「ミノッ……ガッ、ガッ、ムシャ! アグアグアグッ……!」
腐って潰れたマトマのみ、顔面ジャイアントホールしてたのに、おでこに絆創膏貼ってるミノムシは既に本調子。
「ちょっ! 肉だけ食べるニャよかたくりこっ~! 掴み所がニャさすぎる奴ニャぁ」
後遺症も無く綺麗さっぱり、ゴクリンと見分けの付かないノッペリ顔で柔らかブロック牛肉の串焼きにガッ付いてる、かたくりこ。
右爪にはとうもろこしを、左爪にはパプリカや玉葱も加わり色彩豊かとなった串焼きに、マスタードソースを塗るネリ。
〝よく食べるし、嫌いな物は無い〟はハッタリではない。
明日は食べられないかもしれないから、食べられる時に食べておく……その日暮らしだった盗賊時代からの教訓だ。どうせ太らないし。
「アンタも結構行儀悪いぞ~! あんむっ! むむっ~~……! スパイシータンドリーチキンうまぁぁ……! 丸鶏ローストチキンもねぇ! 漫画肉っぽいよねぇハグッ! ハフハフッぅ~~! エクサ美味いよぉ…………」
(鳥が鶏肉食ってるニャ……その食い方も上品じゃ~ニャいけど、バーベキューは豪快に食らった方が絶対にイイからニャ♪)
大型ステンレスグリルの炭を、調節しながらアルミホイルを持ち手に巻いて、前日から調味料を漬け込んでいた鶏肉はパリパリッ皮、ムネはジューシー中はふっくら!
肉汁が垂れようがワイルドに真横からガブリッ!
度々描出されるが、爽羽佳は鶏肉料理が大好物。
それでいいのか……? ツッコまれるけども『別にオニドリル食べてる訳じゃないんだから、いーのいーのっ!』と、実にべらんめぇな答えが帰って来る。両親が知ったら失神するだろう。
「お肉も野菜もシーフードもぉ! いっぱいありますからねぇ~♪ 」
ゴーグル着用なので眼に煙が入らない。料理でのヘマは決してやらかさないメコンは、皆の受け皿にお好みの食材をトングで乗せながら、グリル上での見栄えすら拘った配置を見せる。
それぞれの素材によって置き場所を変えたり、写真映えする様に盛り付けたりと、焼き手を全て引き受けながら控えめな仕草で、海鮮串焼きをクルッと回転させながら、反対側まで形を崩さずもう一本。
ちなみにクーラーボックス2つ分の食材は、ジックと共に下ごしらえを行った物だ。彼と一緒なら串に食材を刺していくのさえ、身体が燻製焼きになっていく……♡
皆は早起きの為に寝てしまっていたので、策略を張り巡らせた訳じゃないけど身も心も捧げると誓った、ご主人様と二人になれるのは短い時間でも、前哨戦としては濃密過ぎた!
「…………ほ~れニャ、ご主人~! イカ焼きもうみゃ~から食べるニャ! あ~ん!」
「「「!?」」」
次はどれを食べようかなぁ、迷い箸ならぬ迷い視線。どれも食べ頃で美味しそう……
手を伸ばそうとしたジックの肩をツンツン、バターの香りが縁日を連想させ、歯ごたえあるイカの串焼きを口元へ持ってこられた。
「んっ……んっ、ア~~ン!…………そういやイカポケモンて……俺らが旅した地方じゃ見かけないんだよな……モグモグッ……美味いっ!」
「マニュハハッ♪ メコンが作って焼いたから美味いのは当たり前ニャけど!」
串焼き相手にかみくだく使ってる、かたくりこは除外――そもオスだし――するとして、一歩抜け出した視線をチラッ、残りの三匹に送る目付きは悪タイプのそれだ。
(マニュハハッ、面白くしてやるニャァ~!)
ダークカップのダチに煽られる様に、次はバードカップのJKが彼へアタックする番だ。串焼きの奪い合いも無い穏やかなバーベキューを、激しい闘争心がグリルよりも高温に燃え上がらせる!
「ねぇねぇねぇご主人っ!? 手羽先に火が通ったらしいから食べよハイッ! 私も〝一緒〟の奴食べちゃお~~♪ ご主人も下準備手伝ったんだよね! なら美味しくてトーゼンだよねぇウェヒヒヒッ!」
同じ品だっつーのに、食べさせ合いっこしちゃってます。間接キスです、ありがとうございます。
もう一瓶開けちゃうか~!
サイコソーダ勧める姿は、酔いの回った中年上司にしか思えないが……次はメコンだよとこっそり呟いてバトンタッチ!
単純に面白がって女の戦いを勃発させたネリだが、爽羽佳は「ご主人は皆の物」意識があるので回し飲み(表現の問題)を推薦している。
「ふぇぇっ~~!? あっ、あぁ……あ~~ん! ですっ///」
――空気が、変わった……?――
こんな状況下でも肉、肉、肉にせず、野菜をお箸で掴んで手皿を作りながら、栄養バランスを考えてしまう。
本妻とからかわれているだけあり、彼女が「あーん」するだけでメコンには適わない、メコンならしゃーないと黒娘と鳥娘は何処か、納得してしまう貫禄は洗練されている!
「……………………! マスター、ハイ、アーーン、ですっ…………」
メコンが下味漬けてくれたから~
ジックさんも手伝ってくれたので~
セリフだけでも甘ったるい、肉が甘くなる!
角砂糖をドバドバ投入した二人だけのセカイを、バキ壊したのは食べ終わった銀串をストローみたいに片手でグニャ曲がらせる、蒼いツインテールの少女であった。
「わたしの串焼きが食べれないと…………?」
「怖いってぇ!? 逆手で持つ物じゃないよアガーーッ゙!!? ヴボゴモガッ゙!!?」
「ふんっ……女の子並べてハーレム気取りですか? 良いご身分ですねマスターは…………」
フランクフルトを食べながら、ネリ・爽羽佳・メコンの「あ~ん」を自分でも瞳孔を拡大させていると認識しながらも、非ィ効率で仲の良い男女ならではの行為を眺めていたが、あまりにもジックが三匹にたぶらかされていたので、眼に余ると乱暴に肉骸を噛み砕き出陣。
参入が最も遅れた自分。もしや以前から同じ事をしでかしていたのだろうか?
「わたしのマスターになったからには、人前で不埒な行いは禁止です。わたしのマスターとして相応しい立ち振る舞いをお願いします……グイグイッ」
「ヴィヴィちゃん、ヴィヴィちゃん、それ以上押し込んだらご主人死ぬって……」
棒読みのまま何本の串焼きが人間の口に入るのか……マスター使って実験。
意図的にハイライトを消した瞳のまま、あの頃よりもずっと無表情なヴィヴィは、魂が飛び出そうなくらい凄惨で、一睨みであらゆるポケモンを怯ませるダイケンキをも土下座させる。
危うくお昼時の海辺で、殺人事件が起きるところであった。
(遅れた分だけ……マスターはわたしに構うべきですっ……手持ちになったのですから不公平です……ぷんっ……カプッ、ガリッ、ガリィ、バグッ……!)
ヴィヴィがフランクフルトを再び、食べ始めたがそこまで歯をいきり立たせ、肉をすり潰すさなくっても……
フランクフルトが真っ二つに折られ、砕き、噛まれ、削られる度に、どんな原理かジックは《下半身が痛くなった》
胸が裁縫針でチクチク刺されて、針山になってしまう。自分だけでなく皆を相手するのは、おやなのだから当たり前……だけど面白くないっ。
「ミノフッフッ~♪」
どうすれば彼に構って貰えるか、不器用なヴィヴィは肉に八つ当たりしながらハイスペックブレインに、思索チャートグラフを幾重も作り始める。
彼女らのやり取りを見るのは、ホント楽しい。
目覚め、抱く事となった感情の伝え方がへたっぴなヴィヴィの後ろ姿を、絶品ラム肉頬張りながら笑うミノムシも、おやであるジックの事が大好きだ。
寒い日が続きます、ヴィヴィのロリバディisビッグおっぱいを抱き湯たんぽにして、お休み下さい。
ツインテールで抱き寄せてくれるので、離れる心配はございません。
ただし、寝起きにコメットパンチされて、リアルひんし状態になります。
さて、次回は――――新キャラ!