「ねぇねぇねぇご主人~! 私の水着どぉどぉどぉ!?」
呼んでくれていたのは、B(バード)カップである爽羽佳だった!
ジックが感想を脳内原稿用紙に書くよりも遥かに早く、この時ばかりは飛ぶよりも砂浜を走る速度のが上回っている爽羽佳が、胸元へ飛び込んで来たのでキャッチ!
天真爛漫イケイケ翼翔ガールの水着は、情熱的な行動力のレッドと、お洒落心を引き立てコントラストになるブラックで縁取りした、ハイネックとボックスショーツのセパレート。
武器でもあるモデル脚の維持や基礎代謝を高めるボディメイクに余念がない17歳、フィットネスクラブに通う健康体のJKな出で立ちかっ!
(ビキニも良かったんだけどさ、ズレるの怖くって……アハハッ……!)
期待に沿えなかったらどうしようと、予め言い訳を述べてしまう彼女は、ようきな性格だけど手持ちで一番おくびょうな女の子。
どんな水着でもジックは落胆せずに、爽羽佳の欲しがっている言葉を伝えてくれる。ドッキドキの心と一緒に、抱きしめる羽も身体も不規則リズムで振動させている。
オニドリルの外見的特徴である、真っ赤なトサカで右目を覆い隠していたメカクレも、海空の開放感を連想させる様に思い切り後ろへ持っていった、片側オールバック。
別に眼に傷跡があるとか、義眼を埋め込んでいる訳じゃ無いので、晒すことに抵抗はないが髪型を変更するのは久しぶりなので、直接右目を彼と合わせるのは結構ハズい……
嘴を模したヘアピンで止めて、、輪っかの中心に星の装飾を施した、ウエストネックレスで注目して欲しい部位を主張している。
160㎝と、丁度ジックが抱きしめ易い身長の爽羽佳は、チラッ……上目遣いとなってすぐに下を向いてまた上を……繰り返す。
表情こそ軽くしているが、バク付く心臓は誤魔化せない。そんな不安でいっぱいになっている彼女の背を、ポンポン撫でて頬に手を乗せてやる。
「お前の両目が見れただけで、海に来た甲斐があったかな! 何時もの右目隠しもイケてるけど、髪型変えたら大分印象変わるよ、もっと眼を合わせたくなっちゃう……」
「ブィ゙ィ゙ィ゙ッ゙~~!!?…………フィふぃふぃ……! ふヒえへへへっ…………! やったぁ! やった! わ、私もこれだけで海に来て良かったって……」
「…………その変な笑い方でマイナス30点だな」
「ぢょ゙ォ゙!? しゃーなしだもん! 驚いた後に喜ぶと誰でもこーいう笑い声になるもん! いい雰囲気台無しじゃん! も~~ッ!」
「冗談だ、似合うよ爽羽佳」
まだ水着のお披露目しただけなのに、夕焼けの海辺で告白した様にクライマックスな勢い。
野郎友達だけで寂しく遊びに来た少年達から、リア充氏ねだの、イチャ付きは人気無いトコでやれだの、脳天に死線がブッ刺さるけどナンパはされない辺り、爽羽佳はジックの物であると思われていると認識されているらしい。ポケットに手を入れ泣きながら去って行く姿……キミ達
にも良いことあるさ!
「…………♪ ねっ、ねっ! パラセーリングってのやりに行こーよ! パラシュートの柄がすっごいらしくてさぁ~! ハッ、ハッ! ハート型とかあるにょ!」
噛んでる噛んでる!
アプローチする事数あれど、結局二歩三歩前で尻込みしちゃって、最後まで到達しきれてない奥手な女の子。
意識すればする程、トサカが元のモヒカンっぽく戻ろうとしてしまう、ヘアピンに逆らって前のめりになっているのが証拠だ。
〝ハート模様のパラシュートが選ばれれば、好きな人との距離がグッと詰まるよ!〟
女子が好きそうな噂だ。好きな人と二人きりで乗れている時点で、かなり心を許されているのだが……
(ハート選ばれろハート選ばれろハート選ばれろ! ブツブツブツブツブツ…………)
こんな理由で瞳をハート模様にする子、見たことないッ!
爽羽佳の気迫に脅された係員は、このダイヤ模様のパラシュートを華麗にスルーさせ、まるで最初から口裏合わせしていた様に、お目当てのハートを滑り込ませてくれたので、後でこっそりお礼に行かなければ……!
「ん゙ギャう゛ぁあ゙ぁぁぁ゙~~~~ッ゙!!! 怖い怖い怖いぃぃいいッッ!!」
「何でだよ!? お前飛行タイプだろっ!?」
「自分で飛ぶのはご わ゙ ぐ な゙ い゙ げ ど゙ 飛んでる物に乗るのは怖いって いま わ゙ が っ゙ だ の゙ ぉ゙ ぉ゙ ぉ゙!!」
ホウエンの自然が作り出した、最高傑作の美しい海!
パラシュートに身体を固定させ、上空から海を見下ろせる空中散歩! それがパラセーリング!
…………爽羽佳は空飛ぶ乗り物に弱いのかもしれない?
飛行機に乗った時はボールの中だったので分からなかった。
腕を組みながら「ご主人が怖がって私に寄りかかって来ても許したげるよ~!」とか、ハートから力を与えられ強気になってたドリルっ娘は何処へやら。
ジックはぜ~んぜん怖がってません。怖がる速度でも高さでもない。
「やめろ苦しいっ! 俺まで怖くなって来る!」
「酷い!? 私をこっから海へダイブさせる気だぁ~~!! ニ゙ュ゙ オァ゙ ノ゙ ォ゙ォ゙~~!!? 曲がっちゃやーー! やーー!!」
*17歳の女子が出していい声ではありません。
実はもう慣れて来たのだが、終了時間までずっと怖いフリをしちゃえ……優しい悪魔がそう教えてくれた。
他のメンツが大きいので、平面な訳じゃないけどネタにされやすいBカップ。
迫力だけは今ひとつかもしれないが、だから何だと影絵として切り取られても、女の子であると確信出来るシュッとした脚、肥えてないので良い意味で食用には向かないだろう腰回りの無駄の無さ。
もンの凄い贅沢を言えば、ネリは胸を除いた各部位のお肉が少なくて、抱きしめた時に少し痛かったりする。
細いのだけど女の子らしく盛られ、羽毛で包まれた感触は上質だ!
「あ~~ん! こ~わ~い~! もっと抱き寄せてくれないとお~ち~る~♪」
「声全然ちげぇからっ!? ハイハイッ! これでいーですかねー?」
「そーそー! 今の私はキャタピーにも負ける弱い女の子だからさぁ、しっかり抱きしめて離さないで欲しいなぁ……」
彼女の演技はとっくに見破られているけど、ずるずる引き剥がす包容力ゼロの男でないのはご存じの通り。
ベルトで固定されてるから落ちる訳ないけど……脚まで絡ませて来たのはやり過ぎであるが、肩をスリスリしてくる彼女を抱きしめ返してあげる。
なお、運転手のおじちゃん(彼女居ない歴39年)は、歯ぎしりしながら視界が謎の雨で曇っていたけど、自分が受け持ったお仕事を最後までするスタッフの鑑である。ていうか、泣くぐらいならこの仕事を辞めた方がいいのでは……
ウエストネックレスは、是非付けたかった!