月軍死すべし   作:生崎

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月軍死すべし ⑧ 月夜見 弐

 夜は静かだ。

 

 静寂の中に生命は息を潜める。一足もふた足も遅く、幻想郷はいつも以上の夜の静けさを取り戻した。丸く抉れ形を失った妖怪の山、焼け爛れた霧の湖の湖畔、更地と化した迷いの竹林。残された大きな爪痕は、無限に分かれている歴史の境界に隠された幻想郷には何の影響もないとはいえ、見慣れた場所が荒れる事を甘受することは難しい。

 

 至る所で上がっていた戦闘音はすっかりなりを潜め、ようやく静かになった森の中で平城十傑の四人は影の中で顔を見合わせていた。天探女襲来から一時間。梓たち四人が夢の世界に行っていた間に月夜見が幻想郷の地を踏んだ。状況はいつの間にか最も切迫している。櫟も頭を回すが、状況を判断するピースが足りない。遠く夜空に浮かぶ月の神の影に瞳のない目を向けながら、乾く口内に舌を這わせる。

 

「月夜見が来ましたね。どうするべきか、鈴仙さんたちはまだ起きませんか」

「自力で夢を壊した僕らとは違う、いつ起きるのかまで分からん。揺すったりしてみたが効果もない。置いていくしかないだろうな。それに他の月人がどうなっているか、結界装置の箱を壊すことができているかどうか」

 

 梓の言葉に梍は強く目頭を抑える。青い唇の梍の様子に、漆は頭を掻き少し目を反らしながら梍の名を呼ぶ。

 

「どうした?」

「いや、漆先輩その……」

「言えって、なに言っても気にしねえよ仲間だろ」

 

 頬を軽く朱に染めて頬を描く漆の姿に梍は少し驚き苦笑するが、嘘のない感情の色を見て笑みを消した。櫟と梓を一瞥し、梍は「まず」と間を空けてからゆっくり口を開く。

 

「月夜見の腰に結界装置の箱が見えただに」

「……本当ですか?」

「間違いなく、それと……、月夜見の足に青紫色の痣が……藤先輩の色が見えた」

 

 梍の言葉に三人が息を飲む。月夜見と藤の交戦。それに伴う結果がどうかなど予想すれば行き着く先は一つ。まず藤が勝っていれば月夜見は既にいない。生きているか死んでいるか分からないが、月夜見は良い方に考えられるような相手でもない。膝の上で手を握り締める櫟から目を外し、梍は梓の顔を見つめる。梓は櫟を横目でチラリと見てから顎に手を置いて、考えるように指で下唇を数度撫でた。

 

「……なんにせよ、今ここにいるのは僕たち四人。月夜見に特攻をかけるわけにもいくまい。他の無事な者もどこにいるか分からない現状、こうなった場合の集合場所を決めていたか?」

「見晴らしがいいからって理由で人里だったと思うけどよ、ここの奴らにはあたしが簡易的な結界張るとして、どうする櫟?」

「……え? あ、そうですね」

「おいしっかりしろ、オメエが参謀だろうが。勝つんだろ?」

「……ええ、ええはいそうです。人里です。場が乱れた場合の集合場所。ここからなら近い、向かいましょう。結界は漆さんにお任せします」

 

 漆に頭を小突かれ、櫟は軽く頭を振った。どんな状況だろうと、櫟がするべきは勝ちに対して頭を回すこと。ここにはいない藤と菖の顔を思い浮かべながら、櫟は握り締めていた手の力を抜く。瞼の奥の空洞を開き、静かな夜の空気を吸い込んだ。冷たい秋風の中に漂う生命の鼓動の薄さに眉間に眉を寄せ、ホッと息を吐く。

 

「敵の気配はありません、行きましょう」

 

 返事もなく頷く気配を三つ感じ、梍を先頭に四人が動く。一時間前とは違う空気感に未だ頭はついて来ず、だが進むしか道はない。寝て起きれば別世界。戦いはまだ続いているが、辺りはすっかり戦闘後の荒れ果てた姿を転がしている。森の中に充満するのはただ濃い血の匂い。地に転がっている玉兎と妖怪たちを見ている分には、どちらが敵か味方かも分からない。ただどちらも腕がもげ、内臓を曝け出した死体というだけ。空気さえ紅く染まっているように見える森の中を、四人は下に落ちているものには目もくれず走り続ける。血溜まりの中にとちゃりと漆は足を落とし、小さく舌を打った。

 

「……あぁあぁ、夢に見そうだぜ。ここまでやって勝てなかったらと想うとゾッとするな」

「この光景より勝てない方が怖いだに? あと漆先輩その冗談笑えないだによ」

「私は見えませんからよく分かりませんけど、やはりこの匂いには慣れません」

「最初から分かっていたことだ。今更驚くこともない」

 

 この日のために外の世界で準備をしてきた。見えない櫟には関係なく、見え過ぎる梍は慣れている。漆は悪夢で鍛えられ、梓はこの日のために藤や菖と紛争地帯を渡り歩いた。今更血みどろの景色に足を落としても気後れはしない。

 

 だからこそ恐ろしいのは負けること、なによりもそれが恐ろしい。千三百年が無駄になる。死んだ者が無駄になる。そしておそらく次はない。それを払拭するため足を止めない。紅く濡れた葉を掻き分け、開けた場へと足を出す。マミゾウの能力で化けさせられていた偽人里は、その全てが吹き飛び何もない平野には死体たちが野晒しになっているばかり。「……誰もいねえな」と漆の呟きに三人は無言を返し、周囲に視線を散らす。

 

 平野は舞台上のように、遮るものは何もなく空から月光が降り注いでいた。地に点々としている赤い染みにぼんやりと反射して、生々しい匂いが空気を侵食している。人一倍嗅覚の鋭い櫟は鼻を擦ると、空を引き裂き畝る音に耳をそばだてた。

 

 眉間に皺を寄せる櫟に三人が首を傾げたと同時、空から大きな影が二つ、地を削り、横たわっていた死体を宙へと撒き散らしながら大きな砂煙を上げて平野に落ちる。巻き上がった砂煙を悪夢の式神が漆の一言と共に大きな腕で薙ぎ払い、埃っぽい空気に梓が咳き込む。飛んで来たものがなんであるのか、一目見れば分かる梍と見なくても分かる櫟、この光景をよく知る梓が砂煙の中に潜む五つの影に口を開くよりも早く、影の中に渦巻く異変に梍と櫟が目を見開く。

 

「紫さん!」

「櫟、それに三人も無事だったようね」

 

 砂煙が去った先、薄く笑みを浮かべる紫の肌には脂汗が浮き上がり、いつも口元を隠す扇子の姿はない。天魔に支えられその肩を掴む腕とは反対の紫の腕は肘から先が消失し、ぽたぽたと赤い雫を垂らしていた。それ以外にも全員細かな傷を体に作り、無事そうな者は一人としていない。櫟たち四人を紫が一瞥したのは一瞬のことで、すぐに舌を打つと夜空に向かって顔を上げる。

 

「総大将、八雲紫、平城十傑、上手く纏まったな。初めましてと言った方がいいだろうか?」

 

 強烈な気配もなくその場に佇み、目に入れた瞬間異様に惹きつけられる月の神。浮かべる微笑みは鋭いのに、威圧感がほとんどないことが逆に恐ろしい。歯噛みする妖怪たちと目を見開く人間たちの顔をゆっくりと見渡しながら、月夜見は服の汚れを払うと音もなく幻想郷の大地を踏む。手には少女の白い腕を持って、それを地に捨てることなく握り潰す。血に濡れた手を月夜見が振れば、一滴とつかず真っ白い月夜見の手だけがそこに残り、地に妖の血だけが落ちた。

 

「月夜見⁉︎ どこから……梍さん」

「おれも注意はしてただに、でも」

「なにがおかしい? お前たちは常に空に浮かぶ月を気にして生活しているのか? いないだろう。私の気配などというのはあってないようなものだ。さあ、やろうか」

 

 手を軽く握り込む月夜見に人妖の目が引き絞られてゆく。開始の合図もなく、終わるのは死んだ時だけだ。いの一番に足を踏み出した梓を見据え、月夜見も緩く握った手に力を込めた。振られる梓の左拳に右を合わせ、二つの衝撃に梓は目を見開いた。話には聞いていた月夜見の能力。殴った衝撃がそのまま殴った腕に返ってくる。そして月夜見に殴られた右の肩へと梓は手を伸ばし、赤く染まった学ランに触れた。

 

「……丈夫だな」

 

 驚いたのは月夜見も同じ。完全に穿ったと思った一撃が当たったと同時にズレた。梓の肩の肉をいくらか抉り抜いただけ。笑みを深め再度拳を握った月夜見の拳は振り下ろされず、その動きがぴたりと止まる。月夜見の両足に縋り付くように群がる死体たち。月軍も妖怪も関係なく、多くの亡者が月夜見に手を伸ばす。悪夢のような光景に月夜見は鼻を鳴らしながら、暗黒の瞳を輝かす男へと顔を向けた。

 

「邪眼だったか、面倒なものだ。だが私が返せないと思うか?」

 

 見返された月夜見の瞳の中で光が弾け、叫ぶ暇もなく梍は右眼を抑える。パキリッ、と硝子がヒビ割れるように、悪意を返された邪眼が飴細工のように崩れてしまう。黒い血を右の目から垂らす梍に眉を吊り上げ、漆の指揮に合わせて式神の腕が影から伸びる。神の体を鷲掴む式神の姿を月夜見はしばらく見つめて小さな息を零すと、綿飴でも毟るように簡単に式神の腕を一本千切り取った。

 

 ため息を吐く月夜見の元にあらゆるものが殺到する。風の刃、境界線、魔力、妖力、陰陽術。標的を跡形もなく轢き潰すような猛攻の中、月夜見は流星群の中の満月のように身動ぎ一つせずに佇んだまま。月夜見を中心に渦巻く異様な力の流れにそれが分かってしまう櫟と梍は固まった。月夜見自身が特異点であるかのように、ただ一人世界から外れているように見える。

 

 身の回りを回る蝿を払うように、鬱陶しいと月夜見が手を振り空間を引き裂く連撃を球状に弾いた。

 

「鬱陶しいぞ、そう(たか)ってくれるな」

 

 月夜見の瞳が陽色に輝く。月明かりが白さを増し、櫟と梍が同時に叫ぶ。「離れろ‼︎」という言葉が届いたのか、陽に焼かれて消えてしまう。光に飲まれずとも、視界と肌を照りつける熱に息も苦しい。強い陽射しから身を守るように前を手にかざし動けない人妖の前に立つ人影が二つ。ゆっくり広がる陽光を前に、大将同士目を交わし薄く笑う。

 

「立ったか梓、耐えられる自信は?」

「……さてな、今試してみよう」

「ふふっ、それは後で試せ、私も信じてやる」

「────天魔?」

「文‼︎ 着地は任せたぞ‼︎」

 

 逆巻く旋風が人妖を攫う。文の叫びに微笑みを浮かべ、迫る陽光に天魔は指を弾く。

 

「さあ、最後の挑戦だ月夜見!!!!」

 

 掻き混ぜられた視界の中、吹き飛んだ者たちを風で囲いながら、陽光に嵐の槍を突き立てる天魔の背を文は見送る。飛ぶなんて綺麗な形ではない空をかっ飛び、大地と森を削りながら無理矢理着地し停止したのを確認し、文は雑に風の膜を解いた。悔しそうに顔を歪める輝夜と梓と漆、呆然としている櫟と梍。疲労困憊の紫と慧音。それらの顔を見渡し、額に浮かんだ大粒の汗を拭い文は二つの頭脳の前に立つ。

 

「──紫さん、櫟さん、どうします? 今は貴方たちの頭脳が頼りです。……天魔様は長くは保たない。勝つためには?」

 

 文の問いに返されるのは沈黙だけ。ダラダラと止め処なく汗を垂らしながら紫は目を瞑り、櫟は唇を強く噛んだまま動かない。文は力任せに頭を掻いて、二人の前に足を出す。

 

「天魔様が……あの子が作った時間を無駄にはできない! 頭を回して! 悔しいけど、私には名案なんて浮かばない! だから!」

「文女史……、櫟」

「分かってます! さっきから考えてますけど、月夜見を倒す策がない! 知っているのと感じるのではまるで違う! あれに勝てるものなんて……」

 

 全てを染め上げる陽光。戦闘能力の最も高いだろう紫の境界線すら弾く月夜見の能力。どちらも日ノ本の頂点に君臨するに足る頂上の力。今手にある手札で勝てる見込みがあるかと言われれば、残念ながら首を横に振るしかない。紫の能力も効果はなく、漆の式神も邪眼さえ通じない。それどころか、軽傷と見える月夜見と違い、数分しか経っていないだろう戦闘でぼろぼろだ。

 

 数多の視線が自分に集中しているのを感じ、両手を強く握りしめた。櫟には戦うべき力が足りない。魔力や妖力の流れを感じられてもそれだけで、物の怪を殴り飛ばすだけの筋力が足りない。眼玉がなかろうと常人以上に物事を察するのに精一杯で、知識は詰め込めたが、戦闘技術までは間に合わなかった。だというのに折角詰め込んだ智慧も役に立たない。

 

 

(……────藤さん! 菖ちゃん!)

 

 

 いつも櫟の隣に居てくれた二人は今は居ない。生きているか死んでいるかも櫟には分からない。櫟が困った時はいつも藤は白煙を燻らせ、菖は困ったように笑ってくれた。それがないだけでこんなに自分は脆いのかと思わずにはいられない。項垂れる櫟の体が櫟の意思とは関係なく浮き上がる。櫟の襟を掴み上げ顔を上げさせるのは漆。歯を食い縛りながら、薄っすらと開いている櫟の空洞を見つめる。

 

「しっかりしろ櫟! オメエはそんな弱い女じゃねえだろ!」

「そんなこと……っ! 私には戦う術がない! 漆ちゃんとは違う!」

「ああ違うだろ! 櫟はあたしより強え! 先が見えなくて腐ってたあたしと違ってオメエと藤がいつも未来を描いてた!」

「違う……違うんです私は……っ! 藤さんがいつも……私一人じゃ進もうともしなかった……私一人じゃ」

「一人じゃねえ! 今はあたしも梓も梍も輝夜も他にもいる! なら進めんだろ! ……そうだろ? そうだって言ってくれ、あたしだってなんだってするからさ」

 

 漆の言葉に息が詰まる。漆の手から感じる熱に櫟の口から言葉が出ない。口端を歪めて浅い呼吸を繰り返す櫟の肩に乗る新たな熱。顔は見なくても誰かは分かる。素早く脈打つ鼓動と、柔らかな熱。荒い表面に深い優しさを浮かべるのは月の姫。力強い手が櫟の肩を掴む。

 

「……櫟、貴女は人間の中では最高の智慧者よ。私は信じてる。だから大丈夫、貴方なら大丈夫よ。貴女も漆も梓も梍も、後六人も最高の友人たちが一緒なんだから」

「でも……、でも私…………、月夜見に打てる手がない」

 

 漆に輝夜が熱を分けてくれる。火が灯ったところで燃やせるものが何もない。負けしかない道を親しい者に歩ませるわけにもいかない。強く握りしめた櫟の手から血が滴る。もう無理だと言葉が胸の内から迫り上がるのを意志で抑え込む中で、漏れ出そうになった言葉を茂みの揺れと落ち葉を踏む音が遮った。

 

「手ならあるわ‼︎」

 

 月夜見かと警戒する中で茂みから出てきたのは短い青髪。焼き切れた短髪を揺らしながら、不敵な天人がぼろぼろの体を引き摺って姿を現わす。背には意識のない大輪を背負い、輝夜たちの姿を見ると前のめりにどしゃりと倒れた。

 

「て、天子さん⁉︎ いったい何が」

「あぁ……うるさいわね天狗、ああもう、……さすがに限界だわ」

「……それより天子、手ならあると言ってたけれど」

 

 僅かに希望に紫の顔が上がる。青白い紫の顔を見上げながら天子は「あぁ」と短くこぼし、背に乗る幽香が重いのでごろりと仰向けに転がり短くなった髪を弄る。

 

「……月夜見が天照の陽光を反射してる時は他のものを反射できない。藤が気づいた。貴方たちに伝えろって」

「藤さんが! 藤さんは……」

 

 黙った天子に櫟の口から空気の塊がごぽりと漏れる。震える指先を強く掴み、櫟は青くなった唇を一度舐めた。頭の中で浮かんでは消える思い出を小さく頭を振って片隅へと追いやり、櫟は漆と輝夜に与えられた熱を集めて心のうちに火を灯す。薄い白煙を立ち上らせるように、櫟はゆらりと立ち上がった。

 

「……────紫さん、あと能力はどのくらい使えますか?」

「……一回か二回がいいところね」

 

 幻想郷の隠蔽、豊姫の能力の妨害、二度にわたる月夜見との戦闘。想像以上に消耗している紫に櫟は小さく頷き瞼を開ける。

 

「櫟、どうするの?」

「ええ輝夜さん、考えはまだ纏まりませんが。天照の威光を反射している時は攻撃が通るとはいえ、近付いた時の熱だけで脅威です。容易く近づくこともできなくとも、まずそれを使わせなければなりません。陽光の中では紫さんの能力さえ歪み上手く転移できないとなれば……、天照の威光さえ抜けられる可能性がある人間が候補で二人」

 

 櫟の言葉を受けて誰もが思い浮かべる相手は平城十傑と幻想郷の住民の中で一人づつ。博麗霊夢と北条楠。世界から浮く少女と世界を擦り抜ける少年。術や能力だけではなく、性質とさえ言えるほどに魂に刻み込まれた形。世界から浮く、無限分の一の確立を確実に引き当て壁を抜けるなど常識から外れている。神に届くとすればその二人以外ありえない。梓は楠の姿を。紫は霊夢の姿を強く想い描く。「生きてますかね?」という文の言葉に、

 

「霊夢なら大丈夫でしょう」「楠なら大丈夫だろう」

 

 と二つの言葉が重なった。どちらにせよ、信じるしかないと櫟も相槌を返し、どうやって二人と合流するか考える。

 

「ただ二人の場所が……」

「それは私と櫟ならどうにかなるかもしれないわ。櫟の空間把握能力で突き止め私がスキマで集める。それがラストチャンスでしょうね」

「それをするなら時間が必要です。幻想郷全体に触覚を伸ばすとなると時間が掛かる」

「……櫟先輩、その時間なさそうだによ」

 

 ポツリと零した梍に視線が集中する。残った左眼が向く先は人里の方角。森を抜ける風の音を聞いて文も唇を弱く噛み少しの間目を閉じた。それらを見回し腰を上げるのは梓。ポケットから取り出した鏃を指で軽く回してから強く握り込む。

 

「僕が時間を稼ごう。君たちは行け」

「梓さんそれは!」

「文女史、この中なら僕が一番時間を稼げる。漆と梍はいざという時二人の護衛をしてくれ。総大将と賢者を月夜見は必ず追うはずだからな。輝夜様は紫さんを運んでくれ。文女史は」

「私は残りますよ、ファンですからね」

「いや、それは……」

「私もいいかい? 間に合ったみたいだ」

「ほんとほんと、運がいいね」

 

 茂みの奥から角が伸びる紅い一角と歪な三日月。笑う鬼を二匹見て、梓は大きく笑い声を上げた。足止めどころか一矢報いるぐらい楽そうだと、梓は目尻に溜まった雫を指で弾いた。

 

「……鬼と天狗が共とは心強い。櫟、漆、梍、調停役の命だ。行け」

「梓先輩こんな時ばかりずるいだによ……」

「梓……」

「輝夜様、僕はまだ夢を追っていたい。だから死ぬ気はないですよ」

「あの、盛り上がってるところ悪いけど私と幽香はどうすればいいわけ?」

 

 仰向けに転がっている天子に視線が集中し、天子は苦い顔を返した。呆れて笑った萃香が髪を千切り分身体を飛ばし、天子と幽香、慧音を持ち上げると運んでゆく。拳を突き上げ親指を立てる笑顔の天子を見送って、梓たちは背を向けた。手を上げて去って行く四人の背を見つめ、残りの者も反対側へと足を動かす。

 

 踏み砕く小枝の音に耳を傾けながら、梓は動かす足を止めない。削られた肩口の傷に指を這わせ、ホッと力なく息を吐く。これで最後と思えば、強張る体から力が抜ける。このためにこれまで生きてきた。ここで終わった方がいいのか、それとも……。この戦いが終わった後のことなど考えたところで答えは出ない。不安を拭い去るために、ただ今に没頭しようと拳を固く握るそんな梓の肩を一角鬼が軽く小突き、紅い盃を目の前に差し出した。

 

「どうだい、気付けに一口」

「こんな時に酒盛りか、それにしてもよく僕らの居場所が分かったな」

「萃香が上手く探してくれてね、それにこんな時だからこそ飲まないとね」

「そうそ、ぐいっといきなって」

 

 渡された盃の中にどばどばと萃香が瓢箪の酒を注ぐ。酒の水面に揺れる満月をしばらく見つめ、梓は無言でぐいっと盃を傾ける。鬼が喜んだのも束の間、勢いよく傾けた割に一口だけ啜り、残りを隣の文へと盃ごと手渡した。苦笑しながら受け取った残りを文が一口で飲み干してしまい、酒に強い女傑たちに梓は肩を竦めるしかない。

 

「ああやはりダメだな、酒は毒とは違う捧げ物、僕の体は受け入れ過ぎる」

「そういう体質なんですか、ここに来て新たな発見ですね」

「まあそんなところだ。さて、無闇矢鱈と暴れてもろくに時間は稼げまい。そこで、文女史と萃香君には兎に角月夜見を苛つかせて欲しい」

「萃香と文屋だけ? 私はどうすんだい?」

「勇儀には頼みたい事がある。いいか「そんなにゆっくり作戦会議をしていていいのか? それも酒を飲みながらとは、私も一杯貰えるのだろうかね?」」

 

 梓の話を遮って、木々の間に月が揺れる。枝の上に腰掛けて悠々と地上の者を見下ろす月の神には目立った外傷などあるはずもなく、その変わらぬ姿に文は小さく眉を吊り上げた。天魔を相手に無傷。分かっていた事とはいえ、気にならないかどうかは別だ。「飲み比べでもやりますか?」と険しい顔で言い放つ文に、冗談はよせと月夜見は顔の前で手を振るった。

 

「お前たちは足止め役だろう? そんなことで時間を潰したくはないな」

「分かっていて僕たちのところへ来たのか?」

「お前たちは神の力を借りずに戦っている。その意を汲んでやろうというだけだ。お前たちの策も力も真正面から潰してやろう、無力を知るといい」

「そりゃお優しいことだね」

 

 神とは傲慢なものであるが、それを許容する道理はない。鼻を鳴らす勇儀には呆れたような顔を送り、月夜見は梓へと顔を戻した。「それで負けることになってもか?」と聞く梓に、「勝ってから言え」と何度目かも分からぬ言葉を月夜見は並べる。そう言い浮かべた月夜見の笑みが不意に消えた。月夜見の目の前にぶら下がった小さく歪な逆さ三日月。にんまり笑った小さな鬼が、小さな拳で月夜見の頭蓋をノックする。

 

「詰まってる?」

「──ッ‼︎」

 

 小さな鬼を素早く握り、躊躇することなく月夜見は握り潰す。赤く弾けながら薄い霧を上げ消えた小さな鬼が、一人また一人と月夜見に張り付き拳で叩く。飴に集る蟻のようにわらわらと際限なく湧き出る小さな鬼は潰しても潰しても絶対数は変わらない。反射し遠くへ弾いても、文の風が小さな鬼を神の元へと舞い戻す。小さな百鬼夜行の姿に、流石に梓も口端が引き攣った。

 

「あれは鬱陶しそうだな」

「全くだね、で? 月夜見を苛つかせてどうする?」

「人里でもそうだったが、月夜見の力はどちらかと言えば防御に特化している。ああやって群がられた時に一掃できる技が月夜見にはない。だから」

「天照の威光が出るわけか」

 

 勇儀が言うが早いか、月夜見の瞳が白く瞬き始める。目を見開く数十の鬼の姿に梓が叫べば、文の風が萃香を散らす。月の神を中心に球状に膨れ上がった陽光を睨み、梓は急いで勇儀の隣に立つ。

 

「今だ! 僕を投げろ勇儀‼︎」

「投げっ、なに⁉︎」

「早く投げろ‼︎ それしかあれを突き破る手がない!」

 

 梓の目を覗き込み、勇儀も静かに覚悟を決める。梓の肩に力強く腕を回し、鬼が柔らかく微笑んだ。

 

「もっと一緒に喧嘩したかったね梓、できれば殴り合いで」

「またやろう勇儀、頼む」

「ああ行ってこい! 梓‼︎」

 

 ぐるりと踊るように回った勇儀の手から、絶対に朽ちぬ矢を放つ。怪力乱心の剛腕に射出され、風の壁を強引に突き破りながら、音の消えた世界で梓は静かに鏃を握る。白く輝く光は柔らかなシーツのように見えても、その内に詰まった力は絶大だ。呼吸をする暇もなく肌を焼く陽熱の中に梓は飛び込んだ。

 

 全身をじわじわと染め上げてくる痛みに奥歯を噛む。なまじ体が頑丈なお陰で一瞬では燃え尽きない。梓だけが感じる灼熱地獄。逃げたくても方向転換はできず、ただ前へとかっ飛ぶのみ。自分の意志とは関係なくただ進むような状況が、自分の人生と同じようだと痛みの中でさえ梓は小さく笑った。生まれながらに決まっていた調停役。なにも成せないと思っていたのに、今月の神を目の前にこんなところにいる。

 

 諦めなければ辿り着ける。

 

 どれだけ歩みが遅くても、梓の隣に仲間が居てくれた。

 

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 陽光の先に影が見えた。

 

 爛れた手を握り締め、勇儀の力を腕に乗せるように、ただ一撃に全てを乗せる。

 

「──届けぇぇぇぇええ!!!!」

「梓ッ⁉︎」

 

 見開かれた神の姿に笑いながら、梓は腕を振り抜いた。

 

 天照の威光を突き破って来た人間。

 

 腕も足も至る所が焼け爛れ白い煙を上げている。

 

 それでもなお笑い腕を振るう人間に、思考が追いつかず月夜見の動きが僅かに止まった。梓の鏃が月夜見の胸に突き立てられる。深々と沈み込もうと動く鏃は、赤い線を引きながら、熱で溶け月夜見の上でずるりと滑る。

 

 ──パキリッ。

 

 鏃がひび割れ、月夜見の右肩の上で砕け散った。勢いは死に、宙にふわりと投げ出された梓に歯噛みし、陽光の残熱に痺れる腕を月夜見が振り被る中、空を影が横切り人を攫った。

 

「梓さん!」

 

 焼け焦げた肉体に触れる文の手が、熱にやられ炙られてゆく。それでも手を離さずに、意識を手放した梓の重さに高度を落として行く中、上から神が飛来した。笑い声を上げながら怒った顔を浮かべる月の神を瞳に写し、瞳孔の開いた文の下から新たな影が二つ伸びる。

 

「よく掴んだ文屋‼︎」

「鬼共が! 人との闘争に水を差すか!」

 

 月の神が振り払う腕に鬼と天狗が牙を剥き、向けた力をそのまま返され、四つの影が固まりとなって吹き飛んだ。大地を削り遥か遠くへ、弱まってゆく鼓動をどこにいようと感じられるのはただ一人。弱いながらもまだ動いている四つの鼓動に櫟は手を握り締めながら、滴る汗を拭うことなく、目の空洞に幻想郷の大気を吸い込み続ける。

 

「櫟……」

「──大丈夫です、輝夜さん。なんでもないんです……なんでも」

「大丈夫だから、言って」

 

 汗と共に瞳のない目から櫟は雫を零し続ける。拭うことなくポタポタと、落ちる水滴を震わせながら幻想郷に触覚を伸ばす中で、櫟がどうしても手に取れないものがある。

 

「藤さんの鼓動を感じない……、菖ちゃんのも、桐さんも、椹さんも、菫さんも……」

「そう……そうっ」

 

 幻想郷の中から消えた光。五人の友人がどこにも居ない。手を握り締めたところで何か掴めるわけでもない。輝夜の握り締めた手から血が零れるのを感じながら、櫟は顔を上げ触覚を伸ばし続ける。虚空を見上げ、目元を払い、櫟は漆と梍の名前を呼ぶ。それに合わせて立ち上がった漆と梍の見つめる空に揺れる白い影。上半身に斜めに走った赤い線を見て、漆と梍は月夜見を鼻で笑った。

 

「さすがだぜ大将」

「ああ、最高の先輩だにな」

「──ああ、藤といい梓といい、惜しい人間たちだ。あんな者たちばかりが敵だ。天照姉様を敬い、死ななくてもいい戦士が向かってくる。お前たちもなのだろう? 漆、梍」

「当たり前だろ、ここはあたしの友達の家だ。招かれざる客は帰りな、ウルシ‼︎」

「いくだに」

 

 漆の影から式神の手が伸びる。千切られた腕も元に戻り、影の巨女が紅い瞳を神に向けた。ぐったりしている紫の横に立つ櫟に漆がちらりと視線を送れば、櫟は小さく横に首を振った。時間がまだ必要だ。少しの間漆は目を瞑り、懐から早苗のスペルカードを取り出し強く握った。それに合わせて梍の残った左目の暗黒が深くなる。

 

「唵 阿謨伽 尼嚧左曩 摩賀母捺囉 麼抳鉢納麼 入嚩攞 鉢囉靺哆野 吽、神を祓えウルシ! 急急如律令‼︎」

 

 伸びる腕が神を掴む。巨大な影の手に掴まれて、忌々しそうに身動ぎをするそれだけでウルシの手のひらが削れてゆく。唸りながらウルシが手に力を込めれば込めるだけ手が削れる。

 

「影が光を掴めるか、脆いぞ漆」

「ならもっと脆くしてやる! 朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝久・文王・三台・玉女・青龍‼︎ 今こそ覚めろ‼︎」

「おれを見ろ!」

 

 漆が指で四縦五横の格子を空へ引くごとに、ずるりとウルシの形が崩れ去った。意志をもった影となり、夜闇の中に薄く交じる。影の大きさがウルシの大きさ。神一人を容易にすっぽりと包む影の手が、絶対に剥がれぬ影となり神を強く締めつけた。ギリギリと影が震える音が虚空に響く。形ないはずの影が、ひとりでに手の形となって月夜見を撫ぜた。神にさえ手を伸ばす悪意の塊。その気味悪さに、月夜見の顎を冷たい汗が伝う。反射と影のせめぎ合いは拮抗し、悪意が神の心を蝕む。強く歯を噛み締めた月夜見の体から陽光が零れた。

 

「ウルシ‼︎」

「かぐやさま」

「ウルシ! 私もここに居る‼︎」

「かぐやさま!!!!」

 

 今度こそ。陽の光によって生まれる影さえ利用して、決して光が外に漏れてしまわぬように、優しく両手で包み込む。砕けてゆく中で式神が夢見た日々が繰り返され、目尻に感情を零しながら笑う輝夜の姿を、紅い瞳がようやく捉えた。

 

 黒が白に塗り潰される。

 

 萎む陽光に合わせて消えた影を神は見送り、不発に終わった陽の光に月夜見は強く歯を擦った。歯の軋む音を吐き出して、擦り切れた服を手で払う月夜見の淡い瞳が、紙を放り増えた漆の影を追う。

 

「……──藤に、梓に、漆に、梍。人にここまでやられたのは初めてだ。だからこそ惜しく、苛つき、嘆かわしい!」

 

 十数人に増えた漆と梍を空気の反射で弾き飛ばす。拳を握る櫟を手で払えば、紫を巻き込み木を巻き込み吹き飛んでゆく。握り込まれた輝夜の拳が月夜見の顔を捉え、輝夜の左腕がへし折れる。腕を抑えて後退る輝夜の元へと月夜見は一歩で距離を潰し、凪いだ足に輝夜の両足が引き千切れる。月の姫の叫び声など聞きたくないと、首を掴み輝夜を無理矢理吊り上げ口を閉じさせ、呻きながら睨みつけてくる輝夜に舌を打ち、月夜見が吐くのは深く大きなため息がひとつ。

 

「お前が総大将とはな輝夜! 月に厄介ごとを持ち込むのはいつもお前だ! 永琳は去り次は平城十傑か! お前は何がしたい! なぜお前は「ふくくっ」……なにが可笑しい?」

 

 月の神の歪んだ顔が可笑しくて仕方がない。その問いさえ可笑しくて、また一度輝夜は笑い声を上げた。含むこともなく堂々と。月夜見を鼻で笑い飛ばす。

 

「可笑しいわ、貴女羨ましいのね月夜見。永琳も、楠も、桐も、椹も、梓も、菖も、櫟も、藤も、漆も、菫も、梍も、手放したくない私の最高の宝物。持っているのは貴女じゃない。今の貴女になにがあるの? 一人でなんでもできても、貴女にはなにもないじゃない」

「輝夜!!!!」

「あっはっは! 貴女はなぜ戦うのよ! 私たちは今のために、この瞬間のために戦う‼︎ 永遠のためじゃない! それが尊いのよ、素敵なの。私が望んだものが確かにここにあるの! 貴女なんかに渡さない! 穢れるのが嫌なら月に居なさい! 貴女が嫌うものは貴女が思うより素敵なのよ!」

 

 月夜見の手に力が篭る。

 

 なんのため?

 

 世界の、ひいては姉のため。

 

 月夜見が月でいつも思い返すのは昔のこと。

 

 月から太陽と地球を眺め、古の記憶に埋没する。

 

 日ノ本の地で姉と弟と共に日ノ本を統一するために続けた戦いの日々。

 

 月夜見だって同じだ。

 

 姉弟と、それに連なる仲間たち。同じ目的地を目指し突き進んだ輝かしい日々。だがそれも永遠には続かなかった。国を統一してしまえば、残されたのは退屈だ。輝かしい日々の輝きは失せていき、後は腐ってゆくだけだ。それが嫌で国が繁栄してゆく中、輝きを閉じ込めるように月夜見は月へと旅立った。だが、それさえも永遠ではない。月夜見が思い出を閉じ込めても、その外側が今度は勝手に腐ってゆく。もう大事なものを手で閉じ込め続けておくことはできない。輝きで暗闇を染めるように、手を伸ばさなければ腐り落ちてゆくだけだ。腐った林檎は捨てなければ、他の果実まで腐ってしまう。

 

 世界のため? 姉のため?

 

 月夜見の願いもそれは月夜見のためだけのもの。

 

 月夜見自身もそれは分かっている。

 

 同じ自分勝手なのになぜこうも違うのか。

 

 月夜見の瞳から陽が差した。

 

「ぐ、ぁああ⁉︎ ああああああ!!!!」

 

 輝夜の両足を焼き、痛みから首を掴んでいる月夜見の手を取った輝夜の右手も焼け落ちた。輝夜の叫びに耳を澄ませながら、月夜見はゆっくりと口角を上げる。

 

「蓬莱の薬で魂を固定する? それで永遠を手に入れたつもりか? 誰が嫦娥を蝦蟇に変えたと思ってる。不老不死など神話では珍しくもない! お前の焼け落ちた手足は何度蘇ってもそのままだ! そうやって無様に転がれ輝夜‼︎ 何もできない箱入り娘が!」

「ぐぅぅ⁉︎ がぁ、くぅ、まだよ! 絶対に、絶対に殴ってやる!」

「はっ! 殴れるものなら殴ってみろ‼︎」

 

 

 

 ────パチンッ。

 

 

 

 空間に亀裂を入れるような、それは小さく弾ける音だった。

 音に弾かれずるりと空間から這い出る二つの拳。

 紅と白を空に靡かせて、浮くように宙を滑る少女の拳。

 歯を擦り合わせ、ゆらりと壁を透け通る少年の拳。

 二つの拳が神の顔にめり込んだ。

 

 放られた輝夜の体を少年が支え、ゆっくり下ろすと大太刀を担ぐ。お祓い棒を担いだ少女と二人、疎らに地に伏せている仲間たちを見回して、終着点は鼻から血を垂らした月の神。六つの目が交差して、これまで暗かった幻想郷に多くの灯りが灯っているのを視界に納め、意識の断ち切れた紫を一瞥すると小さく月夜見は息を吐いた。

 

「……八雲紫の能力が切れたな、これが本当の幻想郷か。遠くからだと夜空のようだな。だがそれも今日で最後だ」

「──それを決めるのはあんたじゃないでしょ、最後なのはあんたの方よ」

「月に去れ侵略者。俺たちの未来は俺たちが決める!」

 

 陽の光を受けて月が輝く。その光を受けて伸びる背の影を、輝夜は夢見心地で見送った。

 

「博麗の巫女、博麗霊夢」

「平城十傑、北条家第百三十七代目当主 北条楠」

「「くたばれ月夜見‼︎」」

 

 


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