バッジを集める展開にはしたくないので、拠点以外にも積極的に脚を運ぶ理由を考え、こうなりました。
今回受け持った依頼は二つ。
一つ目が『ポケモンを たいせつに!』を合い言葉にしているトクサネシティでのダブルバトル!
宇宙に一番近い場所、宇宙センターを結ぶエントランスゲート前には白い岩が奉られており、これは幻のポケモンが眠る繭! 願いを星空へ解き放てば目覚めるだろう!
……そんなデマが流れ――――神秘性があり地球外な形状だったので信憑性が濃かったのも、デマを流した犯人の思惑――――遠方から急激に観光客が訪れて、気に入ったからそのまま定住したグローバルに文化を活性化させ始めた南国島。
地味で小規模ながらゲームセンターも経営され、昔よりも町並みは都会チックとなってきている。将来的にはキンセツ、ミナモに次ぐ発展が見込まれている。
一線を退いたかつての手練れがポケモンと共に泣き・笑い・苦労を乗り越える可能性の塊である少年少女達への、育成指南を新たな生き甲斐として定めた者達が席を並べる様に定住すれば、後を追うかの如くまだ現役として若者達には負けない! と、意欲を燃え上がらせるシルバートレーナー。
引退したけど住民達を遠望している内に「残り少ない命の再起動」だと、再びトレーナーの世界に復帰する出戻りトレーナーまで……
高齢者に優しく住みやすいバリアフリー化は、ホウエンで最も意欲的に行われている。元より平坦な地形が多い島だったが、宇宙センターへ到達する階段は全てエスカレーターに改良され、車椅子や杖などの補助具が必要となるお年寄りの方でも、毎日の様に今か今かと大気圏外への航行を待つ、ロケットの整備や設計を観賞しに行けるのだ!
……そんな宇宙センターの北西には、この島で最もセレブリティーな館で一人――――と手持ちのポケモン達――――暮らしている主こそ、今回の依頼人にしてバトルのお相手だ!
「初めましてジックさん。お忙しい中私とのバトルを受け持って下さり、心から感謝しております。この日が楽しみでねぇ……ふふっ、何時もより一時間早く起きてしまったわ! 75歳になっても全然変わらないのよね、初めての大会の日からずっとこうなのよっ、おほほっ!」
「マスター……どうかあまり無茶をなさらぬよう……内面のバイタリティは変わらずとも、お身体は若い頃のままではありませんぞ……」
「それは百も承知よクライド、貴方だって心配性なのは依然として変わらないわよね」
依頼人の貴婦人が所有する館、敷地内の東側には洋風庭園、本人曰く散歩コースと西側には、ジックのログハウスの裏庭と似てフラットかつ、障害物やギミックなどが配置されてないスクウェア型のフィールドへと直接招かれた。
広い……外観はほぼ同一ながら面積は四方に100か、120メートルくらいはありそうだ。大型のポケモンや手持ち6匹をフル活動させても、あらゆる戦闘訓練に支障が無いであろう安全性を確保されている。
招き入れてくれたのは貴婦人の手持ちであり、幼い頃から執事として仕えて来た、こおろぎポケモンコロトック。
ニックネームは《クライド》このネームは前のマスター、貴婦人のマザーから贈られたらしい。
赤系統の燕尾服にカイゼル髭を口元に蓄えて、非常に紳士で落ち着いた雰囲気を持つ……のだが、心配性なのだろうと貴婦人とのやり取りで察せられる。
昔はバトルも嗜んでいたらしいのだが、今ではトレーナー養成学校で模擬演習するのが精一杯。なんと彼のお歳は今年で百歳!
ポケモンは人間と違い、必ずしも外見と実年齢が一致しないケースがある。
クライドは70歳までは人間と同じ様に老けていたが、以降の老化は非常に緩やかで百歳と知られると驚かれる。
成長の流れも人間とは別、急速に老いる事もあれば――――――
「バトルを前にしたオーヴェルに言っても無駄ですよクライド? 私はそれに付き合ってもう65年……貴方は75年、矯正なんてできっこありません。何時までも変わりなく過ごして嬉しいじゃありませんか……」
脚腰が衰えてしまい、車椅子生活を余儀なくされたマスター。
高齢でもトレーナー業に勤しんでいる者達へは、折りたたみ式のボールホルダーを内蔵した特注品の車椅子が提供されている。
サイズやカラーなども細かく発注でき、老後もポケモンと関われる安心感を……これもデボンが生活支援アイテムとして生み出した物だ。
貴婦人のパートナーポケモンであり、雪国を模した柄を刻んだ白い着物に、赤色の帯をアクセント。
ガラスビーズにも見える氷の塊をアクセサリ代わりに、寒色系が融合した白銅色のロングヘアのサイドに一つずつ付けた、20代前半の窈窕なる女性。
ゆきぐにポケモンユキメノコ、ニックネームは《こてまり》
20代前半なのは外観だけで、実年齢はマスターと変わらないらしい……!?
ユキワラシから進化し、今の外見となってからどれだけ年月を重ねても〝外見だけは〟老化しない。ゴーストタイプなのも関係しているのだろうか……?
ジックよりも少しお姉さん、インフィスと同じ年齢と言ってしまえば揃いも揃って信じてしまう……彼女もバトルは引退している。
「私は一度引退した身、ですがまだまだ、寧ろこれから……クライドとこてまりは、バトルに出す訳にはいきませんが、新しく育てた子達で挑ませて頂きますね」
貴族階級のロイヤリティ、数年のブランクを経て復帰した理由は実に単純。
臨時講師を務めている養成学校で、生徒達がポケモンと勝利を喜んだり、負けて悔しがっていたり、時には喧嘩してしまうけど、すぐに仲直りして…………
「引退なんて出来っこないですね! ふふふっ、貴方とはお手合わせしたかったのよ? この前のコンテスト、あのドームに私達も居たんですよ、ヴィヴィさんの演技を拝見させて頂いてました、とっても素敵なポケモンですね」
歳をいい訳にするのは止めた、自分はもっとしたい事がいっぱいある。
『好きなポケモンで頑張りたい』のモットーを再び掲げ『ポケモンが助けてくれるから私達は暮らしていける』が口癖になってしまった
《マダム・オーヴェル》
「ありがとうございます! 俺もオーヴェルさんの事は存じておりました、リーグ記録を回覧すると必ずと言って良いほど、貴女の名が記載されておりまして『俺も何時かお手合わせしたい』と、思っておりましたが……! 貴女からご指名くださり誠に光栄です!」
元々ジックはそれなりに有名なトレーナーであるが、ヴィヴィが萌えコンテスト準優勝の実績を獲得し、それが全国ネットで生中継されていたのだから――――例えヴィヴィと戯れる事が目的であっても――――バトルとは別の依頼も含めてメッセージは毎日ドッカンドッカン届く。
自分も皆も疲れすぎない範囲で受け持っているけど、かつては仁者無敵とさえ謳われ、館には一戦一戦忘れられない思い出が詰まるトロフィーが、政府への貢献を称えられた表彰状が、数え切れない程ディスプレイされている憧れのトップトレーナーが相手だ。
されど相手を立てながら謙虚な姿勢を忘れずに……困難や逆境に何度も直面し自らの生き方を反省、失敗の連続から礼儀が生み出され独善と偏執は破棄させる。
――ちなみに稼いだ賞金のかなりの範囲は、教え子達が通っている学校へ寄付している――
何を持ってしても、年の功は強大かつ尊敬の対象なのである。
このおばあちゃん、タダモンじゃないって、描写を心掛けてます。