Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー   作:ギミ

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VSアサシン

side悟誠

 

 

その日の晩、同室の士郎が眠りに着くのを待ち、オレはそっと部屋を出ていこうと静かに窓を開けた。

 

 

「...いくのか?」

 

不意に掛けられた声に驚き振り向くと、そこにはベッドから身を起こし、此方を見ている士郎の姿があった。

 

完全に寝てると思って油断した......

 

 

「あぁ、ちょっと行ってくる」

 

さて、どう言いくるめて行こうか......

 

しかし、士郎は

 

予想に反して全く違う行動をとった。

 

 

「はぁ...。分かった、気をつけていけよ?」

 

え?てっきり俺はもう反対されるものかと......

 

 

「...止めないのか?」

 

 

「止めたいさ、けど、オレが止めても行くつもりなんだろ?お前も...多分イリヤも」

 

そこまでお見通しか......

 

 

「その顔、やっぱりな...。止めても無駄だろうから見なかったことにしてやる。けど、一つ約束してくれ」

 

そこで真剣だった顔が更に真剣味を帯びる。

 

 

「無事に帰ってこい...それだけだ」

 

イリヤちゃん、良い兄ちゃんを持ったな...。人をここまで心配してくれる奴なんてそうはいない。

 

 

ホントは行きたくて仕方ないのだろう。それを圧し殺して我慢してくれている。

 

 

「あぁ、任せてくれ、イリヤちゃんは俺が必ず連れ帰る」

 

きっと、オレに兄ちゃんがいたらこんな感じだったのかな......

 

それだけ返すと、俺は窓から外へと飛び出していくのだった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇sidechange◆◇◆◇◆

 

 

 

 

その日の夜、私はみんなが寝静まるのを待ってコソリと家を出ました。

 

今日は悟誠くんが一緒ではないので待っているんだけど、中々出てきません。

 

 

「どうしたんだろう?悟誠くん...」

 

 

『さぁ?疲れて寝ちゃったとかじゃないですかー?』

 

それは多分ないと思うけど......

 

 

「お兄ちゃんと同じ部屋だし出てきにくいのかなぁ」

 

 

『あー...あのお兄さん凄く怪しんでましたもんねー』

 

そう、お兄ちゃんにはあの晩の事を怪しまれてる......

 

 

『それはそうとイリヤさん、最近悟誠さんとはいかがですかー?』

 

 

「へ?なんのこと?」

 

 

『決まってるじゃないですかーお好きなんでしょう?悟誠さんのこと』

 

ッ!?!?いきなり何を言い出すのかなこのロクデナシステッキは!?!?

 

 

「ななななに言ってるのルビー!?私は別に悟誠くんなんて...」

 

 

『そんなこと言っちゃってー知ってるんですよ?戦闘中ずっと悟誠さんのことを見てたの』

 

ウソッ!?私そんなに...って、戦闘中?

 

 

「ルビー、それって私だけじゃなくないかな?」

 

 

『チッバレタカ...そうですかー?あっどうやら悟誠さんも来たみたいですよ?』

 

今舌打ちしたよね?もうやだこのステッキ......

 

渋々ルビーの言葉に家の方を見ると、お兄ちゃんの部屋の窓から飛び降りる悟誠くんの姿が見えた。

 

えっ?今悟誠くんの飛び降りなかった!?

 

 

「ルビー...今お兄ちゃんの部屋から飛び降りたのって...」

 

 

『間違いなく悟誠さんでしたねー』

 

 

「やっぱり?」

 

何やってるの悟誠くん!?幾らなんでもそれはおかしくない!?

 

少しして、何事もなかったように走ってきた悟誠くんが私達の様子を見て首を傾げて言います。

 

 

「あれ?どうしたんだ?イリヤちゃん」

 

 

「な、なんでもないよ...」

 

そういう私の顔は引き攣っていたに違いない

 

 

 

◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇

 

 

 

 

イリヤちゃんと合流して向かった先はある山の中だった。

 

そこで現地集合した遠坂、ルヴィア、美遊ちゃん達と共に鏡面界へと接界(ジャンプ)した。

 

 

「...あれ?」

 

 

「どういうことですの?敵はいないしカードもない...。もぬけの殻というやつですわね」

 

 

「場所を間違えた...とか?」

 

 

「まさか...それはないわ、元々鏡面界は単なる世界の境界...空間的には存在しないものなの」

 

遠坂達がなにやら話し合っているが、オレは気にせず周囲の警戒を強める。

 

ただでさえ夜で視界が悪いというのに山というのもあって木々が邪魔で視界が更に酷くなってしまっている。

 

それに何よりも警戒すべきは、今回の標敵であるカードの気配だ...。以前のカードであれば、何かしらの気配を察知出来たのに対し、今回の敵は全くと言っていいほど気配を感じられない......。

 

ドライグ、どうだ?

 

 

『いや、駄目だ...気配という気配を絶っているとみていいだろう』

 

オレ達みたいに気を消せるってのかよ!クソッ...どうすりゃ......

 

そんな時、ふと視線を感じてそちらを見ると、イリヤちゃんがオレを見ていた。

 

だが、オレはそれとは別のモノに気がつき叫ぶ

 

 

「イリヤちゃん!後ろだ!!その場に伏せろ!!」

 

 

「えっ...?」

 

駄目だ!こうなりゃ仕方がない!!

 

 

「先に謝っとく、悪い!!」

 

俺は瞬時にイリヤちゃんとの距離を積め、その身体を押し倒すように伏せさせる

 

 

「えっ?ちょちょっ...ごご悟誠くん!? こここーいうことは私達にはまだ早いというか...というかまだ心の準備...が...」

 

イリヤちゃんがなにやら言い掛けるがそれは最後まで言いきられることはなかった。

 

 

「ご...せい...くん.......。えっ...? まさか、私を守って.......?」

 

呆然とした表情でイリヤちゃんがそう呟く。

 

まあ、驚く、なんてもんじゃないよな...だって

 

オレの肩に、深く短刀が突き刺さってんだから

 

 

「ぐっ...!はは...ドジっちまったな...。んなことより怪我はないか?イリヤちゃん」

 

 

「う、うん...でも悟誠くん肩から血...が...」

 

信じられないものを見るような目で俺を見るイリヤちゃん。

 

 

「大丈夫、このくらい...ッ!かすり傷...だ!」

 

そう言って刺さっている短刀を引き抜く。

 

そして血が噴き出さないよう筋肉を圧迫させて止血を試みる

 

よし、止まったな...。

 

それを見てオレは叫ぶ

 

 

「お前ら!周囲を警戒しろ!!敵はすぐ近くまで来てるぞ!!」

 

 

「敵の位置は不明...方陣を組むわ!全方位を警戒!」

 

背中を合わせるように陣を組む遠坂達。

 

しかし姿を見せた敵によって状況は最悪の事態を迎える。

 

木々の間から何人もの黒タイツに壊れた面のようなものをつけた奴等がオレ達を囲むように現れたのだ。

 

気を探れば明らかに周りを取り囲まれている。

 

 

「嘘でしょう...!?完全に包囲されてますわ!」

 

 

「なんてインチキ...!軍勢だなんて聞いてないわよ!」

 

遠坂達が叫ふが、敵にはそんなこと関係ない。

 

奴等が短刀を手にするのが見える。

 

マズイ...!決めに来る気だ!

 

 

「オマエ達逃げろ!!奴等止めを刺すつもりだ!!」

 

 

「くっ...包囲を突破するわ!!火力を一点集中!!イリヤ!!美遊!!」

 

 

「はい!」

 

駆け出していく遠坂達、それを俺は追おうとしない。

 

 

『何してる相棒!早く逃げんと蜂の巣にされるぞ!!』

 

悪い、ドライグ...なんでかさっきから身体が鉛みたいに重くて言うこと聞いてくれねえんだ...どうもさっきの短刀に毒が仕込んであったらしい......

 

 

『なにっ...!?』

 

もう感覚すら分かんなくなってきてる...恐らくもう駄目だ

 

 

『何を言ってるんだ相棒!お前はこんな程度で諦めるような奴じゃなかっただろ!!』

 

諦めたくなんてねえよ...けど、身体が動いてくれねえんだ......

 

あぁ、奴等が俺に止めを刺す気らしい...

 

なあドライグ、もし可能ならオレが死んだら、代わりにお前がイリヤちゃんを守ってやってくれ

 

 

『何を馬鹿な!気を強く持て相棒!まだなんとかなるはずだ!』

 

もう無理だよドライグ...だってほら、もう無数の短刀(死神の足音)が聞こえてきてる。

 

 

「「「悟誠(くん)!!!」」」

 

 

あぁ、悔しいな...エミヤさんや士郎との約束、守れそうにねえなぁ......。

 

じゃあな相棒、後の事は任せたぜ......

 

 

『おい!待て!勝手に逝くな!!戻れ孫悟誠!!』

 

その言葉を最後にオレは意識を手放そうとした時、辺りを純白の閃光がイリヤちゃんから迸るのを目にした。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇

 

 

 

 

私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは混乱していた。

 

始まりは数分前、私を庇って攻撃を受けた悟誠くんが敵の毒を受けて倒れてしまったのだ。

 

目の前では倒れまま動かない悟誠くんに止めを刺そうと迫る無数の短刀。

 

悟誠くんがし...ぬ...?

 

ウソ...だよね?だって、あんなに強いんだもん...。そんな簡単にやられる訳ない......

 

今だってきっとやられてるフリをしてるだけだ。

 

そうじゃないとおかしいから......

 

きっと彼処からきっと物凄い力で敵を倒してくれる。

 

けど、予想に反して悟誠くんは動かない。

 

 

どうすれば...どうすれば良いの......!?

 

あれ?そう言えばルビーがなんか言ってなかったっけ...?

 

 

『ド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面焦土に...』

 

あぁ、そっか、それなら簡単だ

 

ピシリ、と私の中で『ナニカ』がガチンと外れる音が聞こえた気がした。

 

それは、私自身の持ち得る膨大な力を制御するための枷だ。

 

方法は分かっている。この場において、悟誠くんを守る事が出来る方法は一つだけ、それしか道はない。

 

あとは、自身に眠る力を解き放つだけ。

 

 

【ズドンッ】

 

 

私の中にに眠る力を解き放つ。

 

内に眠っていた膨大な魔力がうねり、自身を核とするかのように束ねられる。

 

その時だった。ピクリ...と悟誠くんの指先が動くのを私は見た。

 

――――待ってて、今、私が助けるから─────

 

そして、解放。音は消えた。

 

鏡面界は光に包まれ、悟誠くんとミユ達を覆い尽くす。

 

純白の閃光が全てを呑み込んだ。

 

 

 

 

 

「ぐっ...がああぁぁああッ!!」

 

しかしそれはその声で不意に欠き消される。

 

 

「う...あ............」

 

何がなんだかわからない...私の周りには小さめのクレーターが出来ていた。

 

こ、これって...

 

 

「わたしが...やったの...?」

 

ど、どういうこと...?何で私こんなことになってるの!?

 

そ、そんなことより悟誠くんは!!

 

悟誠くんの姿を探すとそこには......

 

 

「誠兄ちゃん、しっかりして!誠兄ちゃん!!」

 

「サファイア!!ゴセの身体を治す事は出来ないんですの!?このままでは多量出血で確実に......!」

 

『申し訳ありませんが、不可能です。カレイドステッキの機能である治療促進(リジェネレーション)は契約しているマスターにしか効果を与えませんし、カレイドステッキは女性限定の魔術礼装悟誠様を治療する事は残念ながら......』

 

「傷が深すぎる......!これじゃ宝石全て使っても出血を止められないわ!」

 

「それでもやるしかありませんわ。持ってきた宝石をありったけ注ぎ込みます。出血を抑え、急いで病院に運びますわよ!」

 

 

 

 

「え、あ............?」

 

そこには全身血塗れで倒れる悟誠くんに魔術で治療をしているリンさんとルヴィアさんの姿だった......。

 

 

「血...そん...な...」

 

あ...れ...は...。私がやったの...?

 

気になる人を助けるどころか大怪我をさせた......

 

 

「なん...なの?...どうして私がこんなこと...敵も...悟誠くん達まで巻き込んで...もう...もう...」

 

 

「イリヤ!」

 

 

「もういや!!」

 

もう一秒だって、彼処にいたくない!傷ついた彼を見たくない!!

 

鏡面界より接界(ジャンプ)して現実世界をひた走る

 

 

(カエ)らなきゃ...(カエ)らなきゃ、はやく!家に(カエ)らなきゃ!!」

 

走る。もっとはやく!!

 

 

「はやく!!もっとはやく!!」

 

最早自分自身で何をしているのか分からない。

 

気がつけば家にいて、玄関先で倒れていた。

 

セラに見つかるまで、しばらく私はそのまま動けなかった

 

 

 


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