とある臆病者の化物譚   作:tunagi

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ついに禁書目録編です。


夏休み

七月二十日、夏休みの初日の学生寮の一室

「あ、熱い・・・」

うだるような熱気が支配する自分の部屋で山咲は目を覚ました。

全身汗まみれだった。この暑さを何とかしようとエアコンの電源を点けようとリモコンを操作するが反応がない。

(あれ?)

リモコンのボタンを何度も押すがエアコンに反応がない。どうやら、リモコンではなくエアコン自体に問題があるようだ。

嫌な予感がし部屋中の電化製品を調べたところ八割の電化製品が全滅していた。

「マジデスカ・・・」

唖然とする山咲。

特に冷蔵庫の中身が全滅していることにショックを受けていた。

(せっかく、買いだめして置いた食材が・・・・)

「不幸だ・・・」

隣人であり友人であるツンツン頭の上条当麻が口癖のように嘆く台詞をため息まじりで言う。

 

 

「ぎゃあああああああああああ!!」

 

 

「ッ!?」

突如隣の部屋から上条の悲鳴が聞こえた。

(また、何かあったのかな?)

上条当麻は不幸体質で毎日と言っていいほど、何かしらのトラブルに見舞われる。

(いつもの事だし、上条なら大丈夫か)

上条の悲鳴を特に気にもせず、今日の予定を考える。

(壊れた冷蔵庫やエアコンを何とかするためにも午前中は家電量販店に行こう)

(それから、近くの図書館で夏休みの宿題でもしよう)

山咲は宿題に関しては面倒くさがりであり、夏休みの宿題は時間をかけてするよりも一気にまとめて大量にするタイプである。

ちなみに、成績が下の下の上条と違い山咲は中の上ぐらいなので夏休みを計画的に楽しく過ごすことが出来る。

山咲は夏休みに友人達とどう過ごそうかと頭の中で思い浮かべながら、身支度をして部屋から外に出た。

エレベーターへ向かう通路を歩いていると、後ろからドラム缶の清掃ロボットが通り過ぎて行った。しかし、その後ろから、

「どいて、どいて~!!危ないかも~!!」

長いストレートの銀髪とエメラルドのような緑色の瞳、白い肌に小柄で華奢な体格。

純白の布地に金の刺繍が施され高級なティーカップに似た印象の修道服で、安全ピンだろうかそれを全身につけている見た目が十四から十五ぐらいの女の子が、通り過ぎた清掃ロボットを追いかけて行った。

 

「なんだろう?」

女の子の後ろ姿を不思議そうに眺めていた。

 

 

 

 

それが人生で一番の不幸なことが起こる始まりだとも知らずに。

 

 

 

その後、山咲は昼過ぎくらいに自分の部屋に戻ってきた。

(少し寝よ。)

家電量販店に行った後図書館で宿題をした疲れが出たのかベッドに横になり眠ってしまった。

「・・・ん」

しばらくして、山咲は目を覚ました。窓を見ると空は燃え上がるような赤色に輝いていた。

「夕方か。少し寝すぎたかな」

夕飯を作ろうと冷蔵庫の中を開けると酸っぱくて、生臭い匂いがしてきた。急いで鼻を手で覆う山咲。

「そういえば、冷蔵庫が壊れているのを忘れてた・・・」

今日で二回目の溜息をすると、

「近くのコンビニに行こう」

コンビニに夕飯を買いに行こうとドアに向かう山咲。そして、ドアノブに手をかけようとしたときだった。

 

「ッ!!!!!!」

 

突如、背中にもの凄い悪寒が走った。

(ドアの向こうに誰かいる!?)

今までにない殺意や敵意を感じた山咲は、恐る恐るドアを押して通路に出た。

そこには、二人の男が向き合い睨み合っていた。

一人は隣人で友人でもある。上条当麻。もう一人は、白人の外国人の男である。歳は十四くらい、身長は二メートルを超えている。服装は教会の神父が着ているような漆黒の修道服。そして、肩まである赤い髪、左右十本の指には銀の指輪がギラリと並び、耳には毒々しいピアス、口の端では火のついたタバコが揺れて、右目のまぶたの下にはバーコードの入れ墨があった。とても神父には見えない格好だった。

 

そして、上条の足元を見ると午前中にすれ違った純白のシスターが血だまりの中に倒れていた。

 


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