ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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バトルだけが、ポケモンじゃない!
コンテストォォ!!擬人化だと本当にミスコン。


Segment・hexa――もうひとつの戦乱

「わたしの勝ち……! ですっ! 部屋に盛り塩を配置しましたからね、メコンさんに勝てるおまじない…………」 

 

 青に勝利した蒼は闘気を緩ませ、ペタンとその場に座り込んでしまったが、自分としても上出来な戦内容。

 

 何よりメコンに全力で挑み勝利の栄冠を手にできた!

 

 密かに成し遂げたかった……彼女達三匹へのリベンジ! 全員分達成だ!

 

「んーニャ! 戦い方も知らなかった貧弱ビッグマウスビッグおっぱい娘が、短期間で師匠を乗り越えて感動ニャァ……!」

 

「アンタは何時ヴィヴィちゃんの師匠になったのよ……うァー! あん時も私は相性の関係で際どかったけど、もうそれだけじゃないんだよね! ヴィヴィちゃんの強さは!」

 

 それぞれ鉤爪と脚嘴に、絆創膏を貼り付けているネリと爽羽佳。本人は無意識かもしれないが両手で蒼天を抱きしめる様にバンザイ、からのジャンプ。

 

 着地してからも可愛らしく、小さな物だがガッツポガッツポ! その瞬間のみ微かに唇を解き素白の歯を見せ破顔した少女に釣られて笑いかける。

 

 今までのトレーナー戦では見せなかった、勝利ポーズを披露したヴィヴィを "本当に別人になった" と、裏庭に備え付けられた天然樹のベンチに座りながら、戦いっぷりを観戦し終わり心の中で同じ感想を述べる。

 

 ネリのスピードには流石についていけなかったけど、隙の無い技の組み立てでネリも回避のみに専念しなければならず、鋼技のPP切れを狙うもバレットパンチで撃沈。

 

 ヴィヴィの攻撃範囲外から少しずつ削る策しかない爽羽佳は、最悪な相性なのに根性見せてくれたけど、トラブルレスの演算処理で動きを先読みされかみなりパンチ。

 

 

(じゅうりょく、私との戦いでは使わなかったのは、メコンとのバトルまで隠しておきたかったんだね。使えばもっと楽に私は倒せたのに、使わせずに倒されちゃったのはクヤシーけど……私も嬉しいもん! ヴィヴィちゃんがここまで成長して……強さだけじゃない、感情を持った女の子に……)

 

 

メコンに勝てるように盛り塩……二ヶ月前の彼女がそんな 〝おまじない〟 なんかに、取りかかっていただろうか? 絶対に……それはないっ!

 

 絵空事に縋るなど非論理、実行する必要性が感じられない、戦闘への集中力をスポイルさせる要因になりかねない、削除…………

 

……おまじないは、誰に聞いた訳でも言われた訳でも無い。

 

「無意味な行為かもしれない、だけどやってみようかな?」と直感し、感性のアンテナに共鳴したのだろう。

 

 おまじないから加護を得たのか、得てないのか、重要なのはそこじゃない。

 

 理路整然じゃなくていい、〝やってみようかなと思えた事〟 こそ、芽生えた感情を裏付けするエンブレム。

 

(ふぅぅ…………疲れ……ました……わたしは、達成感を抱いている……のですね……自己陶酔? 分かりません……ですがとっても、良い気持ち……ですっ……)

 

 髪飾りのスリットから、バトル中高密度にコレクトしていたエネルギーを排熱。

 

 磁力ブースター起動時に煌めき灯す、燃焼粒子とは異なった蒼煙がツインテールから上騰させる。

 

 何処か、お風呂から上がったばかりで熱に浮かされている様な、色っぽい表情となっているヴィヴィへと、マスターとなった男、ジックが奮励し戦い抜いた彼女へ、二ヶ月前と同じタオルを右手に持ち、称揚の言葉を贈りながら隣合う。

 

「ヴィヴィ! おめでとう……! 俺はヴィヴィにもメコンにも最良の指示を与えたと思ってる、全力で二人を勝たせたかったから。…………メコンが負けちゃうとはなァ~~! 凄いな……ヴィヴィ、二ヶ月で本当に強くなったね! 今のヴィヴィは――こうそくいどう使って無くても――煌めいてるよ!」

 

 エルフーンの気持ちになれる『もふもふ☆コットンタオル』を、何故だか視線を下へ逸らしながら手渡してくれた。

 

 

さっきのポーズも可愛かったし……

 

 

 それだけは本人に聞こえない様に、1㎞先の音も聞き漏らさない聴力のピクシーですら、聞き取れたか怪しい、彼らしくもないミュートボイス。

 

 

 彼がトレーナーとなって八年間、最初のポケモンとして出逢ったメコンは卵から孵化したのではないけど、泣いて笑って楽しんで、強く硬い絆を育んだ一蓮托生の女の子。

 

 客観的に判断し、ヴィヴィは二ヶ月間で怖いくらいにレベルが上がっているけど、メコンと戦えば勝つのは難しい。

 

 親として二匹の実力を分析し、最良の指示を与えた結果、ヴィヴィが勝利した。

 

 ジュエルハイポンを急所に当てたのに、本心を打ち明けるとメコンが負けたのはもの凄くショックだ。

 

 八年間も手持ちとして経験を重ねたランターンを、二ヶ月の手持ち――実質的には一ヶ月――経験しか無いメタグロスに倒される。

 

 自分のポケモン同士、だけどジュエルハイポンを決めた時は勝利を確信した……のに耐えきられてしまい、極力平静を見繕ったが内心は「マジかよっ……!?」と、信じられなかった。

 

 それはレベルが上回っている慢心や、一度勝利した結果を持つが故の油断ではない。

 

 言葉通り手加減はせず挑ませて貰った。

 

 運の要素が微妙にヴィヴィへ傾いていたのかもしれない、だが、負けてしまった。

 

 メコンもちょっと、本当にちょっとだけ…… 〝悔しい〟 感情がご無沙汰した。

 

 

(空間を直進するだけでは勝てません、ですが今のヴィヴィさんは素人ではない、曲がって加速して減速して……力を使いこなせる様になったのです……!)

 

 

 ベストを尽くして負けた悔いの無いバトル、素直に現実を認めヴィヴィの勝利を称えられない、こじんまりした器の持ち主じゃない、胸的な意味でも。

 

「……………………褒めるのでしたら、相手の顔を見るべき……だと思いますが? あ、あと……無許可で頭を撫でるのは、セクハラ……ですよっ……」

 

 またやってしまった、断りを入れずに蒼い繊維を細かく、何重もの層へ織り込んだ手触りの髪に触れてしまった……!

 

 

 フエンでの一件から、ジックは度々了承を得ずにヴィヴィにセクハラしてしまっている。

 

 

 他の子には変わらず、自分からエッチな目的で近寄ったりしないのに、ヴィヴィだけは考えるより先に手を出して、ジト目となった彼女に指摘されてから気がつく……

 

 体育座りがデフォなヴィヴィを、何気なく見たらパンチラしてたり、歩行すれば揺れるFカップに釘付けとなったり……

 

「…………? はっ…………ッ゙!? まっ、まさかそ、そういう意図があったから……っ、ハイドロポンプをメコンさんに撃たせたのですかっ…………!」

 

 着け慣れてしまった X パターンの刺繍がメタグロス種を対象にしているのだと、黙して語る黒のブラジャー。

 

 水を吸い込んで重くなったブレザーベストを脱げば、黒いブラウスの下から別の〝黒〟がレリーフの様に区別され、もっと描出すればブラウスもロリボディにぴったり型取りし、アンバランスおっぱいは、詰め物なんじゃないかってくらい強調されている!

 

 偽乳じゃないのは無論、言葉は途絶えず伝えられたけど、制服が灼き焦げて初めて下着を見てしまった、あの時の映像がフラッシュバックする。

 

 上が判明すれば下も……ほっそい紐でサイドを結んだエッチぃ下着に違いないと、脳内は悶々埋め尽くされていく!

 

「違うよッ!? メコン最大の火力技だから撃って貰ったの! 悪意も下心もないってばッ!!」

 

「…………じっ~~…………チーズドッグ、お願いしますよ? わたしと一緒に買いに行くのです……マスターに拒否権はありませんっ……」

 

 弱みを握られたかの様に、ヴィヴィの言いなりになるしかないジック。どっちがマスターなのか……チーズドッグをまたカツアゲされてしまうけど、彼女の好物ランキング永久主位のチーズドッグ「様」をお望みであるならば、何本でも買ってあげたくなる。

 

(俺は……もっとヴィヴィを知りたい、仲良くなりたいから、一緒に行動出来る時間にもなるしね。他の皆と一緒じゃない、二人の……デ、デート……になっちゃうのかなぁ、第三者視点では。またセクハラだって言われそうだから黙るけど……)

 

 ふくれっ面になりながら、エルフーンタオルで身体の前面を隠した後に「マスターはエッチです」と、あっかんべー。

 

 軽い怒りの感情を伴わせた、イマドキ中々見かけない子供っぽい仕草をしながら、磁力移動で横スクロール。

 

 ……無変、つまらなそうな表情しか見せなかった少女が、チーズドッグ様や他の手持ちである仲間、そしておやとして認めたジックから影響を受け――――

 

 

(…………は、っ、!? わっ、わたし……なっ、な……今なにをしたのっ……??)

 

 

 ――――たから、時折プログラムに無い情動に任せたパフォーマンスをする様になったのか?

 

 

 ヴィヴィがハードウェアに置き換えるならば、無限にインストールされるソフトウェアは――――

 

 

 チーズドッグが食べたい……欲望だとか

 

 皆で洋服を買いに行って着せ替えされまくる……戸惑いだとか

 

 あの子が勝ったならば自分も……競争心だとか

 

 透けブラに気がついた……恥ずかしさだとか

 

 

 ジックに『ヴィヴィ』と呼ばれた……嬉しさだとか

 

 

 入力されたプログラムなど、とうに上書きされている。もう無口で無感情で意味も無く強さを求めていた彼女という、認識は捨て去るべきだ。

 

「しょうがないマスターですね、良いですよ……許します、エッチなのは承知してますので……」

 

(その間違った認識……もう改訂されないかも……うぅ……)

 

 orzするジック、得意気に腕組みしてドヤ顔、ドヤ乳してるヴィヴィ。

 

 

 すっごい、仲良しになってる……!

 

 

 女子三匹とミノムシ一匹は、あの応酬を眺めているだけでほっこりしてしまう。

 

 ヴィヴィなりの言葉のコミュニケーションは、特性がぶきようなポケモンよりもぶきっちょ。

 

 メタグロス種だから扱いが難しいのではない、ヴィヴィだからちょっと……れいせいな性格なのに照れ屋さんなんだ。人間に換算すれば13~14歳くらいで反抗期に突入した女の子。

 

 理不尽な言いがかりだとしても、炎+ドラゴンの攻撃範囲並の広い心で受け止めてあげましょう!

 

「どうぞ~~! バトルの後にはトレーナーもポケモンも、体力と精神を使うのでお腹が空いちゃいますよねぇ~!」

 

 げんきのかけら、まんたんのくすりで処置して貰ったメコンは、発光器官にバンソーコー一枚貼り付けてるけどすっかり外側は完全復帰。残すは内面側。

 

「ケーキスタンドッ!! 出てくるの久しぶり~♪」

 

 メイドとして生きると志した者の嗜み、三時のおやつは何時でも用意出来る特技を会得している。

 

 

 一番食べたがっていたのは、制作者で立案者な自分自身だけど……

 

 

 裏庭とログハウスを反復、この時ばかりは運動神経が低いとか素早さ種族値が低いなどガン無視され、紅茶もケーキも溢さず崩れず、驚異のバランス感覚を保ちながら、奥歯のスイッチを噛んだに等しき高速移動でジックらの前に、テーブルを置き全ての準備が整うまで40秒である!

 

「おいヒぃれす……美味しいですよぅ……頑張った甲斐がありましたっ! モキュ、モキュ、むきゅんっ!」

 

 夕食まで間はあるし、疲れた時の糖分摂取は人の身体を得た本能が訴えるのか?

 

 いや、少なくとも鼻の頭にクリームが付いているのに気がついてない、はしたないお姿を指摘され後日恥じりまくるメコンは、単純に好物だから何時でもウェルカム!

 

(谷間にもクリーム落っことしてるニャ、食べたい時に食べたい物を食べたいだけ食べる、それってば理屈抜きで幸せだと思うんニャ)

 

 白餡を練り込んだバニラクリームケーキを、恍惚な顔つきで頬袋させながら、各人に好む紅茶を入れる器用なメコンは、腰回りぷにぷにコンプレックスをドわすれしているから沢山食べても太らないネリは直接突っ込みは入れず、旬であるリンゴとブドウが角切りされたタルトを頬張る。

 

 読めない様で空気読みまくる、ここで邪魔をしたら泣きべそかかれ楽しいおやつ時ではなくなってしまうから。風呂上がりくらいで漸く気がつくだろう!

 

「…………ストレートティー、初チャレンジしましたが結構……わたしに合っているかもです。理由はなくミルクを入れてましたが、渋くない苦くない、条件を揃えたストレートはマイルドで……茶葉由来の香りが身体中に満遍なく……チューー、ンクッ……」

 

 感嘆する、ダージリンをジト目のままだけど、ちゃっかりジックの隣席をキープし全身から蒼い粒子を込み上がらせているヴィヴィへと――――

 

(私もご主人ほどじゃないけど、ヴィヴィちゃんがどう想っているのかは結構見分けられる様になった気がするよ。初対面では印象あんま良くなかったハズなのになぁ……! 可愛いなぁヴィヴィちゃん)

 

誰かが傷つく配慮も気遣いも知らぬ、理論に基づいた行動しか取らなかったヴィヴィは、糖分摂取が必要になってもこうして一つのテーブルを、皆で囲うのをヨシとしただろうか? 

 

 それはないであろう、部屋に戻って食べるとか、協調性が欠落していた彼女は一人で食べようとする理由は、ポンポン浮かび上がっていただろう。

 

 ほろ苦さとエレガントな香りの、モカカップケーキを両手持ちし、肩幅が狭くてジックの懐に潜りやすそうなヴィヴィを横目に、自身も同一品をパク付きながらこの二ヶ月で行ったイベントを振り返っている。

 

 

〝あ~~ん〟 の食べさせ合いを、非効率で不純であるとジックへ食って掛かっていたけれども…………?

 

 

(今の私には、ヴィヴィちゃんがご主人に『あ~~ん』したい、そう思えてならないんだけどなぁ……!

 

 

 そうだとしても、皆の前では決してやろうとしないのだけど。

 

「ミノガツッ! アッグアッグ、ミノッ、カプカプッ…………ミノノーーンッ♪」

 

 

 かたくりこの、本日の生活スケジュールは朝ご飯→寝る→昼ご飯→寝る。

 

 

 今し方開眼したばっか、なのにプチケーキタワーの真上から齧り付こうとしたから、ジックが踏みとどまらせ皿上でモグ付かせる。

 

 彼も彼でヴィヴィの変化と成長を感じ取り、胸に入り込もうとすればコメットパンチされるけど、頭の上に乗っかるくらいは許可なしでも許される様になった。言語違いだからコミュニケーション出来ないは甘えだ。

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

「号外~♪ ホウエン統括政府からの号外だよぉ~♪」

 

 おやつタイムを楽しんでいた裏庭、日差しを遮る影は天候が落ち込んだのではなく、大きく翼を広げている物体が出現したからだ!

 

 

(フライゴンだっ! あの腕章……政府のポケモンか……)

 

 

 砂漠の精霊(蜻蛉とも)たる異名を持つ、せいれいポケモンフライゴン。

 

 野生での目撃例は少なく、ホウエン地方であるならば広大な砂漠地帯、111番道路で 〝主〟 として他のポケモンを守っている別格な強さのフライゴンと出逢った事はあるが、フツーに市街地を飛び回る個体など出逢えば仰天する。ドラゴンだけあって進化までの過程が険しいのだ。

 

(綺麗な歌声の様な羽ばたきです♪)

 

 ゴーグル仲間としてビビッ…………人化フライゴンと人化ランターンは、恋愛とは別ベクトルの運命的な巡り合わせを感じたらしく、握手しながらプチケーキをお土産として贈っている!

 

「ありがとーございますぅ♪ メコンさんとゴーグルについて語り合いたいのが本音ですが、お仕事中なので僕はこれにて失敬~♪」

 

 ゴーグルについて語る……? こればっかりはジックやネリ達も彼女らの世界に入り込めないかもしれない。花粉症にならないとか、そんな安っちい話題にはならなそうだし……マニアな枠だ。

 

(政府の手持ちポケモンと、そう簡単に遊べたりする物なのでしょうか……?)  

 

 プチケーキを食べながら別れを惜しむフライゴン、ハンカチでゴーグルの上から涙を拭こうとしているメコン。全然意味の無い行為だが、ゴーグラーではアレが礼儀なのかもしれない…………

 

 

「ぐしゅっ…………えっと、号外の内容を確認しますぅ……はえっ……新しいカテゴリーのコンテストが開催される……らしいで! 部門は…………《萌え》…………?

 

 

 ミナモシティにはホウエンで唯一にして、あらゆるジャンルとランク別に会場が枝分かれしている、出鱈目な大きさのドームが街の南東にそびえ立つ。

 

 新規で制作中の、ニューキンセツスタジアムは、これよりも多機能で最新鋭の科学技術を詰め込みまくった、夢の総合バトルエンターテイメント施設になるとの事。

 

 お察しの通り、コンテスト会場の設計担当したのもデボンコーポレーションである! 

 

「萌えジャンル……? また思い切ったというか、政府関連のお偉いさんが見たいだけなんじゃって……」

 

 少し頭をかきながら、メコンが手渡してくれた号外をテーブルに広げる。

 

 政府からの要請を受け持った過去があり、社会貢献の実績をそれなりに築いてきた彼も、ポケセンの看護師さんがあんな格好(ミニスカニーソとか丈短ワンピ)で働かせてる件や、どう考えても健全な教育に悪影響となる格好でのバイトを許可(カイナビーチのマイクロビキニやスリングショット)してる件には、個人の欲望を権力を盾に振りかざしているとしか思えない事例が多々ある……

 

 まぁ、言ってしまえば政府だって人間、男の人達なので全てが理解出来ない訳でもない。 強制しなくとも着たがる子は多い事実が、政府への疑問を薄めてしまっているのがまた……

 

「突発コンテストぉ、なぁにコレッ! たった今考えましたぁ~みたいなの! オジサン達のスケベ本性丸出しじゃん!? なんで誰も企画書の再提出を求めないのよっ! やっぱり政府ってヘンタ」

 

「言うな、爽羽佳……休業日なのにコンテスト会場の出入りがやけに激しかったのは、そういう事だったのな。へぇ、リボン持っていなかったり、出場経験が無くても参加可能なのか。商品は…………おおッ、額が一桁多いんだッ、美術館に絵画として飾られる……ほほぉ~~! マスターランク高得点優勝と同じだ!」

 

 キモッ、号外に掲載されてある代表者の顔写真を、脚嘴でくり抜いて白け顔になる爽羽佳は参戦経験こそ無いが、ジックの為にお金を稼いであげたい気持ちと、もしも優勝したら似顔絵どころじゃない、全身までプロの手腕で描き込まれた芸術品……女の子が惹かれるには充分な根拠に、心を動かされている。

 

「あっ、ネリちゃんは出場しないニャよ? 他のポケモンが可愛そうだからニャ」

 

 絶対に自分が出れば優勝するって漲りまくる自信は、どっから生まれるのだろうか……彼女も出場経験はないってか、価値観が一般女性とは少し異なるので興味が無いのかもしれない。

 

 絵画を制作して貰うよりも、大きい鏡のが彼女は嬉しいのだ! 

 

 

 世界一可愛い絵画、ホラッ、そこにあるじゃないって、毎日自室でやってます(超ナルシスト)

 

 

「私はぁ……ヴィヴィさんを推薦したいなぁ~~って、思ったりしちゃってます♪ どうですか、ヴィヴィさん?」

 

 メコンはログハウスが出来る前の話だが、今回の様にゲリラ的に開催された『青いポケモン限定コンテスト』に出場し、栄冠に輝いた証明としてアクアマリン色の記念リボンを、自室に飾っていたりする。

 

 青いポケモンだけ、どんな審査するかなど公開されない抽象的すぎるコンテストだったが、可愛さと美しさジャンルの延長線だったので、その二つのジャンルに出場した事もあるメコンは、何とか対応出来たのだ。決して審査員をおっぱいで惑わして、評価を狂わせたのではない、容姿に性格にコンディションにトータルした実力です!

 

「…………ハイ? わたしは知っての通り、コンテストに出場した経験がありません。話を聞く限りメコンさんが最も適任だと思いますが?」

 

「――! 優勝したらチーズドッグいっぱい買えそうなんだけど……」

 

「やりましょう、マスターの指示を受けわたし、ヴィヴィが見事任務を遂行させてみせます……!」

 

 

 即堕ち2コマ! 

 

 

 チーズドッグが絡んだ瞬間に深紅の瞳には、サイコキネシスを発動している時よりも高彩度な点滅を繰り返し、ケーキスタンドならぬ、チーズドッグスタンドにどっさり飾られたヴィジョンを、4つものスーパーブレイン全てに描かせている!

 

 

 人差し指で自分を指し「わたし、わたしが出ます!」と、テーブルに下から持ち上げるには丁度良いであろう、Fカップを乗っけて擦らせながらズイズイシズイ……

 

 

 これがコンテストだったならば、会場がエキサイトして高得点だったに違いない! などと、おバカな考えをする暇も無く、ここまで簡単に食いつかれるとはジックも想定外。

 

 チーズドッグ大明神をチラ付かせたけど、物で釣るなど不埒でトレーナーの立場を利用した下劣な物言いは、政府の者達と変わりないなぁって、反省よりも速くヴィヴィは出場する気満々となり、むしろ出場許可を下さなければジックが怒られる立場に逆転していた。

 

「じゃあヴィヴィ! 参加するからには一緒に優勝目指そうぜ! 優勝したらチーズドッグいっぱい贈呈させて貰うって約束する! もう店主さんとロコン君に、俺達の顔は完全に覚えられてるし、大体の購入時間も把握されてんだよなぁ……」

 

「…………んっ、一緒に……優勝、チーズドッグ食べ放題! 目標として定めました! チーズドッグに溺れたい……ですっ……ジュルッ、ズズッ」

 

 札束の風呂ならぬ、チーズドッグの風呂って何だそりゃ。この様にユーモアスキルも気がつかぬ内に生まれている。

 

(この中ではヴィヴィの言う通り、経験のあるメコンのが適任なのかもしれない。けど、初開催で未知のジャンルだから、他の子に任せてもそう差は出ない気がするんだ。それに……一番は――――」

 

 

 もっと色々なヴィヴィを見たい、利己的な考えは政府のお偉いさんと変わりなくなっちゃうけど……可愛いヴィヴィをもっと見たかったんだ

 

 

 ――――絶対優勝同盟を結んだジック&ヴィヴィ。

 

 

 手甲を外せば儚く壊れてしまいそうな手を握れば、鋼鉄少女から伝わる野心、チーズドッグを活力に変換させた彼女の気迫は、ブラストバーンよりも熱いぜ!

 

(……………………手、握って……しまっ…………!! あっ、思いがけない場面でっ…………)

 

「ちょ゙ォ゙ッ!? 熱い熱い熱いぁぁぁ!!?? 溶けちゃう焼けちゃうッ! 誰かもらいび特性俺にぐれ゙ェ゙ーーぁぁぁ!!」

 

 

 バトル終了後、排熱が完了するまではヴィヴィの身体に触れない方が良い。ポケモンなら兎も角として、耐熱素材のグローブでも装着していなければ、溶着されてしまうからだ!

 

 その時と同じ熱量を直触りし、右手だけ異様に腫れ上がってしまったけど、命に別状は無かったのでひんやりボディのメコンが、手を重ねて熱を取り除いてくれる筈、明日の朝には治っているだろう!

 

「ひー……ひー……開催日までに準備する事沢山あるなぁ……でも具体的な審査内容が書かれてないのは相変わらずだな。ちょっと困るな、ポケナビとかホームページで推測される情報を交換したり、本戦を想定したリハーサルでも――――」

 

 

「――――マスター、その必要はありません……開催日は『明日』らしいので……」

 

 

「…………えっ、あっ! ホントだ明日かよぉぉぉッ!! こんな時間に配られたら練習も何も無いじゃないか!! 衝動的過ぎるだろっ!!」

 

 政府が調べ上げ、任命したトレーナーのみを対象とし、号外とは別の出場チケットが挟まれている。ジック達は出場を認められたと言う事らしい…光栄であるが…

 

先程のフライゴンさんがホウエン各地に配っている号外を拝見し、ジックと同じ意見のトレーナーは十割十分十厘だ。

 

 プレゼンは準備が八割とされるが、コンテストも事前準備――コンディションを磨いたりバトル用とは別の技を覚えさせたりなど――は超重要。

 

 バトルで負け無しだろうが、コンテストは 〝強さ以外を競う場所〟 なので、あっさり一次審査で落っことされる。

 

 この事前準備させないは、政府の思想が「未開の地に準備無しで入り込み、どれだけ素早く対応し、勝ち上がれるのか」を図るためである。

 

 目を付けたトレーナーは、何かしら政府が優れていると認めたトレーナー達。

 

 良く見ればレギュレーション欄に、デボンイヤホンは○と印されている。ただし念話には×

 

 流石に念話は阿吽の呼吸でシンクロ出来てしまうので、出場ポケモンが全てエスパーでない限りはどんなコンテストでも禁止すべきだと思うが、一方通行でポケモン側の想いと審査に求められている要素を的確に捉え、予測しなければ、結果など出せないのは通常のコンテストでも実証されている。

 

 メコンが出場した際は、当然ジックがイヤホン越しに指示を与えたから優勝できたのであり……プログラムが判明すれば行けそうな気がする! 

 

 何かを達成――その何かはまだ言えない――する場合にとるべき方法はただひとつ、一歩ずつ着実に歩む事なのである。その過程をすっ飛ばすなど出来ないのだ。

 




メカニカルな排熱動作とか、チーズドッグに即堕ちするとか、透けブラとか書きたいシチュをいっぱい書けた!

次回からコンテスト開幕? するかなぁ?

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