ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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今年最後の更新です!

回覧してくれて、本当にありがとうございます!
各話のプロットも纏まっております! 何も心配いりません、書いていくだけです!
強いて言うならニックネーム決まっていないポケモンがまだ居ますけど...

全部で12章予定です!


Segment・tetra――邪晄なる火焔

翼も一見すればボロボロに朽ちたバイオレットカラー、翼を広げて羽ばたかせる度に星形の光輪が出現し、極めて希少性の高い《色違い》だと、自身にどれだけの値打ちがあるか自賛する様に魅せる。

 

「俺様の色違いのリザードン、ザムヤードとタイマン張れ。勝った方がメタグロスの所有者となる、トレーナー同士公平な条件だろ?」

 

「数の暴力を振るっておいて、今更〝公平な条件〟と言われましてもねぇ……メタグロスはアンタに渡さないっ、勝つのは俺達だっ!」

 

 やたら「色違い」を強調しながら、膝に腰を下ろしたザムヤードの身体を、猥り慣れた手つきで捏ねるトラヴィス。

 

 彼女の肉体は理想的な大人の女性。

 

 男の願望を叶えたと言わんばかりに、括れた腰、衣装に横シワを作る大きな胸、細長い脚、ガーターニーソの四点セット。

 

 セクシーダイナマイトに追従するは、太ももを大胆に露出し鼠径部までスリットを入れたチャイナドレス風衣装。

 

翼が生えている背中もぱっくり開かせ、筋が一直線に走る妖艶な女体は後ろ姿だけでも、大抵の男は興奮してしまうだろう。

 

「昨日の夜は凄かったよなぁザムヤード? 今夜も〝アレ〟……していいよな?」

 

「あんっ……❤ ご主人様が仰るのならば……❤ 私を意のままに扱ってくださいませ❤ メスたる悦びを植え付けてくださいませ❤ はー❤はー❤ っ……❤」

 

 

 彼女は完全に〝メス〟となって堕とされている。

 

 

ファッションとしてではなく、「そういう理由」で首輪と南京錠を付けているのだから。

 

胸を鷲づかまれ様が、ドレス内側に手が入り込もうが、嫌がる素振りはまるで見せず、バトル開始前だと忘れて寝室での光景をそのまま……

 

「……っ、ガキにはまだ早かったよなぁ、わりーわりー! いけっザムヤード、勝ったら続きをしてやる」

 

「ハイッ……❤ 焼却処分してやりますとも❤」

 

メタグロスの少女は無表情のまま、あの者達の行動も言動の意味も理解できず。

 ジックは「戦う前にそんな事してんじゃねぇよ……」と、性模様に惑わされず。

 

 ご主人様のご褒美……欲しい……❤

 

「……貴女は強いポケモンよ、それは認めてあげるけどタイプ相性は覆せないわ。炎が鋼に負ける要因は無い、それでも容赦せず焼き倒すっ、覚悟する間も与えない」

 

 発情した声でオスへ媚び、キスのお目溢しもお預けされ、切ない表情で涙ぐんでいた彼女は豹変。

 

 リザードンがヒーローならば、色違いのブラックはダークヒーロー、彼女の装いや服従度合いは悪の女幹部か、対象を完膚なきまでに焼き、焦がし、痛めつけるサディスティックな女へ、脳を筆頭に身体の神経が全て入れ替わっている。

 

「一撃くらい耐えろって、みっともなくお祈りでも捧げろや! それじゃあ行くぜぇ、かえんほうしゃ!」

 

 公平なバトルと言っていた傍から、唐突な先制攻撃。

 

 有利対面であるがジック側が対抗策を持っていても、未然に防ぐ趣旨もあったのかもしれない。

 

「右へこうそくいどう! そのままリザードンの正面に……いやっ、天井に退避だっ!」

 

 仄かに黒く輝いた炎は、色違いの証である。

 

 竜の象徴的な攻撃であるブレス、下っ端共のポケモンと同じ攻撃ながら、格の違う殺傷力はメタグロスが避けた後方の、洞窟岩を炎上させる。

 

「クヒャヒャヒャ! PP切れまで持てばいいなぁ! ひのこを連発しろザムヤード!」

 

「無様に逃げなさぁい!」

 

 次に繰り出されたのは、炎タイプの初期技だが知っての通り、そのポケモンの特訓内容と努力次第で、見違えるほどの技へ生まれ変わる。

 

「くっ…………」

 

 五本の指先に灯る火球、手刀を打ち付ければ爆裂弾となり発射される。

 

 追尾機能は備えずとも、五発もの火球を全て避けるか攻撃を当てて相殺するしか……

 

(今はこうそくいどうを指示するしかない……)

 

 磁力反発滑走はフル性能を取り戻したが、メタグロスはザムヤードに接近を許されない。

 

 かつて、ネリへと告げた言葉を思い出す。

 

(避けているだけでは勝てません……いずれPPが底を付いてしまいます……そうなったら……)

 

 こうそくいどうを使えば、敵の攻撃を全て避けられると仮定しても、各種技には使用回数制限がある。

 

 一発の回避で一、PPが減る。あちらのポケモンは恐らく大量の炎技を所有しているのだろう。 かえんほうしゃ、ひのこ、例えこの二つがPP切れを起こしても他の炎技で撃破してやれば良い事なのだから。

 

「ちったぁ反撃してみろや! ポケモンに逃げられるお間抜け低級トレーナーさんよぉ!」

 

「どうしたの? そんな事したって時間稼ぎにしかならないわよ」

 

 発射から到達までの速度も、今まで相手にした炎タイプと比較にならない。地形効果も加わり、ひのこですら全段命中を許せば、炭化した匂いが抜け道へと充満する。

 

 煽りの才能はジムリーダーよりも上、されどジックは動じない……が、少女はと言うと――――――

 

 

(ぁ……あ……やっ、はっ……はぁっ!……怖い……怖いんだ……わたし……はぁ、はぁ……はぁ……!)

 

 

 頼みの綱のPPが切れたら、鋼タイプの自分はザムヤードの攻撃には耐えることが出来ない。

 

 相手が物理タイプの大技、フレアドライブでも選択してくれたら圧倒的な防御力を誇るメタグロスなので、痛手となるが耐えきれる。

 

 しかし、物理防御力と比べたら良心的な(それでも高レベルだが)値を持つ特殊防御力を狙うのは、メタグロスの攻略法として賢い。

 

 全力を持ってして技を繰り出しても悉く、攻撃が命中していない。

 

(だから何だって言うの、かえんほうしゃも、ひのこも、PPが無くなったところで問題ないのよっ!)

 

 そうなのだ、メタグロスはこうそくいどうが尽きてしまえば、生存の術を失う。

 

 なので尽きるまでは当たらなくてもいい、オイル循環されず起動スイッチも押されていない、機械よりも表情筋を動かさない少女の、取り繕った顔が少しずつ額に汗を浮かばせ、乱れつつある過程を楽しませて貰う事にした。ご主人様以外にはサディスティックな思考となる女だ……

 

(ハァッ、ハァァ……ァァ! ハァッ! ダメですッ……このままでは……)

 

 自ら磁力バランスを崩す、ジックの呼びかけに何とか反応して、這ったまま火球をやり過ごす姿を、相手トレーナーとポケモンは「哀れ」「みっともない」など、自尊心を煽りたい放題だ。

 

 命からがらのメタグロスと対照的に、ザムヤードはご主人様に目配りする余裕すらある。もうすぐご褒美が貰えるので、そういう意味なのだろう。

 

 

 

(メタグロス……! 俺の声が聞こえるか?)

 

(……っ!? ハイッ、聞こえます!)

  

 

 ジックが直接指示を口にしなくなった? 諦めたのだろうか?

 

 にも関わらず、メタグロスは指示を貰わすとも、正確・精妙・精密に技の発生ポイント、通過ポイント、着弾ポイントを測定し、ツインテールから発生する爆音は途切れなく、蒼く華麗に滑空する。その表情から、どういう原理なのか、焦りや不安が消え去っていた……

 

 

   《念話》

 

    

(まさか……いやっ、あいつらは確実に念話してやがるっ! 逃げられたハズじゃなかったのか? そんな関係で念話が成立する訳ねぇ!)

 

トレーナーとのバトルでは、デボンイヤホンの使用は禁止されている。

 

 相手トレーナーの口の動きを読む、口頭で命令を与えられた直後に、自分はどう動くのか、動けば良いのか、オープンとなるからバトルは白熱する。なるべく作戦を明るみにしないよう、時には自己判断に任せ情報を曇らせるのも、また作戦の一つ。

 

 ……唯一の例外として認められているのは、エスパータイプが所持する特殊能力、念話だ。

 

 実質的にイヤホンの上位互換、トレーナーからの指示だけでなく《ポケモンからの言葉もトレーナーへ伝わる》

 

 規制寸前、反則スレスレかも知れないが、固有能力として政府から認定を貰っているし〝どちらかが一方的に念話したい〟と思っても、決して届く事は無い。

 

 何故なら、互いに「念話したい」と強く念じていなければ、成立しないからだ。

 

 トレーナーとの深い信頼関係を築いていなければ、一方通行にもなり得ない。

 

(面倒くせぇ……! 格下が念話に成功しましただぁ? クヒャヒャ……! ちィとばかし、茶々入れてやりましょうかねぇ!)

 

 ザムヤードが攻撃動作に以降、狙いは脚を縮ませ今か今かと、こうそくいどうを繰り出さんメタグロス……ではなく――――

 

「その後ろにひのこを投擲してやんなァ!」

 

(なッ゙!?)

 

 五発同時に放たず、敢えて一発は指先に留めておいた。

 

 メタグロスが複数匹居るかの如く、残像を揺らめかせた電磁反発ダッシュの速度は、ひのこを超過し回避出来た物の、残りの一発はフェイント気味に数秒の間を開けて投擲された。

 

「うァァッ!! あ、あいつらッ! ふざけっ……!!」

 

(………………!)

 

 最後の一発はなんと、ジックの足下へ着弾したのだ。

 

 トラヴィスもトレーナーへダイレクトアタックを、仕掛けるつもりは無い。冒険主義にして蟷螂の斧、勝てる要素が無いのに落ち着いたツラ、生意気にも念話を成立させている名も知らぬガキを、脅かしてやるつもりであった。

 

 自分が攻撃対象になるとは思わず――普通は想定しなくていい――念話を中断させ右脚を後方へと蹴り飛ばし、背中に嫌な汗を噴き出されながら着弾した場所を確認、ジュウジュウと、鉄板の上で肉汁を滴らせるステーキを想起させる音が、火煙と共に漂っていた……

 

「オラオラオラァッ! こそこそ命令しなくていいんですかぁ!?」

 

「アハハハハッ! 必死に逃げちゃってか~わ~いい♪」

 

 ……トレーナーもポケモンも、腕利きであるがマナーは最低。いや、最低になってしまった。

 

 公式試合だと退場、故意にトレーナーを傷つけてしまえば免許剥奪。

 

 非公認だからと言って、当てるつもりは無いと言って、やって良いこと、悪いことがある。

 

 プライドと共にモラルまで失ってしまったらしい……下っ端達ですら、ジックが無事で安堵していたくらいなのだから。

 

(俺は大丈夫だメタグロス、あの野郎……勝つぞ! 俺達の力を合わせて勝たなければいけない〝敵〟だ!)

 

(…………ハイッ! 勝ちましょう!)

 

 ダートじてんしゃで爆走中も、念話を試してみたがアクセスならず。

 

 土壇場とも呼べる灼熱の闘乱中、初めて念話が成立した! 

 

 メタグロスもジックに助けと指示を求めており、今までの対戦したポケモンの威圧感など比では無い、絶望的不利な状況。

 

 自分一人ではどうにも出来ない……相手のリザードンの方が手練れでレベルも上回っている、ワーニング、エマージェンシー、デンジャー……自らで自らの不安を増長させてしまう、不協和音の注射が全神経、全細胞、全臓器に押し込まれ、歯がガチガチと振るえている。

 

《怖い》という感情も、このバトルで初めて生まれた。

 

 掠っただけでも致命傷となる黒いかえんほうしゃ、連発されている黒いひのこ。

 

 命中は許されない、深紅の瞳は濁る、淀む、負けてしまったらどうなってしまうのだろう……

 

(……メタグロス! 俺を信じてくれるか? キミは一人じゃ無いんだぞっ! 一緒に俺も戦っているんだぞっ!)

 

(……ハイ…………)

 

 高レベル、色違いのリザードンと対峙してから、怖いという感情で埋め尽くされて、押しつぶされそうだったのに。

 

 念話が成立し、彼の言葉を聞いていれば恐怖も、不安感も、気がつかぬ内に和らいでガチガチだった身体も、フワリ軽やかにステップを刻み、軌道を描く。

 

 原理不明……しかし勇気づけられている。

 

 この現象を裏付ける理屈を検索するのは後回しとする……

 

 こうそくいどうのPPは、残り僅かだが勝利への条件……疑念を持たず自分を彼へと委ねる必要性アリ……彼の言葉を信じる……!

 

「あまごい……」

 

「なにッ!?」

 

 ……ジックに対しひのこを放たれた瞬間、身を挺して庇おうと着弾地点へ標準を変更したが、「大丈夫だ!」という言葉を残し一旦念話を解除させた。

 

 今までの自分だったなら、我が身を盾にしてまで彼を守ろうとしただろうか? 

 

 自問自答……恐らく「それはない:理由・HPが減る、勝利に繋がらない非効率行為である」

 

(わたしは……反射的に……彼を……)

 

 結果的に彼に直撃せず、命令したトレーナーも放ったポケモンも、本気で当てるつもりは無かったと笑っているが……

 

(……………………ッ!)

 

 不安や焦り、恐怖とは別の感情が生まれた事は、少女と心の部屋を共有しているジックにしか分からない――――

 

 PPが切れたのかっ、十字架に貼り付けにされた罪人の様に、地面へ降り立つメタグロスへ、こちらも最後の一発となる炎のブレスを命ずる!

 

 技は同タイミングで繰り出されたが、突如、洞窟内だと言うのに雨雲を呼び起こされ、天候が大雨状態となり炎タイプ技の威力は大きく落ちる。

 

 メタグロスがあまごいを使える事も忘れていたが、あまごいを使うメタグロスなど聞いたことも無いので、完璧に予想外だったトラヴィスは余裕の表情を捨てて、玉座から身を乗り出し怒鳴る。

 

「……へぇ、面白い技使うじゃ無い、かえんほうしゃが届く前に鎮火させる何てねぇ」

 

トレーナーよりも平静だが、キメてやる確信を持っていたザムヤードからしても、まさかの天候技には足止めを食らってしまった。

 

 尻尾の炎は長時間、海にでも潜らなければ消える事は無いけれど、お互いに衣服が身体に張り付いて、ロリ巨乳とセクシーダイナマイト、新手のグラビア撮影会に非ず、ボディラインが浮き彫りとなる雨宿り状態になるまで、十秒足らずの勢いで水玉は降り注いでいる。

 

「ならよォ……! 奪い返しゃいいだけだろうがッ! にほんばれだ! ザムヤード!」

 

(うっ、持ってるのかよ!)

 

 形成は逆転……ならず。

 

 対となる天候技、炎技の威力を二回り近く上昇させながら、水技の威力は半減させるにほんばれ。 奇襲も空しく、天候を奪い返されて、本来はエネルギー源を無尽蔵に与えられているので、喜ぶべきだろう草タイプですら、あまりの人工日輪が射す狂熱に、根も葉も枯れて、焼かれてしまう、それだけの日差し。

 

(肩があった位置まで飛んで!)

 

 速度は変わりないが、一発で五発分の破壊力まで膨れ上がった業火球が、今まで通り五発、指を斜めへ、横へ、振り落とされれば発射される。

 

(……あ……つ……い……!)

 

 防御不可能、命中すれば確実に戦闘不能となる。

 

 望みを次々と絶たれても諦めないっ、心の中で指示を受け取り躱す事は出来たが、洞窟内の酸素が消費され酸欠になりそうだ。

 

(わたしが……あまごいを……自分でも……知らなかったのに……)

 

 そうか、心にアクセスし気持ちを分かち合っているのだから、彼が見つけても不思議じゃない。 

 

 あまごい……? 自分はそのわざを覚えていない……が、彼を信じて幼い声色で復唱したら、未所持である筈の技が発動出来た。

 

 わざマシンは使用できないので、元々覚えていた技であるのは明白だが……

 

「チッ、ひのこもPP切れか! じゃあコイツを食わせてやるよォ……! 晴れ天候時のコイツは熱い!……じゃ済まさねェぞオラァァッ! 一生消える事の無い思い出の焼き鏝だぜぇ!」

 

 来るっ、ザムヤードが動きを止めてエネルギーを充填、充炎、薄い黒を纏っていた腕が紫に近い黒に染まる。 

 

 ねっぷう。炎のみならず風を起こせたり羽があるポケモンならば、大体覚えてくれるのでダブルバトルでの広範囲攻撃、苦手な相手への役割破壊など、見かける機会は多い。

 

 これだけの技をかけら数個で教えてくれる、おしえオヤジさん達は偉人だ。

 

「大人しくメタグロスを渡さなかった、自分の愚かさを恨めよなぁ!」

 

「いいポケモンでもトレーナーがダメじゃねぇ……イキヨがりなさぁい!!

 

 逃げの指示しか与えていないジックを、馬鹿だと無能だと侮辱しながら、チャージ完了。

 

 少しの間は無防備となる、ラッキーチャンスだったのに、何も行動に移らないとは、諦めろと指示を下したのだろうか。

 

(あのリザードン、どんな攻撃が来ても耐えて反撃のねっぷうで仕留める、何かを隠している余裕の表情……俺らの作戦もこの次が正念場だっ、メタグロス!)

 

 こうそくいどうが使えたとしても、フルチャージ+にほんばれの恩恵を得た深紫に染まる豪熱風は躱せない、耐えられない。

 

 死の一撃がフィールド全域に放たれ、持ち主のトラヴィスですら、玉座の後ろ側へ身を隠す高密度の余波が襲う。

 

 フィールド中心部に居たメタグロスが、五体満足で済む道理など……

 

「クヒャヒャ……! 手こずらしてくれ……ッ゙ッ゙~~まっ!! まだHPがゼロになっていないだとッ!!?」

 

 オーバーキルの筈だぞっ! なぜ無傷で立っているんだ!

 

「今のねっぷうを凌いだ事によって、日照りのターンは終了したぞ!」

 

 トラヴィスもザムヤードも狼狽えを見せる、あれだけの威力を備えた一撃が無力化されたら、否が応にも軽いパニック状態に陥ってしまう。

 

 

 ジックがメタグロスの心へアクセスして、新しく発掘した技は三つ。

 

 

 その二つ目がネリも覚えているまもるだ。

 

 ほぼ全ての攻撃を一発のみ、完全に防御する速攻優先度技。 

 

 身体を小さく折りたたみ、蒼いツリー形状へとデジタル概念を張り巡らせたフォースフィールド。

 

 丁度ジックと少女、二人だけ囲える範囲は通常のまもるより防御領域が広い。

 

「よって、わたしも……彼も、火傷一つありません……」

 

 

 …………気に入らない、あのポケモンもガキも。 

 

 

 少し前までクールな表情が崩れかけていたのに、何だァ……「次はどうするんですか?」とでも訴えてやがる、睫毛一つも動かしていない顔はよぉぉぉぉぉ!!

 

 

「ザムヤードォ゙ォ゙!! オーバーヒートで始末しろッ! この空間を火葬場にしてやれッ!!」

 

 面白くねぇ面白くねぇ!

 

 メタグロスが相手だろうが所詮鋼タイプ、ザムヤードの炎技は直撃すれば確実に倒せる。

 

 のにっ……何度も何度も避けて、躱して、防がれ、まるで俺様が弱いから未だに仕留められてないみてぇじゃなぇかよぉ゙ぉ゙お゙ッ!!

 

 掌で踊らされる感覚、ジムリーダーの一番弟子として、将来を期待されていた実力者たるプライドの残りカスに縋っていたが、粒状に擦られたトラヴィスは激情。

 

 ザムヤードが所有している中で、最強の技でブチ倒してやると決めた。

 

 炎タイプでも最強クラスの技であるのに、発動までのラグが無い超攻撃的な突発性能を持つ。

 

 苦手な水タイプですら致命傷となる凄まじい火力だが、こんな技がノーデメリットという都合のいい話はない。

 

 何発もの攻撃を〝前借り〟するに等しいので、技を放った直後に炎タイプですら「オーバーヒート」を起こし、身体へと極端な代価が上乗せされるのだ。

 

 宇宙から地球へ戻ってきたばかり、歩行も立位も困難な状態に陥るダルさ。

 

 しかし、これはタイマンバトル。一撃で倒してしまえばデメリットなど……無いッ!

 

 

 

「うああッッ!! ああああああぁぁあああ!!」

 

 




ザムヤード「今のはオーバーヒートじゃないわ、ひのこよ!」

ザムヤードさんは、悪の女幹部の魔術師っぽいイメージです。だから衣装もエロいんです!

どう見ても○○○○されてる顔ですねぇ...成人向けの次のターゲットです(ボソッ

ブラストバーンでない理由も、ちゃんとあります。



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