Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー 作:ギミ
side悟誠
「はは...まさかこんなことになるとは......」
あの後、ギルくんに着いて行ったオレたちは、目の前の光景に唖然としていた。
「学校の屋上に温泉とは...しかも完全に露天風呂......」
「いいでしょ? せっかくだから国風に合わせたデザインにしておいたよ」
自信満々に言うギルくんだけど......
「それに関しては大失敗だな...。まあいいか」
『もうなんでもいいわ!! おっきなお風呂サイッコー!!』
敷居の向こうからクロのはしゃぐ声が聞こえてくる。
そりゃそうか、クロたちからしてみりゃ数日振りのマトモな風呂なわけだし......
せっかくだし、オレも温まらせてもらうかな......
オレも湯に浸かり身体を暖め始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あ゙〜...
『...ねえ、田中さん』
湯の心地良さを堪能していると、不意に向こうからイリヤちゃんの声が聞こえてきた。
その声音は真面目な時のそれだ......。
『なんです?』
対する田中はとてもやる気のなさそうな返事だ
『教えて欲しいんだ、田中さんのこと、...田中さんが覚えていること』
『なんにも覚えてないです」
『なんでもいいの!! 何か引っ掛かりそうなこととか......』
必死そうなイリヤちゃんの問いかけだが、あまり芳しく無さそうだ。
『逆に考えて見れば?いつからの記憶ならあるの?』
さすがクロ、こういう時の起点はピカイチだな。
『そっか! 記憶が無くなった直後のことが分かれば...』
『ふむぅ、その状況から何かを推察できるかもしれません』
それでなにか情報があれば、いいんだが......
『田中さん思い出して! 記憶が無くなった後で一番最初の記憶...!!』
畳み掛けるなぁ、イリヤちゃんのやつ......
『んー? ん──...!! 』
『 ......雪が降ってたです。周りに誰も居なくて、歩こうとして足がズルってなって、地面が冷たくて、手とか足とか痛くて......』
『目を開けたら悟誠さん達がいました』
・・・・・・・・ん?それってさ
「オレと初めて会った時の事じゃねえか!!!」
『てへっ...うんめー的です?』
こんなアホな運命の出会いなんてイヤだ!!!!!
『つまり記憶を無くしたのはあなた達が出会う直前ってこと? というか、田中、悟誠は渡さないわよ?』
やめろクロ、田中にはそんなこと言っても伝わらないからな......?
『これじゃなんにも情報増えませんねー...。憐れなまでに役立たずですねー』
『空飛ぶおもちゃに憐れまれたです!?』
『うー......覚えてないですけど、田中は......』
おっ? なんか思い出してきたか...?
『イリヤさんや悟誠さんに出会う前、暗くて、なんかモヤモヤしたとこにいた気がするです』
なんだなんだ...?なんだか話が......
『田中はずっと...。一人だったような......』
.........田中も、そうだったのか...あの世界に来たばかりのオレや美遊ちゃんのように......
『...ごめんなさい、無神経なこと聞いちゃって...。もし辛い記憶なら......』
『イリヤさん』
田中のそんな声が聞こえた直後のことだった......。
[チュッ]
んん...?なんの音だ今の......
『──ッッ!?』
『ななッ...なにをー!?』
『プロレスごっこです!!』
『昨日、クロさんと悟誠さんがやってたの見ました!!』
あー...そういや突撃してきたっけ......
めっちゃ慌てふためくイリヤちゃんの声が聞こえてくるな......。
あの音ってアレだよな?クロの得意な......
『悟誠それ以上考えたらダ〜メ♪』
「だからナチュラルに読心するなって...!!」
アイツらは覚妖怪かなにかか...?
『でも、田中...たぶん幸せです!!」
ん...?多分......??
『イリヤさんや悟誠さんに出会えたから。記憶が無くても寂しく無かったです!! 怖くなかったです!! だから、もう昔の事は思い出さなくてもいいかな...って思ったですけど』
『どうしても一つだけ、無視できない気持ちが残ってるです』
『田中はエインズワースを滅ぼします』
『その為だったら自分がどうなっても構わない』
『......わかんないですけど、これだけは絶対に忘れられない気がするです』
そうか、それが田中の覚悟なんだな......
そんな中、最初に口を開いたのはクロが声をかけてきた
「悟誠。今のギル、訳知り顔してるでしょ」
訳知り顔、というかなんか......
「凄く、悪い顔してたな......」
「そんな顔してないってば !! ......まぁ、なんにせよさ、エインズワースとはもう一度やり合うことになるんだ。記憶がどうであれ決着はつくよ
──遠くない未来にね」
「田中やってやるです!!」
しかし、オレたちはまだ知らない......
「んゅ―――......
何処に行けば会えるのかなぁ......
イリヤお姉ちゃんと......
悟誠お兄ちゃんに」
とんでもない災厄が、刻一刻と近づいている事を......