第二章は書き終えているんですが、都合により次の更新までは間が空く予定です。
何かありましたらコメントやツイッターなどにお願いします!
「民宿跡地から謎の光が?」
依頼者は毎日ミナモシティの北東付近を、ウロ付く老紳士から。自らが育てたきのみを哲学的なセリフと共にくれる、いい人なのは覚えている。
「私のパートナーと『夏の夜はまだ宵ながら』、灯台前で小さな波を感じていたんじゃが、民宿跡から蒼白い光が出て来てな……」
きのみを育てる時だけでなく、彼の生活にも欠かせない存在となった人化ホエルコとゼニガメ。この子達も怖がっている、メコンが撫でて落ち着かせているが、間違いなく心霊現象だとハットで顔を隠しながら、紳士の嗜みである高級ハンカチで生温い汗を拭う。持ち主の心境に同調したのか、再び泣きそうな表情で、今度は老紳士の脚元にひっついた。
「解りました、探索してみます」
「ありがとうジック君……頼んでおいて何を言っているのかと思うかも知れないが、気をつけてくれ……報酬は弾ませて貰うからね……」
本来のスマートな動作も陰りがある、頭を下げてからジックの住まうログハウスから退散した一人と二匹。
「あの民宿は十数年前から廃墟になってる、おくりびやまから流れてきた、ゴーストポケモンの住処になっているから、特例で放置する事になった……ゴーストポケモンの悪戯だと思うが、頼まれたからには行くしか無い」
NPCから課せられるミッション、クリアすれば報酬やストーリー進行のトリガーとなる。ゲームに例えればそんな感じ。
ポケモン政府から許可を得ているので、報告書を作成すればお礼は、全て個人で受け取って構わない。しあわせタマゴとかサンのみとか……滅多に手に入らないアイテムを貰ってしまった時は、慌てて政府へ確認電話をした物だけど。
報酬だけを目当てで今の仕事をしている訳じゃないけど、ある程度のご利益が無くては只のボランティア。これで生活している限りはやはり、相応の見返りはあるべき物。
「幽霊と言えば夜、フルメンバーで探索したいと思うけどメコンは?」
「承知しました! ネリさんが居るのでしたら例え襲われても、問題なさそうですし」
まず間違いなく、他の三匹も賛同してくれるが念の為。悪タイプのネリが一緒なら、大抵のゴーストはつじぎりで追い払われる。爽羽佳もノーマルタイプが付属するので、お得意の霊技は通らない。
使えそうなアイテムも可能な限り持ち合わせるに超したことは無い。歩いて10分の距離でも依頼は依頼、準備は万端にしておく。
「ミッノ?」
「お前は戦えないだろ」
謎が謎を呼ぶ強さのミノムッチ、だが積極的に戦わないので実質的には三匹で挑む。置いていく理由も無いのでジックが、リュックサックに身体を入れるマスコット代わり。万一の最後の砦になりうるかもしれない。
ミノムッチが切り札のトレーナーが、果たしてホウエンには彼以外居るのだろうか? 依頼なんてしーらない、等の本人はフーセンガム膨らませながら街全体から見渡せる、海を見守る標識である白い灯台、その麓に佇むかつて繁盛していた民宿の抜け殻を、見通すかのように、何時ものヌボッ~とした表情より、少しだけ違う気がすると主人とメイドは言葉無き言葉を交わした。
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さぁ、幽霊退治? のお時間だ。
民宿跡地に苦労なくたどり着いたジックは、二つのモンスターボールを緩やかに地面へと投げた。
爽羽佳とかたくりこが現れたのを合図に、手首のスナップをやや利かせたカーブ、時計が回るエフェクトと共にネリが登場し、最後の水色・青・白の寒色系で纏められたカラーリングは、水に棲むポケモンへの捕獲率が絶大なダイブボールだ。
透き通った水しぶきのエフェクトが非常に人気があり、水タイプ以外への採用例が雑誌に掲載され〝オシャレボールのスタンダード〟とまで、評価され品薄かつ、値上がりした時期もあった。
このボールは上空へ投げれば、エフェクトと共にメコンがスカート抑えながら登場。初めてのポケモンだけあって、どんなボールに入れようか悩んだ末に、結局はチョンチーであった彼女と相談、故郷を思わせる海の配色がお気に入りだとか。
「報告書作ったから大丈夫だよな、アレやってくれネリ」
「まっかせるニャ! こーして、あーして、くるんッ、はいよゆ~!」
南京錠にマニキュアを塗った爪を突っ込んで、物の5秒足らずでガシャッ。この民宿跡の扉を開閉する鍵は、ミナモ自治体に確認したところいつの間にか消えてしまっていたらしい。
ゴーストポケモンは実体が無い、壁抜け能力を持っている個体が殆どなので、鍵があろうがなかろうが関係ない。だがそれ以外の種族や人間が入ろうとすれば、当然鍵は必要だ。
「マニュハハハッ! ネリのピッキングは最後の鍵よりも高性能ニャ! 元盗賊舐めんニャ!」
「今回は特別だからなっ、普段は絶対使うんじゃないぞ!?」
液体金属でその爪は出来ているのか、その気になれば世界中のタンスの中を荒らし回れるこの子の特技。
ネリのとくせいはプレッシャーではなく、生まれ持っての才と合わさったわるいてぐせ。
高額な品物やお宝、レアアイテムを見てしまえば身体がウズウズしてしまう。一つしか無い希少な道具を勝手に使って、怒られてしまった事もあった……
更生した彼女はもう悪用する事はない(ハズ)
「そんじゃ入ろうニャ、ネリを先頭にしとけばあっという間に片付けてやるニャ♪」
久しぶりに特技を披露出来て嬉しいのか、あばらが浮かぶくらい肉をそぎ落としてるのに、胸だけは背丈のわりにご立派なD。偉そう~に胸を張ればたわっ、青少年が待ち望んでいた擬音が人気どころか、ポケ気の無い建物へ侵入。
「……なんかさ、ゴーストの住処って聞いたけど、何も気配が無いんだけど?」
「ええ、ヨマワルさんやカゲボウズさんは、以前集まっていたと目撃情報があるのですが、今はそれすらもありません……」
てっきりゴーストポケモンが「いらっしゃ~い!」と、歓迎するのかと思いきや、悪戯の為に身を隠している訳でも無い、生き物としての反応が何も感じられない。
「二階建てだから上に何かあるのかな? 警戒して進もうぜ」
かかって来いニャ! つめとぎしながら氷の手裏剣(こおりのつぶて)をジャグリングする余裕なネリ。緊張感も警戒心の欠片も無いが……
懐中電灯で注意深く辺りを照らすジック、すぐ後ろには彼の袖を人差し指と親指で掴み、視線をなるべく床に落としている爽羽佳。タイプ上は相手の主力攻撃を無効化できるが、ボロボロになった家具やズレ落ちた絵画、ポケモンを模したぬいぐるみが乱雑に散っており、ホラーな雰囲気が少し怖いらしい。
メコンは頭の触覚を適切な明るさに保ち、シンオウ地方のもりのようかんを思い出していた。
その時の心霊現象はテレビから出られなくなったドジっ子ロトムが原因だった。
今回も似たような物かと予感していたが、自分達以外が入り込んだ気配もなければ、暮らしているポケモン達の存在感が皆無。もりのようかんではゴースがウヨウヨ居たのに。
かたくりこはジックのリュックサックから、頭だけ出して寝てた。
「な~んなんニャ~? ポケモンの一匹も現れニャいどころか、お宝の一つも眠ってないとは、あのじーさんにネリの足の裏を舐めさせてやらニャあ、気がすまニャいニャァァ~~!!」
クローゼットを物色するが、服の一枚もないっ! つかえね~だの面白くね~だの、お前は何しに来たんだと爽羽佳が代表として、脇腹をつつくすれば、センシティブな反応と艶声を出しながらコケそうになる。防御力は紙っぺらと比喩されるだけに、敏感肌なのだろうか。
「どうしましょうジックさん? 探索を終了させましょうか?」
「これ以上何かを待っていても無駄な気が……逆に違和感あるけどねぇ、ポケモン一匹もいないのは」
親玉と戦闘、もしくは大量のゴーストポケモン達が襲い掛かる?
準備は完璧だっただけに、何も起こらずジックとしても拍子抜けだ。あの老紳士の勘違いだったのか、ちょっと報告し辛いかも。
しかし爽羽佳の言う通り、ゴーストポケモンの住処なのは住民誰もが周知の事。一匹も現れないのは確かに違和感バリバリだ。これでは何の為に跡地が残されているのか不明瞭に。
(別の場所に移動した、それか本来の住居であるおくりびやまに帰った? 蒼の光なんてあれば絶対見逃さないのに)
それが無いって事は、やはり見間違い。灯台の光が反射したりとか、誰かのポケモンが放った技が偶然目に入り、場所が場所だけに誤った捉え方をしてしまった。申し訳ないが――――
「……ミノッ、ミノォォォ!!」
「えっ?どうしたかたくりこっ!?」
黙り込んでいた、ってか寝ていたから収納されているアイテム扱いだったかたくりこが、前触れなくリュックから飛び出したかと思えば、朽ちた床とか関係なくスイスイと、氷タイプのジムに良くある仕掛けに乗っているかのスケート移動。
「なんニャあれ? ご主人の〝カメックス型シューケーキ〟でも、食らいに戻ったのかニャ? あれは既にネリの胃袋に入ったにゃし♪」
「俺も分からな……お前、ネリこらッァ!! パクったのやっぱりお前じゃねーかっ!!」
「ふニャはふゥゥ!? ほっぺつねんニャいでぇぇ~~!! ごめんニャさぃぃ~~!!」
シュー生地を甲羅に、巻きチョコでハイドロキャノンに仕立て上げ、左右斜めから豪快にズボッ。メコンが内緒で作ってくれた試作品なのに……ジックの部屋の冷蔵庫に入れてたのに、かすめ取る奴はコイツしかいない。
し~らニャい♪ とか、ホラ吹きやがって!!
「ふニャぁぁ~~ふニャはぁぁ~! ご主人に虐められたニャアア!」
「ハイハイ、うそなき使わない。私らもさっさとかたくりこ追いかけて帰ろーよご主人?」
ホンット、狡賢いと言うか欺くのが好きってか。 ギャルっ子同士仲良しな爽羽佳は、ジョブチェンジしたって根幹はシーフな、ダチ公の演技を適当にやり過ごし帰宅を催す。静寂こそもっとも不気味なのだ。
「アハハッ……今度はみんなの分も作りますからね。あの子は私達とは違った能力をお持ちですし、気が付かなった物を見つけたのかもしれませんね」
手癖の悪いネリがパクってしまうのも想定の範囲内。怒らず、そのHカップに詰まった母性はモーモーミルク何本分でしょう。
青いメイドさんが指差す方面は、一階への階段。降りればかたくりこを発見し、幅を広く取った脅威の跳躍力(足無いけど)で、入り口とは真逆の方向へ移動している。
「えっ……地下への扉……?」
「ミノッ、ミノッ!」
なんだと、この民宿に地下室があるなど一度として聞いてはない。間取り図を確認したって〝地下〟の文字は書かれてない、業者の入力ミスであればと願いたかったが。
「そうじゃないよなぁ……これは俺の〝勘〟だけど、もしかして後付けされた物だったりしてな」
誰が、どうやって、なんの為に、は無視するがそうとしか考えられない。かたくりこが「早く開けて」とでも言っているのか、急かすようにミノを跳ねさせている箇所こそ、隠し扉、隠し部屋への入り口。
カクレオンの迷彩能力よりも、巧妙な隠蔽だ、床と完全に溶け込んでいるを通り越し、隔絶されている。これでは警察に所属されている、熟練の嗅覚を持つガーディですら欺けるだろう。
(マニュハハッ、面白くなって来たニャ~! お宝を守るボスが居るのはお約束ニャ、サクッと倒してネリがゲットしちゃうのニャ~♪)
デカいヨノワールか、ゲンガーか、霊狩りのネリからすればニャんでも来い。
絶対の優位性を誇るネリだけは、他の四名と相反するかの如く緊張感の無さ。そしてお宝しかもう頭にない。ロリな雰囲気を保ちながら鋭い眼光、それがおまもりこばんの形に点滅している。KYであるがこれがネリの良いところでもある……
狭苦しい回廊だ、メコンは胸がつっかえてしまうので邪魔しないようにと最後尾に回っている。
(人為的な電脳空間……?? パソコン転送システムが頭に浮かんだが……)
降りた先には蒼いルービックキューブが、緑色の十六進コードが、流動する粒子と幾何学なラインが。
コンピューターの内部へ入り込んだ、発光ダイオードのようなシグナルが、妖しく点滅し嫌でも地上世界とかけ離れた、仮想空間であると認めざるを得ない。
その仮説が当たっているかは兎も角、普通の空間ではないのは確かだ……お宝しか頭になかったネリですら、現実離れした光景に「ニャ」の一声も出ない。
探索しようと思ったが、かたくりこが魔法陣のような紋章が浮かんだ、クリアグリーンの階段をよじ登る。
「上に何かあるってのか? かたくりこは初見て感じ全然しない……この場所を知っている?」
妙に張り切っている、何が待ち構えているのか知っていて、誘導してくれているのか?
「やっ、そんな訳ないっしょ。こんな場所私らどころか、ミナモの人達みんな知らないっしょ?」
爽羽佳の言う通り、不思議な空間に突入してしまい、テンションがやや不安定になっているのか、口調はそのままながら早口だ。
かたくりこが先導するように、階段をピョンピョン登っている。実にスムーズで無駄のない動作、周りの電脳ネットワークな風景など目にも止めていない。
「登りきった先に何があるのでしょうか……ここから伺える形状は箱……のように見えますが」
ジックと各地方、様々なダンジョンを攻略してきた。あの世に近い場所、海の底、極寒の島、古代の遺産。どれも非常識だったがこのサイバー空間、未来に続くのか過去を遡るのか、それとも平行線上から動いていないかもしれない。広大すぎるのか狭少すぎるのか、空間認識力が鈍くなってくる。
それほど長い階段ではなかったが、景色がチカチカするし無重力のような、フワつく足場に苦戦したので登り終わり次第、かたくりこ以外の者は電子回路基板に座り込む。
「ミノミノッ!」
休んでる暇はないぞ、早くコレ見てよ。
彼の言葉が何となくだが伝わる、疲れを見せず興奮した面持ちは、普段のヌボッとゴクリンフェイスではない。かなり真剣……と思われるが、かたくりこの真剣な顔は見た事ないので推測だ。
「揺りかご……の中に女の子が!?」
登り切った果て、電子のカーテンに囲われていたのは、銀色のライトが等間隔で埋まり、蒼い色彩を持った揺りかごとしか思えない物体だ。
変なのが入ってたら嫌だなぁ、こんな意味不明な空間に置いてあるし。
大方の心境は一致していたが、慎重に中身を覗いたジックは、ハプニングに次ぐハプニング、これから何が起こっちまうんだ……セットした髪型が若干崩れてしまうほど、頭をかいてしまった。
だって揺りかごで横向き姿勢のまま、眠っているのは各部位の特徴からして、恐らくは……
人化メタグロスの女の子なのだから。
メインヒロインの登場ですね。メタグロスは昔から縁のあるポケモンです...
書き方を変えてみました。こっちのが見やすいかなぁ?
完全なるオリジナルストーリーなので、難しいですね。でも書いてて楽しいのでいいのです。