「…………ネリ、お前何してるの? コンタクトレンズは付けてないだろ?」
ジックを呼んでいたのは、快活活発狡猾、賑やか担当のマニューラであった!
「マニュハハハッ! お宝の匂いがするんニャ! ハートのウロコだったらご主人にあげるんニャけど、しんじゅとかおおきなしんじゅは、ネリちゃんのコレクションに加えちゃうのニャ!」
砂に埋もれた宝物を探し求めている、水着姿のネリ。
海だろうが金目や光物の匂いがすれば、関係なく勘を頼りにジグザグ、マッスグ、邪魔にならない程度進路変更しながら、爪先で穴を掘りまくって端から見れば潮干狩り。
「見~~つけたニャッ! べにタマ、あおタマ、みどりタマ……これは別にいらニャーからあげるニャ、しめったいわにさらさらいわ……これもオマケで掘っただけニャからホイッ。大本命のきんのたまニャ~~! しんじゅは3個も手に入ったニャ! ブロムヘキシンもあったニャけど、何処かから流れ着いたんニャね」
まるで燃えるゴミと燃えないゴミを、分別しているみたいだ……ネリにとって燃えないゴミ(光っていないの)を処分するのは彼であり、特にブロムヘキシンは売れば5000円近くにはなる。
……砂浜に埋まっていたので、盗んでいる訳じゃ無いけど良心が呵責する。
かと言って埋め直すのは、それこそ砂浜にゴミを捨てている様で……
「しょうがない、これは貰っておくがネリもその辺にしようぜ?」
きちょうなホネまで手渡されてしまった。 この短時間で発掘しすぎだろう……宝探しゲームとかそういう催し物の跡なんじゃないのか?
「そうニャね! ここでシカトする空気読めないネリちゃんじゃないニャ!…………ところでご主人~! サマーバージョンのネリちゃんを見て、何か感想とか褒めて称えるとかは無いのかニャ?」
しんじゅに付着した砂を落とすついでに、お得意のジャグリングしながら夜目が利く、¥の形となっている瞳を上向きにし、女の子らしい期待を含んだ言葉で問う。
ブラックのショートヘアと、ピンクを混ぜた赤いメッシュのサイドテールは、見慣れている髪型だけど、ホワイトをメインとしポケットのラインがグレーの、ラッシュパーカーは女性軍でミナモデパートへお買い物の際に、購入した新製品だ。
トップスのビキニと、ボトムス……と呼んでイイのかすら疑問となる、マイクロミニショートパンツと、黒いV字型がエグ過ぎるインナーショーツの組み合わせ。
「普段とあんま変わってなくね?」
「まにゅ~~ん! もっと良く見て欲しいニャご主人っ! インナーだけでもホラッ! ビヨ~~ンと伸びる素材になってるニャ! 触って確かめるニャしぃぃ! プンプンッ!」
ショーツのサイド部を斜め上へ引っ張り、耐久性能と伸縮性能を実演。
前も後ろも食い込みまくっているのだろう……慌ててジックは止めさせたが、ネリはマニュマニュ笑っているだけで、ご主人とあざと可愛い黒娘に釣られて寄ってきた、水着の野郎共の反応に満足気。
ネリを恥ずかしがらせるのは、フラッシュを使わないでイワヤマトンネルを突破するくらい、難しいのかも知れない。仲間になってから一度も彼女が恥ずかしがっている姿を見たことが無い。
ビキニとショーパンには、黒い爪痕を刻まれたデザインが走り、攻撃的で攻め込んだ印象を与える。どちらもVインナーを目立たせるためのピンク色がベース。
右の太ももには氷の結晶を模した、タトゥーを貼り簡単に取り外せるヘソピアスには、自分の魅力をよく存じており、磨きを掛けるアイテムチョイスをしたネリへ、素直に「エッチだ……」と思わざるを得ない。
「マニュハァァ……♪ 浜辺の視線を独り占めニャ♪ でもご主人からの視線が一番嬉しくなっちまうニャ♪ もっと見たって料金取らニャあから安心するニャ!」
耳の後ろと腰に手を当て、セクシーポーズ! 舌ペロの付録もあるよ!
体脂肪率が低すぎて、あばら骨が浮き出ているのに胸の体脂肪率だけは、平均を超えているからぷりゅん♪
その日の食事すら命がけだった、盗賊時代を持つ反動からなのか〝現在の手持ち〟の中では、一番の大食いだと言うのに脂肪は全部胸がヘイトを集めていると言う……
ただ細すぎて人によっては、少し不安になってしまう印象を抱くかもしれない。
「ネイルも夏仕様ニャ! 今日だけは絶対バトルしたくね~ニャ!」
元盗賊なのに、目立つことが大好きでナルシストのネリは、全体の色彩配分を考えたコーディネートにしているが、ネイルだけは調和も整合性も無視して、とにかくビビッドなトーンで着色、及びデコレーションしている。 黄色、水色、ピンク、視界に染みこんでいく強烈な彩度での花柄。
親指だけがスイカになっており、ネイリストのお姉さんは根気強く塗ってくれたのだろう、お疲れ様である。
「そのネイルが壊れたりしない様に遊ぼうな! 気をつけるよ」
「ぬふふ♪ ご主人はネリちゃんにメロメロニャ~ね♪ まぁビーチバレー程度ニャら、壊れないと思うけどニャ、高い金支払ったから簡単に剥がれたら起訴してやるニャ! んニャ、ネリちゃんはアレで遊びたいニャ!」
褒めながら撫でてくれたので、ネリの目的として設定した項目が、一つレ点を付けられご満悦。
折りたたんで殺傷力ゼロの、バトルホリデーモードの爪で前腕を引っ張りながら、ドジョッチを象った外観を持つ、小型のモーターボートへ向かい歩き出す。
「ウェイクボードって奴か! やってみたかったんだ~! ネリも初めてだろ?」
「ニャニャニャ! ネリちゃんは似たような事を昔にした事あるのニャ! 盗賊時代の逃走法としてだけどニャ!」
ロープを持った人間をボートで引っ張り、ボートから発生する引き波を利用して様々なトリックを楽しむ、マリンスポーツである。
なぜ、ドジョッチを模した外観なのか?
それは人間を引っ張っているので、あまり速度を出せないから、ゆったり泳ぐポケモンとしてドジョッチが選ばれたからである。
専用コースが作られているジェットスキーでは、限界までチューンが施されたサメハダー型のマシンを貸して貰えるぞ! 免許は必須だが。
ボードの代わりにこの海の近くに住んでいるらしい、完全にボランティアとして活動している、マンタインさんの背中に乗る。
ウエイクボード初心者でも、安全な範囲内でマンタインさんがジャンプやトリックを繰り出してくれるので、誰でも気分は上級者♪ 大変評判がいいのでマンタインの人気もブレイクしているが、彼らは名前を売るために手を貸しているのでは無い、純粋に人間と人間の下で暮らすポケモンが大好きだからである!
「足場が不安定ニャけど、あんま力を入れない方が立ちやすいニャ。目線はボートより前を意識して、背中は猫背のまま……そうニャ! 腕は縮めたらダメニャんよ? 腰の付け根に持ってくニャ」
「そっ、そっか、無意識に脚に力が入ってた。こうかなっ! ゔぉぉい! 出来た! 今のスラロームだよなっ!?」
「マニュハハハッ! ご主人は運動神経いいからニャ! マンタインの手助けもあってもう素人卒業しちまったかニャ!」
つま先とカカトへ体重を掛ければ、ボードであるマンタインが進行方向をコントロール。
姿勢と重心のバランスを可能な限りアシストするから、乗っている者は身体の力を抜けばいい。
やり始めて15分と経たずに、中級者くらいにはなった気さえするジックは、インストラクター代わりになったネリからのご教授で、波の間を左右へとフォーム崩さずスラローム。
波に逆らうのではなく、波を吸収する! 水面が透けて見えるマリンブルーは空の色をも反射して、地平線の向こう側へと続く世界遺産として登録された『一般開放されている秘境』
海岸を歩くだけで心が穏やかになる、最も海が広い地方であるホウエンの中でも、格別に美しいのだとか。
「ピョイ~ン! ニョリ~ン! チョイ~ン! ステイルフィッシュ! ブラインド360! バットウイング~♪」
変な叫び声……ボードを回転させたりボードを掴みながらジャンプしたり、複雑と思われるトリックをマンタインさんのアシスト無しで、キメまくっちゃうネリは階段の手すりを、スケボーでスライドさせるのも似合いそうだ。
で、トリックの度に悪タイプだからなのか、D(ダーク)カップが忙しく揺れるのも案の定……である。
「あっヤベッ゙ブ ボ バ ブ゙ ッ゙ベベベッ゙!!」
「あ~らニャ! ネリちゃんが可愛いからって見惚れるから転ぶんニャ!」
まぁその通りだったので、何も反論出来ぬ……
ボートを減速させマンタインさんに助けられながら、かっこ悪い姿を晒したけど笑いすぎなネリへ、少し頭をペシペシすれば愛嬌を振りまきながら、タトゥーの張られた太ももへ彼の手を誘導し――――
「おっぱいだけに偏りすぎニャ、こっちも見ることで均等が取れるニャし……!」
彼女にはバレバレであった、と言うよりも乳揺れを誘発させるトリックをわざとしていたと…………
今日のネリには一本取れる気がしない。
ジックの反応でニヤニヤしたり、満足したいからウエイクボードを選んだに違いない……!
(マニュハハ……次はバナナボートでも選ぼうかニャ? おっぱい押しつけたり、脚でお腹ロックしたりでご主人を夢中にさせちゃうのニャ! 男の子だからどんな反応しても許してやるニャ! 海水浴中に好感度をブッちさせるんニャ!)
ネリの物はネリの物、ジックの物もネリの物、つまりジックはネリの物(マニュラニズム)
他の3匹――かたくりこは♂なので除外――も、あの手この手で攻めまくるだろうから、最初に選ばれたアドバンテージを活かして、他の3匹に眼が行かないまで骨抜きにしないと!
何処まで本気で、何処まで愉快犯なのか、サマーネイルの施された爪に引っ張られながら、黒娘とのマリンスポーツを再開するのであった。
全員分ありますので、ご心配なく! 順調順調です!