ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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彼女はHではない


Iになったのだ


でもメコンはエッチだよ


Segment・hexa――スーパーメコンメコンタイム

「…………シェルン? もう一度指示をお願いっ、私の聞き間違いかしら……?」

 

 当初の標的は総合能力が非常に高いヴィヴィから、動きを止めてスペランザお得意の炎技でドカンッと先に倒してしまう予定であったが、用意周到な事にいやしのすずを覚えさせている様なランターン、残しておいたら不味い気がするメコンへと標的を変更。

 

 すぐに倒すことは出来ないが、ダメージを蓄積させたい。

 

 効果の薄い炎技は使えないけど、水タイプへの最大打点となるワイルドボルトなら、それなりにダメージを稼げるのでは無いか?

 

「へぇ? メコンちゃんは水と電気タイプだから、等倍になっちゃうけど他の技を使うよりかは、効果的なハズだよー? ワイルドボルトは??」

 

 主に本来の姿で四足歩行となるポケモンが、かみなりパンチなどの代わりに覚えられるサブウェポン。それが電撃を纏って突進するワイルドボルトだ。

 

「…………本当に、ワイルドボルトしてもいいのね? メコンさんに……?」

 

「なぁに言ってるのよスペランザぁ~! タイプ相性くらいは頭に入ってるもん、等倍等倍~♪」

 

「……………………分かったわ、やればいいのでしょうっ……!」

 

 二回も聞き直したけど、マスターであるシェルンは妥当の判断であると、信じて止まない様だ。

 

 何時もだったらもう一度、黒髪へ退色させても技を使用した面影として、毛先のみファイアカラーとなったウェーブヘアをバラ付かせる速度で振り向き、彼女へ直接口頭で教えていた。ちょっと待ちなさいと。

 

 でも今回はどんな指示にも従って戦うと決めている……それが間違えであっても!

 

「瞬きせずに見届けなさいッ、これが貴女の選択肢よッ!! ああああああらぁあああ!」

 

 ジーンズ越しからワンストローク、太もも同士を素早く擦って、一瞬だけでも静電気を発生させれば全身は帯電する。

 

 炎技じゃないから髪色は変化しない、ヤケクソ気味のかけ声にもシェルンは違和感を抱かず、スペランザが対象として定めたメコンへと突き当たり――――

 

 

 

「――――はれっ……? スペランザが反動ダメージ受けてない? それどころかメコンちゃん……自分から当たりに行った……??」

 

 グリーシャはアタフタしながらも、手甲を振り回し迫ってくるヴィヴィを引きつけてくれている。

 

 ……最中でもグリーシャは「あっ……」と、もの凄くシェルンに何かを伝えたそうな表情をしていたが、これも当のおやは見逃してしまっていた……

 

「ごめんなさいね、シェルンさん。私の特性は〝ちくでん〟なんです……♪」

 

「!!? うへェェ~~! そォ、そぉだったぁぁあああああ~~~~!!」

 

(あぁ馬鹿、気がつくの遅すぎ…………恥ずかしい…………私が二度も確認したんだから変だと思いなさいよ……あの子ったら……)

 

 続々と増え始めている観客も、トホホな顔で生暖かい視線を主にスペランザへと送らせていた。

 

 炎技を使ってないのに髪が発火するのは、彼女が羞恥心を憶えた時だ……

 

 全くもって、頭が鈍く疑うことを知らないマスターを持ってしまった……それが長所でもあるのだが。

 

 ダメージを刻んでくれたグリーシャの苦労は水の泡、真っ先にアイコンタクトで謝罪した。

 

 

 解説すら必要なさそうだが念の為......

 

 

 ランターン種には3つの特性が発見されているのだが、最メジャーであり粘り強さに拍車を掛けているのが〝ちくでん〟

 

 本来のタイプ上では確かに、水&電気のランターンへワイルドボルトは等倍で通ってくれる。

 

「電気技を受けたら回復するのです♪ この特性のお陰でお相手できる幅が広がっているのですよ♪」

 

 活動エネルギーを外部からインジェクションされ、HPが完全回復した影響で上機嫌となっているメイドさんが、発光器官を備える三つ編みを速い周期で往復運動。

 

 三つ編み振り子以外にも、尾をパタパタさせたり天の川スカートも風景がより高画質になっている。

 

(特性を忘れてしまうミスは、初心者にはありがち。ドガースに地面技使ったりとかね……苦手タイプへの有効打点を確保しているまでは良かったけど、スペランザの言動やグリーシャの表情を、もっと観察するべきだったね)

 

 おっぱいに電気を溜め込んだこの気持ちっ、むじんはつでんしょに住所を構える電気ポケモンと一緒だろう! 

 

 気のせいで無ければミチッ…………乳袋が一回り膨らんでいるのだからッ!?

 

 今のメコンはHカップではない、愛と電気がいっぱい詰まった『Iカップ』へバストアップを果たしている~~!

 

「相手の特性を考えて指示を出しなさいって言ったでしょーーッッ!!」

 

「ヒィえぇぇえ!? ごめんねスペランザーグリーシャー! 振り出しどころかジックさんを有利にさせちゃったよぉ…………」

 

 イケると思わせてくれたら……コレだ。

 

 躊躇しなくていいと、無警戒は雲泥の差……仮に一対一のバトルだと仮定しよう。

 

 ヴィヴィが場に居ます、後続にメコンが居るのは判明してます、それでもシェルンは炎技で特攻させていただろう。

 

 交代を警戒しおにびを撃つだの、メコンへのチェンジを読みこちらもグリーシャへチェンジするなど、基礎が書かれた教科書からは抜け出せていないのだ。

 

 ましてやダブルとなれば、考える事が単純計算で倍。

 

(うぅぅ……ランターンがちくでんなのは憶えていたはずなのにぃ……忘れちゃってたよぉ…………シクシク……)

 

普段ならスペランザの方が賢いので「相手はちくでんよ」と、ホームページから回覧できる過去のバトル記録に〝ちくでんが発揮され~〟の、文章は一緒に見たと直球で答えを教えてくれた。

 

 譲りに譲ってヒントは与えたのに、何も感じ取っていなかったシェルンの責任だ。

 

「グリーシャだって貴女にヒントを与えていたの、相手だけじゃなく自分のポケモンをよく見なさいっ……状況は刻一刻と変化しているのよ」

 

 たった今来たばかりの観客の中には「知ってるなら教えてあげればいいのに」だとか「勉強不足だ」とか、野次を飛ばしてくる者も居る。一理も二理もあるのは承知しているが……

 

 ポケモンがトレーナーを助ける行為は、必要不可欠だけど、何でもかんでも助けてあげていたら、シェルンは育たない。

 

 グリーシャともう一度アイコンタクトを交わし、趣旨は不動のままでいいと改めて決定付ける。彼女の力で『私達を勝たせて欲しい』のだ……!

 

 

「御礼代わりです♪ すぅ――ぅぅ~~…………ふぅぅぅぅーーっっ♪ ふふふふふぅぅーー♪」

 

 

 ガチバトルだったら『お前はもう、死んでいる』

 

 

 シェルン達のやり取りが一段落した瞬間を見計らい、ヴィヴィはジックの元へ待機させたまま、メコンへは二匹同時攻撃の指示を下した。

 

 大量の虹色の泡を発射する、バブルこうせん。

 

 威力は不足しているが、広範囲に泡が広がるので逃げ道を塞ぐ、なぁんて応用も利かせられる。

 

 水ポケモン全般は肺活量が強い! 

 

 両手を合わせ〝輪〟を作り、口元へ構える。

 

シャボン玉のリングを想像して頂けたら、わかりやすいであろう。両手には水溶液で薄幕を張っているので、吹き付ければシャボン玉と同じ原理で球が出来上がる。

 

「メコン、それくらいにして」

 

 エネルギーを充填され、まだまだ酸素は無くならないけど、これは戦闘指南。

 

 広範囲攻撃をシェルンはどうやって回避、またはやり過ごしてくるのか? ジックは鑑定する必要があるので、バブルこうせんは中断して貰った。

 

 

 おぉ…………!

 

 

 男女問わず、ギャラリー達は意識を失いかねない、驚嘆と感嘆の声でもの凄く良い――オーシャンアロマやジェラートの香り――の漂う、泡光線の発生源であるメイドさんを、愛で追い続けてしまう。

 

 この戦いのみ、HからIへ増量したミサイルおっぱいは、セルフこのゆびとまれ状態!

 

 動いたら即ポロしそう、胸をギリギリで隠し込めているメイド服は、横へ伸びきっているのでシワが集中し、胸へどれだけ布地が奪われているのか一目瞭然! スカートの丈が数㎝短くなっているのも胸が持ち上げているからだ!

 

 メコンの衣装は『ウエストに合わせたサイズ』でオーダーしているので、ある程度ぱっつんぱっつんなのは恥ずかしいと思いながらも、本人的にはお腹を隠したい欲求の方が強いので、不本意ながらIの字谷間はザックリ晒されている訳である。

 

「キャン! あうッ、水技なのに痛いですぅ~~! あたぁ、額へゴッツンコします~!」

 

 

「シェルンンンッッ!! 私は ど う す りゃ い い の ぉ ぉ ッ!!」

 

 

「ハィィッ!? グリーシャはごめんだけどそのままっー! スペランザはまもるーっ!」

 

 

 逃げるだけの時間は無いと即断した。

 

 大変申し訳ないが、グリーシャへは耐えて貰う事に。

 

 花を生長させる栄養素を作り出す水、肥料の一つとなり光合成を行う為にも重要な成分。

 

 それが痛い! 気持ちのエネルギーが過剰気味のメコンは、技の威力が上昇している。

 

 HPが削られても笑顔のままでいられる水技なのに、今のグリーシャは泡群を避けられない、当たれば痛い。

 

(……ッ、やり過ごせたけど、まもるを使ってしまった……)

 

 こっちの方が深刻、炎タイプかつ耐久値を素早さと攻撃に回しているスペランザは、等倍でも結構危なげなのに弱点などマトモに受けてしまえば……

 

 

 ――実は彼女の瞬発力を発揮させれば、全ての泡を振り切れていた。

 

 

 そうしたいのは山々、しかしシェルンの指示へは不服を持ちながらも異論しないと決めているので……

 

 スペランザ専用演出の、唐紅色の防御シールドで無効化は成功。シェルンは安堵しているのだが……

 

(あの子はまもるに頼りすぎね、この一手だけなら問題はないけど……)

 

 

〝まもるを一度使えば、集中消費させた防衛エネルギーがリバイブするまで、成功率は著しく低下する〟

 

 

 まもるやみきりの技性質なのだが、そこんトコ彼女は見越して指示を与えただろうか?

 

 …………ないっ、半分パニクっていたので、まもるを指示出来ただけヨシ、そう思い込もう……スペランザは心の中で「50点」と赤ペンで採点した。

 

「わたしを忘れてませんか? アームハンマー」

 

「んにゃっ、ハッ、ああぅぅ!?ッ゙ッ゙!」

 

 言わんこっちゃない、スペランザに意識を向かわせすぎて、グリーシャの背後にヴィヴィが現れていた事を見過ごしていた!

 

 勿論、グリーシャ本人は水とは似て非なる、汗が背中へ〝ゾワリッ〟と吹き出たので、やろうと思えばガードする事は出来たのだが……

 

「グリーシャぁ!? ごめんっ!」

 

「…………だ、だいじょぶ、です~~! ホラッ、シェルンちゃん、今ですよ」

 

 メコンの胸と同じく、一回り巨大化させた右手甲を宙返りさせながら、力任せに振り落とす。

 

 つむじにブチ当たった、首がバネみたいに跳ねそうなくらいの衝撃。

 

 前へと倒れたけれど、すぐに持ち直し受け身も取っていた、何よりもアームハンマーの急所に耐えるとは。

 

 

「地面タイプのしぜんのめぐみー!」

 

 

「!?」

 

 

 シェルン想いの彼女は、本当なら倒れ込んだまま動けないダメージを負ったけれど、精神力を繋ぎ止めたまま所持していたアイテム、シュカのみをヴィヴィの懐へ投げ込んだ。

 

 使い勝手は宜しくないが、奇襲性能は全ての技でも上位ランク、それがしぜんのめぐみ。

 

 木の実の力を攻撃へと解放し、木の実の種類で威力やタイプまで変動する面白い技だ。

 

「ん……ッ……これはわたしも想定の範囲外、ですっ……」

 

 木の実を持っていなければ使えないので、基本的に一戦で一度のみ限定。

 

 外しても木の実は失ってしまうので、確実に相手へ命中させるのは――

 

「いい切り返しだよシェルン、今の即応力は非常に目を見張る物があった! ヴィヴィだって防御が間に合わなかったもん」

 

「…………鋼に効果的な地面……なるほど、メモリに刻ませて頂きます……」

 

(…………の割には、あんまり痛くなさそうだけど……ヴィヴィちゃんは防御力高いし、グリーシャも弱点付けたのはいいけど、攻撃よりも特殊のが得意だしで、一発で倒せる強さはないんだよねー…………)

 

 硬くて香ばしい風味が微かに感じられる、ローストした狐色の光球を腹部で受けてしまったヴィヴィ。

 

 その技、その木の実をキレイハナが……思いがけぬ一撃で、地面へツインテールを引っ張られそうになったけど、衝撃はすぐに収まった。

 

 あくまでも奇襲、詰めの一手、しぜんのめぐみを当てれば倒せる状況下であれば、とても有効だった。

 

 ノーダメのヴィヴィへクリーンヒットさせても、そりゃあいちげき ひっさつ なんてレベル1と100くらいの差が無ければ実現出来ない。

 

(倒せなかったけど、ヴィヴィちゃんはアームハンマーの副作用で素早さが落ちてるよね? チャンス! 此処でしょう!)

 

「……………………」

 

 ジックが命を出したアームハンマーは、火力と発生速度こそタイプ一致並に優れているが、速度低下のデメリットが纏わり付く。

 

 シェルンは気がついてくれた、ジックが意図的に付け入れる隙を与えてくれたのを。   

 

「フレアドライブだよっ! アレも使っちゃってー!」

 

 助け入ろうとしたメコンは、グリーシャがマジカルリーフを連発させ何とか抑え込む。

 

 何度も標的が変更されているが、教科書通りに行く方が珍しい対人戦。柔軟なプラン変更は勝利に欠かせない。

 

「っ……しゃッ! やったるわよ!」

 

 難攻不落な物理防御力のメタグロスでも、大打撃を与える方法、あるっ!

 

 火矢が駆け抜け疾風大地は灼熱に染まる。 その瞬発性能はたった数歩でトップスピードへ到達する。

 

 炎の鎧を纏わせるので、ダメージを受けても仰け反らない抗体が付随され、氷付けになっても溶かすことの出来る大技、フレアドライブ。

 

 取るに足らないレベルの相手なら、高速で周囲を走り抜くだけでも、灼熱の余波でなぎ払われる威力。

 

「さらにッ!……コレを――らァッ!」

 

「角で宝石を砕いた!」

 

 使い捨てだがメインウェポンの突発性強化から、サブの威力不足の解消と、実に利便性のある各種ジュエル。

 

 渡されていたほのおのジュエルを、自らの額に生える一角で串刺せば、炎のウェーブヘアが力の奔流に耐え難き、燃焼により疑似太陽に近い存在と化す。

 

 

「燃えろぉッ! いい女ぁぁぁぁぁ!」

 

 

「ふぅ、ン、グッ゙ッ゙ッ゙――――バァァ――ッ」

 

 ジュエルドライブでの突撃形態時、咄嗟に口走るセリフはコガネシティで何年か前に流行った、主題歌のキャッチコピー。

 

 一撃で倒せはしないだろう、自分も反動ダメージは軽視仕切れない物となるが、戦況は有利に――――

 

 

「ヴィヴィの脚は遅くなってる。けど、技への反応速度や発生速度までは鈍くなってないよ」

 

 

 ――ならなかった。

 

 

「フッ……フッ……ぅ、熱かったです……っ……耐えました、反撃を行います……」

 

 てっぺき……ッ!

 

 フレアドライブを躱す事の出来ないヴィヴィには、ジュエルを砕いた動作を捉えてから、てっぺきの指示を入れた。

 

 低下したのは移動速度だけ、他は頭の回転だって鈍くはなってない。瞬時に実行させれば間に合うので、命令通りにヴィヴィは身体の表面を硬化させ、猛進する太陽を受けきる構えを取っていた。

 

 

(半分しかHPが減っていないッ、上昇分がチャラになったどころか、一段階相手の防御力が上がってしまったっ!)

 

 服は焦げるも手甲には傷も、焼け跡も付かず、受け止められた肩を軽く押されただけで、スペランザは身体の安定を失いそうになった。

 

 反動ダメージの影響で、少しばかり疲労が脚腰にキたのだろう。転倒する程では無かったが――

 

「…………くさむすび」

 

「な゙ッ!?」

 

 激レアポケモン、メタグロスであるヴィヴィの戦闘力を生拝見し、大半のギャラリーは「フレアドライブでも平気なのか!」や「いや、てっぺきのタイミングが絶妙だった」など、ジックやヴィヴィを評価する声が広がってからまた、ギャラリーが「ええぇっ!?」と湧き立つ。

 

「ヴィヴィちゃんてそんな技覚えられたの!!?」

 

「俺も忘れそうだったんだけどね、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 地形を活用出来るのはシェルンだけじゃない。

 

 有効利用したいとメタグロスが覚える技一覧を、もう一度調べ直し……閃いた。

 

「技マシンは使い捨てじゃなくなったから、気軽に技を入れ替える事が出来る様になった。このバトルが終わったら、忘れて貰うかもだけど」

 

「…………(そこまで考えちゃうんだぁ……凄い、なぁ……)」

 

 シルフやデボンの科学技術力が発展し、一回分しか記憶されなかったわざマシンを大幅改良。

 

 対応コードを入力すれば、何回でも呼び起こせるハイテクノロジーの粋を結集させたのが、現在出回っているニュータイプのわざマシンだ。

 

 誰に使おうか迷わなくて済むようになった、手軽にカスタマイズ出来るようになった、エリア毎にわざチェンジが出来るようになった。

 

 全世界でマイナス評価が一つも付かないのだから、駆け出しから技一つで飯にありつけるかを左右させるプロにまで、絶大な支持を得て〝使い捨て〟の概念は過去となった。

 

「かっ、躱せないっ! ひゃうっ! あ……っ!」

 

 威力などたかが知れている、高速で動けるポケモンを拘束させるのが狙った用途。

 

 じしんと似ているモーション、掌を草地へと翳せば範囲内の対象へ、成長促進させた一対の長い草で足下を結び、転倒させるくさむすび。

 

 体重が重いほど――人化している少女達にはあまり使いたくない表現だが――威力が上がる。

 

 

 残念ながら(失礼ながら)ギャロップは重くない、さらに草を半減させる炎タイプだ。

 

 

 他の地形であれば絡ませることも適わず、意味の無い一手でしかなかった、他の地形であれば。

 

「このバトル専用……になるかもしれない技です、さぁ、メコンさんどうぞ……!」

 

「追撃がっ!?」

 

 草原フィールドの影響をモロに受け、軽いスペランザでも転ばせるだけの威力となったくさむすび。

 

 このフィールド専用技を覚えさせて来るだなんて、まぁ~~~~~~たく予想してなかったシェルンは感心と放心を繰り返すばかり。準備段階で大事なのはコンテストも、バトルも一緒だ!

 

「行きますよ~~! メコンビー…………じゃなかったですぅ! チャ、チャージビーーム!」

 

 ヴィヴィから離れようとしたスペランザを確保、しびれごなを振りまこうとするグリーシャにも、その攻撃を二連発!

 

 

 説明しよう! 美少女はビームが出せるのである! 原理は知らないぞ!

 

 

 天のお声が響いた気がする……その言葉が響いている瞬間のみ、時間の流れがゆっくりに……なっていた気もする。

 

 おでこの前でピースサイン、人差し指と中指の間から、命中しても全然痛く無さそう――サイズは針金にも等しい――如何にも最下級魔法な電流をビビッ、ビビビー!

 

「……痛くないですっ、けどぉ……はわわぁ……!」

 

「ヤバッ、逃げないとなのに解けない! シェルン! ボッとしてないで! 次が本命なのよっ!」

 

 チャージビームの威力は、主力として運ぶには心許ない。が…………

 

 

 そのプライスは追加効果にアリ!

 

 

「む、ふ、むふっ、むふふ、むふぅ~~! 来ちゃいましたよぉ、今の私は…………スーパーメコンですっ…………!」

 

 

 

 説明しよう! 美少女の第二形態……変身は欠かせない要素である!

 

 

天穹へ雷鳴轟かせ、耐水性だけでなく帯電性にも優れた素材のメイド服全体へも、滾らせ周囲へ渦巻かせた稲妻は、そのまま敵の攻撃を無力化させる結界にもなってしまう、確変状態のメコンが出来上がった!

 

 高電圧でハイテンションなメイドさんは、語調と表情、立ちポーズまでも納得な強キャラ臭!

 

 ドヤ顔ならぬ『ドヤ乳』

 

 おっぱいを二の腕で挟みながら、交差させる無自覚ドスケベなポージングを維持し、重力無視してせり上がる発光器官が眩いばかりの、青く色づいた拡散雷撃を放つ!

 

「Ladungsstoß!!」

 

「Protect……っ!」

 

「ひょぇぇぇっ~~っ! グリーシャ、スペランザまもるぅぅ!」

 

スペランザは まもるを つかった!

 

 グリーシャは まもるを つかった!

 

 しかし どちらも しっぱい してしまった…………

 

 

 

 




次回で第六章は終わりです! 色々な作品書いてますが一番アツイのは蒼鋼少女です!
忙しかったり他の作品書いたりで、思うように書けない事もありますが本編も成人向けも、頑張っていきたいですね。

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