ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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過去最長のバトルになってしまった。
次回からは少しダイエットさせよう!


Segment・hepta――完璧な戦術

(あのオニドリル……ふいうちの対象……強引に変更したっ……私のふいうちよりも……早かった……凄い……かもっ……)

 

 ストリングスを巻き取るようにメガホーンをキャッチしたバーベットは、認識させた対象へ正確無比に命中させて来たふいうちを初めて――本人的には失敗――させた爽羽佳へ眠気に苛まれてそうな表情こそ変化させないが、心拍幅は規則化された間隔を僅かに変調させていた。

 

「ありがとう爽羽佳! かみなりパンチだヴィヴィ!」

 

「マスター、爽羽佳さん! ハイッ!」

 

 落ち込んでいられないっ!

 

 本当に落ち込んでいいのはバトルに負けた時だけだ。そして壁というのは乗り越えられるからやってくる。オーヴェルという壁が現れたのは寧ろ……チャンスなのだっ!

 

「……ハァァ!」

 

「軌道が――――」

 

「単調すぎっ、って言いたかった? さっきのォ……報復ぅぁぁ! ドリルくちばしィィィ! アウトレイジーーン!」

 

 ダブルdeこうそくいどうっ

 

 オーヴェルの命令よりもバーベットのメガホーンよりも早く、前方から蒼き飛行機雲、雷エネルギーを込める鉄拳を振り上げたヴィヴィと象牙色の飛行機雲、コンマ1秒のフレーム単位遅れて左後方から滝登りならぬ〝空登り〟な勢いで回転しながら急上昇してきた爽羽佳。

 

「ぐォあぁ゙! おおっ! グがッ!――ッ! Mi dispiace……マスター……」

 

「やっりィ! 早くも我がトサカの仇を討ち取ったりぃ~~…………嘘うそ、こんなんで倒れる程弱くないって分かるからスワンナのおにーさんや?」

 

 防御対応が間に合わず側頭部を削り取らん音が鳴り響いたと思えば、重力に抗える飛行タイプであるのに揚力を一時的に失い地表とのハグを許してしまった。

 

「ネレグッ……! んっ……でも……大丈夫……か……てぃ、やっ……!」

 

 こめかみ付近から白煙を上げている仲間の元へ向かおうとしたが、ヴィヴィが立ちはだかる!

 

 心拍数がまた不規則な変調を見せたが、直ぐにマスターである貴婦人の顔を見て落ち着かせる事に成功……

 

 まだ『縛』が解けない、それでバーベットへ回復が追いつかないダメージを与える技...

 

「アームハンマーは範囲や発生速度こそ優れておりますが、着弾位置が読まれやすい欠点がありますよ」

 

(これが本命のつもりだったのにッ! 悉く戦術を防いでくる!)

 

 味方一匹が重傷を負ったからと、もう一匹から目を離すヌルいトレーナーではない。

 

 まだネレグは戦闘不能ではない、彼には戦闘意欲が残っている、ならば感情を一定に保ち不利な環境と流れを切り離してしまうのが自分の――マスターとしての――役割なのだ。 

 

 身体ごと巨大化した拳を、力任せに振り下ろすアームハンマーは格闘タイプの技。

 

 これを命中させる訳にはいかない。バーベットの心情にブレが生じたままであれば、二本の角の中心へ拳が命中し裂ける様な痛みと共に彼女はひんしになっていた。

 

「そんな……外してしまいました……!」

 

「…………一本だけ、メガホーン……!」

 

 停滞する角型の武具をフィールドに叩きつけ、反動で軽い身体を真横へ跳ね上げた。

 

 前方にいなければ容易に躱しきれる、アームハンマーの欠点を的確に突かれてしまった回避動作。

 

 素早さの低下したヴィヴィへと左手を払えば一本の角だけが襲いかかり、もう一本の角は地面に差し込ませ落下速度を抑えている……何処まで応用が利いてしまう武装なのだろうかっ!

 

「くンッ!」

 

 

 〝ここしかない〟と思ったのにっ!

 

 

 素早さの低下は交代しなければ解除されない!

 

 アームハンマーを繰り出すからには、相応の見返りが必要であるからダブルバトルで指示をする時は細心の注意を払っていた。

 

 あのタイミングは『ジックにとっては』完璧でも、全体を通じて最善手を見計らえる『オーヴェルにとっては』惜しかった……

 

 バーベットへ与えられたダメージ量はせいぜいフィールドの欠片が飛び散ったくらいで、そんな物たべのこし一回でチャラとなる。

 

(機動力……低下……最もHPが減っているのは、あのスワンナですが……)

 

 現在の状況と今後の展開を演算処理、動作周波数を高めているので髪先を纏めているクリアカラーのリングの発熱が多くなり、飛行機の衝突防止灯を思わせる点火パターンを得ている。

 

 エラーリカバリー機能――ジックが心の中で、爽羽佳が心の外から声を掛けてくれているから――冷静に冷静に……これまで得た情報から推定し算出したオーヴェルの育成方法。

 

「鳥が地に脚を付けているのは、悪いことばかりでは無いのです」

 

(やはりっ! マスター、爽羽佳さんへ    と伝えてくださいっ!)

 

 尖った能力値が無い能力値グラフが綺麗な六角形を描いているポケモンは、専門的な能力値のポケモンよりもトレーナーの戦術やテイストによって振れ幅が大きくどんな『顔』を持っているかは編成を見なければ、または戦闘中でなければ判断が困難で事前情報を仕入れていなければ気がついた時には後の祭りと言う〝初見殺し〟の役割を担わせる事が出来る。

 

 

「「はねやすめ!」」

 

 

 ネレグが大ダメージを受けた最悪の状況下でもオーヴェルは回復手段を彼に覚えさせていたから、バーベットが彼の下へ駆け寄ろうとしても『彼を信じてください』と見捨てず、騒ぎ立てず、我が子を安堵させる様な〝雰囲気〟を作り上げていたのだ。

 

「また同じタイミングで、同じ技かっ…………」

 

「や~~ホンッと、お兄さんとは人差し指と人差し指に、あかいいとでも結ばれてたのかな~ってくらい運命感じちゃうわぁ~~!

 

 

 でも髪にやかん落としたの ば ゆ゙ る゙ ざ ン゙ ッ゙!!

 

 

 飛び急ぐこと無く、身を起こしたネレグはそのまま小休憩。

 

 角オブジェを警備システムの様に取り囲ませ、彼を守る様にガイナ立ちするバーベット。

 

(相方への指示も同じ……かっ……)

 

 相手が攻撃してこないと読んで爽羽佳へ命じたのは羽を持つポケモンならば、大体が修得できる回復技のはねやすめ。

 

 丸一日休憩無しで大空を飛び続けられるオニドリル。

 

 それは『体力が全開の時』だけだ。傷を負っていては飛翔力の根源たるスタミナが本来の機能を果たせられない。どんなポケモンにも似たような事が言えるのだが……

 

 HPや防御力などは優れないが、隙を見計らってもしくは降り立つと見せかけてのフェイントとして途中でキャンセルさせる事もある。傷を癒やせるのでオニスズメ時代から覚えさせている。

 

 念の為、庇う様なポジションへヴィヴィを配置。結果的にその必要は無かったが爽羽佳の回復が優先目的で在ったし攻撃しようにも、バーベットはふいうちの構えを何時だって取れるので敵対心を収めて動かさないは適切な選択であった。

 

「いやはや……分かっていてもヒヤヒヤしてしまいますなぁ……」

 

「その言葉とリアクションは、本日二度目ですよクライド?」

 

 お歳がお歳なので忘れっぽくなってしまっている老執事。

 

 彼も若い頃はネレグやバーベットにも負けず劣らずの激しいバトルを毎日繰り返していた物だ。ちょっと懐古な気持ちになりながら明日を担う若者達へ声援を送る、この歳になってもバトルを見ると興奮してしまうっ、血圧を穏やかにする内服薬は欠かせなくなってしまった!

 

 ……外見は若々しいままだが身体機能は加齢が進んで全盛期の戦いはもう出来なくなってしまった雪国美人も、かつてオーヴェルと共に戦い――――

 

 

 その中でも特に強いトレーナーだった

 

 

 ――――を思い出しながら、シワを隠せず車椅子生活になってしまったがポケモンへの愛情と情熱は膨らみ続けているマスターへ『この人と一緒に歳を重ねることが出来て良かった』と、突然ウルッとする事が近頃は多くなってしまった。

 

 はねやすめは特殊な性質があり使い終わって約10秒程度の間は〝飛行タイプが消える〟

 

 弱点がガラリと変化するのでエモンガに地面タイプ技を打ち込んだり、マンタインがワイルドボルトに耐え切れたりと、普通だったらありえない現象を引き起こせるので体力が僅かだからと無警戒で使わせれば変化後の耐性に有効な技を読み撃たれて昇天したりする。

 

まぁ、今回は飛行タイプが消えたらからとヴィヴィにじしんを使わせる訳にもいかないのだけど。味方にまで命中させてしまうので。

 

(爽羽佳とネレグの体力は全開近くまで回復した……でも不利なのは俺達の方かっ、バーベットも少しずつ回復しちゃうし……)

 

(一撃で倒す様な威力はありませんが防御か特殊防御か、薄い能力値を狙えるように技を揃えているんですねっ……)

 

 新・オーヴェルチームは持久戦を前提とした育成が成されている。

 

 火力方面よりも守備のパラメーターを重点的に鍛えて相手の有効打は封じ、縛り、じっくりと確実に「早くこのバトルを終わらせなくてはっ!」と緊張や焦りを手持ちへ伝えない。

 

「完璧な戦術などありません。ミスを犯しても覆すチャンスは何処かにありますが技の選択、攻撃と防御のタイミング、それら一手一手の蓄積が溜まり続ける〝器〟から溢れる様になってしまったトレーナーを敗北へ導いてしまうのです」

 

 ……ジック達からすれば何手もの先を読んでおり仮に失敗しても、その処置法までも用意している恐ろしく完璧な戦略家としか思えないのだが『完璧な戦略は無い』と彼女はジックにも――自分自身へも――おごりの無い笑みで言った




サラッ と大事な事が書かれてます。
高齢のトレーナーなので色々な人物とバトルした事があるんですよね。
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