Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー 作:ギミ
道具として...人間として...です!!
side士郎
『七つまでは神のうち』
数えで七歳を迎えるまでの稚児は人ではなく神や霊に近い存在である──
かつて、そんな
乳幼児の死亡率が極めて高かかった時代。子供は、人と神の境界に立つ両義存在と見なされていたんだ。
医療が発達した現代では失われて等しい民族伝承だけど......
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今から五年と九か月前......。
「
親父と共に冬木に向かう車の中、俺は今回の目的の資料に目を通していた。
「ああ、冬木の地で
「魔術とはなんら関わりのない一般の家系...。少なくとも表向きはそうされている。歴史の長さ以外には取り立てて事件も功績もない家だが、一つだけおかしな点があった」
「おかしな点? なんだよそれ」
「...その家で生まれた子供を見た者はいない」
「......? どういう事だよ?」
意味が分からない俺に親父が補足で説明をくれる。
「正確には数えで七歳以下の女児に限る。それ以上の歳にな?と突然人前に出てくるようになる。『病弱な体質が治った』『別宅から越してきた』『親戚の子を引き取った』等、そんな理由をつけてね。僕はこれを──」
「
「神稚児......」
「正直言って、情報の確度は極めて低い、秘匿され続けた神の子なんて
「それでも、可能性があるんなら、全力でやって最後まで戦う!! 正義の味方として!」
「フゥ......あの子に似てきたね、士郎。僕はそんな柄じゃない」
「えー!! いいじゃんか兄ちゃんのあの気概!! まあ、じい さんのやり方も嫌いじゃないけどな!!」
親父の名は衛宮切嗣。俺の養父であり魔術の師であり...そして、『正義の味方』。
世界から苦しみや悲しみを無くし、恒久的な平和をもたらそうと、馬鹿げた願いを本気で抱く変わり者だ。
俺は幼い頃に災害で家族を失った。自分も瓦礫に埋もれ只々冷たい死を待つだけだった......。
きっと、それまでの
だから......
《!! 見つけた、
《あぁ!! よかった...!!生きてた!! ありがとう...生きていてくれて...ありがとう!!》
あの時、そんな二人に、憧れたんだ。
その日から俺は、衛宮切嗣の養子...そして、その息子の義弟として生きていくことになる。
人類救済の方法を求めて二人でたくさんの他を巡った。
魔術・化学・礼装・儀式・宗教・神話・伝承・民話・口伝・伝説......
可能性があるなら手段を問わず探し歩いたが、その全てが徒労に終わった。
実際、今度の『神稚児』とやらのことも実の所、期待などしていなかった。
けど......
『二人とも!! 止まれ!! 』
不意に頭に響き渡る兄ちゃんの声が響き渡り、切嗣が慌てて車を停め、呟いた。
「あれは...いったい...?」
......着いた頃には既に、何かが終わっていた。
「二人とも気がついたか、アレが見えたからオラ、慌てて止めたんだ」
俺たちが唖然としている傍に、兄が降りてきて言う。
この兄こそが兵藤一誠。俺の尊敬するべきもう一人の兄だ。
「に、兄ちゃん...なっ、なんなんだよあれ!?あの黒いモヤみたいなの...町を...飲み込んで......」
「......オラにも分からねえ、ただとんでもなくやべえもんだってことくらいはオラにも分かる」
「何が起きているんだ...? こんな現象...。人の域にあるものじゃない...!!」
「ま...まずいぞじいさん......!! あの黒いの...
どんどん広がってる!!」
「切嗣、士郎、おめえ達は引き
「!! 一誠、お前まさか...!!」
「...オラ、あの黒いのを止める。こんなことになっちまって、
そういうや否や、兄はその全身からオーラを溢れさせ街の方へと飛んで行ってしまった。
「一誠...!! チッ...アイツは...!!」
切嗣がそうボヤいた直後だった......。
[カッッッッッ............!!!!!!!!!!]
神々しく、純粋な何かが、闇を消し去った。
◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇
街を飲み込む闇をどうにか食い止める為、オラが飛び出した直後......
あったけえ光が闇を消し去ったのをオラも目撃していた。
「な、なんだ...今のは...」
すげえあったけえ...力強え光だった......。
それにあの場で感じた馬鹿デカい気......
「確か、こっちだったよな」
先程感じた気の方角に向けてオラは全速力で飛んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここだ」
気の感じる所まで辿ってみると、そこには古い屋敷の残骸......その中にその子はいた。
「おめえは......」
そこにいたんは黒髪に赤い瞳の少女だった。
直後、少女の座る部屋の柱が崩れ、少女の真上に落下する。
「っ...!? あぶねえ...!!」
──
気を全開にして跳び、間一髪少女を抱え飛び退る。
「ひゅー...あぶねぇ...。と、
「......くる...しい......。かあさまのほかに...だっこされたのはじめて」
オラの腕の中で...少女は静かにそう言った。
どうしたものかと困ったオラは、その子を連れて切嗣の所まで連れてくのだった......。
柱の瓦礫が...刹那の間、少女に迫らず静止していたことに気が付かずに......。
◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇
あの後、兄が連れてきた少女は、探していた神稚児だった。
それを知った親父は、その少女を保護、目的のために使用すると決めて引き取り、そうして四人の生活が始まった。
それからだ、親父と兄が対立するようになったのは......
「オラ、そいつはできねえ」
「なぜだ一誠!! 前から言っているだろう!!あの子は...!!」
「美遊はオラの妹だ!! ほらを道具みてえになんかしたくねえ、切嗣、おめえのやろうとしてること、オラはぜってえ手伝わねえ」
「っ...そもそも、お前が
「............」
道具として美遊を使おうとしている親父と、人として、そして妹として可愛がっている兄として意見が食い違ったのだ。
親父の言う『あの話』がなんのことを指すのかは俺にはよく分からない......
俺は、どちらに着くのが正しいんだ......。
「シロウ、あそぼ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
親父が病に倒れ、亡くなったのはそれから少ししてからだった。
結局、衛宮切嗣は朔月美遊を道具として使うことは叶わず、その願いはついぞ叶われることなく終わった。
兄は泣きそうだった。ただ必死に涙を堪え、親父を送り出していた。
その後、兄は俺や美遊を育てる為に奔走していた。
親父の後を継ごうとはせず、美遊を一人の少女として接していた。
よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む
兄はそう言って俺や美遊を本当の妹のように接してくれていた。
けど、俺には分からなかった。
親父のように美遊を道具として扱い切る事も出来ず、かと言って兄のように人の子として育てる事も出来ずにいた......。
そうして、数年の時が経ち、俺は高校生になった......。