削板との喧嘩から翌日の朝、山咲は学校へ向かう大通りを歩きながら昨日の病院での出来事を思い出していた。
前日の夜、第七学区とある病院内
「一体、どうしたんだい?そんなにボロボロで?」
カエル顔の医者が不思議そうな顔して尋ねた。
「ハハハ・・・いや、その、若さゆえの過ちって感じです。」
まさか、別室で手当てを受けている削板と殺し合いの喧嘩をしたなどとは言えずに苦笑いをしながらごまかした。
「ふ〜ん。」
医者は事情を聞かずに適当に答えた。
この微妙な空気を変えたいのか山咲は無理やりテンションを上げた。
「でも、俺ってすごいですよね。こんなにボロボロなのに元気がまだ有り余っていますよ!!根性!!なんちゃって」
カエル顔の医者は時間外労働に辟易しつつ
「しかしこの状況下で笑っていられる気持ちは僕には理解できないね?それとも君はあまりの疲労にランナーズハイ状態になっているのかな。とにかく僕に言えるのはだね、一歩間違えれば君の拳は二度と使い物にならなくなっていた可能性があったぐらいかな?」
「・・・・・・え?」
「目が点になっているね?でもこれは決して不自然な事ではないよ。人間の拳は精密な動きを可能とする分、関節も多くつまり衝撃に弱いんだね?単なる打撃なら額を使った頭突きの方がまだマシという訳さ」
傷ついて痛々しい両拳を見ながら山咲は、その一言にゾッとした。医者の言う事は破壊力が違う。
カエル顔の医者は微妙に患者を脅して大人しくした後に、手っ取り早く山咲の手を包帯でグルグル巻きにしていく。
現在、とある高校の校門前
(完治まで一週間か・・・)
山咲の両拳の完治まで一週間ぐらい掛かるとのことだった。手を使う激しい運動は勿論、喧嘩など論外である。ちなみに削板は一晩で完治したそうだ。
今日で何回目かの溜息を吐きながら山咲は自分の教室へと入って行った。
顔を腫らし、両拳に包帯を巻いた山咲を見て、上条が近づいてくる。
「どうしたんだ、その顔?」
驚いた表情で尋ねてくる上条に山咲は大きな絆創膏越しに顔の傷をさすりながら言った。
「いやぁ、昨日の帰り道に歩道橋の階段から転んじゃって」
「大丈夫か?てか、本当に階段から転んだのか?」
「本当だって」
上条の問いに適当に誤魔化しながら山咲は自分の席に着いた。
「あれ〜、ザキ君どうしたん?その傷?」
後ろの席にいる180センチもの高身長を誇り、エセ関西弁を喋る青髪が話しかけてきた。
「階段から転んじゃってね」
「本当に〜?実は女の子をナンパしようとしたらその子の逆鱗に触れて怪我したとちゃうの?つれへんやないの〜。どうして僕も誘ってくれへんかったの?」
「いや、違うけど。」
「ええて、ええて隠さんでも。そうや!!今日の放課後一緒にナンパしに行かへん?この僕がいろいろなテクニックを教えてやるさかい!!」
「え?いや、あの・・・」
青髪が変な誤解をしてヒートアップしているとき横から上条が話しかけてきた。
「おいおい、山咲が困っているじゃあねえかよ。」
「やめておけって、どうせまた、失敗するに決まってるんだからよ。」
「なんやと〜、フラグ一級建築士のカミやんに僕の気持ちがわかってたまるかいな!!」
「なんだよ、フラグ一級建築士って?俺だってモテてえよ。」
「ほほーう。それは、喧嘩を売っているってことでええんやなぁ?覚悟はええな、カミやん!!」
「うおっ!?」
青髪が上条に容赦なく襲い掛かる。
「ちょっと、やめなって!?」
「ったく、騒々しいぜい、朝ぱっらから」
上条と青髪が取っ組み合いをしていると髪を金髪に染め、地肌に直接アロハシャツを着用し、薄い青のサングラスをかけ、首には金の鎖というオマケつきの土御門がやれやれという顔で現れた。
「たかだかナンパくらいで大袈裟にゃあ。ま、舞夏がいる俺には関係ないけれどにゃあ〜」
「あぁ!?舞夏よりも上条さんは寮の管理人のお姉さんがタイプでございますよ」
「僕も今は義妹メイドよりも純白清楚シスターさんやなぁ」
土御門「カミやん、青髪、言ってはならぬことを言ってしまったにゃ〜 舞夏の素晴らしさをその体に叩き込んでやるぜい!!」
「上等だ。かかって来い土御門!!」
「僕も負けへんよ~」
「今日がお前らの命日ぜよ!!」
ついに土御門も乱入し、大乱闘を始める馬鹿三人。
(なるほど。これが仲の良い友達同士というものなのか)
何か納得した様子で三人の大乱闘を見る山咲
「騒がしいわよ!!あんた達静かにしなさい!!」
「「「ぐへッ!!」」」
対カミジョ—属性の少女吹寄制理の制裁を受けた馬鹿三人は一瞬でノックアウトした。
仕事を終えた吹寄は山咲に顔を向けた。
「あんたも大変ね、山咲。毎日あのバカどもに巻き込まれて」
「そうでもないよ。俺、中学の頃まで友達いなかったから、上条君達と友達になって何だか毎日が充実している感じがするんだ。」
「ふーん、そう。所で凄い怪我ね?どうしたの?」
「階段から転んじゃったんだ。」
本日三回目の嘘をつくことになった山咲は若干申し訳なさそうに言った。
「気を付けなさいよ。あっ、そうだ。これ、良かったら食べて。買いすぎちゃって」
吹寄は山咲の机の上に大量の健康食品を置いた。
「これだけあれば怪我の治りが早くなるはずよ。」
「あ、ありがとう。」
山咲は微妙な表情で机の上の大量の健康食品を見ながらお礼を言った。
朝のホームルーム時、半泣き状態の小萌先生にも同じように心配されて、昼休みに呼び出され説明するのに時間がかかり、昼食を食べ損なってしまった。