Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー 作:ギミ
side悟誠
「はふぅ~...。コートってなんてあったかいんだろう......」
あの後、オレ達はエインズワース家に向かっていた。
その道中にイリヤちゃんがそう呟いた。
その言葉にはしみじみとしたものが感じられる......
そう、現在イリヤちゃん達はギルくんに厚意で、コートを着用している。
それにあたってオレがやっていたシバリングは止めた。
「薄着で寒がっている女の子を放って置くわけにもいかないし、それに...悟誠さんを見殺しには出来ないしね 」
は? 見殺し......?
「ど、どういうこと...?」
「あれ? 知らないの? 悟誠さんがやっていたアレは、やり続けたら命を落とす危険なものだ」
ここまで持って死んでないのが異様なくらいだよ。と、ギルくんはため息を吐きながらいう。
アレ...そんなんだったっけか...随分と昔のことだから覚えてなかった......
「......知っていてそんなことしたの?悟誠くん」
「いや、オレも知らなかったんだ...」
イリヤちゃんの問いにオレは素直に答える。
実際忘れていたし、死ぬようなこととは思わなかった......。
「まあ、悟誠さんは僕から見ても異常な強さだから大丈夫なのかもしれないけどね。それより、お兄さんは良かったの? 何も着なくて」
ギルくんがオレにも問い掛けてくる。
「あぁ、ありがとな。けど、オレなら大丈夫」
さっき食った麻婆豆腐の所為か、まるで寒さを感じないのだ。
「さぁ! 打倒エインズワース!! やるですよ──!!」
田中は体操服の上にジャージの上着を来た姿で叫ぶ。
そう、田中もまともに着込んでいない
一番着ないといけないやつが着ていない...。
見てるこっちまで寒くなりそうだ......
「どう見てもこれから部活するぞって風にしか見えないのがどーにも......」
「狙うは全国です!」
「田中、わざとやってる訳じゃないよな?」
「本物の天然さんはやっかいだから頑張ってね二人とも」
こうしてオレ、イリヤちゃん、田中、ギルくんの四人はクレーター付近へとやってきていた。
「うわー...。近くで見ると凄い迫力......こんな大きな穴が出来るほどのガス爆発が起きるなんて......」
「ガス爆発?」
「うん、さっきのラーメン屋の店長が教えてくれたんだ」
「ふ~ん、一応仕事はしてるんだなぁ...あの人」
あの人...?あの店主やっぱり何か知ってるのか...?
「何ボヤボヤしてるですか。敵陣は目の前!後先考えずブッ込むっすよ!」
いや急になんなんだよお前...ってか誰だッ!?
「鉢巻絞めたらキャラ変わった!?」
『やるっすよー!!』と燃え、クレーター内に突っ込もうとする田中を『待ってー!!』と慌ててイリヤちゃん抑え込む。
はたから見たら何やってんだコイツら...である。
「やっぱり君達、無意味に楽しくて好きだなぁ。でも、間違ってもクレーター内には入らないでね。あっという間に感知されるから」
ギルくんの言葉に、イリヤちゃんが聞き返す。
「感知?」
「クレーター内は全部エインズワースの索敵感知内なんだ。中央まではおよそ一キロ。車廃物の無いこの荒野はあらゆる奇襲を許さない見えない城壁ってわけ」
ってことは、下手に入れば即死か......。
「そ、それじゃあどうするの?車とかで一気に走り抜けるとか...?」
「もしくはオレがみんなを背負って一瞬で走りきるか...?」
「悟誠くんの早さで動かれたら私たち無事にいられないよ!!!!?」
イリヤちゃんが田中の鉢巻を取りながら言う。
えぇ...。いい案だと思ったんだがな......
「その車って音速に近いスピードでも出せるのかい? そうじゃないなら、一キロの間に捕まってお終いだね」
ほら、やっぱりオレの案がいいじゃないか!!
「ヴィマーナがあれば一発だけど......流石に
ギルくんが空中に手を突っ込み、何かを探し出す。
「どうしたものかなぁ...。あれでもない、これでもない......」
どっかの少年アニメの青狸の如く、色んなものを虚空から取りだしながら、中を物色する。
「おっ! うん、これで行こうか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ちょっ...とっ...どうかとっ...思...うっ......」
「へっ...何がっ...ですかっ...?」
「ま、まあ...十中八九この格好だろうねっ...」
「田中っは...超楽しいですよっ...!? 」
「あっはっは」
「お前ら、もうじき敵陣に辿り着くぞ?」
そう、今オレたちは今...敵陣に乗り込もうとしている。
......オレが三人を背中に抱えて......。
あの後オレたちは、ギルくんが取り出した布を輪にして、その輪の中に入り、輪を掴み三人を背中に乗せ騎馬の様にクレーター内を走っていた。
「童心に帰...とはいわないけれど、こんな騎馬になるのも中々乙なものじゃない? それに、この布はのお陰で奴等に気付かれずに進めるんだ」
そんな便利なものかね...これが......
マジマジとその布を見る。
「この布でくくられた者は魔術的・視覚的に完全な隠匿状態となる。相手が索敵を魔術に頼っている限り、僕らを感知することはできない。だけど、この布、音までは消せないから本拠地内に入ったら、絶対に喋らないでね。話すときは小声で。敵と遭遇したら呼吸も止めてやり過ごすんだ」
「なあ、ギルくん。外から見てても思ってたんだが、やっぱり何もなさそうなんだが......」
「大丈夫。ここからはゆっくり進んで。ここからなら、ちょうど正面だ」
ギルくんの指示通り、走る速度を落とした直後、一歩踏み出した途端、急に暖かい風が俺達の肌を撫でる。
急に生温い風が頬を撫でた。
風が...生温い?
そして、次に目を開けたオレ達の目の前には、豪勢な屋敷と綺麗な庭園、上空には清らかな青空が広がっていた。
「なっ──ッ!!!! なにモゲッ......!?」
「はーい、大声のリアクション禁止ね」
叫びそうになったイリヤちゃんをギルくんが口を押さえて止める。
「ふいー...なんだが秋みたいにポカポカして気持ちいです......」
「春じゃなくてか...? っつか、そうじゃなくてさ...何がどうなってんのコレ?」
「さっきまで確かに何もなかったのに......目の前に城が......」
「何も無いように見せ掛けてるのさ」
三人を降ろし、庭園の中を歩きながら、ギルくんの話を聞く。
「見えない城壁に見えない本丸。こんな派手派手に居を構えて置きながら完璧に隠すんだ。まったく魔術師ってのはひねくれてるよねぇ」
辺りを見渡しながらギルくん達と共に進む。
確かに青い空...綺麗な花畑...そして場違いな程美しい城......。
こんなんじゃ...まるで......
「......ここだけ別世界の楽園みたい...」
イリヤちゃんも同じことを考えていたのかそう呟いた。
そして、これほどの大技をやってのけるのがオレ達の敵なのか......。
「さて、どうしたものかな......」
正面からは入らないで、ギルくんが思案するように呟く。
「なんで中に入らないです?」
「流石に正面玄関から入るのはマズそうだし、お城の中にミユがいるとも限らないでしょ?」
「こういう場合、離れの建物とかに囚われてするものだと思うんだけど......」
「まぁ定番だね」
裏口と思しき扉を見付け、そこに近づこうとした瞬間、扉が開き、一人の女性が出て来る。
それは、美遊ちゃんを連れ攫った二人の内の一人だった。
二枚目のアーチャーのカードを
壁に張り付き、息を殺し、オマケに気を極限まで消して、前を通り過ぎるのを待つ。
女性はオレ達に近づき、通り過ぎようとした時だった。ソイツは、突如ナイフを抜き、イリヤちゃん目掛けて振り抜いた。
振り抜かれたナイフは危うく、イリヤちゃんの通り過ぎ、上の壁に当たっていた。
「.........何もない…か」
ナイフを仕舞い、今度こそ前を通っていく。
「麻婆の匂いがしたのだが......」
女はそのまま歩きさっていく......。
「......そう言えば、匂いも隠せないんだった」
「頼むからそういう大事なことは忘れないでくれ......」
「また麻婆のせいで命を落とすトコだった...!?」
「………」
冷や汗を流しながらも、オレ達は進む。
「それにしても、危うくゲームオーバーになるとこだったね」
「あの人、ミユを連れ去って悟誠くん殺しかけた......」
「気も付けなよ。彼女はドールズの中でも特に手強いから」
ドールズ?その名前は確か......
「それはあのチビゴスロリも言ってたな、なんだそれ」
「あ、彼女とも会ったんだ。アレはまた別の意味でまずいね。ドールズはエインズワースが使役する兵隊みたいなものだよ。この家を滅ぼすってのなら必ず立ちはだかるけど.........どうする田中さん?」
ギルくんの問いに田中は少し考える様に唸る。
「うーん...。よくわかんないですけど、あの人は田中が滅ぼす人じゃない気がするです」
滅ぼす人じゃない...?エインズワースの人間じゃないのか?
「ふーん......それならいいけど」
「.........ねえ、悟誠くん」
イリヤちゃんが不意に話し掛けて来る。オレは二人から意識を外してイリヤちゃんの方をみる。
「どうかしたか?イリヤちゃん」
「この先...なんだか怪しくない?」
イリヤちゃんの視線の先には扉が......
「...怪しいな、アイツが、意味無くこんなところを出入りするとは考えにくい......」
「......行ってみよう!!」
イリヤちゃんが扉を開け、全員で中に入る。
階段を下り、付いた先は地下水路だった。
「どうなってるのこのお城......ここ、本当に冬木市?」
「地下水路だね。
持ってくるって...いくらなんでもおかしいだろ
「ハズレかな?こんなところにミユがいるとは思えな──...「誰かいるです」えっ!? ど...どこ?」
ふいに発した田中の言葉にイリヤちゃんが食いつく。
「あそこの扉......中に誰かいるです」
通路の先には鋼鉄の扉があり、田中はそこを見つめている。
「いかにも牢獄って感じの扉だね。それに、あの大げさな錠前......」
「それじゃまさか.....ミユ!?」
イリヤちゃんが布から飛び出し、走り出す。
扉の前に近寄ると、イリヤちゃんは扉を叩き声を掛ける。
「ミユ!! そこにいるの!?」
イリヤちゃんか必死に扉を叩きながら呼び掛ける。
しかし返ってきた声は......
『......誰だ?』
扉の中から返ってきた声はしゃがれた男の声だった。
どう考えたって、美遊ちゃんの声じゃない。
「お、男の人?」
「美遊ちゃんじゃないのは確かだな......」
「別人だったか。それにしても酷くガラガラ声だねぇ」
『エインズワースの人間じゃ...大丈夫ないのか?......お前達は......美遊を......知っているのか......?』
外から声が聞こえていたのか、声がそう問いかけてくる。
「私達は美遊の友達です!!」
「あの子には助けてもらったからな、今度はオレが美遊ちゃんを助けに来た」
『とも......だち......?助けに...??』
すると扉の中から嬉しそうな声と泣いてる声が聞こえた。
『はははっ...... そうか...... そうなのか......。叶っていたんだ.........俺は────』
そう言って話し出した男は......
『美遊の兄だ』
衝撃的な事実を口にした。