Fate/Drag Emperor ドラゴマ☆ゴセー 作:ギミ
side士郎
その翌日からだ......
「さぁ美遊。勉強を始めるぞ」
「......いきなりどうしたの?」
いきなり言い出した俺に美遊がキョトンとした顔をして訪ねくる。
「一般的な教養というか...一般常識から始めようか。今まで俺が美遊に渡してきた本は大分偏ってるからな」
「そう...なの? けど、士郎さん。私、これ誠兄ちゃんから貰ってるよ?」
んん...?
「へっ...?そうなのか?」
「うん、『美遊も生きてくなら一般常識くれえ覚えとかねえとな!!』って...」
は、はは...。さすが兄さんだ、やることが早い......。
「そうだったのか、悪い...全然知らなかった......」
「ううん、いいの。でも、どうして急に?」
「......近い内に──」
「お前を外に連れ出そうと思う」
出鼻はくじかれたが、俺はその目的を言う。
「そと..................って?」
......さすがに急すぎたか
「急に言われても困るよな。お前にとって世界は屋敷の中だけだったから...。 でもこれからは...「だったらわたし」」
「海が見たい!」
被せるように言った美遊に俺は少し驚いてしまう。
「......ははっ、了解だ。海なんてすぐそこだ、歩いてだって行けるぞ」
「ほんとっ?」
「ああ、今度兄さんと三人で行こう。その為にもまずは交通法規から...いや、道徳からか? って、この辺りは兄さんが教えてくれてるか?」
「うん、だけど復習の為にもう一度やる。任せて士郎さ......ううん、お兄ちゃん!」
お兄ちゃん...か、兄さんだけじゃなくて、俺にも心を許してくれたんだな......。
このことはまた兄さんとも相談しないと...急に言っても予定合わせられないだろうし......。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後、登校中に小学校を見て基本的なことを思い出したり、後輩にからかわれたり、学校で親友から俺自身も気づかない変化を指摘されたりして、感じたんだ。
ああ、本当に──
そんな日々が幸せだった。
口の悪い親友がいて
慕ってくれる後輩がいて
家には、慕うべき兄と護るべき妹がいる
俺は、親父のような正義の味方になれなかった半端者だけど
その選択に意味はあったのだと
思うことが出来たんだ──
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の休日、俺達は屋敷の外で人を待っていた。
「いよいよ......だな」
「怖くないか?」
「怖い...?どうして?」
そう問いかける俺に、美遊は両手で俺の手を握って微笑む。
「隣に誠兄ちゃんやお兄ちゃんがいてくれるのに、何を怖がるの?」
「美遊...」
「......そうだ、この言葉...。ずっと言ってみたかった...」
「『行ってきます!!』」
「ああ、行ってこい美遊、気ぃつけて行くんだぞ!!」
急に入ってきたその声に俺はすかさずツッコミを入れる。
「兄さん...。何言ってんだよ兄さんも行くんだろ?」
「はははっ!! こういうんは返事くれえ欲しいもんだろ? 」
悪びれない様子で話す兄さんに苦笑する。
「兄さんも来たことだし、行くか」
「うん!!」
そうして俺達は家を出たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
付近の神社の前を通り、バスに乗り、俺達はある目的地を目ざして歩いていた。
「お兄ちゃん、海はまだ?」
美遊が期待した声で問いかけてくる。
「それは後でな、まず最初に行くところがあるんだ」
「......」
兄さんはなにも言わない。事前に話した時も何も言わなかった。
そうしてやってきたのは、古びた屋敷だった。
そこで俺達はある場所で足を止めた。
そこには不揃いの岩が三つ並べて置いてあった。
「これは......なに?」
美遊が不思議そうに聞いてくる。
「それは、お前の...本当の家族の墓だ」
「.........」
「えっ...?」
「覚えてっか?オラが美遊と初めて会った場所...。そんで、おめえの生まれた家だ」
兄さんがゆっくりと口を開く。
「家......? 母さま...たちのお墓......?」
美遊はまだ知らない...。
「オラと士郎達で埋葬したんだ...。助けられたのは、おめえだけだった」
五年間、ずっと隠し続けてきた......
朔月家の血を引く
俺と切嗣は、
全てを伝えて懺悔して、俺達の新しい
「どうしてかな...あの頃のこと、思い出そうとしてもあんまり思い出せない」
「ただ、母さまの手の温もりだけは覚えてる。そっか......ここであの時わたしは、ひとりぼっちになってたんだ」
「そんなわたしを、誠兄ちゃんやお兄ちゃん達が助けてくれたんだね」
「ああ、オラはな......」
そう言って兄さんは俺を見てくる。
まるで、早く話せというように......
「......美遊、聞いてくれ、俺と切嗣は──お前を助けたかったんじゃ...「くだらねぇ」」
その時だった。そんな声が割り込んできたのは......。
「えっ...?」
「誰だおめえ...」
「くだらねぇ...。ああ心底くだらねぇ筋書きだなクソが」
「
そこにいたのは、ジュリアンだった。
◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇
「ジュリアン...?どうしてここに...?」
しかし、当のジュリアンと呼ばれた少年は士郎の問いには答えず睨むばかりだった......。
なんだアイツ、なんか嫌な気配を感じる......
オラがそう警戒していると、不意に背後に掴まれる気配があった。美遊だ......。
「......」
「安心しろ美遊、オラ達が着いてっからな。士郎、今すぐ美遊を連れて逃げろ」
「え? 何言ってんだ兄さん、あいつは俺のともだ「アレで間違いないか?」」
「エリカ」
その言葉の直後、ジュリアンの背後から見知らぬ少女が現れ顔を出した。
エリカと呼ばれた少女は美遊をジッと見つめていう。
「......うん、たぶんせいしつはなくなってるけど、まだ...」
「
「っ...!!?!」
なっ...なんだって...?だってオラは美遊を......
「ずっとここを監視していた。人が消えたこの町でわざわざここに立ち入る人間がいるとしたら、町から出ていた朔月家の親族か、或いは...盗人だけだ」
それを聞いて、オラは昔切嗣が言っていたことを思い出した。
『──一誠、これだけは約束してくれ、美遊を外に出てはならない。誰の目にも触れさせてはならない...。
そうしなければ必ず見つかってしまうだろう
だから、もし誰かの目に触れてしまったら、キミが必ず守り抜け、キミは僕と違って、全てを救うことが出来る存在だ』
「町を飲み込んだ侵食、それを祓った光の柱はここから登っていた。ずっと探していた、この
「それを奪った盗人を...!!」
コイツらは美遊を奪う為に来たヤツらか...!!
「!! おめえ達逃げろ!! ここはオラが何とかする!!」
「兄さん!? で、でも!!」
「早く行くんだ!!! オラにぶっとばされてえか!!」
「っ!! 美遊、行くぞ!!」
「う、うん...」
オラの怒号に士郎は美遊を連れて走り出した
「逃がすかよ...」
なにかする気だ、そうはさせねえ!!
「そうは...っ...っ!!」
直後、背中に激痛が走った。
見れば、オラの背後にいくつもの剣が突き立っている......。
「ぐあぁぁっ...!!」
咄嗟のことで避けられなかった俺はその場に倒れ混んでしまう
「ジュリアン様の邪魔はさせん」
「兄さ!? グあっ...!!」
「お兄ちゃん!? 誠兄ちゃん!!」
「待て...!! 美遊に...妹を...さわるんじゃねぇ!!」
痛む身体を無視して起こそうと必死に体を動かす。
「...ずっとお前を探していた。この世界に残された本物の奇跡を。...朔月美遊。 今をもってお前は、俺の
「あっ...」
美遊の額触れたジュリアンがなにかをすると、美遊は力なく崩れ落ちた。
「や...めろっ...!! オラの妹にっ...手ぇ出すなっ...!!」
「や......めろ......ジュリアン...ッ!!」
オラと士郎の言葉を遮り、少女が口を開く。
「五年間えのしんしょくじこを、止めてくれたのがそのお姉ちゃんなんだね、本当によかった! お姉ちゃんがいてくれればまたじこがおきてもだいじょうぶ!!」
な、なんだと...!?
「今度は事故など起こさない、この器なら足りるだろう」
なにを...言ってんだ......
「町は滅びたが、儀式の再演には都合がいい。......次こそは必ず成就させる」
「おめえ、何言ってんだ!! その口ぶり...そんじゃおめえが...!!」
町の人達を...美遊の父ちゃんや母ちゃんを消し去ったあの──
「おめえが!! あの闇を引き起こしたんか!!」
「──そうだ、
「っ...!!ジュリアン!! おめえは...ッ!!」
あまりの怒りに頭に血が登り、ジュリアンに飛びかかろうとするが、ダメージを負いすぎた身体は言うことを聞いてくれない......
「精々吠えているといい、端役くん」
「まっ...まて...!!美遊を...美遊を
ジュリアンと美遊、それともう一人が消えていった虚空を見つめ、その場はオラの絶叫が虚しく響き渡るだけだった......。