どんどんカーマちゃんがチョロくなっていく……
さぁ帰ってきました、ホーム冥界。どうやって帰ったかはとりあえず[単独顕現]って言っとく。便利だね。このスキル。
「エレちゃーん! ただいまー!」
「きゃっ! もう、お母様。飛び付いてきたら危ないでしょう」
「えへへー」
もうね、この光景だけで生きてる実感湧く。帰ってきた感じする。
「あれが冥界の女神様ですか……。どちらかというと私とは正反対なマジメちゃんな気がするのですが」
「そうだねぇ。性格的にはだいぶ真逆じゃないかなー」
片方は冥界を管理する女主人として、自らを律して自分に厳しく、他人にも厳しくを地で行くエレちゃん。
もう片方はその弓矢を持って人の恋情を呼び起こす、どちらかといえば規律を乱すタイプのカーマちゃん。
うん。真逆だねこれ。
人間だったら自分の持ち得ないモノに惹かれるとかそういう話もあるし、何処かしかで繋がりが持てそうな感じするけども……。それぞれ権能持ちの神様同士で性質が違うと流石に仲良くは無理かなぁ……。
「まぁ私に嫌なことしない限りは仲良くしますよ」
「おっ、意外と前向き」
意外や意外、カーマちゃん様が突っぱねる事はないとの事。
これが……成長ってモノなんですかっ! (早い)
「それに私はどっちかっていうとお父さん派です。あちらは見るからにお母さん派でしょう。お父さんの匂いが嗅げるなら別にどうでもいいです」
「だから私の背中から離れないのねカーマちゃん」
台無しである。むしろ成長して無かった。
というか可愛いなカーマちゃん。抱っことか横抱きじゃなくておんぶを選択する事によって、お父さんの両手が空くように考えてるでしょ? お父さんにはお見通しなのです。お父さんの事も考えつつ、自分に最大限メリットのある行動をしている。もしかしなくても悪女ちゃんですね。可愛い。
とりあえず私もエレちゃんに挨拶しておかないとね。挨拶は大事。家族のコミュニケーション。
「ただいまエレちゃん」
「おかえりっお父様! 申し訳ないけれど、お母様をどうにかしてくれませんこと!?」
「うおー、かわゆいぞー!」
頭に登ってエレちゃんの髪をわしゃわしゃしてる。ティアちゃんは基本娘に嫌われるような事しないし、エレちゃんも存外悪いようには感じてないでしょうに。ウチの嫁さんは甘えるのと甘やかすのは得意分野だからね。
とはいえこのままだと話が進まんのよティアちゃん。
「ティアちゃーん。帰ってきた目的忘れてるぞー」
「むっ! そうだった!」
そのままトテトテとこちらに寄ってくるティアちゃん。ティアちゃんにとってはここはホーム。居心地がいいのだろう。他所へ行くと私の肩からなかなか降りないからね。
「さてエレちゃん。こちらお持ち帰りした新しい家族! カーマちゃんです! 仲良くしてね!」
「カーマでーす。インドの愛の神でーす」
私の前に立つカーマちゃんが心底やる気なさそうに自己紹介。とってもダウナー。思わずこっちもあんな感じになっちゃいそう。
「……お持ち帰りですか。まぁお父様の奇抜な行動は今に始まった話じゃありませんし、そこまで驚きはしないのだわ。こちらも初めまして。あなたの紹介に倣うのであれば、私は古代メソポタミア神話の冥界の女神ですわ」
対峙するカーマちゃんとエレちゃん。
初手喧嘩カードは勘弁してね……?
「なんか第一印象とは違いますね。とっても苦労してそうな感じがします。苦労人気質な感じが。ちょっと共感しちゃいますね」
「あら、あなたもそう思ったの? 奇遇ですわね。同じ親を持って振り回されそうな感じがすごくシンパシーを感じるのだわ」
そこからは無言で近寄り、静かに握手していた。
うん。仲良ければそれでいいや!
っとカーマちゃんが離れた隙にティアちゃんが私の肩にっ。
振り返りそれを見たカーマちゃん。
「ちょっとお母さん!! そこに乗ったら私はどこに乗ればいいのです! 今すぐ退いてください!」
おぉう、すごい剣幕。っていうか乗るって。私は乗り物か何かか。対するティアちゃんは。
「カーマちゃーん。今から特訓だよー? お父さんとはしばらく離れるのよー?」
特訓をダシにして独占し始めましたよこの嫁。可愛いなぁ。もしかして独占欲出ちゃいました? ティアちゃん。
言われて顔を歪ませて「ぐぬぬ……」と呟くカーマちゃん。可愛いかよ。
あっ、そういえば。
「エレちゃんエレちゃん」
「? なぁにお父様?」
「ちょっと調べたいことがあるからちょっと近くに寄ってもらえるかな」
首肯して近付くエレちゃん。そのまま軽く抱きしめてみる。
「ちょ、ちょっと!? お父様っ急にどうしたのだわ!?」
慌てるエレちゃんに耳元で囁くように説明する。
「実はカーマちゃんがお父さんの匂いを気に入っちゃったみたいでね。中毒みたいな症状になってるんだ。これがカーマちゃんだけなのか、家族共通なのか調べたくてね。個人差はあると思うけど、この状態でどう感じたか教えて欲しいんだ」
あくまで落ち着かせつつ。
ティアちゃんはなんとなく安心できる匂いと言っていた。
安心感を与えるだけなのか、それとも人によって感じ方が違うのか。
そもそも匂い自体が嗅ぐ人によって[いい匂い]か[くさい]かが如実に現れるものだ。世の中に[匂いフェチ]という言葉があるように、いい匂いであるかどうかは人によって千差万別なのである。
今回の場合、若干どころじゃなく匂い中毒なカーマちゃんとの匂いに関して対比検証のためエレちゃんに抱きついてみた。
さて、ここまで理屈っぽく説明しましたが。実のところ結果は囁き途中で出てるのです。
「エレちゃんにとっても、臭い匂いって訳じゃないみたいだね……」
「……(すんすん)」
囁いてる途中で背中に手を回し始めたので、半ば確信していた。コレはもう子供たち限定の魅了スキルに他ならないレベルなのでは? エレちゃん結構強めに抱きついてるし。
「むぅぅぅ! ライバルが増えるぅぅぅ!」
後ろでプンスカ怒るカーマちゃん。ティアちゃんにお預け食らっちゃったからね。
でもエレちゃんを中毒化させる訳にもいかない。エレちゃんは冥界の女主人。私たちの家を守る娘なのだ。
悪い意味合いで言えば常にお留守番の係なのだ。
もし中毒になってしまって、お留守番をさせられ続けたらどうなると思う?
考えるまでもない。ぶっ壊れる。下手したら廃人コースだ。
タバコ中毒然り、アルコール中毒然り、ヤク中毒然り。強制的に取り上げた所で辞められないモノ。
上記挙げたものはそれなりに数がある分、1種類取り上げても違う種類で……となり基本止められない。
しかし今回検証している[お父さんの匂い]に関しては、今後どうなるかは別として、現状お父さんしか出せないモノであり。代替が効かない。
なので多少手遅れかもしれないが、エレちゃんには早々に離れてもらう。
「ありがとうエレちゃん。よく分かったよ」
「……(ぽー)」
「おーい、エレちゃーん?」
あれ? もしかしなくても重症じゃね? 即効性高すぎるなぁ。(現実逃避)
「はっ!? ……今ちょっと意識が……」
「いや、もうそれ怪しい薬レベルだよね。大丈夫? 匂い嗅ぐ?」
「……ちょっとだけいいかしら?」
「ダメに決まってんでしょ。これ以上酷くなったら取り返しが付かなくなるよ」
約一名取り返しがつかなくなって嫉妬でプンスカしてるけど、この症状を知らなかったからノーカウントでお願いします。
さて、脱線しまくったけど、本来の目的を達成しないとね。
「エレちゃん。この周辺で被害が出ても大丈夫そうな場所とかある? 被害はなるべく抑えるけど、万が一って事もあるし」
「そうね……じゃああの辺りの暗い所周辺だったら構わないのだわ。最近空いた所だし、槍檻置くのにもまだ土地が悪いから好きにしてもらっていいわよ」
そう言って遠くの方を指差すエレちゃん。
さすが冥界の女主人。冥界の事なら土地の状態から、流れ着いた死者の魂の状態まで把握しているだけはある。これだけ頑張ってるのに自分は後回しでこの地に住う魂の事を優先に考えてる。凄い。もうとにかく凄い(語彙力)。
なんか頭撫でてあげたくなってきた。でもさっきの一件もあるし自重しないとね……。
そうだ。こういう時こそ。
「ティアちゃん。ゴー」
「らじゃー!」
トテトテと駆けていくティアちゃんそのままエレちゃんの身体を登っていく。
「ちょっと!? お母様!? ど、どうしたのだわ!?」
「なでなで……むふー。頑張ってるエレちゃんにいいこいいこなのです。なでなでー」
私が甘やかしたいと考えた時、ティアちゃんも甘やかしたいと思っているのだ……。
エレちゃんは元々ティアちゃんがお母様だからね。甘えたいし甘やかしたいティアちゃんが大好きな自分の娘の頑張りを褒めない訳がない。
「が、頑張ってると言っても……私にとっては当たり前の事なのだわ」
「その当たり前を当たり前に出来ることは中々出来るモノじゃないさ。大人しく撫でられなさい。撫でさせないとティアちゃん拗ねちゃうし」
「そうだぞー。私もプンプンぶいーってなるからなー」
なにそのプンプンぶいーって。なんとなく伝わるけども。可愛い。
だけどこうやってイチャイチャしてるとね……。
「ぐぬぬぬぬぬぬ……。私もお父さんに撫で撫でして欲しいですぅー!! 匂い嗅いで生きていたいんですぅー!! えこひいきは良くないと思いますぅぅぅ──ー!!!」
欲望と嫉妬がダダ漏れのカーマちゃん(愛の神)がおこでいらっしゃるよ。こうなっちゃった原因の私が言うのもアレではあるけど、重症だなぁこの子も。どっぷり浸かっちゃってるね。
「じゃあカーマちゃん。一つ提案をしよう」
「う゛う゛う゛う゛う゛……なんですかぁー!!」
「カーマちゃんがこちらの課題を1つクリアする度に10分、私からの撫で撫でタイムを」
「早くしてください。お父さんから貰った力です。3日と言わず1日でモノにしてみせます。だからモノに出来たらお父さんの背中に抱きつく権利は私のものですよ! お母さん!」
クワっとティアちゃんを見るカーマちゃん。
「私は肩車だからいーよー。1日でできるかなー? お母さんも期待しちゃうぞー」
「ふふふふ……速攻でモノにしてみせますよ……」
わお。これが中毒患者かぁ。傍から見ればチョロっチョロの駄女神なのに、娘だと思うだけで可愛く見えてきちゃう。私も大概親バカしてるなぁ。
んじゃぁご褒美も決まった所で、特訓しに行きますかぁ。
「じゃあエレちゃん、これからカーマちゃんの特訓に行ってくるね。ティアちゃんはどうする? そこからでも見えるだろうけど……」
「むふーん。私はエレちゃんとイチャイチャするのです! カーマちゃんはお父さんが好きみたいだし、2人で行ってらっしゃーい」
「お母様もこう言ってますし、行ってらっしゃいまし」
「やりました! 2人きりですよ! こっちも負けずにイチャイチャしますよ!!」
「はーい、本筋忘れないようにねー。2人きりって言ってもラフム君も一緒だけどねー」
『ハーイ』
「がっでむ!!」
隙あらばお父さんの匂いを嗅ごうとするカーマちゃん。しかしメインは能力制御の訓練だ。
まずは魔力に馴染む所からかな。こちらにお持ち帰りする時に完全に中身を挿げ替えてしまっている。今の状態で十全に身体を動かせるようにならなければ話にならない。
それからは新しく出来ることの確認。今までできたことに加えて、今まで以上の魔力量があることで、出来ることが増える、或いは新しく何かできるようになるかもしれない。
そこら辺の確認とカーマちゃん本人の調整が今回の目的である。
カーマちゃんも言ってるけど、早く終わるならそれに越した事はない。あまり長くなるとティアちゃん……はエレちゃんと一緒にいるだろうけど、エレちゃんの方が保たないかもしれない。主に心労的な意味合いで。
〔お母様!? ちょっとそっちには行かないでくださいます!? 〕
〔うおー! こっちでエレちゃんをバカにする声が聞こえたぞー! 出てこーい! ボコボコにするぞー! 〕
〔お母様がまともに暴れたら冥界が大変なことになるのだわー!? 誰か助けてー!? 〕
うん。ここまで幻視した。真実にならないことを祈るばかり。
「よしじゃあカーマちゃん。背中に乗る事をお父さんが許可します。代わりにお父さん現地まで飛びます。しっかりお父さんの魔力の流れを覚えて訓練に活かすように。匂い嗅ぐのに夢中で覚えてないとかはナシだよ?」
「うぅぅ、そんなの生殺しじゃないですかぁ! お父さんの匂い嗅いでて集中なんてできるわけないですよぉ!」
って言いながら背中にはしっかり乗るカーマちゃん。
欲望に正直だなぁ。お持ち帰りする前はだいぶ捻くれてた感じだったのにねぇ。これも成長なのかなぁ。(親バカ)
「あれだけの啖呵を切ったのだし、頑張るしかないぞ。さぁ、訓練の始まりだ!」
「はぁ……。吐いた言葉は戻せません。潔く頑張りますよ」
さて、何日かかるか。言葉通り、頑張ってもらいますかね。
────────……少女訓練中……────────
モンハンの方と交互がいいのか…
あくまでこっちメインであっちは息抜きにするのか…
悩みます…