ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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成人向けだったら絶対に○○○されてる状況だよぉぉ...


Segment・tetra――猛火の兆候

 メタグロスの意見を聞き入れて、フエンタウン~百十二番道路でトレーナーとのバトルを五戦行った。

 

 折角、宿泊券を頂いてこの地にお邪魔しているので、それだけでは勿体ない。

 

 皆のリクエスト、ジックの提案により足湯に浸かる、縁日での射的などもインターバルとして取り入れているのだが、肝心のメタグロス本人は「そんな事している間にも、バトルの一戦でも決行出来るのに」と、あからさまに不満げな雰囲気のままジト眼で、ジックに尋ねる。

 

「キミの考えは分かるけどさ、皆で行動してるんだから少しは付き合って欲しいな。時代の流れが異なっている町並み、ミナモとは違う活気に包まれたお店とかさ、ぶらり歩きしながら散策も旅行の醍醐味だと思うけどな……」

 

「……わたしには理解出来ませんが」

 

 わかっちゃいたけど……やはり難しい。

 

 風情を何となくでいいから味わって欲しいと、目論見も含んでいたが戦闘可能なコンディションなのだから、バトル以外は時間の無駄とすら捉えているのかもしれない。

 

 少女にとってプロセスを踏む為の実践が大事なのは重々承知だが、旅行中くらいは控えてミナモには無い歴史に文化、景観を楽しんだり様々な色や効能を持つ温泉でまったり出来ない物かと、批判は覚悟であったが……

 

「……もうすぐ十八時か、これからお祭りに行く予定は組んであるけど……メタグロスは?」

 

 初日は夕方から、二日目は朝っぱらから二日掛けて行われる、町全体が一致団結して開催する夏祭り。

 

 特にイッシュ地方からは、夏祭り目当てで短期間の滞在希望電話予約がとても多く、宿屋は満席でキャンセル待ちも期待出来ない注目度。

 

 盆踊りに投げ縄に綿菓子、海の向こうの地域にはそういう習慣や文化が無いので、ここぞとばかりに〝いろは〝を体験しに来てくれるのだ。

 

 ちなみに、宿の人気料理トップ三は「スシ・テンプラ・ソバ」なのだとか。

 

「遠慮しておきます」

 

「勿体ねぇニャあ、メタ子。花火したりとか神輿担ぎたいとか、そういうジャパニーズ意欲はそそられニャいのかニャ?(メタ子が本気出せば一人で担げそうニャけど!)」

 

 お尻に十字の絆創膏を貼り付けている黒娘は、例の失態を全く恥じず、懲りず、新しいキメ台詞の思慮を巡らせながら、相手の答えは読めているが気を遣ってくれた。

 

「……本日のバトルは終了したと推定、宿に戻っています……」

 

 少女はまだ戦い足りないのだろう。少なくとも残り十五戦は……

 

 メタグロスの少女と二人旅だったなら、何とか捌けた目標だけど他の手持ち達とも意見を交え、最終的な判断を任せられるのはトレーナー。

 多数決とは少し違うけど、少女の主張だけを回収する訳にもいかない。

 

「…………分かった、参加したくなったら何時でもいいからね? ゆっくり休んでいて……」

 

(ジックさん……)

 

 年に一回の催し物よりも、貪欲……いや、強欲な姿勢で〝納得の強さ〟を創りあげようとしている少女。

 

 皆で一つの神輿を担ぐよりも、戦って勝つ方が達成感を得られてしまう。それが強さへのプロセスとなるから。

 

 本当は参加して貰いたかったけど、嫌がる少女を無理に連れ回す訳にはいかない。

 

 主人の背中と感受性が不足している蒼い少女の背を、心配そうに見つめているメコンも残念だが……説得は効果無しだ。

 

 極論とすれば、バトルはミナモに帰ってからも出来る。だがフエンのご当地イベントは今日と明日しか行われない。

 

 そういう事が伝わって欲しかったのだが……

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

「……………………」

 

 少女が帰宿し二十分ばかり経過していた。

 

 もう過去の戦闘分析、内蔵メモリのシミュレートも飽きてしまった。

 

 正確には想定しうるパターンを、全てやり遂げてしまったのでこれ以上は無駄であると判断。

 

 パンチラしたって文句は言えない、悪いのは寧ろ魅せ付ける様な短さの下衣である少女側……にならないのは世の常。

 

 コンパクトな身体を折りたたむ体育座りは、本来の姿の電磁移動姿勢を酷似させる。目のやり場に困ってしまうが、少女はこれが基本スタイルなのだ。

 

「体力は全回復してます……催し物の終了時間まで大分掛かりますね……それまで暇……それは勿体ないです……となれば……」

 

 宿に戻らないで、最初からこうすれば良かった。

 

 一人で野生ポケモン、別にトレーナーだっていい、バトルしに行けば良い。

 

 ジック達が帰宿するまで待機する必要は無い、実践が最大の学習源、迷い無く決断した少女は間接の動きを感じさせない、見えないピアノ線で操作された人形の様に立ち上がった。

 

(トレーナーから指示を貰わずとも、わたしは戦闘力向上プログラムの最低水準を満たしてます。明白なまでの戦力差でない限り、わたしは負ける事が無いっ……)

 

 それとも、求めているだけの強さには惜しくも届いてないが、この地で彼らの下から去ってしまう選択も取れるのでは?

 

 自分はモンスターボールに納まっていない、逃げる事は何時でも出来る。

 

 元よりツールとして利用させて貰っていたのだから、一先ず纏まった戦闘力が備わった自分なら、残余プロセスは一人でも達成出来る。

 

(……一つだけ、心残りなのはチーズドッグ……)

 

 唯一少女が無表情であるが、心を弾ませ悦楽の気持ちを生み出した焼き菓子。

 

 あれだって小麦粉、バター、卵、牛乳を混ぜ合わせチーズを挟んだだけの、つまらない俗物だとブレインコンピューターでは、判定が出ていたのに……

 

(いざ食べてみると……とっても美味しかった……やってみなければ分からない……? 試して見なければ分からない……? 仮説による裏付けもない、論理的ではありません、わたしには不要な感性であるハズ……感……性……?)

 

 そんなの いつ うまれていた ?

 

 キッカケを与えられなければ、チーズドッグすら不要物と判断し、一生あの美味しさを知る事は出来なかった。

 

(……?……?……)

 

 チーズドッグを口にして「美味しい」と感じられる身体を、舌を、自分は持っていると判明した。

 

 美味しいの定義は未だに謎だが、食べ物など稼働エネルギーの維持が目的で、必要量以上の摂取はしない、それで良かったのに十本も二十本も、バトルに勝った分だけ買って貰うよう、強く要請していた。

 

 その隣には……バトル中だけでなく、ログハウスでの生活中でも決まってあの男が居た訳で。

 

「……………………」

 

 無意味、この地で彼らとの関係を絶ち、自分は一人で生きていく。

 

 一時的に思考を切り離し、ポケモンたる本能に従って、戦いの相手を捜し求める少女は足音も立てず、ジック一同の宿を抜け殻にしてしまった。

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

「…………なぜ、どのトレーナーも戦っていないのですか……そんなに〝お祭り〟とやらは楽しいのでしょうか、理解不能」

 

 メタグロスの少女は百十二番道路への段差を降りて、北へ進めばほのおのぬけみちへと入り込む地点まで、戦いを求め流離っていたのだが、誰も彼もお祭りに夢中で闘争心を緩和させてしまっている。

 

 フエン全域がお祭り会場となっているが、百十二番道路以降は人気もポケ気も無い。

 

 時々草むらが「カサッ」と音を立てるが、戦うに値しない弱小ポケモンだ。

 

「…………ぁむ、もくもく、あぐあぐ……チーズドッグには劣りますが……悪くない味ですね……もぷもぷっ」

 

 仄かに熱を帯びた草むらから、子供のドンメルが飛び出して来たが、戦うつもりは無く相手がメタグロスだとも分からず、幼い故の児戯。

 

 手甲を出現させる事も、歩行速度を変化させる事もせず、会場付近に増設されていた縁日の店主達が「お嬢ちゃん可愛いねぇ!」「可愛い子にはタダであげちゃう!」など、お祭りと温泉町のホットな雰囲気に飲まれず、キンキンに冷え切ったプリティ・ブルーメタリックへと、売り物をバンバカ手渡して少女は両手いっぱいに抱えながら吟味中。

 

「アチャモまんじゅう……カラーヒヨコのように色が様々……かざんのおきいし……真っ黒なコロッケですが焦げてはない……リュウラセン……ツイスターポテトはスパイスが……うむっ、美味しいとは……なんか悔しいですっ……」

 

 実はお祭りのスケジュールに組み込まれている、バトル大会は〝明日〟開催される、その代わり本日は一切のバトルイベントは無い。

 

 フエン独自の「お祭りの時くらいは忘れましょう」という伝統的なしきたり。

 

 トレーナーもポケモンも戦うだけが全てじゃない。忙しいアナタも偶にはゆっくりしてきなよ。

 

 プロのバトラーとして収入を得ている者だって、夕方~明日の朝まではキッパリ忘れて、手持ちや見ず知らずのトレーナーと一緒に食べて、歌って、踊る! 

 

「元は取れた、という事にしておきましょう……サクサクサクサク……」

 

 それを知らずお外に出てサーチしても、現れる訳が無かったのだ。

 

 仮に出現しても先程のドンメルとほぼ同等な、自分が経験を得られぬ対戦者。 

 

 チーズドッグには負けると、心の中で何度も繰り返しながら咀嚼して行く。

 

 

……っぷ、はみゅっ……ちゅぱ。ちゅぱっ……は……ぁん、くぷるっ……ちゅぷっ、ソース、零れそうです……じゅずずっ……ぬちゅっ……ぬにゅっ、ぬるっ……ずっ……れろっ……

 

 

 トロピウスのチョコバナナを、最小限の動作でパクリッ。

 

 上唇で固定しながら舌先でチロリッ、チョコソースが垂れる前に裏側に舌を向けピチャピチャ……官能が膨らむ卑猥な食べ方として捉えられそうだが、モジュール解析を行い効率を重視した結果、この様になっているだけである、だけったらだけなの!

 

小柄だが豊満なおっぱいをこの時ばかりは活用し、大量の品を落とさない様に上側からホールドしている。

 

 こんなだらしのない脂肪、戦いに影響を及ぼし兼ねないので自分には不必要――――

 

 

「クイタラン、よこどり!」

 

 

「…………!」

 

 あまりに油断っ、不覚っ、屋台の品々をレビューする内に警戒心まで薄れていた。レベルの低い野性しか居ないし、トレーナーも見当たらないから諦めていた理由もあるが……猛省。

 

「…………誰ですか、わたしが貰った食品……返してくださいね?」

 

「げっへっへ……ヤ~ダねェ! 特上のメタグロスを見つけたんだぜ? どっちの意味でもタダじゃ返さねぇよ!」

 

「……………………」

 

 木々や岩場の影から出現したのは、トレーナーと思われる男達が三名、手持ちであろう最長で二十メートル以上にもなる炎の舌を持ち、トレーナーを模倣し鞭の様にしならせる人化クイタランを始めとした、炎ポケモンが合計四匹。

 

 知性に乏しそうな反社会的な顔つき、出で立ちも粗暴で錆びたチェーンを地面に叩きつけ、自分が強いと周囲に威嚇する迷惑行為を馬鹿の一つ覚えの様に繰り返しながら、汚らしい視線でメタグロスへ睨みを利かせる。

 

「……丁度良いです、目標の二十戦まで届いておりませんので、貴方達にはわたしの糧となって貰いましょうか……微細にしかなりませんが」

 

「お~お~生意気だねぇ! お前ら! このメタグロスをトラヴィスさんへの貢ぎ物にするぞっ! こんなクソ田舎にメタグロスが居るなんざァ、理由は知らねェがどーでもいい! やっちまえ!」

 

「…………じしん」

 

 レアで強力なポケモン、しかもトレーナーに値する存在が居らず一人歩きしていた。

 

 メタグロスが強くても、炎タイプのポケモンで固めている自分達からすればカモ、カラカラがふといホネ持っていたくらい都合がいい!

 

 よこどりを命令して、少女が食べていた物を根こそぎ奪ったクイタランを先頭に、バオッキー、ダルマッカ、デルビルが続けて炎技を発射――――する事は許されずに、手甲をフィールドにぶつけ大地を揺るがす衝撃波によって一掃される。

 

「弱い……殲滅を続けます」

 

「…………ウソ、だろ……俺らのポケモンが一撃で四匹も??」

 

「オイッ! グロスってそんなに早くなかったハズだろ? ちっこいのにおっぱいデカいし、本当にアイツはメタグロスなんかっ?」

 

「うるせぇな! 深紅の瞳に蒼の手甲、身体中のバッテン印にこの攻撃力、メタグロス以外に考えられるか! 数で攻めりゃいいんだよ……相手は一匹だが俺らは何匹も所持してんだぜ? 先に力尽きるのはメタグロスだぁ! ヒャハァァアッ!!」

 

 低劣で品性を感じない声質だ……そんなのが三人も。

 

 他人数に襲われているが、二匹目のクイタランをかみなりパンチで伏せ、群がるドンメル――――先程の子供と比べて格段に目付きが悪い――――が、はじけるほのおを撃ってきたが、ひかりのかべで全弾防ぎながらこうそくいどう、密集していたのでじしんをたたき込めば纏めてノックアウト。  

 

多勢に無勢ではない、寧ろ苦労せずに勝てる確信がある。

 

「ヤベェな……こうなったら……!」

 

「む…………」

 

 物量作戦も幕切れが近いと悟ったチンピラは、ボスの元へ直接誘導してしまおうと少女が拾おうとした、定番からフエン祭りでしか食べられない品々を、残りのデルビル三匹に投げ渡す。

 

「……誘われていますね……分かっていて入り込むのは、いい気分ではありませんが……アチャモまんじゅう、紫色と橙色が残っておりますので……奪い返しましょう」

 

 この距離ならサイコキネシスは届く、しかしデルビルはあくタイプなので無効化される。

 

 チンピラ共はタイプ相性まで考慮しておらず、残ったのが偶然デルビルだっただけ。彼らにその辺りの戦術を練る即応力は皆無。後手になってからやっと頭が回る。

 

 ほのおのぬけみちへ逃げるデルビル達を追いかけに入った少女。

 

(あそこは俺らのアジトだ! お前の苦手な炎ポケモンと仲間達が出迎えてくれるぜぇ? トラヴィスさんも居る事だしな! これでバトルでの負けがチャラになるはず)

 

 食に対する意識が芽生えている少女は、スルーせず全員なぎ倒して奪われた物を残さず取り戻し、早くアチャモまんじゅう食べ比べレビューを完成させたい。

 

 ……なんだかんだ、お祭りで貰った品々は気に入ったらしい。  

 

何が待ち構えて様が、今の強さならば負けは無い。

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 周囲に火山泡が吹き出しているが、床暖房よりちょっと熱い域に収まり危険性は低い。

 

 砂漠に入れない者は手持ちを鍛える意味を持たせながら横断路にしている炎のパワースポットは、えんとつやまが噴火し溶岩が流れた跡、活動が鎮まった事で空洞となった天然トンネルだ。

 

 最近この抜け道周辺に「ならず者」が出現し追い剥ぎの様に、数に物を言わせて襲われる傷害、または窃盗事件が多発している。

 

 彼ら下っ端を力で掌握している大将こそ、フエンジムリーダーの門下生であり、一番弟子で将来性を期待されていたが劣等、挫折、絶望、自己否定。プライドを失った男……《トラヴィス》

 

「へー、メタグロスを見つけてアジトに誘い込んでいる……と。予想を超えた収穫じゃねぇか、数ヶ月、相手を選べば数年は金に困らねぇかもしれねぇなァ! 俺様のポケモンにしてマニアへ売り払ってやるぜっ!」

 

 下っ端共から連絡を受け取り、かいりきで岩を動かす必要のある通路の最奥部に、都合良く玉座の形をした岩椅子で脚を組みながら手を叩き大笑いすれば、通路全体に狂声が響き渡り集結していた下っ端共は、ぬけみちの蒸し暑さとは違った彼への恐怖心で冷や汗が止まらない。

 

「てめぇらよォ、俺様の手を汚させるんじゃねぇぞ? メタグロスを潰せ、そして捕獲しろっ!」

 

 ……目的を見失い自分にも世間にも、怒りを周囲にぶつけて誤魔化している。

 

 モンスターボールをトスしながら、肩肘を付き王様気分のまま下っ端に命令する。

 

 コータス、ヘルガー、キュウコン、アジト内に集っている者達の手持ちは、少女が戦ったチンピラ共より強力らしい……やはり目付きで悪印象となってしまう損なポケモン達だ。

 

 それが十匹、二十匹、責め苛むバトルロワイヤルの開幕だ……

 




ギラティナさんのアレ、わりと好評だった? っぽいですね。
レギュラーでもサブでも無いのに、書きたくなった理由は不明ですが、ロリババァは良い物ですよね! 次からは本編にちゃんとした形で登場するキャラにします(汗)
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