐに中へと消えてしまう。霊夢のような少女には、萃香といい魔理沙といい本人が柳のような少女だからこそ騒がしいのが集まって来るのかと、呆れながら楠は掃除の続きを始める。すっかり刀を振る気分ではなくなってしまった。

 

  天真爛漫でありながら、またどこか少しズレている少女の登場に、いったい幻想郷にはどんな女たちが居着いているんだと頭を痛めながら、かぐや姫もあんなんなんじゃないかと嫌な想像を膨らませる。そんな楠の目の前を、パラリと白いものが通り過ぎた。いったいなんだと思うよりも早く、枯葉が木から落ちるように、もう一つ、もう一つと数を増やして落ちて来るのは何枚もの紙。それが参道を隠していくのに口端を引攣らせ、また一枚落ちて来た紙を手に取ってみる。

 

「おーい楠、霊夢がご飯できたって!」

「…………くそが

「楠〜、ご飯できたって! 楠聞いてるの?」

 

  神社の方から飛んできたお椀が、楠の腕に張り付き顔を覗き込む。そしてその動きをピタリと止めた。楠の目はギラギラと輝いて、三日月のような鋭さを得ていた。ギザギザとした歯も鋭さを増したようであり、獣のような深く不規則な呼吸を歯の隙間から繰り返している。そんな剣呑な雰囲気とは裏腹に、楠は針妙丸の頭に被ったお椀の蓋へと手を伸ばすと、その上に優しく手を置いた。

 

 

  ***

 

 

「おーい、霊夢、遊びに来たぜー!」

「なんでこの時間に来るのよ」

 

  人の家に上がるのに、ノックもなければ確認もとらず、魔理沙がずけずけと居間の中に入ってくる。萃香とあうんは慣れたように手を挙げて挨拶し、調子良く魔理沙はそれに手を挙げて返した。夕食ももう出来上がるところのようで、色々な料理の香りが居間の中を渦巻いている。大きな皿に盛られている肉じゃがにようようと魔理沙は手を伸ばすと、小さく切られているジャガイモを一つ摘み口に運ぶ。

 

「せめて手を洗いなさい手を、ってかなに勝手に食べてるのよ、お金取るわよ」

「ちょっとくらいいいじゃんか。にしても霊夢にしては豪華だな。やっぱり男ができたからか?」

「そうね」

 

  思った返し方とは違う返し方をされ、魔理沙は少しの間固まってしまう。そして少々バツ悪そうに長くクセの入っている金髪を人差し指で掻いた。指に絡まった金糸を振りほどきながら、魔理沙の顔は申し訳なさそうな色を帯びる。

 

「マジで? 表のやつはマジで違うって言ってたから、冗談だと思ったんだけど」

「なんだバレてたの。色々あしらうには便利だと思ったんだけど」

「そういうことかよ、心臓に悪いな」

「なによ、本気で信じてたの?」

「そりゃこんな生活してりゃあな。いよいよ身を固めにかかったのかと思っちまったぜ」

 

  幻想郷の中でも辺鄙な立地であり、周りに人がいなければ人も寄り付かない。日夜妖怪が入り浸っているせいで、そんな神社の巫女である霊夢の人里の評判は決して良いとは言えず、そんな霊夢の側に親しそうに男がいるなんて魔理沙も初めて見た。そんな霊夢だからこそ、ついに婿決めにでも走ったのかと思っても仕方がない。幻想郷の価値観が外の世界よりも昔に近いということもある。齢十四などで結婚していても、あまりおかしなことでもない。だが、霊夢にもちろんそんな気はなく、呆れたと言うように肩を竦める。

 

「言っとくけど、私にだって男を選ぶ権利はあるのよ」

「表のやつもそれ言ってたぜ? 意外と相性いいんじゃないか?」

「嫌よあんな結界を刀でぶった斬るようなやつ。それに貧乏みたいだし、せめて金持ちがいいわ」

「贅沢言うやつだな。にしても結界を斬るってほんとか? あいつとやらなくてよかったぜ」

 

  また神社が壊れそうな怪しげな魔理沙の発言に、明日もこき使ってやろうと楠の命運が決まる。そう決めながら炊けた白米を人数分の茶碗へと盛っていき、針妙丸に楠を呼んで来るように霊夢が伝えれば、お椀の蓋がふわふわと浮いていき外に向かって飛んで行った。

 

「いやあ、それにしても霊夢が料理なんて久々だよな。実際どうしてだ? やっぱり表のやつが原因か? いつもなら針妙丸に任せてんのに」

「あんたはどうしても男絡みにしたいわけ? だいたい針妙丸に料理を任せてるのは料理以外できそうもないからよ。掃除を頼んだ日には一日経っても終わらないし」

「まああのちっこさじゃな。それに私もおまえも他のやつだって愛だの恋だのの話は全然ないし気にはなるじゃんか。どうなんだ?」

「まああいつというか、あいつらのおかげってところかしら。久々に食材が大量に入ったから、たまには作らないと腕が鈍るからよ。深い意味はないわ」

 

  「ほー」と下衆な勘繰りを続けているらしい魔理沙の相手をするのは無駄であると結論を下し、霊夢も料理のために着ていた割烹着を脱いで土間から居間へと足を運んだ。肉じゃがにおひたしに胡麻和えに漬物と多くの料理に彩られたちゃぶ台を囲んで座る三人は、つまみ食いに精を出していたらしく、皿に盛られていた料理の山はその背を低くしていた。それを見て、霊夢の目が釣り上がる。

 

「あんたらには遠慮って言葉はないわけ? だいたい魔理沙、あんたの分はないわ」

「えー、もう少し友達には優しくしろよ」

「我が物顔して人の家でだらけるようなやつを友達なんて言いたくないわね」

「なに言ってんだ、それこそ友達ってやつだろ?」

 

  そう言いながら漬物を指で摘む魔理沙に、霊夢の眉はハの字に下がる。新しい文句が霊夢の喉をせり上がってくる中、それが飛び出すのを阻んだのは、開け放たれた居間の障子。だがその先に人影はなく、縁側の方へと向いていた四つの顔が下に下がると、人形のような小さな少女が、自分以上の大きさの紙を握りしめて立っていた。

 

「霊夢! 霊夢これ!」

 

  息を荒らげた針妙丸は、頭に乗せていたお椀の蓋もどこかに落としてきたのか、かなり焦った様子で手に持った紙を振るう。それを手に取った魔理沙は紙を眺めて顔を顰め、魔理沙からその紙を受け取った霊夢も同じように顔を顰める。

 

「楠が! 絶対瓦乗せに戻って来るからって!」

 

  針妙丸の言葉を聞き流しながら霊夢が縁側の方へと足を向ければ、秋風に吹かれた後のように、参道に紙が散乱している。どこぞの天狗がばら撒いたのは明らかであり、その内容も今霊夢の握る紙の内容と全く同じだろうことは手に取るように分かる。

 

「あんの、ばか」

 

  『月軍襲来!』

 

  そう銘打たれた文々。(ぶんぶんまる)新聞の内容は、決して嘘八白と霊夢は言い切ることができなかった。内容に目を向けなくても、まるで示し合わせたように平城十傑という竹取物語をこさえてやって来た外来人たち。世界一嫌いと言いながら、ぼろぼろの竹取物語の本を持ち。嫌だと言いながら刀を振るう。そしてかぐや姫を殴ると言いながら、結局紙切れ一枚を見て飛び出していく。そんな男の不機嫌な顔を思い出しながら、手に握った新聞を霊夢はくしゃりと握り潰す。

 

「霊夢! 楠が迷いの竹林に行って来るって!」

「……でしょうね。料理が冷めるわ、さっさと食べましょ。魔理沙、良かったわね一人分余ったわ」

「お、おう」

 

  障子を勢いよく閉めてちゃぶ台の前に霊夢は座る。その顔は無表情に見えたが、不機嫌な空気を滲ませており、魔理沙たち四人は顔を見合わせるとため息を吐き、霊夢の作った夕餉に向けて手を合わせた。

 

 

 

 


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