ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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お待たせしました! 皆大好きな アイツ が再登場です! 自分でもここで登場させるとは初期プロットにありませんでした!


Segment・hexa――ヤベー奴と可憐毒

爽羽佳がスライディングすれば、嘴を模したつま先から「チチチチッ……」とフリクションが響いてしまった。

 

「ギリタイムオーバーニャ~ね、爽羽佳。音ゲに夢中になりすぎニャあ~!」

 

「やっ、時間は計算してたんだけど最後にね……あてちゃんの事を考えてたら遅れた!」

 

 客席天井部のシーリングライトと、客席の両側壁面に設備されたフロントサイドライトを、タゲを向けられた大型モンスターを葬るかの如し、レーザー射出されているのはホウエンコンテストの統括委員代表! とっても偉い人である!

 

 

「すみません、ライトを少し減らして……あっ、丁度良いです……お集まりの皆様、突発的なコンテストにも関わらず、ホウエン地方に留まらずカントーやジョウトからお越し頂いた方もいらっしゃるとの事で、ポケモンコンテストを管理し、愛する者の一人として大変嬉しく想います…………今回のジャンルは『萌え』……です。我々の友達であり仲間でありライバルでもある、ポケモンに人化現象が発見されてから早20年、人化ならではの流儀や主義趣向などの表現方法があります、今回のコンテストを通じて『萌え』の新しい可能性を見つけ、広める場として活用して頂けたらと存じます、私からは以上です……」

 

 

 会場内が大量の風船に次々と、針を刺し割っていったかの様な歓声が統括代表へ吸い込まれていく! 

 

 動員数だけの力押しではない、心から代表の開催理念と〝萌え〟への情熱、そして思い立ったが即断・即決・即実行させる彼は人化ポケモンを69匹も〝嫁〝として可愛がり『人化したポケモンのコンテストも開催させよう』と、率先提案した萌え(変態とも言う)パイオニアのお言葉へは、ぼうおんゴニョニョも、目を見開いてしまう音圧となる。

 

 

 …………これからもっと凄い瀑音波となるのだが!

 

 

(ヴィヴィのエントリーナンバーは50、一番最後だニャ)

 

不規則な生活に慣れているネリは、徹夜したのにクマの一つも出来ていない。身体も語調も身内が出場するから氷タイプだけど体温は高め。

 

 そのトレーナーの実力・評判・政府への貢献・可愛い♀ポケは所持しているか等々、調査員の主観や独断も盛大に加担されているが……機密で行われた調査から選び出された50名のトレーナーと、出場ポケモン。

 

「ポケモン達の入場ですッッ!」

 

 スタッカートを協調させながら、黄金色の髪を逆立てた実況者が《既に萌えているッッ》 

 

 参加申込書を係員に提示、控え室内でやっと配られたプログラムに記載されている第一科目は……コンディション&外見の華やかさ。

 

 ファッションショーを彷彿とさせるUの字型のステージを往復。

 

 本来の姿から折り返し地点で、人化するパフォーマンスは代表がプロデュースし自らの嫁ポケに実演テストさせて見たところ、大ウケしたので近年の全てのコンテストには間違いなく採用されている。

 

(よしっ! 第一審査は完璧に予想通りだ! 過去の傾向を見てもこれは外しようないけど)

 

ポケナビにデバイスされた小型キーで、入場待機列の最後尾へ並んでいるヴィヴィへ、安心させる一言を送る。

 

(コクンッ…………)

 

 こちらの眼を見て頷いてくれたけど、ヴィヴィはコンテスト初出場かつアピールなんて一度もした事が無い!

 

 ので、突貫工事な練習はしてきたけど非常に旗色悪い事実は認めざるを得ない。外見のクオリティはどのポケモンにも負けてない(ジック:心の中での第三者評価)けど『演技して』は、様々な感性が生まれてきたけど足りない物も多い、ヴィヴィが最も難しい分野だと思っているのだ。

 

(ムウマージ、サーナイト、ドレディア、具体性を欠いた〝萌え〟ってジャンルだけど、それっぽいポケモン揃いだ。でも優勝候補なのは…………)

 

「ゼッケン11番のシャクナゲ選手ですッッ!」

 

 かわいさ、かしこさ、うつくしさ、三部門のマスターランクを制覇したそのポケモン、夥しい数のスポットライトに竜巻の様な大喝采、その全てが自分に向けられる実感に恍惚を覚え、虹色に煌めく鱗を逃げも隠しもせず、蛟にも似た体形から――――

 

 

『オオオオオッアアアアアアアアアッッーーー!!』

 

 

『シャクナゲ様美しいィィーー…………!!』

 

 

 ピンク色の光に包まれ、人化を完了させた少女、いつくしみポケモンのミロカロス。

 

 みすぼらしく、汚らしい、研究者からも対象外と貶されていた過去を持つ進化前のヒンバスから驚異の変貌。

 

 ミロカロス=世界一美しいは全世界共通の形容詞。あまりにも美しい為オコリザルですら怒りを忘れてしまうなど、荒み穢れた心を一瞬にして浄化する力を備えている。

 

 

(ウフフ、萌えなるジャンルは初開催の初出場ですが、私に掛かれば何てことはありません。軽くエントリーポケモンを見回しましたけど、私に適う者は居ませんわね。四連覇は楽に達成したも同然、私の存在に畏怖し、腰を砕き、盛大に嬌声を戦慄かせてくださいな……ウフフフッ…………)

 

 

 扇状に展開した尻尾でも観客であり、見覚えのありすぎるファン達へアピール。

 

 多くの芸術家にインスピレーションを与え、モデル経験や賞状を授与された回数など数えていたら日が暮れてしまう。

 

 シャクナゲというニックネームを付けられた彼女は、コンテスト専門に育てられ超過保護な環境で生活している影響なのか、美しい容姿の子にありがちなのか、八方美人で毒がある本性を隠し持っているらしい……

 

 長い睫毛と長いヒレをかきあげる仕草、虹色に煌めく模様の入ったスカートからは、交差させている脚が良く見える。

 

 腰とお尻を持ち上げ、軽く揺らす洗練なウォーキング。彼女の特性はメロメロボディだが、まだ技や特性を使ったアピールタイムではない、美しい者は普通に歩くだけでも♂も♀も見境無く、血液の循環を早めさせてしまうのだっ!

 

 ドレスアップアイテムは、キラキラパウダー、きれいなしずく、美しさコンテストを制覇した証のティアラ。

 

 まるで色違いと見紛う光彩を放ちながら、完成されたビジュアルをさらに、特級階級へと昇華させる成りは美術館に展示されている大理石像。彼女の素体美と衣装美を活かした必勝装備である。

 

 第一審査で50匹中、5匹まで大幅に次ステージへの枠数は絞られる。

 

 彼女にとって第一審査など、己を称えさせるセレモニーに過ぎない、一位通過などエスパータイプでなくても分かりきった未来予測。

 

 最後の審査のみ、手渡されたパンフレットでも伏せられていたのが気にはなるけど、数多のコンテストに出場したノウハウがある自分ならば、全ての審査で一位通過は揺るがない。コンディションだって3つのパラメーターはMAXなのだから――

 

 

「それでは最後のポケモン、ゼッケン50番のヴィヴィ選手ですッッ!!」

 

 

 暗幕から姿を現した蒼鉄の重戦車。

 

 メカメカしく頑強な容姿は、一般的な見解ではうつくしさよりも、かっこよさやたくましさに比率がある。

 

 ましてや現在進行中のジャンルは〝萌え〟

 

 メカ萌えな方々も少なくはないけど、他の面子が華やか過ぎてメタグロスとはミスマッチ感が――

 

 

「…………ニャー」

 

 

 ――――あるとされ、審査員含めた会場は人化して模範意識を覆せるのか? それともトレーナーが参加させるポケモンをミスしたのか? 

 

 ステージ中央に四本脚をガジャンッ、ガジャン、ガシィインッ...軽やかな足取りであった前49匹とは対照的な、敵意を秘めているかの様な低音地ならし。

 

 レアなポケモンだけど、希少さだけで優勝をもぎ取れるイベントではない。

 

 ましてやバトルでの強さなど、何ら影響審査に影響を及ぼさないコンテスト。

 

 優勝候補のシャクナゲは、三部門制覇し他地方でも名の売れている申し子だが、バトルした事は一度も無いのだから! 覚えている技も全部コンテスト用である!

 

 

「ニャー、ヴィヴィだ、ニャー」

 

 

 ……………………………………………………

 

 

「………………………………」

 

『………………………………』

 

(………………………………)

 

《………………………………》

 

 

蒼白い光りに包まれ、ゴッツイポケモンが人化を果たせば、トレーナーへ根付いている外観印象を、やぶれたせかいに引きずり込まれたかの如く反転。

 

 あまりに華奢で、男女ともにいくら歳を取っても憧れの消えない瀟洒なブレザー制服を着こなし、二つの脚がグラデーションカラーに彩られたツインテールへ変わり身し、仕上げと言わんばかりに萌えのプリミティブである『猫耳』を、髪飾り代わりにしているロリ体型なのにおっぱいだけは育成完了済みな、多岐に渡るギャップにのたうち回る!

 

「ほ、ほォォ……いいですねぇ、ギャップ萌えというヤツですねぇ! ロリ巨乳のメタグロスとは! ふぅむ、容姿は文句なしですが、コンディションが物足りません……惜しいですが五点」

 

 

 ここで審査員の皆様を紹介しましょう。

 

 

 まずは統括委員の代表さん。この様に熱気に左右されることはない、観察眼で少女の細部まで一瞬で判定を下す紳士的な変態集団のドン。

 

「メタグロス自体が簡単に見かけられるポケモンではない! けどっ! 僕が知っている標準常識圏内では人化しても大柄で威圧的な姿であるのに! ♀ってだけでも歴史的遺産級っっ!? あれだけの鉱石なのにコンテスト未経験だとォッ!?」

 

 クチバシティのポケモンだいすきクラブから、特別ゲストとして招かれたピカチュウが好きだからハンドルネームも「ピカスキー」の横にふくよかな男性。

 

「あぁ~~、私も学生時代あれくらい可愛かったらモテたんだろうなぁ~~! 凄く強いポケモンなのに守ってあげたくなっちゃう! 私の心の庇護欲がそそられちゃうッ……嗚呼! ダメぇ! 心の中のコモルーがテクノバスターしちゃぅ↑ぅ↓~!?

 

 同じくだいすきクラブの会員、パウワウが好きだから「パウスキー」さん。手直しすれば美形なのだが、ポケモンを優先させすぎて自分はボロボロと残念な女性。

 

 

「キェ゙アァ゙ァァ゙アッ゙!! ヴィヴィちゃんフォォォォwww こっち見てニャー! 下着売り場でお姉さんは何時でもウェルカムしてるニャー! フゥほほほぉwww ロリ巨乳萌え萌えキュ~~ンwww 私が好きだからって猫化しちゃったんニャwww どーぞくどーし仲良くイチャペロしようニャアアアッwww」

 

 

 

ミナモシティを代表……いやホウエン地方を代表するヤベー奴。

 

 

 開幕からこのバカアホなテンションの高さ、猫ポケだからネリと似たような語尾、スレンダーな身体付きにミナモデパートの制服……仕事は抜け出してきた。

 

 バネ尻尾をシコシコさせながら、真下まで移動してスカートの中を捉えようとし、係員に押さえつけられているのが、お察しの通り……皆大好きな人化ニャルマーのセリーヌ。

 

 ……他の三名はともかく、何故コイツが審査員に選ばれたのか、スターミーの分類よりもずっと謎だ……




本来の姿→人化は絶対に取り組みたかったシーンです。

ロリ巨乳ですかぁ~とか、真面目に観察しちゃってる審査員とか嫌すぎる...しかし、それがこのせかいなのです!

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