よっす、俺神田カゲト。大学1年、19歳。
難関大志望したせいで高校一年の終わりくらいからバトルスピリッツ封印してたんだ。
受験諸々も済んだし久方振りに愛用の古竜デッキを引っ張り出して馴染みのショップに顔出しに来たんだ。
「来たん...だがなぁ...」
何が悲しいって人がいねーんだ、人が。
いや、うん。店員は居るんだけど明らかに俺が来なくなってから雇われた人みたいだし。
平日の午後3時だぞ、今!なんでこんなに人がいねーんだ?!
...あ、平日だからか...いや、でも小学生とかこの時間よく居たよなぁ!?なんでだ!?なんで居ないんだ!!くっそー、バトルしてぇのに...
「...い」
ツいてねーなー。全くツいてねー。
「...ーい!」
く、こうなったらパック見繕って纏め買いでも...
「オイ!カゲト!!無視決め込むな!!」
「っうお!?何だ?!」
耳元で怒鳴られ、思わず大声で返すと、そこにいたのは
「おいおい、何だとはなんだ、突然『俺バトスピ封印するわ』とか言って止めたヤローがよー」
この天パは『
「はー、うっせ。後で後悔しまくったわこの野郎。何とか受かったから良かったけどよ」
「ケッ、相変わらず可愛げねーな。折角使いもしねぇ古竜のカードストックしてやってたのに」
「ちょ、それまぁじぃ!?すんませんアキラ様!この通り!ユルシテ!ミセテ!チョーダイ!」
恥も外聞もあったもんじゃないって?その通り、というか三年もブランクあるからとにかく今のカードプールのカードは欲しい、とても欲しい。
「おーおー、お前の手首はモーターか?...えーと確かこの辺に...っと。あったあった、ほれ」
ガサゴソと肩からかけたスポーツバッグを漁り、ちょっとしたデッキ以上の厚みのカードの束が差し出された。
「サンキュ、デッキ組み換えついでに最近の環境の話聞かせてくんね?ソウルコアとかいうのが実装されたっつーことは聞き及んでんだが、それ以外はてんでさっぱりでな」
実際問題、環境というかどういうキーワード効果が追加されてんのかがわからんと対策もとれないし無様を晒す原因にもなる。アルティメットが出た当初の波乱もそうだな。Uトリガーが破棄じゃないってそれイチ。
「おん?まぁ良いけどさ、お前やっぱ古竜とか龍帝使うんだろ」
「そりゃな。俺の
「ったりめーだろ。アイツで何回押し込まれたと思ってやがる」
「いっぱい☆」
とびきりウッザイドヤ顔決めたら殴られた。解せぬ。
―――――――――――――
「よっしゃ、こんなもんか。異魔神?煌臨?知らない子ですね。男は黙ってぶん殴れ」
「オイこら、いくらなんでもそれは無いぞお前。異魔神や煌臨についてけないならバトスピできねーぞ」
呆れ顔で言われてもそんなことは知らん。殴り抜けば勝てる、それが真理だろJK。
「じゃあ一戦、お手合わせ願いましょうかねぇぇ!」
そういや言い忘れてたが、バトスピショップには大抵仮想バトルマシンがある。今回はデッキ組む前に予め店員さんに申請して使用許可も貰って稼働準備もしてもらっている。
「チッ、負けて吠え面かくなよ復帰者さんよぉ!!」
アキラも結構ノリノリだな。このテンションの原因が言うのもなんだが。HAHAHA!
「じゃあいくぜ...」
所定の位置に立ち、互いにデッキを構える。
ここで言うのは勿論、カードバトラーの合言葉。
「「ゲートオープン!界放!!」」
―――――――――――――
視界が一瞬ホワイトアウトし、次の瞬間には仮想空間であるバトルフィールドへ移動していた。
荒涼としただだっ広い平地。それがこのバトルフィールドだ。
ここで対戦者はそれぞれのホバーボードに乗ってバトルする。仮想空間含めどういう原理なのか知らんが、利用する分にはそんなこと関係ない。
「じゃあアキラ!先攻は貰うぜ!スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メイン!」
先攻1T目はコアステップでコアを増やせないが、まぁ先攻ってのは先に開始できるのがアドバンテージだからな。
「暴龍王 ネロ・ドラグディウス召喚、Lv1。ターン終了だ!」
現れるはローマ帝国のとある暴君をモチーフとしたであろう最軽量の龍帝。きらびやかな衣装を纏っており、雰囲気もおっかないが、ずんぐりとした体型のせいであんまり怖くない。個人的に。
姿はさておき、竜騎や古竜といったサポートに恵まれた他の系統も備えているので効果含め優秀だと思う。
《カゲト》
ライフ:5
手札:5→4
リザーブ:<4>→0
トラッシュ:0→3
バースト:なし
フィールド:
暴龍王ネロ・ドラグディウス Lv1(<1>)/BP3000/回復
「ふん、いつも通りってとこか。つーか早速ソイツかよ、てっきりカメレオプスか百識の谷系列かと思ったんだが」
「いやー、まぁ...試運転だしなぁ...」
カメレオプスは赤のスピリットで、自分がコスト7以上のスピリットを召喚するときに自身に赤のシンボルを二つ追加するって能力を持つ。赤で大型を序盤から並べる場合の定番だ。
百識の谷ってのは赤のドロー加速の代名詞的ネクサスで、Lv1はドローステップに追加ドロー、その後手札を一枚捨てる。Lv2はドローステップのドロー+1。つまりLv1は手札交換効果、Lv2は単純なドロー加速。コレの派生ネクサスは何枚かあって、どれもLv1効果かLv2効果を引き継いで、もう片方は固有の効果を持ってる。軽減シンボルも兼ねて初手安定の一枚でもあるな。
まぁ、今回はご覧の通りどっちも出してないんだけどな!
「けっ、じゃあ俺のターンだな。スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メイン!」
「...そうだな、コレで良いか。魔王蟲の根城をLv1で配置、エンドだ」
アキラの背後に、蟻塚のようなものが無数に生えた巨木が現れる。魔王蟲の根城か...厄介なモン出してきやがったな。
《アキラ》
ライフ:5
手札:5→4
リザーブ:<5>→0
トラッシュ:0→<5>
バースト:なし
フィールド:
魔王蟲の根城 Lv1(0)
「いや、お前こそ初っ端から根城かよ」
「あ?何言ってんだ、コイツの恐ろしさ忘れたか?」
「忘れてないから言ってんジャーン!?」
Lv1効果は緑と青の混色ネクサスらしく『
「ま、手心加えてちゃ話にならんわな。スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メイン!ネロをLv2にアップだ」
暴龍王 ネロ・ドラグディウスLv1→2(<1>→<3>)/BP3000→5000
「そして...このスピリットはコスト5として召喚することもできる!1軽減4コスト、更にネロ・ドラグディウスのLv2・3効果!系統:龍帝を持つスピリットを召喚するとき、自身を疲労させることでリザーブから3コストまで支払ったものとして扱う!さぁいくぜ、アキラ!」
「へっ、コスト変更効果の時点で何出してくるのかなんて大体わかるからな。あいつらの内のどれかだろ?」
「その通り!白き守護の叡知持ちしもの、五賢龍帝ピウス!Lv1で召喚!」
現れるは両肩に巨大なバリスタを装備し、二振りの
「ネロ・ドラグディウスの効果で1ドロー、そんでネロ・ドラグディウスをLv1にダウンし2軽減2コスト、
《カゲト》
ライフ:5
手札:5→3
リザーブ:4→2→0
トラッシュ:0→3
バースト:あり
フィールド:
暴龍王ネロ・ドラグディウス Lv2→1(<3>→<1>)/BP5000→3000/疲労
五賢龍帝ピウス Lv1(1)/BP6000/回復
「へぇ、意外だな。てっきりアタックしてくるかと思ったんだが」
「まぁそこは慎重にやんなきゃな。まだ序盤なんだしよ」
「コア量のアドバンテージを与えたくないってか?それはこっちのセリフだっての。スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メイン。さてどうするか...
1軽減0コスト、森林のセッコーキジをLv1で召喚。そんで3軽減1コスト、
森林のセッコーキジLv1(1)/BP1000
魔王蟲の根城Lv1→2(0→2)
リザーブ6→1
トラッシュ0→3
簡素な鎧を纏い、日本刀を携えたキジのようなスピリットと、鮫のようなヒレやエラ、サブマシンガンを持った半魚人のような2本の腕の生えた白き猟犬のスピリット、更にその名の通り六分儀の意匠を持つ剣を構えた人のシルエットを持った昆虫のようなスピリットが2体、アキラの場に現れる。きっちり大量にコアブーストしてくるからやられるこっちは堪ったもんじゃねぇ!
「コアアドバンテージがどうの言いながらお前だって滅茶苦茶飛ばしてんじゃねぇかよ!?」
「これが緑の持ち味だぞ?何言ってんだお前」
俺の批難なぞどこ吹く風、といった感じか。なめやがってコンチキショウ。
「んじゃ、アタックステップ!いけ、ボルゾイ!Lv1・2・3アタック時効果で自身にボイドからコアを置きLv2に、更にLv2・3アタック時効果でお前はこのバトル中バーストを発動できねぇ!更に青シンボルがあるので
「はっ!?ちょ、おまっ!?」
それは流石に聞いてませんねぇ!?
「フラッシュあるか?」
「いや、ないです(死んだ目)」
「じゃあフラッシュ!ボルゾイをLv1にダウンしコスト確保して2軽減2コスト、ストームアタック!ピウスを疲労させてボルゾイを回復する」
アキラが掲げたマジックから放たれた風がピウスを押さえつけて疲労させ、逆にボルゾイを包み込んで回復させる。
「ウワーコレハヒドイ、ライフデウケマース」
《カゲト》
ライフ:5→4
「
「マジデヒドーイ、ライフデウケマース」
《カゲト》
ライフ:4→3
「よし、
《アキラ》
ライフ:5
手札:0
リザーブ:2
トラッシュ:5
バースト:なし
フィールド:
森林のセッコーキジ Lv1(1)/BP1000/回復
魔王蟲の根城 Lv2(2)
「てめぇマジふざけんなよ...!スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メイン!千識の渓谷Lv1・2効果で手札の系統:覇皇/古竜を持つスピリットカードに赤軽減がひとつ追加されてるから3軽減0コスト、モダニック・ドラゴンを召喚、Lv1。そして...!軽減追加で4軽減の3コスト!」
「7コストぉ...?チッ、アイツが来るか!」
「あぁそうさ、『コイツ』だよ!旧き伝説よ、魔皇となりて蘇れ!」
宣言と共にフィールドが割れ、紅蓮の火柱が昇る。
「煉獄より出でよ、我が魂!焔竜魔皇マ・グー、Lv1で召喚だ!」
そこから這い出てきたのは、四臂に巨大な鎌と双槍を携え、二足で立つ黒き龍。身体を走る赤き紋様、紅蓮に燃える双角、一際赤く輝く双眸。悪魔の具現のような姿をした俺のキースピリット、焔竜魔皇マ・グーだ。
「まだまだいくぜェ、ネロ・ドラグディウスをLv2に。そしてコイツだ!軽減追加して5軽減3コスト、ネロ・ドラグディウスを疲労させてリザーブから3コスト支払ったものとし、モダニックを消滅させて維持コスト確保!今一度登場願う!白き守護の叡知宿せし龍帝よ、軍勢を屠る力を示せ!五賢龍帝ピウス、Lv1で召喚!」
「げっ!本来のコスト支払って召喚しやがった...!」
「更に召喚時効果発揮!本来のコストを支払って召喚したため相手のスピリットを合計BP15000まで好きなだけ破壊する!お前の場の合計BPは12000!よって四体とも破壊だァ!!」
再び現れた白き五賢龍帝より、両肩のバリスタが発射され、更に背より引き抜かれた二本の
ほんとはマ・グーを出すこと自体やるべきじゃないんだが、相手に防ぐ手だてが一切存在しないことが明白な以上、相棒に久し振りの出番をやりたい訳で。
「くっそが...!コアブーストした意味ィ...!つーか調子に乗ってストアタ使うんじゃなかったか...」
「全く以てその通りだなァ!ネロ・ドラグディウスをLv1にダウン、ピウス2体をLv2にアップ!さぁ、その油断と慢心の代償を支払って貰おうか!アタックステップ!マ・グーの効果!アタックステップ中、自分の系統:竜人/古竜を持つスピリット全てにBP+3000、更にアタックステップ開始時、トラッシュにあるコアを好きなだけこのスピリットの上に置ける!これでLv3になったことにより、Lv2・3効果が発揮!自分の系統:古竜を持つスピリット全てに赤のシンボル一つを追加する!」
焔竜魔皇マ・グーLv1→3(1→<5>)/BP5000→10000+3000/シンボル赤+赤
五賢龍帝ピウス①Lv2(2)/BP8000+3000/シンボル赤白+赤
五賢龍帝ピウス②Lv2(2)/BP8000+3000/シンボル赤白+赤
暴龍王ネロ・ドラグディウスLv1(1)/BP3000+3000/シンボル赤+赤/疲労
「やれ、ピウス!トリプルシンボルだ!」
「ちィッ!!ライフだ!」
《アキラ》
ライフ:5→2
「っく...今回は譲ってやんよ...だが覚えとけ、次は俺が勝つからな!」
「はっ、次も俺が勝たせてもらうさ。いけ、マ・グー!アタックだ!」
「はー、全く、だから可愛げがないって言ってんだよ...ライフで受ける!」
《アキラ》
ライフ2→0
WINNER:神田カゲト
Congratulations!!
――――――――――――――
「だあぁ、負けた負けたァ!つーかマ・グーと千識の渓谷以外俺が融通してやったヤツばっかじゃねぇかよ」
「いや、お前も俺のデッキ内容粗方知ってんだからそんなのわかりきってたろおい。なぁ?バーストで足踏みして負けた誰かさん!ちなみに伏せてたのはスサノだからどっちにしろ止まってたけどな」
「なっ、ぐっ...ぐぐぐ...引き運が悪かっただけだ、次は負けねぇ」
「弱いヤツ程良く吠えるってな!HAHAHA!!」
「ぐぬ、もう一戦だ、もう一戦!」
―――――――――――――
バトルスピリッツ 獄焔 第一話 了。
バトスピ復帰勢でやめたのが究極編4章くらいなため、結構カード情報が穴だらけです。
調べながらデッキ作ったりシミュレートしてみたりしてるのですが、及ばない点が多数あるやもしれません。
ですので、感想以外にも批評や指摘、アドバイス等戴けると励みになります。