前置きが長いですが本ルートです!
人とポケモンの波でごった返す、中央地点から外れたビーチの端。
そこにはダマスカス鋼よりも強固で、カーボンナノチューブより軽い、最新テクノロジーでも解析不能なオーパーツ。
未知の生成機構を持ち、純度の高い手甲を武器とする、ロジカルシンキングガール、ヴィヴィが黙々淡々と砂の美術品をアトリエと化したビーチに、ディスプレイしていた。
「サントアンヌ号…………シーギャロップ号…………カクタス号…………これはリブラ号…………むっ、何かご用でしょうかマスター?」
「用って、ヴィヴィが俺を呼んだ気がするんだけど…………ヴィヴィにこういう特技があったんだッ!? もの凄いハイレベルなジオラマだねっ! 現物を小さくしてそのまま持ってきたみたいだ!」
まるでモノクロ印刷、ダウンロードした画像写真を手甲外したら本当に小さな両手から、膨らんでくる様にして生み出されていく、サンドアートの数々。
デジタル過ぎて躍動感があまり無いけど、こうして「何かを作ろう」と思うのも初めてなので、芸術に纏わる創造性はこれから磨かれていくだろう。
「ハードマウンテン……です。触ってもいいですが崩さないでくださいね?」
野生のイシズマイが近寄って来たら、無視する事も追い払う事もせずに、入り口を作って仮住まいさせている。
正式な手持ちとなる前の彼女は、絶対に砂の芸術品を量産する事はしなかった。その前に海へ連れてくる事が難易度の高い技であった。
「砂は短い間で崩れちゃうかもしれないけど、砂の模型を作ってるヴィヴィの姿を、俺はずっと崩さず覚えておくよ、活き活きしてるもん!」
「…………セッ、セクハラ…………ですっ……! やはりマスターはエッチですね…………」
「なんでよっ!? 褒めたつもりよ俺ッ!? 少しヴィヴィの姿を見ただけでエッチは無いんじゃない?」
「過去のメモリをロールバック…………マスターはフエンの温泉宿で許可無くわたしの頭に触れ、色違いのリザードンとのバトル終了後には、わたしの……わたしのしたぎ……全部見られてしまってます……これをエッチと言わずなんと表せば良いのでしょうか……?」
受け取れなかった言葉のデッドボールも、変化が見受けられ鋼なのに毒をペットボトル一本分くらいは含ませた物言いだけども、視線を合わせながら確実にキャッチ出来る速度でボールを投げてくれる様になった!
「あれは事故じゃん!? 見たくて見たんじゃ」
「…………マスターはわたしを女性として、惹きつけられる要素が何も無いと…………そう言いたいのでしょうか? デリカシーに欠けた発言です、撤回及び訂正を要求します」
(惹きつけられないって、とんでもないよ…………惹きつけられっぱなしだよ…………ヴィヴィは全部……可愛いよ……)
無表情で熱の通わないロボットから、機械っぽい言動もあるけど触れれば暖かい女の子へワープ進化。
例え彼が何もしてなくても、アレやコレや突っ掛かってくるヴィヴィは、自分なりにコミュニケーションを取ろうとしているのだろう。
流石ロリ巨乳という邪道属性を開拓していくFrontierの〝F〟であり、Freedomに行動し発言する〝F〟の持ち主だ。
ジト眼になりながら彼に謝罪させてしまったが、ヴィヴィとしては彼に構って貰えるのは悪くない。
下着の件は状況が状況だったので首の皮一枚で許してあげるし、頭に手を乗せた件は…………
「…………貴方をマスターとして認識しましたが、マスターだからとエッチな眼で水着を、ベロベルトが舌で舐め回してくる様に注視して良いとは言ってません」
「ヴィヴィが俺をイジメル…………見ないとコメント出来ないのに…………ぅぅ……」
エッチエッチ言われすぎて、膝折れるジック。その後ろでちょっぴり唇を緩めて微笑するヴィヴィの水着は、生まれて初めて〝美的感性〟でチョイスしてみた物。
ちなみに下着ではなく水着なので、期待に応えられず済まないがセリーヌさんの百合尻尾には掛かっていない。
あの一戦以降の彼女は、思春期に到達した子共の様に成長著しい。
トップスはラッフルフリルのビキニ!
この夏注目のアイテムとされ、赤字覚悟の値段で特化セールされていた品だ。
ちゃんとフリル形状が X になっているのは、メタグロス用の物を探したからだろう。
言うまでも無く本来なら大人用を……
カラーは彼女のイメージとは外れ、一見すればミスマッチに思えるペパーミントグリーン。フリルにはホワイトを差し色にしたラインが入り、立体感(胸的な意味でも)が出ておっぱいの影が強調される!
中心部にレースの刺繍で出来た、ホワイトリボンを蝶結びすれば、フェミニンな印象をこのパーツだけで醸し出せる素体の良さ。
さらにリボンにはダミーだろうが、パステルブルーの鉱石が埋め込まれており、光量が変わればセルリアンブルーへと異なった色へ遷移する。
まるで〝これから〟の彼女の心その物…………
水着に合わせてツインテールを結うリボンも、ライトグリーン~ホワイトのグラデーションカラーに。
ボトムスもフリル付き! 三段のヒラヒラミニスカートでも、甘くなりすぎないクールなテイスト。
何時もど~り、体育座りしながらまた砂を固め始めたから、三段スカートが捲れ上がってパンチラ…………水着だから問題ないけど、絶対見えなかった秘密の花園があの一件以降、ちょくちょく覗ける様になってしまった気――――
「…………胸、見過ぎです……まさかっ、わたしにこれ以上の育乳を期待しているのでしょうか!? これよりも大きくを望んでいる……と……検索しましたよ、マスターの様な人を『おっぱい星人』と呼ばれている事を……エッ! エッチです! ドスケベですっ……!」
この短時間で何度「エッチ」と言われたか、ジックは考えるのを放棄した。
「こんな駄肉っ、チーズドッグだったらすぐにでも食べてしまうのにっ…………ジュルッ」
「分かった分かった! ミナモに帰ったら奢ってあげるからさっ! 色々許して、色々!」
おっぱいは、年頃の男なら誰でも好きなので許してやってほしい。ジックは大きいのも小さいのも、どっちも愛せる。
「いいですよ……許します……ラズベリーフレークなる新フレーバーが食べたい……です……!」
相変わらずチーズドッグへの、並々ならぬ情熱は海へ来ても平常運転だ!
「…………マスターも一緒に来てくださいね?」
「ん? いいけど」
お小遣いを渡せば、自分の好きな時に買いに行けるし迷うほど複雑な道のりじゃないけど、そうご所望するのならば。
《一人にしない》と謝って、約束した訳だし……ヴィヴィと新作を食べに行くと名目でお出かけ――――
(それってさ、デートになるんじゃね……??)
「ふふん……! 私は別に怒ってない……ですっ、水着ですし、海ですし……少しくらいなら致し方なし……です」
大急ぎで水着に付着した砂を落としたり、ズレが無いか手探りする彼女は、彼氏との初デートで可愛いんだけど、ちょっと大胆にビキニを選んでドッキドキが止まらない……クールなあの子が、谷間まで熱く弾ませ――
「…………ほくろ、見ましたね? エッチです……まったく、エッチなマスターを持ってしまいましたね…………」
「気にしないって言ったのヴィヴィでしょ!?」
乳房が膨らみ始め、急上昇していくお山が下り始め隣乳と合流する地点に、とてつもない色気を漂わす黒点。低身長イカ腹であるのに、未だに謎の多い彼女は胸を除いたって大人顔負けの、魅惑のエッセンスが欲張って瓶詰めされている。
指二本で隠しながら、またジト眼に戻ってしまうヴィヴィ。気難しい子だけど扱い方が分かって来たし、言葉でやり取りするだけでも、今までしたかっただけに楽しくて――――
「俺も一緒に砂で何かを作っていいかな? やった事ないから教えて欲しいな?」
「…………いいですよ、いっ、一緒……に……作るのでしたら…………っ」
彼女はスコップ要らずに作っているが、そうはいかないジックの為に初心者向けと思われる道具を揃えて来てくれた!
ご指導ご鞭撻を、マスターが頭を下げた姿に気をよくした? それとも頼られたのが嬉しかった?
やんわりとだが自然体の笑顔を見せるヴィヴィは、温泉町で様々な感情が生まれ以降は鉄仮面が消えるシーンも、それなりに見受けられる様になっている!
どれだけ下手に出ようが、機械的な流れ作業で手を動かし、テキストを棒読みしたかの心が宿らない冷めすぎた声で、相手のペースや技量など考慮せずさっさと終わらせたのが、以前のヴィヴィ。
わざわざ道具を揃えて一つの作品を、一緒に作ろうとするなんて……わたしだけで作った方が早いです、そんな無神経なセリフも一切出てこない。
まだ足りてない部分や、目覚めきってない部分もあるけれど、戦闘力と結びつけられた様に〝心〟も成長している。
「そうだっ! ちょっとだけ待ってて!」
教えてと言ったのはそちらなのに……海の家へダッシュしたジックへと、頬をおっぱいの様に膨らませるのは無意識の内だ。
(早くマスターとバトルタワー……作りたいのにっ……)
表には絶対出せない、秘密のコトバ。
ツインテールを肩に掛けながら、下準備を終わらせていくヴィヴィは凄く頭が良いけど、凄くぶきっちょである。
3分も経過してないのに退屈になった、何パターンもの苦情セリフ集を構築させ、帰ってきた彼へ不機嫌な表情で――――
「ハイッ、ヴィヴィは帽子も似合うね!」
「っぇ゙!? ぇ、えぅ!?」
彼が購入してきたのは、ツバの広い麦わら帽子だった。
熱に弱いヴィヴィへのプレゼント。熱中症になってしまったら楽しむどころではない。
通気性も良好な素材なので、蒸れの心配も要らず一巻きされたリボンが、青い物を選んできてくれたらしい。
「……………………ありがとう…………ございま…………す…………」
ツバを伸ばして思い切り目元を隠しても、うら若き蒼が紅くなる。
見返りを求めていない彼からのプレゼント。
例え〝そういう意味〟を含まないにしろ、今のヴィヴィなら勘違いを許される。
恥じらいの仕草など捨てていたのに、彼に名付けられたニックネームを呼ばれる度、算出不可で文章としても表し様の無い、モモン桃色ピンク色の境地に運び込まれる。
(大事にしましょう……)
(ヴィヴィの声……耳元でボソボソ呟かれたら甘くて耳が酔いそうだ……ち、近い……)
さり気ない風を装って、ポジションを右隣にキープしたり「マスターのレベルに合わせます」とかそれっぽい理由を思いつけば、手を上から握って砂を削り取ったり。
(…………キョロキョロ、ここなら誰も居ません、見てません…………)
彼女は閃いた、合理的な案に見せかけて、もっと人気の無い場所へ移動する方法を。
「…………ここなら波に飲まれる事はありませんので、改めて砂を踏み固めましょう。ここに埋まっている砂こそ、初心者向けであると成分分析結果が出ましたので。異論はさせませんっ、マスターの為を思っての事ですっ、ありがたく受け入れてわたしと"一緒"に砂のバトルタワーを作るのですっ、難易度は初歩の初歩ですのでわたしと"一緒"ならば、一時間で完成しますっ……」
「ふーん! じゃあさっきのは上級者向けの砂だったんだ? ヴィヴィが教えてくれるなら立派なのが作れそうだよ! 完成したら写真撮ろうね!」
「…………盗撮は、ダメ、ですよ…………?」
スススススッ……専属講師として、そう自分に言い聞かせながら再び身体を急接近させる。
ついつい、余計な一言が最後に飛び出てしまう。盗撮なんてする失礼な男性ではないと知っているのに……
(やっぱりマスターの手……あったかい……ですっ……)
少しでも密着したくなる意味も、手の甲へそっと掌を重ねたがる理由も、答え合わせには時間が掛かりそう。
他の誰かが居たら、こんなに距離を縮めるなんてしないのだけれど、暫くは二人きりのハズだから…………
(おっぱいが肘に当たってるんだよぉぉヴィヴィ~~~ッ゙!! でも指摘したらセクハラだのエッチだの罵られるし逆に機嫌損ねちゃいそうだから言い出せないぃぃ…………)
左手を彼女に掴み取られ「もっと力を入れて土を~」とアドバイスしながら右胸も、力を入れてぐにょんっ、ぐにゅりっ、ぐにゃっりんこ☆
不幸(幸運?)中の幸い、ヴィヴィは口調こそ音声ガイダンスの様に業務的ながら、熱心に身体を触れ合わせアシストしているので気がついてない。
バレたらコメットパンチの刑……ここは知らんぷりでやり過ごそう! 本当は良くないのだけど〝事故〟なので仕方ない。
(マスターの皮膚が赤くなってます……熱中症なのでしょうか? 人に渡す前に自分の帽子を買うべきでしたね……まったくもう……)
――――わたしは彼に触れていたいのかな?――――
(……………………何か喋ってください…………わたしまで黙ってしまいます…………)
ぷにゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ~~む♪
斜め後ろからくっ付き過ぎて、谷間へ二の腕が挟まれている~~~っ!
彼が黙りこくった原因が発覚し、二の腕の熱が胸元から通じる……全然、気がつかなかった。
突き放す事も出来た、コメットパンチで埋葬する事も出来た、けど……
「……………………」
「……………………」
ポケモンの鳴き声も、人間の音声も、この入り江の様な場所なら、殆ど聞こえてこない。そんなところで二人きり……狙ってやったけど、意識してしまったら……
お互いに無言のままになったけど、見事な砂のバトルタワーは完成。
記念撮影の為にピースサインするヴィヴィは、節々の動きがぎこちなくて、表情筋も強ばって眉は小刻みに上下していたけど、最後までジックと時間を共有できて、心の中からは綻びを向けていた。
ヴィヴィのなつきどが、すこしあがった!
低身長クール系おっぱい好き...