Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー   作:ギミ

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今話にてプリヤ第一シリーズの終了となります


最終決戦(後編)

side悟誠

 

 

「ビル内まで空間が続いてて助かったわ...あの図体ならここまで入ってこられないはずよ」

 

ビルの中を進みながら遠坂が話す。

 

確かにあの巨体なら壁もろとも破壊して来ない限りは容易に入ってはこられないだろう。

 

いや、今はそんなことより......

 

 

「あの...遠坂?そろそろ降ろしてくれてもいいんじゃないでしょうか?」

 

さすがにいつまでもこの体勢は恥ずかしすぎる......

 

 

「なに言ってんのよ、一番ダメージ受けてんのはアンタなのよ?そんなやつがまともに動けるの?」

 

なに言ってんだ?こんな程度でオレが動けなくなるわけねえのに

 

 

『いや、遠坂の意見も最もだぞ、相棒の相手してきた奴らに比べれば確かに劣るかもしれないが、一般人から見れば一撃でも受ければ死、良くても致命傷は免れないだろう』

 

そういうもんか?

 

 

『そういうものだ』

 

うーん...実感沸かねえけど、ドライグが言うならそうなんだろ。

 

 

「オレなら大丈夫だって、まだまだ余力は残してるからさ」

 

そう言うと遠坂は、『本当に大丈夫なんでしょうね...?』訝しみながらも降ろしてくれた。

 

 

「ともかく、アレ相手には作戦を練らないと不味いわ、一度引くわよ、サファイア」

 

 

『はい、限定次元、反射路形成!』

 

サファイアが接界(ジャンプ)のために魔方陣を展開する。

 

 

『鏡界回廊一部反転!』

 

ここでオレは気がついた、美遊ちゃんが顔を歪めながら歯ぎしりをしていることに......

 

 

美遊ちゃん、何かするつもりだな......

 

ドライグ、もしかしたらかなりヤバイことになるかもしれない...神器は使えねえけど、力貸してくれるか?

 

 

『何を今更...神器が使えずとも俺はいくらでも力を貸そう』

 

 

ありがとなドライグ、じゃあ、最後の戦い...いくぞ!!

 

 

 

 

 

◆◇◆sidechange◇◆◇

 

 

 

 

現実世界に戻る直前、私はその魔方陣から抜け出した。

 

驚きと困惑が入り交じったルヴィアさんの顔が印象的だったけど、今はそれどころじゃない

 

 

『美遊様!?いったい何を...!』

 

 

「これでいい、ようやく...一人になれた...」

バーサーカー相手に一人なのは厳しいけど、悟誠をこれ以上戦わせるわけにはいかない

 

それに、試してみたいこともある。

 

私は以前回収したセイバーのカードを取り出す。

 

 

『カード...?』

 

 

「前のセイ...悟誠とセイバーの戦いを見て考えてた...私達も近接戦闘を出来たらって......。その晩のことよ、不思議な夢を見たの」

 

そこに出てきたのは倒したはずのセイバーだった。

 

でもその姿は青い鎧に金髪の綺麗な髪、緑の透き通った瞳だった。

 

そのセイバー、アルトリアと名乗ったその英霊は、私にカードの本当の使い方を教えてくれた。

 

 

「どうしてそんなことを教えてくれたのか分からないけど、今は...!!」

 

セイバーのクラスカードを地面に起き、魔方陣を展開させる。

 

そうして教えられたその呪文の詠唱を始める。

 

 

「―――告げる!」

 

それを始めたその時だった。

 

 

「なるほどな、だから一人残ろうとしてたのか」

 

 

「......ッ!誰!!」

 

不意に背後から掛けられた声に驚いて振り向く。

 

するとそこにいたのは......

 

 

「せい...にいちゃん...?」

 

な、なんでここに...?

 

私は隠すことも出来ずにそのまま問いかけてしまう。

 

 

「よっ、美遊ちゃん、さっきぶりだな」

 

 

「な、なんで...あなたはさっきルヴィアさん達と一緒に戻ったはずじゃ...」

 

そう、そこにいたのは紛れもなく誠兄ちゃん...孫悟誠その人だった。

 

 

 

 

◆◇◆sidechange◇◆◇

 

 

 

 

「な...んで...」

 

あーあー驚いちまって、やっぱ一人で戦う気だったか......

 

 

「なに言ってんだよ美遊ちゃん、水くさいぜ?こんなことを独り占めしようとするなんてよ」

 

オレがやったことはいたってシンプル。

 

サファイアの接界(ジャンプ)の間際に超速でその場から飛び出したってだけの話だ。

 

後は気を消して美遊ちゃんの動向を探るために息を潜めて待つだけ。なっ?簡単だろ?

 

 

『傍目から見れば完全なストーカーだな』

 

失礼な!!何度も言うがオレに少女趣味はない!!

 

と、今はそんなことしてる場合じゃねえんだった。

 

 

「それより美遊、なにかやるつもりなら早くやっちまったほうがいい、奴が来る」

 

奴め、ビルの壁ごと破壊して突っ切って来やがる......

 

今はまだ少し遠いが、時期にここに到達するだろう

 

 

「――――告げる。

 

(なんじ)の身は我に、我が命運は(なんじ)の剣は我が手に。」

 

詠唱が始まってすぐに、バーサーカーが壁をぶち抜いて現れた。

 

チッ...もう来やがったか!

 

美遊ちゃんの方はまだ終わってねえ!

 

仕方ない、アレをやるしかないか?

 

 

「聖杯の寄るべに従い、この意、この(ことわり)に従うならば応えよ!

 

誓いを此処ここに。

我は常世(とこよ)総て(すべて)の善と成る者、

我は常世総ての悪を敷しく者―――」

 

後ろから美遊ちゃんの詠唱が聞こえてくる。

 

オレ達を殲滅せんとバーサーカーの太腕が俺達に迫る。

 

やらせるか!!

 

すぐさま(スーパー)サイヤ人となりその腕を受け止めオレ蹴りあげる。

 

 

 

 

(なんじ) 三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手―――!」

 

夢幻召還(インストール)!!!」

 

カッ...と、美遊の身体が輝き出す。

 

ふう、ようやく終わったんだな......。

 

青い鎧のようなものに身を包んだ美遊ちゃんを見て言う。

 

 

「待ち侘びたぜ、美遊ちゃん」

 

 

「ごめんなさい、迷惑かけた...でも」

 

黄金に輝く剣を構えて美遊ちゃんは告げる。

 

 

「撤退はしない、全ての力をもって――」

今日、ここで、戦いを終わらせる!!」

 

へぇ、いいじゃんその覚悟。

 

 

「その覚悟、確かに聞いたぜ!なら、俺も見せてやる!!本気の力を!!」

 

そう叫び、俺は気を高め始めるのだった。

 

 

 

 

◇◆◇sidechange◆◇◆

 

 

「はあああぁぁぁぁぁああ......ッッ!!」

 

悟誠が力を溜めるように叫ぶ。

 

なんてパワーだろう...まるで地面が悟誠に怯えて震えているみたい......

 

 

「だああああああッ!!」

 

気合いの籠った叫びと共に辺りに気の目映い閃光が迸る。

 

なんて強い光!目を開けていられない!!

 

余りの眩しさに目を瞑る。

 

閃光が収まりめをあけると、そこには......

 

 

「待たせたな...これがオレの本気の力...。(スーパー)サイヤ人2だ...」

 

先程見ていた金髪の変身よりもっと鋭く反り上がった髪、さらに眼光の鋭くなった瞳。

 

そして周りにスパークが迸っている凄い姿になった誠兄ちゃんの姿があった。

 

 

 

 

◇◆◇sidechange◆◇◆

 

 

「さあ、今のオレは一味違うぜ?筋肉ダルマ」

 

 

「―――■■■■■■ッ!!」

 

獣みてえに吠える奴、うるせえ限りだ......

 

 

「おい、美遊」

 

 

「......なに?」

 

 

「オレがアイツの隙をつくる。オマエはオレが合図したら斬りかかれ」

 

 

「......分かった」

 

いい返事じゃねえか、よし!いくぜ!!

 

 

オレは勢いよく奴目掛けて突っ込む。

 

 

「オラァッ!!」

 

 

「――■■■!!!」

 

勢いに任せて蹴りを叩き込んでやる。

 

奴は吹き飛んでいくが、すぐに体勢を建て直される。

 

ハッ!そうじゃなきゃ面白くねえ!!

 

 

再び超スピードで突っ込む。

 

 

「――■■■■ッ!!」

 

同じ動きは通用しないとでも言いたいのか、迎え撃つように斧剣を振り下ろしてくる。

 

理性がない獣みてえな癖して、そういうとこだけは理性的ってか?だがな

 

 

「あめぇんだよ!!」

 

瞬間的にその場から跳び上がり、背後に回り込む。

 

 

「そら!これでも食らえ!!」

 

背後から勢いよくアームハンマーを叩き込んでやる。

 

 

「―――■■■■ッ...」

 

 

「おせえっ!!でりゃっ!!」

 

体勢を崩した奴をサマーソルトの要領で蹴りあげ、空中で脚を掴んでぶん回す。

 

 

「そらっ吹っ飛べ!!」

 

充分に遠心力がついたところでその手を離して放り投げる。

 

よし、大きく隙ができたな、今だろう

 

 

「美遊!今だ!」

 

その言葉に機械を伺っていた美遊が飛び出し身動きのとれないバーサーカー目掛けて剣を突き立てた。

 

 

「―――■■■■■ッッ」

 

血を吐くバーサーカー。

 

だが、まだ終わっちゃいねえはずだ。

 

だが、すぐに動き出さねえとこみるとすぐに再生させるってわけじゃねえみてえだな

 

美遊はさっきの失敗を教訓にすぐさま距離をおいてる。

 

 

 

「はぁっ...はぁっ...はぁっ...」

 

 

「よぉ、随分息が上がってるみてえじゃねえか」

 

 

「はぁっ...はぁっ...ご、悟誠...」

 

 

『み...美遊様!悟誠様!』

 

 

「サファイア?驚いた、その状態になっても喋れるんだね」

 

オレはあのステッキが剣になってること事態驚きなんだがな

 

 

『いったい何が起こっているのですか!?美遊様や悟誠様のその格好、その戦闘力...まるで』

 

美遊はともかく、オレは姿に関しちゃそんなに変わっちゃいねえと思うけどな

 

 

通行証(カード)を介した英霊の座への間接参照(アクセス)、クラスに応じた英霊の“力の一端“を写しとり、自身の存在へと上書きする擬似召還」

 

 

「えーと、つまり?」

 

 

「英霊になる...。それがカードの本当の力」

 

なるほど、そのカードを使えば、誰でも一時的に英霊になれるってことか

 

おっと、そろそろ敵さんの再生も終わりそうだな

 

 

「話はおしまい、敵が起きる」

 

 

『二度目の蘇生...!美遊様、敵はやはり不死身です!無限に生き返る相手に勝ち目など...!』

 

不老不死?そんなもんがこの世にあるわけねえ

 

 

「――無限じゃない、自動蘇生(オートレイズ)なんて破格の能力...必ず回数に制限がある」

 

その全てを打倒する......どうせそう考えてんだろ?美遊

 

オマエ一人じゃ無理だ、オマエ一人じゃ...な

 

 

「オレもいることを忘れんじゃねえぞ!筋肉ダルマ!!」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

あれからどれ程の時が経っただろうか......

 

身体はボロボロ、気も底を付き始めた。

 

美遊の方も宝具を使ったから魔力切れらしい

 

変身も解け、地面に横たわっている。

 

 

「――■■■■」

 

バーサーカーは未だ健在......

 

美遊の宝具で吹き飛んだんじゃなかったのかよ!!

 

不味い!!サファイアはバーサーカーに押さえつけられて動けない...ッ!!

 

美遊も美遊でダメージ故かそれとも恐怖のせいか動けない

 

クッソ...ッ!動け!!動きやがれ俺の身体!!!

 

 

「うっおおおおおおぉぉぉおおおおおおッ!!」

 

 

「っ...!!」

 

美遊を突き飛ばし、俺がその場に立つ

 

よかった、なんとか間に合った......

 

オレに迫る豪腕。

 

避ける余力も気力ももう残っちゃいない

 

その豪腕を諸に受け、オレは凄まじい勢いで吹き飛ばされてしまう。

 

 

「がっはぁっ...!!」

 

 

「ッ!誠兄ちゃん......!!」

 

吹き飛んだオレの下に寄ろうとする美遊。

 

 

「くっ...るなっ...!に...げろ...みゆ...」

 

 

「そんなこと...出来るわけ...!!」

 

...身体の感覚がもうねえ...ここで終わり...なのか?

 

は、はは...せっかく...こっちでも家族が出来たのに...なぁ

 

再度俺に黒い豪腕が迫る。止めを指すつもりらしい。

 

ドライグ、悪い...オレ、先に逝くよ......

 

 

でも、心残りがあるとすれば...

 

 

「イ...リヤ...ちゃん...かあ...さん...」

 

約束...守れそうにねえや、ごめん......

 

そう諦めかけたその時だった。

 

 

「そんなこと...っ!!ぜったいにさせないッッ!!」

 

そんな声が聞こえた途端、バーサーカーの肩から腹にかけて切れ目が走り血が噴き出した。

 

だ...れ...

 

霞む視界の中、映ったのは白い髪、星形のステッキを手にしたイリヤちゃんだった。

 

 

「イ...リヤ...?」

 

 

「リンさん!()()()よ!」

 

え......

 

「セット――!!」

 

「サイン――!!」

 

 

「「獣縛の六枷(グレイプニル)!!!」」

 

遠坂...ルヴィア...なんで......

 

 

「通った...!瞬間契約(テンカウント)レベルの魔術なら通用しますわ!」

 

 

「あはははは!!大赤字だわよコンチクショー!!」

 

無理...すんなよ...貧乏なんだか...ら

 

 

「悟誠くん...!!」

 

イリヤが俺に駆け寄ってくる。

 

 

「イ...リヤ...ちゃん...」

 

 

「これ食べて...」

 

そう言ってイリヤちゃんが口の中に何かを押し込んでくる。

 

入っているのかどうかもわからない口でなんとか噛み砕き飲み下す。

 

すると、先程までの痛みが嘘のようになくなっていく。

 

 

「身体が軽い...これって...」

 

 

「お兄ちゃんが渡してくれたの、悟誠が落としていったものみたいだからって...」

 

俺、仙豆落として行ってたのか...なにしてんだよ本当に......

 

 

「そっか...わざわざありがt...」

 

そう言おうとした瞬間、フワリと柔らかい感触がオレを包み込んだ。

 

見ると、そこにはオレを抱きしめるイリヤちゃんの姿が......

 

 

「――無事で良かった......」

 

そう話すイリヤちゃんの声は震えていた。

 

相当心配掛けちまったみたいだな...

 

オレはその身体を抱きしめ返し、頭を撫でてやる。

 

 

「ごめん...心配掛けたよな」

 

 

「ううん...大丈夫、悟誠くんなら大丈夫だって、信じてたから......」

 

抱きしめられてるのでイリヤちゃんの顔は分からないけど、たぶん真っ赤になってるんだろうな。

 

心配掛けてしまった分、力強く頭を撫でてやっていると......

 

『あのー、お二人さん?』

 

どこからともなく、ルビーの声が聞こえてくる。

 

って、何処から声掛けてんだ?というか、オマエ、申し訳無さそうに言っちゃいるけど完全に面白がってるだろ?

 

 

『とってもとぉっ......っても!良い雰囲気の所を邪魔するようでルビーちゃんとても申し訳ないのですが、そろそろ凛さんとルヴィアさんが仕掛けた瞬間契約(テンカウント)レベルの拘束魔術が解除されそうなのと美遊さん、凜さん、ルヴィアさんの視線が超絶怖いのでそろそろお開きにしてくださると嬉しいのですがー』

 

「~ッ!?!?!?ルッ...るるるるるルビー!?居たの!?!?」

 

 

「え、イリヤちゃんさっきまでずっとルビーを握ってたじゃんか。つーか、ルビーが居ないのにどうやって鏡面界に来れるんだっての...」

 

 

「......悟誠」

 

美遊もこちらに駆け寄ってくる。

 

その際の美遊の絶対零度にも羨望にも似た視線は見なかったことにする。

 

そうしてふと見ると、その手にはいつの間にかサファイアが握られていた。

 

 

「美遊ちゃん、良かった ...無事だったか」

 

 

「悟誠のおかげでなんとか...悟誠は大丈夫なの?」

 

冷視線を止め、心底心配そうに聞いてくる美遊ちゃん。

 

 

「大丈夫だって、イリヤちゃんの持ってきてくれた仙豆のおかげでこの通りさ!」

 

正直あれがなかったらオレは死んでたかもしれない......

 

 

「ごめんなさい」

 

そんなとき、不意にイリヤちゃんが頭を下げてくる。

 

 

「......ん?」

 

 

「え...?」

 

 

「私、バカだった...何の覚悟もないままただ言われるままに戦ってた。戦っててもどこか他人事だったんだ。こんなウソみたいな戦いら現実じゃないって...なのに...」

 

「その『ウソみたいな力』が自分にもあるってわかって......急に全部が怖くなって ...!」

 

 

「「イリヤ(ちゃん)...」」

 

 

「でも...本当にバカだったのは逃げ出したことだ!」

 

「“友達”を見捨てたままじゃ!前へは進めないから...ッ!」

 

 

「あっ...!?」

 

美遊ちゃんの持つサファイアがイリヤの持っていたルビーに引き寄せられてる...のか?

 

 

「これは...」

 

 

「うん、出来るよ、三人なら」

 

 

「お、オレも...?」

 

お、オレもそこに入ってるのか?

 

 

「当然だよ、悟誠くんだって私の...大事なと、友達なんだから」

 

 

「ッ!は、ははは!!」

 

友達か、そっか、そうなんだな!

 

 

「ははは!!なら、見せてやろうじゃねえか!!俺のいや、オレ達の友情の力を!!」

 

二人の杖に俺の左手を添える。

 

 

「うん、終わらせよう...そしてこれが私達の!!」

 

 

「「「究極万華鏡(Longinuskaleidoscope)」」」

 

刹那、オレ達から凄まじい力の奔流が撃ち放たれた。

 

 

「■■■■■■――ッッ」

 

バーサーカーはその光の奔流に成す術なくその肉体を消滅させるのであった。

 

こうして、オレ達の激闘は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆sidechange◇◆◇

 

 

 

 

「良かったのですか? イリヤさんを行かせてしまって」

 

窓の外を眺めていたアイリに、セラが声をかける。

 

 

「心配性ね、あなたは」

 

 

「イリヤさんが何をしているのかは知りませんが、封印が解けるなんてよほどのことです。

イリヤさんには普通の女の子として生きてほしい。奥様もそう考えたからアインツベルンを出て...!」

 

 

「そうね。でも...。

逃げ出すことで守れるものなんてないわ」

 

そう、イリヤと悟誠は自分の意思で進んだのだ。

 

「さてと、そろそろ行くわね」

 

 

「もう発たれるのですか?」

 

 

「向こうで切嗣(キリツグ)が待ってるから。

私も戦ってくるわ。イリヤ達の...、ううん。

私たちの日常を守るために」

 

 

「はい...行ってらっしゃいませ、奥様」

 

セラに見送られ、ベンツに乗り込み発車させたアイリは、車内で一人呟いた。

 

「今度帰ってこられるのは、二ヶ月後かな?

その時にはきっと、イリヤは笑顔でいてくれるわ」

 

「その時までイリヤのこと、頼んだわよ。()()()いいえ、悟誠」

 

そう呟くアイリの顔はとても幸せそうであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇sidechange◆◇◆

 

 

 

 

 

「お、終わったあ·········」

 

 

「うん、終わった...」

 

 

「ああ、なんとか生き残ったな...」

 

今回はマジで死ぬかと思ったぞ......

 

 

『本当によく生きていたな、相棒』

 

あっ!ドライグお前!!今までなにしてたんだよ!何も言ってこねえなんてよ

 

 

『なに、お前達の様子を見させてもらってたのさ、力を貸すとは言ったが、やはり神器が使えなければ俺は役に立たんのでな』

 

そんなことねえよ、力がなくたって話が出来りゃやれることだってあるんだ。俺は別に神器が使えなくたってお前を役立たずだなんて思ったことないぜ? 

 

 

『相棒...フッ...フハハハッ!!やはりお前は面白いな孫悟誠!やはり貴様は最高の相棒だ』

 

な、なんだよ急に...そんなの当たり前だろ!

 

これからも力貸してくれよ、相棒

 

 

『任せておけ、相棒』

 

にしても...。とオレは思い出す。

 

 

イリヤと美遊の並列限定展開(パラレルインクルード)に俺達の力を掛け合わせた究極万華鏡(Longinus kaleidoscope )。あれは凄まじいものだった。

 

 

 

「......·んっ...ふぅ...」

 

父さん、なんとか生き残ったぜ......

 

死にかけたけど、父さんの持ってきてくれた仙豆のおかげだよ

 

 

『いやー、皆さんお疲れのようですねー』

 

 

『当然です。あんな強大な敵と戦っていたのですから』

 

コイツらは疲れたように見えねえよなぁ...無機物だからか?

 

 

「───────取り敢えず、お疲れ様」

 

ふと、そんな遠坂の言葉に振り替える

 

 

「貴方達がいなきゃ、きっとカードを全部回収するなんて到底出来なかった。だからイリヤ、美遊、それに悟誠。本当にありがとう、始まり方はちょっとアレだったし、色々思うところはあるけど、なによりも助かったわ」

 

はは、確かにそうだ...って、ん?イリヤちゃん達との出会いってなんだ? 

 

 

「色々ありましたが、セイバー、ランサー、ライダー、アーチャー、キャスター、アサシン、バーサーカーの全てがようやく揃いましたわね。あとは大師父に届けるだけですわ」

 

 

「ん...?......全部?」

 

確か集めるカードは七枚...だったよな?

 

俺の記憶が確かなら、まだ五枚しか集まってないはずだけど......

 

 

『二つほど見落としているぞ相棒、以前から美遊が使っていたランサーのカード、そして、特訓の時にイリヤスフィールが使っていたアーチャーのカードで七枚になる』

 

あ、そういやそんなのも使ってたっけ...

 

 

「...それじゃ、私達はそろそろ行くわ。これで大師父に弟子に―――」

 

そう言ってオレ達に背を向けた遠坂を余所に、甲高い声が響き渡った。

 

 

「オーホッホッホ!!!甘いですわねトオサカリン!!このカードは私、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが責任を持って大師父へと送り届けますわ。それでは御機嫌よう」

 

声は上空から。声のした方を見ると、何処かで待機でもしていたようにヘリが飛んでいた。ルヴィアはバラバラという音を吐き出し続けるヘリから伸ばされた梯子に掴まると勝ち誇った表情で遠坂を見下して高笑いを繰り返す。

 

ポカンと呆けた表情でそれを見送る遠坂。

 

 

「おーい、早く追いかけねえと持ってかれちまうぞ?」

 

オレのその言葉にようやく事態を呑み込んだらしい。

 

 

「ちょっっと、待ちなさいよ金ドリホルスタイン女ァァァッ!!!!!!!」

 

ダッ!!!と今までの疲れを忘れたかのように猛然と地を蹴り疾駆する遠坂。

 

おぉ...人間って限界越えるとあそこまで動けんのか

 

『いや、そういうことではないも思うが...』

 

オーホッホッホ......という人を小馬鹿にするような笑い声が、ヘリの音に聞こえてくる。

 

ははは、相変わらす仲の良い二人だな。

 

そんな二人が去っていき、俺達の間暫しの静寂が辺りを包む

 

 

「......えっと、その、ミユ、悟誠。改めて言わせて...」

 

 

「え?」

 

ん?なんだ?

 

そんな中、口を開いたのはイリヤちゃんだった。 

 

 

「戦いを投げ出して、ごめん。ミユや悟誠くんとせっかく友達になれたのに、私だけ逃げるような真似しちゃって......」

 

「イリヤ......」

 

イリヤちゃん...余程辛かったんだな

 

「でも、これからは逃げない。友達を見捨てて逃げ出したりなんか、絶対にしない!だから、その............」

 

イリヤちゃんは深く深呼吸をしてから、美遊ちゃんの瞳を真っ直ぐに見つめてその言葉を口にする。

 

「これからもよろしくね、二人とも!」

 

イリヤちゃん手を差し出される。

 

美遊ちゃんはそれを見て驚いたものの、すぐにそれを笑顔に変え、嬉しそうにイリヤちゃんの手を握る。

 

 

「うん·......。私も、これから、よろしく」

 

 

「............」

 

うんうん、美しき女の友情かな。

 

よし、ここはオレも乗っかるか!!

 

二人の手の上に手を置いて笑う。

 

 

「オレからもよろしくな!二人とも!」

 

 

「「うんっ!」」

 

そうだ、この友情を壊しちゃいけない。

 

なんとしても守って見せる。

 

 

 

 

 

 

 

例え、それでオレが死ぬことようなことになったとしても......

 

それが、オレに課された使命なのだから




はい、というわけでワンシーズン終了となります!

続きは書く予定でありますが、期間は少しばかり空くと思われます。

出来ればその時までお付き合い頂けるのであれば幸いです。

では、皆様、ここまでの愛読、ありがとうございました。

また第二章にてお会いしましょう!

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