ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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どうしちゃったのオシエさん? 更新が早いわよ?

謎のポケモン、大暴れの回


Segment・penta――黒ノチカラ

バリヤードの作り出した壁ごと破壊して来た金色単眼は軌道を読むまでもなく、真っ向から白銀色の光を収束したビーム、マジュラムを撃ち落とした時と同様の技をぶつけて、易々とウツボットの消化液ですら溶けるまでに時間をかけさせる丈夫な糸を消滅させ、逆に糸を辿るかの様にドルーガーへ直撃。

 

 

(ロザリオにキス……どころか汚し、切断する……おぞましい存在……ですわぁ……隊長……申し訳ありませ……)

 

 

あのビームで四つの羽全てを、丸型に貫通されてしまい飛行も出来なければ戦闘も行えず……一撃で瀕死になってしまうなんて……

 

 油断はしていなかった、だがあの黒衣の仲間と思わしき金色単眼の気配は、皆無であった。

 

 生き物が必要としている生命エネルギーを闇の中、一滴落ち込んだ墨汁ほどにも感じられなかったから……球体仮面ですら生体内で活動する、何らかの動力源があると察知出来ていたのにも関わらずだ。

 

 途中で繰り出した素振りも暇も与えてなかったので、最初から球体仮面を守る様に何処かに身を潜ませていたのかもしれない……

 

 視線の矛先が集中するっ、金色単眼は無言のまま旋風の如く速さと、血を啜り生きている殺し屋の様な洗練された捌きで、ホウエン警察本部が誇っているエリート達を、イージーゲームの標的として捉え為す術も無く、瀕死へ追い込んでいる。

 

 撃墜されたドルーガーとマジュラムは、空戦部隊のケンホロウ数匹が地表スレスレのタイミングで、本来は犯人の確保に使用する軍用電磁ネット(人間用に出力を調節したエレキネット)を展開し、キャッチする事が出来たので二匹の命に別状は無い……が、戦う事も出来なくなってしまった。

 

 

 

「これだけのポケモンを……たった一匹で……ッッ!?」

 

 

  

 上空に集っていた空戦部隊は、寿命を終えたセミが儚く逝ってしまった様にゆっくりと、一匹残らず墜落。

 

 再び破られてなる物かと決死の力で、壁を練り上げる努力も空しく、何かの武器を一閃しただけで、苦労をあざ笑う様にバリヤードを倒し込む。

 

 トリデプス達がステルスロックを設置、機動力を封ずる為なのだが、白銀色のビームを旋回させながら発射、大量の岩施錠を全て破壊し、武器と思わしき物を八の字に振り回しながら突っ込んできた。

 

(トリデプスの防御力すら貫いたのかっ!? 何という常識外れの攻撃力だッ……! 刃物で切り裂かれた線上の傷……?)

 

 トドメは横一閃、絶対防御壁が真っ二つに両断され息を合わせたかの様に、ドミノ倒れなトリデプス。

 

 

 部下が所有するデンリュウが、かみなりを奴が反応する前に怒濤の連発!

 

 

 作戦を速やかに切り替え、他のポケモンの相手をしている隙に、あらん限りの電力を蓄えておいた。

 

 次の電気攻撃の威力を二倍にするじゅうでん。副次効果としてチャージタイムがある攻撃を連発させる事が出来る。

 

 二倍の効力は最初の一撃のみだが、連続発射してしまえばそのまま、相手を倒せることは珍しくない。電気を溜め込む最中は無防備になるので耐久力の高いデンリュウや、ジックも所有しているランターン辺りでなければ、扱いづらい技ではある。

 

 機転を利かせて全発命中させたデンリュウは、それでも簡単に倒せる相手だとは思わないので、さらに10まんボルトを撃――――

 

 

「…………ッッ、無傷……だとっ……!?」

 

 

 馬鹿なっ……こんな事があっていいのかっ!? あのポケモンのタイプはじめんなのかっ!?

 

 

 ゆらりっ、ガシャリ、金属が擦り合う音を鳴らしながら浮遊、動いたかと思えば背後霊……いやっ! ソイツは既に前へ、懐へ潜っている!

 

 身構える事も許さずに、デンリュウへは縦一閃、額のライトから白いお腹まで、息をするのも忘れてしまう美しさ……黒々と変色した斬跡を残され戦闘不能……

 

 

 

 何かしたか?

 

 

 

 無言に発する金色単眼は、最大火力+タイプ一致の連撃を浴びせられたと言うのに、防御した動作も見せずローブに電撃の残りカスすらも付いてない……

 

 逸らしたのではなく根本的に、電気技の効果が無かった……? ダメだっ! あまりにも敵の情報が足りなさすぎる!

 

「どうした? つまずかせる小石にもならんぞ?」

 

 100vs1に近い戦場と化した、建設中のニューキンセツスタジアム。

 

 弱い者虐めの様なバトルを嫌うハウゼン隊長は、所属したての時は悪を懲らしめる為だとは言えど、数で押し切ってしまう……彼が嫌う不良と同じ様な作戦には嫌悪感を持っていた。

 

 それでも正義のため、市民を守るため……自分に言い聞かせながら、あらゆる任務を遂行し、犯罪者を引っ捕らえて来た。

 

 ……のにっ、たった一匹のポケモンが飛来し、たった一匹で壊滅状態に追いやられてしまうなんて……

 

 

「諦 め る な ! ! 俺達が諦めてどうするんだっ!? まだポケモンは残っているのだろう! 戦えッ! 奴を逃してはならんっ! 俺達の職業はなんだッ! 誰の税金でメシを食えていると思っているッ!? 戦えッ! 市民の生活を守るのが俺達の役目だろうっ!! いけっ! オルフェ!」

 

 

「ふふっ……少しはマトモな強さを持つポケモンのご登場か……相手をしてやれ《C.S》よ

 

 圧倒的な戦力差に部下達は愕然、戦意すら夜空へと虚していた……が、憧れの隊長がメガホン要らずの怒号で叱責!

 

 腰に巻かれたホルスターデザインの、特注したボールホルダーから「H」のアルファベットが描かれ、イエローの色彩を締めるブラックのボディが高額品である証、プロフェッショナルと認められたトレーナーのみが所有できる、ハイパーボールを取り出して《C.S》と呼ばれた謎のポケモンと、対面させる位置へ投擲する!

 

「雑念は任務の邪魔だ! 手段を選ばなくてもいい! 奴らをぶっ倒す事が最優先だ! 『多少』ならばスタジアムを破損させても構わん! 全ての責任は俺が取るッ!!」

 

「ハッ! 了解でありますっ!」

 

 ハウゼン隊長と最も付き合いの長い、シャドーポケモン。

 

 毒の沼地の様な色度の短パンとスウェット、レギンスは影から生成したと噂されるつや消しブラック。

 

 美青年ではなく美少年、生クリームを立たせた様な突起の後ろ髪は、触っても全然痛くないが無断で触れるのは厳禁、何故なら呪いを掛けられてしまうから……ゴーストタイプだけに、恐ろしい性質を持つ人化ゲンガーのオルフェ。 

 

 軍人を思わせる畏まり過ぎた口跡は、警察に身を置いた際に映ってしまったらしい。

 

 腹に手を突っ込み、取り出した黒く染まる影球を《C.S》へ投げつける! ゲンガーのメインウェポンであるシャドーボールだ!

 

「……………………」

 

 光を封じる黒衣から、磨かれた鏡よりも光沢感のある白銀のビームが放たれる!

 

 光と闇の象徴、混沌を操る力でも持っているのか……いや、違うっ!

 

(強力な鋼エネルギーを感じる! ラスターカノンか!)

 

 オルフェと《C.S》が互いの技を激突させ、相殺し、また激突……を繰り返している内に、ハウゼン隊長は《C.S》から得られた情報を頭の中で整理させる。

 

 

 電気タイプの技が効かない……?

 恐らく鋼タイプが複合……?

 接近戦も遠距離戦も、途方無いくらいに強い……

 何らかの武器を所持しているが形状不明……

 

 

 電気が通じず鋼の技を使える……ドリュウズか? あの傷跡は爪状では無かったのだが……

 

「ゲンガーは特殊攻撃力の高さだけが、取り柄じゃ無いのは知っているだろう! 豊富な補助技こそ神髄だ!」

 

 

 ――相手を惑わせ、毒をくらわせる……まさに変幻自在、妖しの技よ!―― 

 

 

 同じ毒使いとして研磨し合った忍びの者……彼の口癖だ。

 

 強さだけではない奥深さ、ダメージを負わさずに弱らせ、時間を稼ぎ、自滅へ誘う、トリッキーな戦法は何でもゴザレ。

 

「『ねむれ、ねむれ!』 で、あります!」

 

隊長の指示へ敬礼で返すのも癖になってしまったオルフェは、体内時計強制的に催眠誘導し、不眠症患者をも瞼を重くし意識が揺らいでいく、療法としても扱われる状態異常の代名詞、さいみんじゅつを試みた。

 

 ゲンガーの素早さで先手を取って眠らせる。

 

 この単純極まりない戦法が強いのなんの……命中してしまえば覚醒までの間に、みがわりを張るなりシャドボ連発でダウンさせるなり。

 

 公式大会では「眠らせていいのは一匹まで」のレギュレーションを制定させなければ、あまりに一方的な試合となってしまう……

 

 オルフェが暗示を掛けようとしている〝悪人〟へは、そんな配慮など必要無い!

 

 目尻の角度が柔らかく、ショタっ気のある大きな目をさらに「カッ!」と開かせ、殺意に満ちた血みどろの瞳は、さいみんじゅつを使う時のみ、本来の姿以上に非情無情な色を得る。

 

「……………………」

 

 

 効いた……ッ゙!

 

 

 タイマンバトルでキマれば勝ち確と、恐怖されるが効果領域が狭いので、急いで離れてしまえば躱す事は出来る。

 

 だが練度の高いポケモンが使えば、発動までに特殊な動作やチャージタイムはせず、ただ相手を見て「眠れ!」と命じるだけでいい。

 

 効果領域の狭さをある程度補う事に成功した、オルフェのさいみんじゅつで数々のバトルに勝利してきた。

 

 ジムリーダーや四天王クラスのトップトレーナーをも、関心させてしまう珠玉ゲンガーは、補えても成功率は〝70%〟の凶悪技を見事に命中させてくれた。ここ一番に当ててしまう運の強さも彼の才能なのかもしれない。

 

「奴はまだ眠っただけだッ! 状態異常を重複させるんだッ!」

 

 糸の切れた凧の様に力無く、スタジアム入り口前へと自由落下した金色単眼。

 

 眠り込んだポケモンは、何時起きるかは術を掛けられた者の意思に左右される。

 

 エリート部隊を一瞬で夜空へ捧げ、葬った戦闘力のポケモンだ、覚醒も非常に早いだろう……

 

 何時起きてもいいように保険として、考えるよりも先にあやしいひかりを指示する。

 

 身体に染みこんだ戦法なので、極めて短いスパンでハウゼン隊長は命じられるし、オルフェも応える事が出来る。

 

(次に奴が起きた時は刑務所でだっ! オルフェ最強の攻撃で眠ったまま相手を倒す! 万が一耐えられても二重掛けした状態異常が、奴の動きを鈍らせてくれる!)

 

 

 そう、あやしいひかりは〝あくまでも〟保険。

 

 

 オルフェの持っているアイテムは、好きなタイミングに一度だけゴースト技の威力を、増強させるゴーストジュエル。

 

 ゴースト技の効力が薄い鋼相手だって、致命傷となる一撃を叩き込める!

 

 眠ったまま、即ち無抵抗。

 

 急所に当てるのは実に簡単だ……!

 

 彼のゲンガーは力押しから、搦め手までバランス良く駆使しており、どちらかに偏ることが無い。理想的なゲンガーであるのかもしれない。

 

「オルフェ! シャドーボー…………」

 

 

「……老眼になったなハウゼン……《C.S》よ、本当の精神操作術を見せてやれ」

 

  

 !゙?゙

 

 

 さいみんじゅつは命中したんじゃなかったのかッ!?

 

 上半身……と思われる部位のみを、垂直に起き上がらせた《C.S》はフードの額を照度ゼロの漆黒に変異。

 

 

「…………了解…………で…………あります…………」

 

 

「なッ!? どうしたんだオルフェ! 勝手にボールへ戻るんじゃない! 部下を蹴散らした不審なポケモンを前にして、なぜそんな事をするんだ゙ッ!!?」

 

 ジュエルを砕き、影を増幅させた巨大な玉は、倒された部下の無念を受け継いだかの如く、一般サイズの民家一つを完全に覆い隠す。

 

 横たわっている黒フードにおもいっっっきり! 直撃してやれっ!

 

 

 ……たぐり寄せたと思っていた、勝利へと導かれる光明。

 

 

 それが自分のポケモンに裏切られるなんて、四十五年の過去を大急ぎで巻き戻しても、初めての体験であった。

 

「訳が分からん…………分からんが……! 俺はまだ負けていないぞッ! 何としてでもお前を確保しホウエンの平和を守ってみせる! がんばれ! センチネル!」

 

 ジュエルシャドボは不発。

 

 理由を告げる事もなく、ハイパーボールへ戻ってしまったオルフェに問いかけても返事はしない……

 

 何かの技を使われた? あの単眼が変色しただけにしか見えなかったが、オルフェへの内面に影響する類いなのか?

 

 現象は謎だが、考えて解決させるのは後でいい。

 

 これが最後の砦、頼みの綱、もう一つのハイパーボールをホルスターから素早く取り出す挙動は、西部劇のガンマンだ。

 

「それが最後の手持ちか?」

 

 人間の少女と同じくらいの身長であった、オルフェと比べその身長……いや、全長差は六倍以上!

 

 現在発見されているポケモンの中でも、屈指の巨体を支える尾は地面へと埋め込む杭の様で、進化により肥大化した顎、イカツ過ぎる形相も相まって、見下された時の威圧感は種族値には表記しきれない。 

 

 少々動揺してしまったが持ち直し、好んでいる毒ポケモンの弱点を補強するために、育て上げた……てつへびポケモンのハガネール。

 

 

 『鋼タイプ、と言えば?』

 

 

 メタグロス!……と、二分割して声援を誇らしく集めるのはハガネール!

 

 種族名に〝鋼〟を含んでいる明快さ、地中深くで鍛えられたダイヤモンドにも劣らぬ硬さは、インファイトにフレアドライブを食らっても平気で耐えてしまう、喫驚な物理防御性能は突破に相当な苦労を要する。

 

 ここまでブチ抜けた防御力とは引き換えに、イワーク時代にウリだった素早さが絶望的に低下してしまう。

 

 鋼の浮沈艦だ……その場から動かなくとも九.二メートルもの全長を活かし、尾を振るうだけでも飛行ポケモンが慌てふためく、リーチがあるので遅さはいくらでも補える。

 

 

 このハガネール、センチネルも人化はしていない。

 

 

 人型となれば僅かにだが、機動性を上昇させる事は出来るが、ハウゼン隊長は特性に頼らない〝プレッシャー〟を所有する本来の姿の方が、任務遂行に有利だとの魂胆である。 この外観からのアイアンテール、頑強なボディがジワジワと迫る威圧感、地球の中心部まで到達する咆哮。

 

 これは勝てない……センチネルがハイパーボールから出現しただけで、ハウゼン隊長を返り討ちにする気であった泥棒は、ブルってしまい手持ちを出す事も諦める、そんなケースは何件もあった。

 

 黒衣の二人組がビビる期待などしていないが、集めた情報から抽出したのは《C.S》は鋼タイプである可能性が高く、何らかの手段を用いて滑空出来る事。

 

「うちおとせッ!」

 

 ポケモンが所持しているアイテムは、基本的に発動するまでは正体が判明しないので、戦いの最中や相手の編成を見て予測を立てる。

 

 しかし、センチネルに持たせているアイテムは、登場すれば一発でバレてしまう、じめん技を無効化させるふうせん。

 

 よく彼の尾の周りを視認すれば、数㎝ばかり浮かび上がっていたではないか!

 

 こんなデカくて重い身体を、フワンテと同等サイズのふうせん一つだけで、地表から引き離してしまうって……大勢の科学者が原理を解明しているが、決定的な証拠は未だに謎のまま。

 

 超ヘビーのハガネールは、ボールからの着地の際にそのまま地形を破壊しかねない、衝撃が走るので少しでも市民の安眠を考慮し、そして弱点となる地面技を回避させる為、二つの意味を持たせている。 

 

時計の針と同じ速度で回転していた、胴体からせせり上がる突起をミサイルの様に発射!

 

 狙いは勿論、体勢を整えられてしまった金色単眼フード!

 

 奴は再び上空へ飛ぼうとしているっ、うちおとすが命中すれば交代しない限り、飛行・浮遊状態を強制的に失って、地面技が命中する様になる!

 

 鋼タイプならばじしんが効果抜群のハズ!

 

 スタジアムはこのくらいじゃ微動だにしないけど、市民の皆さんの安眠妨害となってしまう……奴を倒したら謝罪に向かおう!

 

 これで《C.S》なるポケモンはズタボロ、鋼のミサイルをPPが尽きるまで発射しまくり、奴へ届く――――

 

 

 

 ――――事はなかった。

 

 

 

「オ…………オルフェ…………お前…………なっ…………」

 

 

 ハガネールの物理防御力は、メタグロスをも凌いでいる。

 

 あまりの硬さに攻撃側が先に根を上げてしまう……のだが、特殊防御力は……レーダーチャートに記せば、防御がヒウンシティの高層ビル最上階、特殊防御はそのビルの三~四階。

 

 要するに落差が激しすぎるのだ……物理技なら弱点を突かれても顎で笑えるが、特殊だとちょっと強めの技を使われたらアッサリ、ダイヤモンドの強度は砕け散る。

 

 一芸特化のポケモンは、相性が悪い性質のポケモンと当たってしまったら、交代するか負け覚悟で留まるか。

 

 ミサイルごと飲み込んでいき、胴体へめり込ませた〝ソレ〟は、格闘タイプでは数少ない特殊技、きあいだま。

 

 闘気をエネルギーに変換、ド派手なモーションで全身全霊の砲撃。

 

 闘気を集めるあまり、命中精度を考えられなくなってしまうので、さいみんじゅつと同じく肝心な時に、外れてしまい敗北してしまう事もしばしば……

 

 それでも重宝されているのは、相性補完のし易さが理由となる。メジャータイプへの、弱点を突くためのサブウェポンとして有用、例を挙げるならば――――

 

 

 

「お前……! 何をしたのか分かっているのかッ! 仲間のポケモンなんだぞっ! 俺達が戦うのはあの二人だッ! 俺達が全滅する事態になれば厄災の種を…………! 何故だァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ゙~~~~!!」

 

 

「対象…………沈黙…………であります…………」

 

 

 

 ――――どく、ゴーストのゲンガーが、はがねタイプへの対抗策として、とか……

 

 

 ふうせんも割られてしまい、特殊防御の薄さを突かれたセンチネルは、地殻をも揺るがす野太い鳴き声を上げる事もせずに、後方へ倒れ込んでしまった。

 

 

 強烈な爆発音、部下やハウゼン隊長自身も巻き込まれてしまい、バランスを崩して尚も、黒衣の二人組へと憤怒の視線を生み出せるのは立派だが……

 

 センチネルの特性は、HPが満タンの時に一撃で倒されるダメージを受けても、必ず 1 だけ残して持ち堪えるがんじょう。

 

 つまり、ふうせんときあいのタスキ、二つのアイテムを同時に持っている状態であった。

 

 オルフェのきあいだまが急所に直撃しても、1だけはHPを残しているが……戦闘続行かどうかなど、地面へ沈み込みピクリともしない、センチネルを見れば不可能だと歯茎から血を流しながら判断を下す他ない。

 

「…………任務は失敗になってしまったなハウゼン隊長。私達は逃走させて貰うが最後に、《C.S》が降り立った理由を教えてやろう。………………単純だ、技の効果が切れたから一度降りた、それだけだ…………」

 

 

 でんじふゆう…………!

 

 

 重力に抗する力として、電磁相互作用を利用した変化技だ。

 

 一定時間、使用したポケモンは浮揚し地上に影響する、あらゆる技を受け付けなくなる。

 

 じめん弱点のポケモンに覚えさせ、じめんわざその物を機転とした能力上昇技で全抜き、空振りさせて戦いの流れを逆転、そして最も有益な効力となるのが後天的な飛行手段を授かる事。

 

 やはり金色単眼は、地面を苦手とする鋼ポケモンなのだろう。

 

(こうそくいどうと遜色ないスピードで、自由自在に滑空していた……だとッ……!? でんじふゆうには速度を上昇させる効果など無い! どんな育て方をしているんだッ、クソォォォ! のっぺらぼうめぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ッ゙ッ゙!!)

 

さいみんじゅつが効いたと勘違いしてしまった。

 

 相手からすれば、でんじふゆうの継続時間が消えたから、もう一度使用する為に地上へ脚を付けた……それだけだったんだ。

 

 そして、味方殺しとなり、敵の逃走へ加担してしまった主犯格のゲンガー、オルフェが奇行に走ったタネ明かし。

 

 命令を無視してボールへ戻り、ハウゼン隊長が開閉スイッチを押してないのに再度出現。

 

 うちおとすに集中していたセンチネルの急所を、きあいだまで貫き、役目は終えたとばかりにオルフェまで倒れ込んだ。

 

 

 洗脳されていた……!

 

 

 金色単眼の忠実な僕となり、感情が伴わず結果報告のみ行う言動、善し悪しも関係なく『あのハガネールを倒せ』の、命令のみを聞き入れるプログラムに支配されたロボット。

 

 金色に光っていた目はあのフードに刻んだ模様と同じじゃないか……

 

 さいみんじゅつに掛けられたのは、こちら側だった様だ……

 

 

「追え゙ぇ゙ぇ゙ッ゙!! ポケモンがやられても身体は動くだろうッ!? 俺達が身体を鍛えている理由を思い出してみろッ! ポケモンが使えなくなってしまっても悪を懲らしめる為だろうがぁぁッ!! 追うんだ追うんだ追うんだぁ!! 諦めるなぁぁぁぁあぁッ!! 地の果て! 海の果て! 空の果てへ逃げられても…………追わなきゃならないんだよォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ッ゙ッ゙!!

 

 

 

 怨嗟の雄叫びを未完成の、ニューキンセツスタジアム上空へ轟かせても、球体仮面は金色単眼に掴まりながら高度を上昇させていくだけで、税に浸るのでなければ不愉快な電子声で笑う事もせず。

 

 

 

 『夜想曲としては、まずまずだ』

 

 

 

 とだけ呟かれ、奈落からのインベーダー、自我を持ったコンピューターウイルスである、黒衣の二人組はフェードアウトしてしまった…………

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

炎昼盛夏! 本当の夏の思い出を探しに行こう!

 

 飲食店にも『冷やしタマザラシ始めました』と店内に導入したり、氷タイプは給料1.5倍にアップするなど、酷暑だからこそ需要が急速に高まり、少なくとも夏の間は仕事に全く困らず引っ張りだこ。

 

 中には『面接後にふしぎなアメを差し上げます』と言う、リッチなお店がここぞとばかりに氷ポケモンを動員しようとしたり……やり方が姑息なので、政府から警鐘を鳴らされるのもお約束。

 

 瞼を伏せれば、あいいろのたまな波打ち際。

 

 うきわボーイに、うきわガール、子供達がサンダルで踏み込んだ砂浜はミクロ単位のほしのかけらの様で。

 

 砂浜から海まで何歩で辿り着けるのだろう、磯波から現れた野生のキャモメやペリッパーが、家族連れの荷物を持ち運んでくれている。

 

 見返りなど求めていない、こうすれば家族揃って手を繋げられるかな……そう思ったから少しだけ手伝った、それだけだ。

 

 

 人とポケモン、そして自然が行き交う港、カイナシティ…………の、南109番道路。

 

 

この海の家でしか販売されてない、スペシャルなサイコソーダは人気だいばくはつ!

 

『よっといで~!』と汗を拭いながら、サイコソーダの空き瓶を振ってアピールするのは、海の家の看板娘の幼女。

 

 サイコソーダ目当てではなく、この幼女目当てなお客も同じくらい多かったりする……

 

 

「おきゃくさんいっぱい! わたしのおうちですずんでいってね~! サイコソーダおいしいよ!」

 

 

 大人も茹だるクソ暑い八月、もう一つの太陽として降臨なされたスク水お団子幼女は、肩紐が少しだけズレており、チョコレート色のロリボディに流し込まれたホワイトチョコ色が、フェチズムを刺激するなど知る由も無い。

 

 お嬢ちゃんを見ていたら、僕の切っ先シティからサイコソーダ出ちゃうよぉ……など、邪濁りな想いを抱く野郎共へ分け隔て無く、手を握ってご案内するのだからもうっ…………!

 

 

 夏は海、海と言えば水着! 水着! 水着! そしておっぱいであるっ!!

 

 

「女性陣が着替えている間に、何とか人数分のサイコソーダゲットだぜっ! しかし15分は経過してるんだけどなぁ……そんなに掛かるって更衣室でナニしているんだろ、女の子って……」

 

 予想ですが、メコンがギャル二人からおっぱい揉み揉みされたり、腕を挟んで上下に動かされたり、胸ポチ守護のニプレスをペリペリ剥がされたり……全部おっぱいが原因なのでしょう。

 

 ヘアワックスでセットせず、ナチュラルなメンズショートにした海用のヘアスタイル。

 

 俺に付いて来いの昔気質のオラオラ系ではなく、女性と歩を合わせる気配りを持ち主張の強弱も配慮しながらも、女性に流されるまま使われる男性ではない。

 

 男前の顔に相応しい、シンオウで重点的に鍛えた腹筋と腕周りの筋肉は、膨張こそ控えめだが無駄なく成長し詰められ、おっぱいが大きく身長も高いメコンを、延々とお姫様抱っこするにも苦労なし。

 

 厚く、逞しく、引き締まった胸板に頬を埋められながら、手持ちにハグをおねだりされちゃうのも、気の利いたセリフの一つ二つを掛けてあげるから、ジックの好感度はぐぐ~んと高まる仕組みだ。要するに、好かれるだけの行いを彼はしているのである。

 

 この日の為に女性軍とは日をズラして、膝上のサーフパンツを新しく購入した!

 

 普段着がカーキ色のジーンズなので、ミリタリーチックな柄がいいとミナモデパートで探し回り、選び回って数時間……

 

 戦闘機の洋上塗装、海上自衛隊の迷彩服に近い、ピクセルカモ。

 

 ライトブルー、ホワイト、ディープブルーの色合いは開放的で、ミリタリーならではの何処か重たい雰囲気は無く、着ているだけで気持ちが明るくなっていく。

 

 アクセサリー類は特に身につけていないが、同年代の少年よりも絞られているそのボディが何よりも、女性の眼を惹く装飾品に……は、少々キザな表現だろうか?

 

メタグロスの少女、ヴィヴィが正式に手持ちとなったので、改めて親交を深めようとキャンセル待ちだった、カイナホテルの予約に成功したので、手持ち総員で海水浴へ!

 

 この間温泉に行ったばかりだけど、まぁいいじゃない! ミナモの波打ち際よりもずっと広い場所で、本当の〝夏〟をエンジョイしようぜっ!

 

 

 

  …――――…………~~!!

 

 

 

 〝あの子〟が呼んでいる! 着替え終わったらしいぞ!

 

 

 さぁ! 声の主は……だ~れだ?

 

                   

 

《ネリ(D)と遊ぶ》 ←

 

《爽羽佳(B)と遊ぶ》 ←

 

《メコン(H)と遊ぶ》 ←

 

 《ヴィヴィ(F)が気になる……》 ←

 

 《かたくりこは何してんだろ……?》 ←

 




えっ?


もちろん、全員分の個別回ありますよ!!! ギャルゲーチックにしました!
ニックネームの後ろの英語は、特に意味はありません。

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