Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー   作:ギミ

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お待たせしました


仲間脱落

side悟誠

 

 

その日の放課後、オレは美遊ちゃんと共に帰路についていた。

 

 

「悟誠、本当に大丈夫なの...?」

 

美遊ちゃん、心配してくれてるのか。

 

 

「心配性だな、美遊ちゃんは、オレはこの通りピンピンしてるぜ?」

 

そう言っておどけて見せるも、尚も心配そうにしてくる美遊ちゃん。

 

それを聞いていたサファイアが問いかけてくる。

 

 

『あれだけの傷を負っていながら一晩でそこまで回復するなんて、どんな方法を使ったのですか?』

 

 

「あー...それは企業秘密ってことで」

 

おいそれと話すこともねえことだもんな

 

 

『そう...ですか』

 

まあ、サファイアならルビーに聞けばすぐ分かるだろうし、オレから言うつもりはない

 

『言ったところで信じて貰えないだろうしな』

 

まあな、そんなことを考えながら歩いていると、前方に見覚えのある姿が見えた。

 

その人物に近づき、後ろから声を掛けてみる

 

 

「オッス、遠坂!そっちも今帰りか?」

 

そう声を掛けると、その人物が振り返った

 

 

「悟誠くんに美遊ね、えぇ、早く終わったからね。そっちも終わりみたいね」

 

振り返った本人、遠坂凜はそう答える。

 

 

「それにしても...アンタそんな姿してても違和感無いわねぇ、本当に歳上?」

 

 

「う、うるせえやい!こんなナリでも24だぞ!!」

 

 

「その仕草も違和感ないわね、それ演技なの?」

 

 

「......当たり前じゃねえか、これで素だったら怖えよ...」

 

『相棒のそれはほぼ素に近いがな...』

 

やめろ、それ以上言うなドライグ......

 

そんなやり取りをしつつオレ達は三人で帰路に着いていた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「………」

 

帰っている途中、不意に遠坂が足を止めた。

 

 

「??...どうしたんだ?遠坂」

 

そう聞きつつ辺りの気配を調べる。

 

すると、覚えのある気が近づいているのを察知した。

 

 

「二人とも、悪いけど少し離れていてくれる?」

 

そうしてある場所を見ながら遠坂は言う。

 

 

「どうやら、私に用があるみたいだから」

 

あぁ、やっぱしそういうことか......

 

 

「わかった、行こう美遊ちゃん」

 

 

「え?でも...」

 

 

「大丈夫、すぐ済むよ」

 

渋る美遊ちゃんを連れてその場を後にする。

 

そして、少し離れたところから様子を見守る。

 

待ち構える遠坂の前にある人影が現れる。

 

そこに現れたのはイリヤちゃんだった。

 

 

 

 

◆◇◆sidechange◇◆◇

 

 

 

 

私はもう闘いたくない......

 

最初は興味本位だった、魔法少女とか敵だとか、ファンタジーの話だったから

 

けど、あの夜思い知った...思い知らされてしまった......。

 

私が...あんなことをしてしまうなんて......

 

私のせいで悟誠くんは敵の毒を受け、悟誠くんを守ろうとした私の攻撃で更に酷い傷を付けてしまった......。

 

わたし自身そんなことが出来るだなんて思ってなかったし、出来る訳がないと思ってた......

 

だからこんなことをした自分が恐かったし信じたくなかった......

 

それをルビーに話したら、意外なことに了承してくれた。

 

てっきり反対されると思っていたから少し驚いてしまった。

 

でも、ルビーの本来の持ち主はリンさんだから一応話だけでも通しておかないとと言うルビーの言葉に私は従ってリンさんのところにやってきた。

 

 

「――昨夜は急に逃げ出したかと思えば、それはなに?」

 

 

「辞表です...」

 

なんだか直接は渡しにくかったので先端に切れ目の入った竹の棒に退職願い?を刺して差し出した。

 

リンさんはそれを呆れながら受けとって話す。

 

 

「ま...こうなるかもとは思ってたけど」

 

 

「その、最初は...正直...興味本位っていうか...面白半分だったの」

 

悟誠くんがいたお陰で難しいのとかも考えなくて良かったっていうのもあるけど......

 

 

「でも...考えが甘かったって思い知った」

 

魔法少女なんて言っても、その実やってることは命のやり取り。

 

昨日ようやく思い出した。

 

悟誠くんがいなければあの時(セイバー戦)、私は死んでいたかもしれないんだ。

 

今頃になって始めにミユに言われた言葉が突き刺さる。

 

私には...戦うだけの覚悟も理由もありはしなかったんだ......

 

私はミユみたいになんでも出来る訳じゃない。

 

かといって悟誠くんのように強いわけでもない。

 

 

「もう戦うのは...イヤです」

 

黙って聞いていたリンさんが口を開く。

 

 

「......ひとつだけ、確認しておきたいことがあるわ」

 

「昨夜のアレ、アレは自分意思で起こしたもの?」

 

その言葉に私自身の血の気が引いていくのが分かった。

 

違う...あんなのわたしじゃない!!

 

 

「ち......」

 

違うよ!!あれはきっとルビーが...」

 

『私単体には攻撃なんて出来ませんよ?マスターが振るわない限り、魔力砲の一発も撃てません。昨日の爆発は...間違いなくイリヤさんの力によるものです』

 

違う!そんなはず...そんなはずない!!

 

 

「そんなはず...!だ、だって私は普通の人間だもん...!」

 

絶対に違う!あれは私の力なんかじゃない...!!

 

 

「......分かったわ、辞表を受理する」

 

え......?

 

 

「い、いいの...?」

 

拒否権なんてないものだと......

 

 

「協力を強要してたのはこっちだしね...小学生に戦いの代理をしてもらうなんてこと自体無理があったのよねー...やっぱ」

 

まあ、私達自身もあんまり役には立ってないんだけど...と、苦笑するリンさん。

 

 

「もう十分でしょルビー?お遊びはおしまい、マスター登録を(わたし)に戻しなさい!」

 

『やなこってす!私のマスターは私が決めます!』

 

次の瞬間にはルビーが両羽根の部分を引きちぎられんばかりに引っ張られていた。

 

それでも戻そうとする気配のないルビーに痺れを切らしたリンさんがルビーを地面に叩き付けて言う。

 

 

「まあいいわ、どうせカードは残り一枚、カード回収が済んだら私もルビーも倫敦(ロンドン)へ戻るわ。それで終わり、もうイリヤには関わりのないことよ」

 

「正式な契約なんてしてないけど、一応言っておくわ」

 

 

それは―――

 

 

「――イリヤスフィール、あなたとの奴隷(サーヴァント)契約を破棄する―――」

 

「...お疲れ様.もうあなたは戦わなくていいし、私の命令も聞かなくていい。今日までのことは忘れて生きなさい。一般人が魔術の世界に首を突っ込んでもいいことなんてない」

 

それは、契約の(クサリ)を解く言葉......

 

これでもう他人同士だとリンさんは言う。

 

 

「......全部夢だと思って忘れてくれていい」

 

自分で望んだことなのに...どうしてだろう...

 

 

「あなたはあなたの日常に戻りなさい」

 

胸が...痛い......

 

 

「ま、そういうワケなんだけど...あなた達はそれでいい?悟誠、美遊」

 

 

「えっ...」

 

すると何処から現れたのか、二人がやってくる。

 

その顔は決意に満ちていた。

 

 

「...はい」

 

 

「あぁ...」

 

あぁ、あの顔だ...私にはあんな顔はできない......

 

 

「ミ...ミユ...」

 

 

「問題ありません、最後のカードは私達で回収します」

 

 

「そう...」

 

リンさんはそれだけ言うとその場を去っていく。

 

 

「最初に...言った通りになったね」

 

去り際、ミユが私に声を掛けてくる。

 

 

「え....」

 

 

「あなたはもう、戦わなくていい。あとは全部...()()が、終わらせるから...」

 

そう話すミユは初めて会ったときと同じ目をしていた。

 

それに、私はなにも言うことが出来なかった......。

 

そのまま去っていくミユ。

 

私はそれを見送ることしか出来ない。

 

そんな中、二人に着いていこうとしない人がいた。悟誠くんだ。

 

 

「イリヤちゃん...少し、話をしないか?」

 

そう話す悟誠くんは何時になく真剣そうな顔をしていた。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「オレにはさ、二人の弟がいたんだ」

 

 

「え...?」

 

家への帰り道、ふと悟誠くんが口を開く。

 

私は急にどうしたのかと悟誠くんをみる

 

私の様子などお構いなしに悟誠くんは続ける。

 

 

「オレの家族はちょっと変わっててさ、戦うことが大好きな一家だったんだ。けど、一個下の...真ん中の弟はそんなでもなかったんだ」

 

悟誠くんの家族の話...?

 

 

「えっと、そんなでもっていうのは?」

 

 

「あぁ、戦い...って言うより、争いが好きじゃなかったんだよ」

 

そっか、でもなんで今その話をするの?

 

 

「アイツは戦うよりも勉強のが好きでさ...強くなるよりも知識をつけていく方が好きだったんだ、けど、そうはいかなかった」

 

 

「え...?」

 

そこで悟誠くんが言葉を区切る。

 

 

「事件が起きたんだ。とんでもない事件が...俺達一家はそれに巻き込まれた」

 

そう話す悟誠くんは何かを思い出すように話していく。

 

 

「オレや父さん、それに父さんの友人達と解決のために動いた...けど、どうにもならなかった...」

 

 

「そ、それって...」

 

 

「まあ聞けって...オレ達じゃどうしようもないってなった時、そこで父さんが弟に目を付けたんだ。それで言ったんだよ。お前がやるんだ...って」

 

お、お父さん!?息子に何やらせようとしてるの...!?

 

 

「弟は困惑していたよ。けど、父さんの信頼に応えようと動いたんだ」

 

弟さんも動いちゃったの!?子供に事件を解決させちゃ駄目じゃない!?

 

 

「弟は頑張ってたよ、父さんやオレ達を助けようと必死に...けど、それでも一歩届かなくてな、オレ達はピンチに陥ったよ......」

 

しかも一家全員ピンチって相当危なくない?それ......

 

 

「そ、それで...弟さんはどうなったの?」

 

 

「......なんとか解決したよ、悲しい形で」

 

その時のことを悔やむように悟誠くんは顔を歪める。

 

い、いったい何があったんだろう?悟誠くんがあんな顔をするなんて......

 

 

「と、悪い...話が逸れたな。オレが言いたかったのは弟もイリヤちゃんみたいに...ってわけじゃねえけど、戦いが嫌いだったんだ、それに、今のイリヤみてえに自分の中に眠る力を恐れてた」

 

わ、私はそんな...

 

 

「弟がそうだったから分かる気がするんだ、イリヤちゃんは優しい。だからその手で相手を傷つけてしまうことが怖いんだろ?」

 

違う、そんなんじゃない...

 

 

「今は受け入れられないかもしれない...けど、忘れないでくれ、力そのものは別に悪いものじゃない...その力を使う本人がそれを決めるんだ。イリヤちゃんの中に眠るそれだって、言ってしまえばイリヤちゃんを形作る一つの要素なんだ。一つでも欠けたらそれはイリヤちゃんであってイリヤちゃんじゃない、そんな別人になっちまう。それだけは忘れないでくれ」

 

『長々と話して悪かったな...先に帰ってるよ』と、悟誠くんは一足先に帰ってしまった。

 

残された私は考え込む。

 

力そのものは悪いものじゃない...それを使う人がどうするかを決める......。

 

そんな悟誠くんの言葉が、私の耳には張りついて消えることなくずっと木霊していた。


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