とある臆病者の化物譚   作:tunagi

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どうぞ。


花飾り

『スネイクハンズ』の都市伝説が流れて数日が経ったある日の事だった。

二人の女子中学生がファミレスで談笑をしていた。

 

「え~!?当ですか?」

「本当だって!!」

 

一人は頭に花をかたどった髪飾りを大量にしていて、特大のパフェを食べている少女初春飾利。

もう一人はセミロングの黒髪に白梅の花を模した髪飾りをつけている少女佐天涙子。

彼女達はある都市伝説の事を話題にしていた。

 

「だって、信じられませんよ。佐天さんが都市伝説の影男に助けられたなんて」

「だから本当だって言ってんじゃん!」

  「私がスキルアウトに絡まれていたら、いきなり現れてそいつらをシュババっとやっつけてくれたの」

「でも~」

佐天の話にまだ困惑する初春。

佐天はまた、大声で話だした。

「てか、影男じゃなくてスネイクハンズ!」

「名前覚えようよ。」

「そもそも、なんでスネイクハンズって名前なんですか?」

「昔、よく見てたんだけど・・・」

「蛇足って意味なんだって」

「なるほど。それでスネイクハンズですか」

「でも、蛇足ってことは何の蛇足なんですか?」

「全話観たんだけど、結局何の蛇足か最後までよくわからかったんだよね~」

「何ですかそれ」

 

会話終えて初春が再びパフェを食べ始めようとしたときだった。

突如携帯電話がなり始めた。

「はい。もしもし、・・・はい、・・・はい。わかりました。今から急行します。」

 

電話を切ると初春は佐天の方を向き、

「すみません。風紀委員(ジャッジメント)の仕事が急に入ってしまって」

「いいって、さっさと行きなって」

 

「それでは失礼します。」

「うん。また、明日」

 

初春は走って風紀委員第一七七支部へ向かって行った。

 

風紀委員とは学園都市ににおける警察的組織であり、生徒(能力者)によって形成され、基本的に校内の治安維持にあたる。

風紀委員になるには、 九枚の契約書にサインして、十三種の適正試験と4ヶ月に及ぶ研修を突破しなければならない。

風紀委員活動の際には、盾をモチーフにした腕章をつける。

校外での活動は本来管轄外であり、たびたび始末書を書かされている者もいる。

 

初春は第七学区の大通りを歩いていた。

今回初春に言い渡された指令はパトロールだった。最近、第七学区でスキルアウトによる恐喝事件が頻繁に起こっているのでその予防で警備員(アンチスキル)から応援要請が出たのだった。

 

警備員とは風紀委員と同じ学園都市ににおける警察的組織であり、次世代兵器で武装した教員で構成されている。志願制。シンボルマークは三又の矛をモチーフにデザインされている。

構成員が大人なためかこちらの方が職権は上だが、同時に危険度も高い。

教師がメインで構成されていることもあり、メンバーは超能力を持たないが、 暴走した超能力者を取り押さえることも想定し、かなり強力な武装が許されている。

因みに給料なしのボランティア(僅かな特別手当はあるらしい)。

 

「この辺は異常なしですね。」

しばらく道を歩いていると初春はある事に気が付いた。

(ん?あれは・・・)

 

初春は高校生ぐらいの制服を着た男子生徒がガラの悪い数人の男子に路地裏に連れて行かれるのを目撃したのだった。

こういうときは同僚であるレベル4の白井黒子に連絡するのが妥当な判断なのだが、風紀委員になってまだ日の浅い初春は慌ててしまい困惑してしまった。

 

「よしっ!」

急がないとあの男子生徒が酷い目に遭わされると思ったのか初春は覚悟を決めて路地裏に入っていった。

「や、やめてくれ!」

「頼むよ~」

「俺たち金がなくて困ってんだよ」

「だから財布の金全部貸してくれよ。」

「そ、そんな~」

「だから、困っているって言ってんだろうがよ!!」

男子生徒の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけ睨みつけるスキルアウト。拳を振りあげ、男子生徒を殴りつけようとした時、

「そこまでです!!!」

全員が声のした方を向くと初春が風紀委員の腕章を見せるように立っていた。

「風紀委員です!皆さん大人しくしてください!」

初春はこれでスキルアウトが逃げてくれればいいと思っていた。しかし、現実はそう甘くなかった。

「フフッ、アッハハハハハハ!」

「何だよ!?まだ、ガキじゃねぇか!」

「大人しくしてくださいだってよ」

 

スキルアウト達は逃げるどころか初春をバカにし、笑い始めた。

呆気に取られていた初春は表情を元に戻し、さっきより怒気込めた。

「その人を話してください!でないと拘束しますよ!」

「ああ?やれるもんならやってみろ!」

「あうっ!」

初春に腹を立てたスキルアウトの一人が初春に近づき突き飛ばしてしまった。初春は頭を打ったのか気を失ってしまった。

「何だよこいつ!テンで弱いじゃねえかよ。」

「それにしてもこいつ、ガキにしてはいい顔してんな。」

「なんだよ、またそれかよ!?」

「確かにいい顔してんな」

スキルアウト達は下品な顔して言い合った。

そして、気絶した初春を抱え、

「こいつどうする?」

「放っておけ」

男子生徒をその場に残し、初春を抱えたスキルアウトはどこかに消えたしまった。

 

 

ある('')少年(’’)に後をつけられているとも知らずに。

 

 

数分前、スーパーマーケット『体育会系のために!!』前

「少し買い過ぎたかな?」

山咲の左右の手で持っているレジ袋の中には『体育会系のために!!』で買った大量の食材が詰め込まれていて、溢れる寸前だった。

『体育会系のために!!』とは名前のごとく、質より量が特徴の品揃えをしているスーパーマーケットである。

お買い得コーナーには研究費用に補助が付いている実験食材が並んでおり、 名称は宇宙で育てた宇宙ニンジンや遺伝子改良式レタス三号など、怪しさも大爆発。

煽り文句はデンジャラスでゲテモノとしか言えないがお値段が魅力的な商品である。

安心が欲しい人は有機なんたら店に行くべし。マグロの解体ショーをやっている。

今回は特売日だったので大量に買いだめをしておいたのだった。

「もう少し考えて買うべきだったかな?」

パンパンのレジ袋を持ち、独り言を言いながら山咲は帰路に着く。

しばらく、道を歩いているとある光景が目に映った。

花をかたどった髪飾りを大量にしている少女が数人の男達に連れ去られているところだった。

「あれは?」

山咲は急いで保冷機能つきのコインロッカーにレジ袋を預け、彼らを尾行して行った。

 

 

 

 

「ん?ここは?・・・ッ!?」

気絶した初春が目を覚ますと彼女は両手両足を縄で縛られていた。

「おっと、やっと目を覚ましたか。」

「ったく、待ちくたびれたぜ。」

声をした方を向くと初春は数人の男に囲まれていた。一人はビデオカメラを持っていた。

初春は青い顔をしながら震えた声をしながら尋ねた。

 

「な、なにを!?」

「なーに。ちょっとお兄さん達といいことするだけだって」

「大丈夫だって、最初は痛いかもしれないけど後から気持ちよくなるからさ」

「叫んでも無駄だぜ。この廃ビルには誰も来ないからよ」

 

男達は下品に顔を歪ませ初春を見た。そして、一人が初春の制服を脱がせようと手を伸ばした。

初春は涙を流しながら叫んだ。

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「やめてください!!!!」

「おい!大人しくしやがれ!!」

初春は後悔した。あの時、黒子に連絡をして大人しく応援を待っていれば、こんな事にはならなかったと。しかし、時間は戻ってくれない。男の魔の手が制服のボタンに届き、

「だ、誰か、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」

初春は大粒の涙を流しながら心の底から叫んだ。そして・・・

 

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

 

スキルアウトの一人が声を荒げた。その方向を見るとそこには、周囲の光を全て吸い込むような、完全なる影。

揺らめく影を纏い、まるでその空間だけ世界の裏側から食い千切られたかのような『黒』で塗り潰す人型のなにか。

怪人スネイクハンズが立っていた。

スキルアウト達はバットや角材などの凶器を持ちながら尋ねた。

 

「誰だぁ?テメェは?」

「誰だって、聞いてんだよ!」

「おい、こいつ最近ネットで話題になっている奴じゃね?」

「あ、本当だ。」

「こいつの正体、俺たちで暴いてみねぇか?」

「いいねぇ、やろうぜ」

 

男達はスネイクハンズの正体を暴こうと近づいて行った。

そして、バットを持った男が尋ねた。

「おい、その影どんな仕掛けになってんだ?」

「・・・・・」

「黙ってないで・・・。なにか言えやコラー!!」

 

痺れを切らしたスキルアウトの一人がバットで襲い掛かってきた。

しかし次の瞬間その男のバットが瞬時にしてもぎ取られたかと思うと、その先端がスキルアウトの鼻下に勢い良く叩き込まれる。

「がっ!」

嫌な音が部屋に響き渡り、男が鼻と口から血を噴きながら昏倒した。

「や、野郎!!」

次に角材を持った男が襲ってきた。男が角材をスネイクハンズの顔面に叩きつけようとしたが、彼はその横振りを避け、男の頬に一発をいれて怯んだスキルアウトの脳天に自分の踵を角材ごと叩き込んだ。

男は泡を吹きながら前のめりに倒れた。

「そ、そんな。」

「マジかよ」

 

そして、残りの怯えたスキルアウト達に対し—――その『化け物』が、容赦なく黒い双腕(スネイクハンズ)を振り下ろした。

残りのスキルアウトを片付けるのに、そう時間はかからなかった。倒したスキルアウト達はベルトや靴紐を使って両手両足を拘束した。

スネイクハンズは初春をお姫様抱っこして、ビルの外を出ると初春の拘束を解いた。

そして、恐る恐るスネイクハンズに話しかけた。

「あ、あの!!ありがとうございました。」

「・・・・・。」

スネイクハンズは初春の礼の言葉を聞くと背を向け、走りだして行った。

 

 

翌日、ファミレス内

 

「えェェェェェ~!!!!」

「佐天さん!声が大きいですよ!」

初春と佐天は再びいつものファミレスに集まっていた。

「ごめんごめん。つい」

「まさか初春もスネイクハンズに助けられるなんてね」

「私も驚きましたよ。いきなり現れて、スキルアウトをあっという間に倒しちゃったんですから」

「同僚の白井さんは全然信じてくれないんですよ」

「まぁ、都市伝説だしね。」

 

「今度お会いした時は改めてお礼を言いたいです。」

「私も私も!」

 

初春と佐天がスネイクハンズの話で盛り上がっていたとき、ファミレスの外ではとある高校の男子生徒達が歩いていた。

 

「なあ、ゲーセンよらねえか?」

「賛成だぜい!」

「ザキ君、今度こそ負けへんで!」

「ハハハ。お手柔らかに」

 

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