と言うことは、水着もその内...?
「マニュハハハハァ! フエン温泉は豊かな大自然の贈り物ニャ! 湯に浸かって一秒で夏バテ改善効果が発揮されて、ネリちゃんの心と身体は元気印のスタンプラリーニャ☆☆☆」
「さっきまで「ぐでマニュ」だったのに、現金なこった……家のお風呂も凄いけどさぁ、天然の露天風呂には叶わないかぁ~流石に!」
旅館で入館手続きを終え、荷物をブン投げたら備え付けられている源泉掛け流しの露天をゴールに、早脱ぎ選手権するギャルが二匹。
小さなタオルを二枚、腰と胸を覆う形で結んだネリは、貸し切り風呂なのを理由に背泳ぎするフィーバーっぷり。暑すぎて荷物持てないとか、どの口で発していたのか。
実はなみのりを覚えられてしまうマニューラ種、陸上での速度と殆ど変わらず水上移動も可能だが、威力の方はお察しください。
まだお昼前なのに高台に製作され、フエンの町並みを一望できる湯煙展望台で文字通り、羽を伸ばしてくつろげる爽羽佳は、スタンダードに大判タオルをグルッと一周させている。
美肌効果が増す療養泉として認定された湯の香りで、新陳代謝が高まり不要物質が排除される。 第二の心臓と比喩される脚は、重力が邪魔をして血流が上手く心臓まで上がらず、飛翔中も動き回る関係で身体は軽くなっても、脚は武器としても使うので酷使気味、殆ど地上にいる場合と変わりないのだとか。
ポンプアップ効果もあるので血液循環が活発と鳴り、カロリーも消費出来るので温泉はイイコトのバリューパック。
「ふにゃぁぁ……♪ 気持ちいいですよぅ……♪転地効果と言う物ですね、温泉としての環境に恵まれたフエンタウンならではの刺激を、五感に受けて神経中区がリラックス出来るのです……ふにゃ……♪」
天然に配置されてる大岩にもたれるのは、天然の乳塊を岩肌に応じて変形させているメコン。
特大サイズのタオルを借りて、何とか身体を隠す事に成功。爽羽佳と同じで手前に折る巻き方だが、抱きしめられている大岩の方が心配になってしまう、おっぱいデストロイヤー。
胸の種族値なんてのがあったら、彼女は伝説をも軽く凌駕している禁止級だろう。
今「パキッ……」って何かの破片が砕ける音が聞こえた気がする……
本来は混浴であっても、タオルの使用はNG。
ではなぜ? 女性しか入浴していないに関わらず、身体を覆っているのか?
理由は……そういう事です。見えてしまったら描写せざるを得ないので。
「そーいやこの露天風呂、豊胸効果もあるって書いてあったニャ。ネリちゃん、これ以上大きくなるの嫌ニャぁ……メコンに全振りしてやるニャ」
「へーって、わたしゃどっちでもいいんだけどさ~♪ ゴキュッ! ゴキュッ! ぷはぁぁ~~! 湯に浸かって飲むモーモーミルクうまっ! バリウマッ! ゴックゴック! ゴクンッ!!」
JKは時に、本当の親父よりもオヤジらしい。
自販機で買ってきたモーモーミルク(コーヒー味)を、木製の器に入れ熱燗の如くグイッ……とな。
温泉卵もあればねぇとか、言い始めたから中身は六十歳くらいのおっさんに入れ替わってしまったのかもしれない。
鳥ポケモンなのに卵を食べるのは、共食いになのでは?
あんまりその辺は疑問に思わない方がいいだろう、昨日はチキンディアブロ焼きをバックバク食べていたのだから。
「わわっ、私もこれ以上胸が大きくなると困ってしまいます……お手柔らかにしてくださいね温泉さん……///」
現在でも十分に困っておりますHカップ。
巨乳の代表格である、ミルタンクよりもホルスタイン、同性すらダメにしてしまう悩殺おっぱいがI、J、K……そんな事になったら服が着られない! お外を歩けない! 母乳か何かが出ちゃいそう! まだお母さんじゃないのに!
(そそそそそ! それは私がジックさんの子を宿して、育てる事が出来る身体になるというみみみ! 未来図なのでしょうかっ!? 私はあの方のお側でご奉仕できればそれだけで良いのですが、にっ、にっ、に! 妊娠……する事になったらそのぉ……あぅ……///)
勝手にアダルト妄想を膨らませて、勝手に溺れかけている。水タイプだから溺れないのに……
一度妄想が展開されてしまえば、呼びかけたって連れ戻すことは不可能、自然回復を待つしか無いので今回は早めの生還であった。
▼▼▼▼▼▼
「……………………」
「キミは入らないのかい? 昼食まで時間あるから入ってくれば?」
「結構です、汗はかいておりませんので、入浴の必要性がありません」
少し離れた場所から女子三名の、明るく華やかな情景が伝わる非日常空間。
混浴だが年頃の男女が全裸で……それはアカンので、♂であるジックとかたくりこは女子軍に譲り、後ほど使わせて貰う事にした。
かたくりこはまだ寝ている。会席料理が運ばれてきたら自動的に起きるだろう。
メタグロスの少女とは、相変わらずコミュニケーションを図るのが大変である。
会話を続けようとしてくれない、ボールをゆっくり投げても少女はジックでは受け取れない剛速球で、投げ返してくるので拾いに行けば逃げられる。
チーズドッグが関与したり、バトルとなれば話しは違ってくるが、一言二言で何としてでも会話をシャットアウトさせる執念すら伝わる、キリキザンよりも鋭くて、ユキノオーが巻き起こすブリザードよりも冷ややかな態度と体温の少女には困った物だ。
少女はポケモン、動き回れば疲れを感じるし全国的に平年よりも暑い、となれば人間と同じように汗は流れるがやはり……汗である【匂い】が漂わない、無臭なのだ。
ジックには少女の汗が付着した衣服を、くんかくんかする変態趣味は無いけれど、人化しなくたって生き物として当たり前の要素が跡形もないのだから、万が一他の者に捕獲されていたら出生の不明さと相まって「バケモノ」扱いされていたかもしれない。
「……………………」
謎が多すぎるメタグロスの少女。
ちっとも心を開こうとしてくれないけど、彼女との約束「強くさせる」は守れているつもりだ。
技を当てる事すら出来なかったのに、サイコパワーで相手の動作を何百通りも瞬時に先読みし、正確無比に鉄拳やらビームやらをブっ放す姿は、とても同一ポケモンだとジックですら思えない。
戦えば戦うだけ経験値が手に入る。
ステータスチェッカーに記載されていなかった技も、自己覚醒を繰り返し攻撃・補助・防御、あらゆる状況に対応できるオールマイティに揃え、それでいて器用貧乏にならない全面的にハイスペック。
これでわざマシンが使えたのならば……
数少ない難点である素早さの微妙さだって、小柄な体躯という点も味方しているのか、一般に出回る能力グラフほど低くないし(むしろ速いが皆の見解)、こうそくいどうをすれば緊急回避に空中戦、何でもゴザレな鋼鉄ガール。
メタグロスの本当の強さ、それは選ばれしトレーナーだけが最上級の悦びと共に堪能できる。
その「選ばれしトレーナー」になってしまったから、その意味を理解出来るようになった。
これだけ圧倒的な戦闘力を誇るポケモンを操れば、まるで世界一強いトレーナーになったかの陶酔感が襲うのだ。
メタグロスほど強烈なスペックを誇るポケモンは、敗北しても全てトレーナーの責任となる。メタグロスだから勝てて当たり前、そんな辛辣な言葉を吐かれる覚悟も必要だ。
「……………………」
命令を無視していたのも懐かしい。
疎外感を特に持たず、自分から「ぼっち」になろうとしている様にも捉えられるメタグロス。
メコンの手料理を残さず食べたり、お皿を流し台に運ぶくらいはする様になったけど、爽羽佳やネリがキンセツシティまで遊びに行こうと誘っても、強くなる事を優先させている少女は「興味ありません」と、一度も同行する事は無かった。
(メコン以外はぎこちないってか、事務的な口調も目立つんだよなぁ……かたくりこへは知らんけど、俺が一番厳しい眼で見られている様な……早く強くしてとか、コレで強くなるのとか、こわいかおでギラギラされながら訴えられて……あっ)
いくらメタグロスでも、たったの一ヶ月経験値を積んだだけで、一vs二のバトルでも多少傷を負っただけで、勝利してしまえる実力を身につけられるのだろうか?
野生として生きるには充分すぎる、今の少女ならばトレーナーが居なくとも滅多な事じゃ負けは無い……のでは? 少女は急いでいる?
(あの子は俺の下から逃げる……? そっ、そういう約束だけど……)
少女は手持ちでは無い。モンスターボールに入らない。
強くなりたい願望を叶えるために、協力を申し出たのはジック側。
満足な強さを得ればと言っていたが、その定義は少女本人にしか分からない。少女が「もういいです」と告げてしまえば、たった今からでも保護をする理由が無くなってしまう。一緒に暮らす意味も消えてしまう。
嫌になったら逃げても構わない、一ヶ月前の自分のセリフを思い返す。
保護をしたからと言って、強要してボールには押し込まない。トレーナーとなってからは極力ネゴシエーションして手持ちを増やしてきた。
人型となったポケモンへ捕獲アイテムをぶつける……そういう罪悪感は未だに捨てきれないが、彼は相手の「意思」を尊重するトレーナー。
俺はこう思っている、キミの意見を聞かせて欲しい。
意見が合えば仲間入り、合わなければ無理に追うことはしない。
どうしても仲間にしたいポケモンが居たとしても、相手にその意思が芽生えなければトレーナーとして、本能的に取り出そうとしてしまうボールを投げ捨て、踏み壊してまで、そのポケモンと別れた事もあった。
(俺はメタグロスをどうしたいんだ、目的はほぼ達成されているとしたら、彼女は近い内に何処かへ行ってしまう……イヤだっ! それは絶対に!)
こんなの初めてだ。
今までも似たようなケースはあった。契約が切れたら「また何処かで会えたらいいね!」って、笑顔で見送るのがジックであった。
やっぱり手持ちにしてくださいと、考えが変わった子も居て、その時は快くゲットという形で仲間に加えた。
(放っておけないよ……でも意思を縛り付ける様な事は……ああっ! クソッ! 俺らしくない……ナヨナヨしてんじゃねぇよ俺……)
トレーナーとして――自覚は無いが男としても――重大な特異点に到達してしまった、悩める彼の想いなど知らぬ顔、室内温度が五度は下がったかもしれない、熱伝導率が著しく低いため息を吐く少女は、もう基本スタイルとなった体育座り。
(スカートの中が見えそうなんだけど……羞恥心はもう少し育って欲しいなぁ……)
膝丈20㎝のスクールミニスカート。
バトル中だって体育座りしてる今だってそうだけど、パンチラ目前、または確実に見えるであろうポジションでも、何故か下着が見えた事は一度も無い。
サイコパワーでも使用して、上手いことガードしているのだろうか?
温泉の地だけに彼女のハートも、暖めて解すことが出来れば……
(チーズドッグ……食べたい……ですっ……)
……あくまで我が道を貫こうと、ブレインに内蔵されたメモリから、お気に入りのウルトラチーズ味をリピート。
一口食べればモッツァレラチーズが優しく舌を包み、何処までものび~~る! ゴムパッチンよりものび~~る!
クールな顔してチーズ伸ばしの飛距離にチャレンジするわ、全種類のトッピングパウダーを試しちゃうわ、色々な少女を見られるのはチーズドッグ様のお陰である。もうあのお店に脚を向けて寝られないから、ベッドの位置を変更したくらいに……
悩め、少年よ