ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

41 / 73
コンテスト編のテンションの高さは、今までで一番です!!!!1111111!!!


Segment・hexa――何も考えず済む方法

(私とは僅差!? そ、そういう手段もあったのですね……トップ通過しましたけど、面白くありませんわ……)

 

「ニャー(棒)ニャー(棒)」

 

 腰回りに装着したけど、端から見ればミニスカートから生えている様にしか見えない、猫尻尾もサイコパワーでフリフリさせながら、台本を読み上げるジックの指示を受け取って、ニャーニャーとリピート機能を作動させているヴィヴィ。   

 

 尻尾の先にはメコンが急遽手作りしてくれた蒼いバンダナを巻いて貰ったけど、コンディションが良く見られる効果は残念ながらない。

 

 コンテストの専門家として、タマゴから厳選され、けづやと滑らかさの関係を綿密に計算した手作りポロックを、長い時間を掛けて与えられてきたシャクナゲが審査された後だ、付け焼き刃な手入れとチーズドッグでは、コンディション不足と判定されたってグウの音も出ない。

 

バトルと全然違う育成方法が必須なのに……今までそんな事してないんだから!  

 

 

 が…………

 

 

『FOOOO~~!! ヴィヴィちゃんカワイーー!! アイラビュー!!』

 

『ゴツイポケが出場って、どないねん思たケド……やるやん! シャクナゲちゃんのファンやけんど、トキめいてしもたやん!』

 

『ロリ巨乳なんて邪道、そう思ってい時期が俺にもありました……! 今後はロリ巨乳に乗り換えるぞーー! ウェエェェェイ! ヴィヴィちゃ~~ん!!』

 

 受けている、観客層の殆どにヴィヴィのコスプ……じゃなくて、ドレスアップを含めたビジュアル面は大ウケしているぞッ!

 

 ポケモンだけに評価は最高で六段階。

 

 コンテスト常連のシャクナゲは、萌えなるジャンルでも生まれながらにプロフェッショナルを命じられ、箱入り娘教育の実力を振る舞いトップ通過。これは観客も審査員も半ば見えていたが……

 

(台本の最初のページ、テーマは〝ギャップ〟! 本来の姿がイカツイ系だからな、俺もだけど人化するとチマっこい少女である、表と裏の違いみたいなミスマッチな〝ズレ〟が生み出す、振れ幅の広さに愛おしさを感じる……ッ!)

 

「わーい、高評価、だ、ニャー(棒)」

 

 猫耳バンド、猫尻尾、猫グローブ、蒼いバンダナでドレスアップを果たしたヴィヴィは、なんとコンディションが最も劣っているのに二番手通過してしまった。

 

 ブラウスやベストを、ちょっとだけ大きいサイズに変更、生地の余りをブラ下に差し込んで……

 

 

 なんという ことでしょう!

 

 

 ロリボディis大人おっぱい、お洋服が張り付いて乳袋が作られてしまっているではありませんかッ!?

 

 

(ヴィ、ヴィヴィさん凄い……エッチ、な気がしますぅ……///)

 

「…………ガッZzz……ミッ、ノッ……グァッ……zzZ」

 

 胸元の白いリボンだって、パンパンに敷き詰められた乳袋にジャンプアップされている。145㎝の低身長と並外れたおっぱい、これもギャップ萌えの領域であり、アンチシナジーをまかり通してしまったヴィヴィは極めてスケベなパーツで構成されているのだと、お部屋でお喋りしたキャミソール姿を思い出しながら、赤面するメコン。

 

 そのHさんのおっぱいキャニオンに潜り込んで、コンテストなんて興味ないと爆音の中心部なのに爆睡しているのがかたくりこ。

 

(メタグロスって時点で眼中にありませんでしたが……この中で最も警戒が必要なポケモンですわねっ! フッ、フンッ、二番手ならくれてやりますともっ! 全ての審査で一位をもぎ取り総合優勝するのも私、シャクナゲなのですからーっ! バトル専門家がコンテスト専門家に勝てるとでもーっ!?)

 

 思わぬ伏兵に動揺したが、内面で収まっているのでセーフ。

 

 

 ――生意気だ生意気だっ、その乳と同じくらいに生意気だ! 成人済みの私と同じくらい大きいなんてパットを重ねた偽乳に違いない! 不正だ不正だっ!――

 

 

「…………ニャー?」

 

 さっきから言葉を覚えたばかりのベイビィポケモンの如く、ニャーしか言ってないヴィヴィはシャクナゲからの『地獄見せてやんよ』的な、中指を心の中でおっ立てている視線で射されているが、全くの無反応。

 

 

 それもその筈、今のヴィヴィは――

 

 

『次は第二審査です! 各選手は四回まで技によるアピールを行ってください!』

 

 バトルでは役に立ちそうもない技だって、コンテストが舞台であれば効果的と見なされ、能力やレベルが低いポケモンにも思う存分活躍の機会が与えられる、それがポケモンコンテスト!

 

 ヴィヴィはバトル向けの技ばかり覚えているので、コンテストでは恵まれた地力によるアドバンテージも獲得出来ないので、眼に見える形で不利…………

 

 

 …………でもなかった。台本には――――と記入されているのだから!

 

 

「アクアテールです♪」

 

本心を悟られぬ様に、わざとらしく扇で口元を隠してから、一番手として放つ技は〝バトル視点では〟ミロカロスに適さない物理水技。

 

 

 尾で素早く、三日月状の軌道を描けば、制止した尾から間を置いて水滴がしたたり落ちる。

 

 

 おとぎ話のロケーション、水のカーテンを捲り現れた世界一美しい美女――――

 

(ウフフフフ! 23点ですか! 最初の技で場の流れを引き寄せるのは大変重要なのです! ホラッ、ご覧なさい! 私のアクアテールが美しすぎるあまり、他のポケモンはアピールに失敗、私の評価に追いつくことは出来ません!)

 

 バトルでは無関係な演出こそ、何よりも重要となる。

 

 あのアクアテールを食らったところで、精々水を引っかけられた程度の威力。彼女はレベル1なので、もしバトルをする状況になっていたら、間違いなく脱落していた。

 

 プロのコンテストポケモンと同じ土俵で演技が出来る――――

 

 他のポケモンにとっては、芸能人に等しき女性なので身に余る光栄、本当は観客と一緒にサインでも強請りたいが……

 

 それは特性とは非なるシャクナゲのプレッシャー。

 

 他のポケモンは思うようにアピール出来ず、またはトレーナー自身が緊張してしまい、イヤホン越しから〝焦り〟が伝わってしまった。

 

 場数をこなして磨かれるメンタル面、アクアテールに妨害効果は無いけど、他の者達が勝手にミスってしまうのだから――――

 

(ヴィヴィ、なきごえ~~!)

 

「…………ニャー、ニャァァー」

 

(!?!? あの子だけは平常心をッ!? 保っているのですかッッ!??)

 

 念の為、そう警戒するに至った猫耳メタグロスの少女だけは、動じず、たじろがず、本来は覚える訳の無いバトルでは弱小、コンテストではタマゴから孵ったばかりでも即戦力となってしまう、多くのポケモンの基礎技、なきごえ!

 

 

『オオオゥゥゥッ!? アアアアアアア~~~!!』

 

 

(なんですのっ! この野太い声援はっ!! その子では無く私に全振りしなさいよッ!!??)

 

「ニャ~ア、ニャ~~ア(棒)」

 

 

 ……台本には『媚 び ろ』と、赤線でラインが引かれていた。

 

 

 昨日渡された号外を、もう一度ネリが確認したのだがコンテスト通知にあって然るべきルールの『所持している技以外は使えない』が、記されていなかったのだ。

 

 当たり前すぎて誰も読まないであろう物なのに、よくぞ見つけたと統括委員長は「ほほう……」と、四つん這いで猫なで声を上げているヴィヴィへ、感心の声がマイクを通じて漏れ出す。

 

「おおっ、やってくれるポケモンが居ましたねぇ~~! 今回それはアリですからねぇ~~!」

 

「そうなんですよね! 一に萌え、二に萌え、三に萌え! その心があればどんな技を使ってもイイのです! 実行出来るかは別の問題ですけど!」

 

「あんな猫ちゃん私も拾いたいっ! 飼いたい! 寧ろヴィヴィ選手を私に譲って頂けませんか!? トレーナーさんっ!?」

 

「ニャハァァァ~~ン❤ ヴィヴィちゃん萌え萌えラブリ~~ル❤ お姉さんとイイコトしようニャあハァ~ン❤❤」

 

 

 ピロンピロンピロンッ!

 

 

 各審査員四名が持ち寄ったポイントは6点、最大評価を得れば24点となる。

 

 ステージ横に配置されている長方形パネルは〝23〟まで到達している。

 

 初参戦であるのに、シャクナゲに勝るとも劣らないアピール! 棒読み過ぎるので本当は20点なのだが、レギュレーションを解読した加算点として3点、合計で23という結果だ!

 

(…………キッ、キィィィィ~~!! どっ、どっ? どっ! わた、私と同じ点数ですってェ!? ダッ……ダメよシャクナゲ、落ち着いて……水タイプは落ち着いて清らかな生き物なの……そして私は世界一美しいポケモン、ミロカロスなのよ…………スー、ハー、これはマスターの責任でもありますね……事故の様な物ですわ……)

 

 デボンイヤホンから、シャクナゲのマスターが謝罪する。

 

 どうやらジックメンバーを除いた出場者の全員が『覚え無い技を使って良い』ルールに気がつかなかったらしい。普通はどうせいつも通りだろうと、素通しさせてしまう欄なので、ネリが目ざといだけなのかもしれない。

 

 

(張り合うつもりですかっ、ならば妨害して差し上げましょう!)

 

 

 二手目に繰り出した技こそ、本当の妨害目的として覚えた技、あられ。

 

 水タイプの大半がれいとうビームを覚える様に、付随する様にして何故だかあられを覚える。

 

 ミロカロスに氷タイプは複合されておらず、かと言ってシャクナゲはふぶきを覚えている訳でもない。

 

 

『シャクナゲさんがあの技を使うとはッ!?』

 

 

 これもコンテストならではの用途、アピールとしては控えめな威力になるが、他のポケモンをびっくりさせてしまい集中力を削ぐ効果がある!

 

(ウフフッ……私にあられを使わせるとは褒めましょう……一年か二年ぶりに使わせて頂きましたわ。あのメタグロスもその他大勢と一緒に――――)

 

 ステージ内に留まる小さな雪雲を生成、氷の粒を降らせるシャクナゲの姿……彼女が本気で〝敵〟と認定した相手が出場していなければ、隠し持ったままで終わる妨害技。

 

 軽く片脚を持ち上げながら、滑り止め加工されたブーツで降り立った天狼星へ舞う姫君。

 

 体幹にも優れている彼女は、他のポケモンがスッ転んでもワイヤーアクションの如く、笑顔をキープしたまま滑り抜く。

 

 20点、妨害メインの技でこれだけの点数を稼げるのは、彼女くらいの物である。

 

(ヴィヴィ、もう一回なきごえ!)

 

「…………ニャ、ニャ~~ア?」

 

(! ハッ……フフッ……! 鉄仮面は剥がれておりませんが、内面はガタガタになったようですね!)

 

 大体同じセリフがシャクナゲにも当て嵌まらなくもないのだが……

 

 評価が高いからと、コンテストは同じ技を連続して繰り出したら逆に、審査員や観客は興ざめしてしまってマイナスポイントを与えられるのだ。

 

 初手と同じなきごえを二手目でも、技を使えるだけ他のポケモンよかマシだが、大方焦りから指示をミスってしまったか、指示を待てずに驚いた拍子に繰り出してしまったのか。

 

 しかし、一見すれば初歩的なミスに捉えられるこの流れ、まさか台本通りの作戦だとはシャクナゲや、観衆は思わなかっただろう。

 

 

「…………ニャー、間違えちゃった、ニャー」

 

 

『……………………ハッ、ハオオオオオゥゥッ!? ドジっ娘ヴィヴィちゃん萌えぇぇッ!!』

 

 

(なっア゙!? なんですってーー!?)

 

 

 そんな解釈のさせ方があったのかっ!

 

 

 反射的にシャクナゲは、スカート上から太ももをグーパンしてしまった!

 

「ほぅ、てっきりミスかと思いきや上手く利用して来ましたねぇ! 何よりもシャクナゲ選手の妨害にも我慢した精神力を、私は評価したいですねぇ……6点!」

 

「クールな表情は不変のまま、ドジっ娘アピールで攻めて来た!? くぅぅぅ~~、これもまたギャップ萌え!! そうですよねぇ、パウスキーさん!?」

 

「えぇ! あっ、やっちゃったわねあの子……とハラハラしましたが! 万一ミスだとしても即応性の高さは素晴らしいと思います! 私も6点をあげちゃいます!」

 

「ニャーーーフッフフフッwwwwww もぉン、ヴィヴィちゃんたら〝あざとい〟ニャアァ~~ン❤ ヴィヴィちゃんじゃなくて『ヴィヴィにゃん』と呼ばせて貰うニャはぁぁ~~ん❤」

 

 

 ――ヴィヴィーにゃん! ヴィヴィーにゃん!――

 

 

 かいじょうは とても もりあがっている! エキサイトどが あがった

 

 

(マニュハハハハッ! あのヴィヴィが! ニャーニャー鳴いて媚びまくってるニャしぃぃ!! マァーーニャッニャッ!!)

 

 あのシーンを手がけたのは、やっぱりネリだった。観客席で爪だけでなく脚裏まで叩いて合わせて、普段は絶対しない蒼鋼少女の下手っぴな棒読み演技に大爆笑!

 

(徹夜テンションで色々書いちゃったけど……ヴィヴィちゃんゴメ~ン! それくらいしないと優勝は狙えないと思ったんだ~! 出場ノウハウが無いのなら媚び媚びの、あざと萌えで強行突破しかないって!)

 

 観戦してるコッチまで恥ずかしい……ヴィヴィは優勝を目指すと(ていうかチーズドッグの為に)奮起していた物の、強豪が揃うであろうコンテストだ。マトモにやり合わず審査員や観客の視線と心と色欲を、かっさらう方法が……アレだ!

 

 同性の爽羽佳が鑑定しても、ヴィヴィは素晴らしいロリ巨乳美少女でビジュアルだけならば、猫耳アクセがなくても100点出せる。

 

 

 が、不安の種は〝演技〟

 

 

(ヴィヴィはそんなのした事ないからなっ! 一応練習したんだけど棒読みで、表情の硬さ種族値130のままだったからな……台本見て俺も指示するべきか悩んだけど……くぁぁぁ! 後で絶対怒られる~~けど……)

 

 

「ニャー、ヴィヴィは、分からない、ニャー(棒)」

 

 

 ――――ああいうヴィヴィも……可愛いよ……ヴィヴィでコンテストに出て良かった――――

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

(……………………マスター、爽羽佳さん、ネリさん……後で覚えておいてくださいね……こんな辱めを大観衆の最前線で……っ)

 

 沸き立ってくれるのは、大いに結構だが優勝しなければ割に合わない!

 

 鋼の彫刻の二つ名を与えても違和感の無いヴィヴィ、現在は本当に彫刻と化している。

 

 表情・感情・理性・口調。この4つへ強力なレブリミッターである南京錠と鎖で雁字搦め、出逢った当初よりもずっと人間的な要素に乏しく、機械的な少女として、オートクルーズ機能のまま活動しているだけだ。

 

(…………非ィ科学的です、非ィ論理的です、抑制しなければとても実行出来ません……っ、恥ずかしい……この感情すら今は内面を彷徨うのみ……です……)




ヴィヴィ~にゃん♪ はぁ...可愛いぜ。ファンになっちゃいそう...


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。