Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー 作:ギミ
side士郎
親父が亡くなってからから数年後......
俺は高校生になっていた。
「...よし、着くようになったな。電熱線が断線してただけか、ヒューズが無事でよかった」
ある冬の日、俺は高校で備品の修理をしていた。
工具箱を手に持ち教室を出てこの修理を頼んできた人物に声を掛ける。
「修理終わったぞ、生徒会長」
「そうか、ご苦労だった」
「まだ壊れてるストーブあるんだろ? 次はどこなんだ、ジュリa「ちょちょちょっちょーっと待ってーッ!!!」ど、どうした...?」
急に大きな声なんか出すから驚いたじゃないか......。
「おっおとーさんがキリツグで...!? ミユがかみのこで...!? ジュリアンがせーとかいちょ...!?」
「おまけにお兄ちゃんに兄がいたって...。もういろいろ衝撃の事実過ぎて処理しきれてないわよ......」
『田中さんは開始三十秒で寝ましたね』
そうなのか?なんかチビに...悟誠だけは何ともなさそうだけど......
「生徒会長は柳洞一成ではありませんの!?」
柳洞一成...?
「いや、俺の知ってるアイツは『
「柳洞なら柳洞寺っていう寺なら知ってるけど、少なくとも俺は一成って人は知らないな」
「...衛宮君。アインベルン・エーデルフェルト・遠坂・......間桐。これらの名前に聞き覚えはある?」
どうだったかな...あまり聞き覚えはないけど......
「残念だけど、アインベルンもエーデルフェルトも遠坂も知らないな。けど、間桐なら知ってる」
それを聞いた遠坂がピクリと反応したのを俺はスルーして、再び口を開いた。
「......続きを話すぞ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「──衛宮士郎、お前はどうしてわざわざ
昼食時、不思議で仕方ないという顔でジュリアンが問いかけてきた。
「そうだなぁ...一番はお茶が淹れられるからかな」
ジュリアン...少し皮肉屋なところもあるが、数少ない俺の友人だった。
「チッ お前がいなけりゃ一人で快適な空間だったものを」
「寂しいこと言うなよ、今日も昼飯そんなか?俺がお前の分まで弁当作って来てやるって言ってるのに」
「気色悪い事言ってんじゃねぇ」
少なくとも、俺はそう思っていた
「まあ、飯の時くらい話し相手がいてもいいだろ!ただでさえこの学校、人が少ないんだからさ」
「人が少ないのは学校だけじゃないだろう」
ジュリアンの言葉も最もだ......
「そうだな、五年前の災害以降、この町にはほとんど人がいなくなった。報道では特殊なガス資源による爆発事故...ってことになってるけど、
「...衛宮、お前はあの災害を実際に見たか?」
「ああ......底知れない闇のようなものが町を飲み飲んで...「その闇が...晴れた瞬間は?」」
あの時の事か......兄さんが止めるって突っ込んでったのが印象深いからな......
「いや、逃げるのに必死で見なかった」
「......そうか」
そう話すアイツが、どこかほっとしているように感じたのは...、俺の勝手な希望だろうか
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時は飛んで放課後のことだ......。
「──なあ、ジュリアン」
「...言ったはずだ、お前のくだらない話に付き合うのは飯時だけだと」
「例え話なんだけど...」
「もし五年前の災害みたいなことがもう一度起こったとして......仮に今度はそれが世界規模だったとして......」
「誰か一人を犠牲にすることで他の皆を救えるとしたら...どうする?」
「話を聞け!! ....で、誰かとは誰だ?」
えっと、そう言われると困るけど......。
「誰...か、まあ例え話だから誰でもいいんだけど...。そうだな、自分の妹......とか「妹だ」......え?」
「妹、と言ったんだ」
......ジュリアン、お前......
「知らなかったよ、お前シスコンだったんだな」
「あぁ!?」
「じゃあ俺部活あるから、また明日な」
そうして俺はジュリアンと別れ、部活に向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「そっか、今日も部活かぁ、士郎。おめえも
部活を終え、少し後輩と話して帰ってきた俺は、先に帰って来ていた兄さんと話していた。
「大変って...そりゃ兄さんの方だろ? いつも動き回って働き詰めじゃないか」
「はははっ!! オラは大丈夫だ!! 父ちゃんの遺産を使い潰すってことだけはしたくねえかんな」
この数年、兄さんは親父の呼び方を変えた。多分、美遊の教育の為にとかそういうことだったんだろう。
「有難いけど、無理しないでくれよ? 気がついたら病院に運ばれてたなんて聞きたくないからな?」
「任しとけ!! おめえや美遊を置いて死ぬ訳にはいかねえ」
そう言ってニッ!! と笑う兄さんはそのまま部屋を出て言った。
「あ、おかえりなさい士郎さん」
入れ替わりで入ってきたのは
この数年で、美遊は大分女の子らしくなったと思う......
そのエプロンも全て兄さんがプレゼントしたやつだったはずだ。
「今日は誠兄ちゃんが肉じゃがが食べたいっていうからいっぱい作ったよ、具は小さめに作ったから残ったら明日のお弁当に入れるね、あんまり残らないかもしれないけど...。それから──」
俺が当たり障りのない情報しか渡さないのに対して兄さんはどんどんと少女向けの漫画や服なんかの小物も買ってあげている。
それを反映するように美遊は兄さんのことをいつの間にか誠兄ちゃんと呼ぶようになった。
俺は、切嗣のように道具として扱うこともできず、かと言って兄さんみたく妹として接して育ててやることも出来ない......
俺は...いったいどうしたいのだろう
「............」
そんな俺を兄さんが影から見守っていたことをこの時の俺には知る由もなかった......。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜の魔術の鍛錬を終えて、土蔵を出ると、縁側に座る美遊の姿が目に入った。
「鍛錬お疲れ様。士郎さん」
「まだ起きてたのか?」
「うん、星座を探してたのと、誠兄ちゃんが出掛けたから待ってる」
「兄さんか、また修行にでも行ったのかもな。にしても星座か、美遊もロマンティックなところがあるんだな」
「天体の運行に物理以外の意味などないはずなのに見かけ上の星の並びに無関係の絵を当てはめた理由が知りたくて......」
「.........」
兄さん、あまり教育が上手くいってないように見えるぞ......。
「...そういえば、オヤジもここでよく星を見てたよ」
「オヤ......切嗣さんが? どうして?」
「どうしてだろうな、もしかしたら、星に願い事でもしてたのかもな」
「???...ハッ!? もしかして星の並びに何らかの魔術的作用が...!?」
それは...違うと思うけど......。
「いや、そういうんじゃなくてさ...。おまじないみたいなもんかな」
「内に秘めたささやかな想いなんかを星に願うんだよ」
「月じゃなくて?」
「月じゃなくて」
あの時、切嗣はどんな想いで、星を見ていたのだろう
思い出すのは生前、切嗣が口にしていたことだった......。
《人は人を救うことなど出来ないのかもしれない...。できるのは選ぶことだけだ、僕はただ少ない方を切り捨ててきたにすぎない数にしか価値を見いだせなかったんだ...。悟誠と違ってね》
あの時の切嗣の言葉は、まるで悟誠と自分の正義は違うと言っているようだった......。
「......星に願いごと、もし...ひとつだけ叶うのなら」
「誠兄ちゃんや士郎さんと本当の兄妹になりたい」
そう願った美遊のささやかな願いは......
「......なんて、駄目だよね」
「......いや、ダメなわけないだろ!」
「ああ!! そうだぞ美遊!! おめえや周りがどう言おうと、オラ達は本当の兄妹で家族だ!!」
急に割り込んできた声の主に驚き、俺はその方向を見る。
「......兄さん、帰ってたのか?」
「!! おかえりなさい、誠兄ちゃん」
そこには汗を滴らせていい笑顔でタンクトップを着た兄さんが立っていた。
「ああ、ついさっきな。さって、もう夜もおせえし、おめえ達は早く寝ろよ?オラもうちっと修行してから寝るからよ」
「うん、じゃあおやすみ、誠兄ちゃん、士郎さん」
「わかった、兄さんも無理するなよ?」
「ああ、おやすみ二人とも」
出来れば、こんな日がいつまでも続けばいい...俺はそう思わずにはいられなかった......。