Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー 作:ギミ
side悟誠
「あー...やっぱりか、受肉が半端で終わっちゃったせいなのかなぁ...。 僕の財宝のうち、武具の大半は──
──あっち持ちみたいだね」
殴り飛ばされた巨腕を、見ながら、少年が呟く。
その腕にはやたらと盾のようなものが張り付きまくっている。
「まさか、君に邪魔されるなんてさ、さすが、あの時僕を吹っ飛ばしてくれただけはあるね...」
君は最初に殺しておくべきだったかな? ...と、少年はなんの気もなしに言う。
「へっ、簡単に言ってくれるじゃねえか、そう簡単に殺られると思われるのは心外だぜ」
「まあ、そうだね、あの時も打つ手が無かったし、その子は邪魔されるし...。あーあ、もうこれしかないか...あまりやりたくはなかったけど...」
少しのやり取りの後、少年はその結界から現れた醜い何かに向けて歩き出した。
「けど、知ってた? その彼女、生まれながらに完成された聖杯だって」
「なっ...!!」
『聖杯...美遊様が...!?』
俺の横で同じくサファイアが驚きの声を上げる。
「そうさ、天然物でしかも中身入り。オリジナルに極めて近いとびきりのレアリティさ」
「人間が聖杯という機能を持ってしまった...と言うよりは、聖杯に人間めいた人格がついてしまった...と言えるのかな? まあ、いずれにせよ、あれは世界が生んでしまったバグだ」
「......ッ!! 勝手なことを...」
端で聞いていたイリヤちゃんが声を上げる。
しかし少年は気にした風もなく告げる。
「怒りなら僕じゃなくて、彼女の運命か、それを利用とした大人たちか──
それを見てイリヤちゃんが絶句する。
「なっ...んだ...コレ...」
「......ッ」
『これは...なんという...』
『こんな...こんなものが...英霊!?』
ルビーとサファイアも絶句している......。
「ああ......、とても醜いね」
少年が同じようにソレを見下ろしポツリと呟く。
「受肉して切り離された僕は、正直どちらの味方でもないんだけど」
おい、アイツ何をするつもりだ...?
何らかの力場を作りその上に立っていた少年が少しずつその体を傾けて始めたのだ。
「それでも、こうするのが一番自然なのかな」
「あっ...」
「なっ...にっ...して...!!」
そして、少年は醜い何かにその身を投げた。
「もうこの戦争は止まらない。死にたくなければ、カードを置いて逃げなよ」
その言葉を最後に、少年は落ちていき、巨大な何かに呑み込まれた。
「.........イリヤちゃん、美遊ちゃんを連れて...」
「勝手なこといわないで!!」
イリヤちゃんがいきなり怒り出した。
「悟誠くん、また一人でやるつもり!? あの時だって死にかけてたのにッ...!!」
「イリヤ......」
近づいて来たイリヤちゃんに胸元を両手で叩かれる。
「私たち友達でしょ!? 友達なら、そんなことしないでよ!!」
「......友達だからこそだ、イリヤちゃん達をケガさせるわけには...」
「そんなの悟誠くんだって同じだよッ...!! なんで...なんでそんなに自分を見捨てるの...?もっと...自分を大事にしてよ...ッ!!!!」
っ...。そう言われて言葉に詰まる。
オレはエミヤさん達に頼まれた護衛の任もある。
イリヤちゃんや美遊ちゃんのような、子供たちが傷つく姿は見たくない......。
生存率をあげるならこの中で一番強いオレが出た方が確率は上がる......。
「いくら...悟誠くんが強くたって...死んじゃったら終わりなんだよ...?私はミユも、悟誠くんも、どっちも失いたくない!!」
そう叫ぶイリヤちゃんは泣いていた......。
「っ......ごめん、悪かった...」
「......もういい、その代わり、もう二度としないで」
その言葉に、オレは頷くしかなかった。
「......これは感動的な光景だ、凄く感動したよ...。それと、もう終わったかな?」
そんな声が掛けられ、唐突に掛けられ振り向くと、そこには巨大なナニカと一体化したあの少年がいた。
「......待てるのかよ、そういう時は」
「僕だってそこまで鬼畜じゃない、最後の時くらい一緒にいさせてもバチは当たらないだろう?」
コイツ...本当に余裕だな......。
ドライグ、こいつには何がいいと思う?
『あんなデカブツには
そっか、ドライグがそう言うならそうなんだな。よし、いくぞドライグ!!!!
『嗚呼、ヤツに思い知らせてやろう、異世界の龍帝を甘く見たことをな!!』
「イリヤちゃん、オレは行く、だから、力を貸してくれ」
その言葉にイリヤちゃんは一瞬驚いたような顔をした後、強気の笑顔になり、言った。
「もちろんだよ!!二人でアイツを倒そう!!」
オレはそれにひとつ頷き、上空に飛び上がった。
イリヤちゃんが後を追って飛ぼうとしていたが、美遊ちゃんに呼び止められている。
「待ってイリヤ!!コレを、持って行って」
そう言って差し出されたのはサファイアのステッキだった。
「!! どうして...」
「アレはきっと、個々でやっても勝ち目がない...けど、ルビーと契約してるイリヤなら......」
「......サファイアはいいの?」
『はい、美遊様の希望でしたら、私は従いましょう』
『けど、危険ですよ?姉妹とはいえ二重契約なんて...何が起こるか......』
「もうそんなこと言ってる場合じゃないよ、ルビー。悟誠くんが戦うのに、私が戦わない訳にいかない」
強い覚悟を持った瞳でイリヤちゃんがいう。
『......分かりました。ですが、少しだけですからね』
ルビーもどうやら同意してくれたようだ。
「ありがとルビー。力を貸して!! サファイア!!」
『はい...!! イリヤ様!!』
その両腕に赤と青のステッキを握ったイリヤちゃんが眩く輝きを放つ。
[ドンッ!!!!]
「......君は、なにものだ?」
そして光が収まると、そこに居たのは
イリヤちゃん自身衣装に美遊ちゃんの衣装をごちゃ混ぜにしたような姿のイリヤちゃんだった。
その手にはルビーとサファイアらしい大きめのステッキが握られている。
「......すごいカッコだな、イリヤちゃん」
俺の真横に飛んできたイリヤちゃんにオレは素直な感想を零す。
「衣装に関しては何も言わないで...私だって恥ずかしいんだから!!」
まあだろうなぁ、顔真っ赤だし......。
けど、強そうだ...ヒシヒシとその凄さ感じる......。
イリヤちゃんだけに任せてられねえな!!
「いくぞ!! つぁっ...!!!!!! ボッ!!!!!!!」
『Welsh Saiyan! Transform Legend!!!!』
オレの周りから光が溢れ、その髪や眉を剃り立たせ、金色へと染め上げる。
瞳は青く染まり、周りにはバチバチとスパークが迸っている。
「さあ、やろうぜ...デカブツ」
第二ラウンドの開始だ......!!
◆◇◆◇◆SideChange◇◆◇◆◇
金色になった悟誠くん(
[ドドドドドドドッ!!!!]
そんな轟音が聞こえて来るほどの攻撃、私には何をしているのか見えない。分かるのはただ衝撃波のようなものが次々とその巨体から発されているだけだ。
かく言う私は、悟誠くんの邪魔にならないように、極大の魔力砲を撃ち抜く。
けど、この姿になって分かる......。
これは、なってはいけないものだ......。
先程から物凄い激痛が走ってる...これは絶対に良くないものだ。
[──いいですか、イリヤさん。可能な限り短期決戦でお願いしますこのモードは使用者の限界を遥かに超えた力を引き出せるようです。しかし......通常の魔力回路だけでなく、筋系、血管系、リンパ系、神経系のまでをも擬似的な魔術回路として──
[力を使えば使うほど、それらは摩耗し傷ついていくでしょう。ですからイリヤさん、どうか...]
変身前のルビーの言葉が蘇る。
「大丈夫だよ、ルビー。こんなもの、すぐに壊してあげる!!!! 」
[スドンッ!!!!]と言う轟音と共に一際大きな魔力砲が巨体に叩き込まれる。
「......ナイスイリヤ、だが、もう下がってろ......」
悟誠くんがそばに飛んできて激励をくれる。
「っ...まだ私...」
「その姿、無理してんだろ?」
「っ......」
何も言っていないのに、悟誠くんに言い当てられてしまった......。
「ほらな、ここまでの援護助かった、後は、俺に任せろ」
ポンと撫でてくれる悟誠くんの姿が、いつかの大人の姿に重なって見えた......。
「......うん、じゃあ、後はよろしくね...悟誠くん。ううん、やっちゃえ!! ソンゴセイ!!」
なんだろ...なんだかコレを言わなきゃいけない気がした......。
「あぁ、後は任された......」
うん、もう後は大丈夫...きっと悟誠くんならやり遂げてくれる......
そう思い、私はミユの待つ場所に戻っていった。
◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇
「やっちゃえ!! ソンゴセイ!!」
そんな激励を聞いた俺は、ヤツの目の前に降り立った。
「よぉ、デカブツ。そろそろ限界だろ?決着といこうじゃないか」
「はは、そんなことを言えるなんて...僕はまだ...」
ハッ...!!そんだけボロボロにしておいてよく言うな......
俺は気にせず腰を落とし、その両手を前に構える。
「かあぁ...!!」
そして唱えられる、最強の詠唱。
「めええぇ...!!!」
父さんが使う中でも一番よく使うコイツは......
「はぁ.........!!!!」
俺が一番頼りにして、もっとも信頼している......。
「めぇぇぇぇぇ......っ!!!!!!」
孫家最強の...この技だ......ッ!!
「波アアァァァァァァァアアアアッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
刹那、極太の青い閃光がデカブツ目掛けて迸った。
「なっ...なんだそれは...!!やめっ...ヤメロオオォォオォォッ!!!!」
[ズゴオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!]
とんでもない轟音と衝撃が辺りを揺らす。
そして、辺りに残った物は......後片もなく消し飛んだ更地だった......。