だから力業で押し切る若さの勢いと大博打。
両腕からスライドする様にパージ、前方へ決死の覚悟で両腕を差し出せば二つの手甲が一つに融合。
「…………! あれっ、マズイ予感する……! ふいうち……っ」
動力コアが発熱を引き起こしているのは『火傷ダメージを受けているから』……で一括処理できない。
自分の為、仲間の為、そしてマスターの為に『勝ちたい』気持ちが満ちる……この気持ちの基盤たる現象の理解と解析……するのが怖い、戸惑いながらも現在の距離感を維持したい想いもあって確信が持てないから――素直に認めたくないだけ?――解析をホウキしている。
髪飾りにも変化が生じ――彼女曰く『砲撃特化モードチェンジ』
大気中に浮遊している磁性を取り込む為のギミック、結い目を支点にハッチが開き彼女の身体を血液代わりに巡っている蒼き動力流体エナジーへ変換し蓄積していく。
「……作動しないっ、敵対心を感じ……ないのっ……」
充填時間の完了は23秒後、チャージに集中している間は無防備となる。
タイマンならヴィヴィが頑強な装甲を持っていても、23秒もの間相手側は好き放題に攻撃出来てしまえるので決して成功することは出来ない。
ダブルでなら……頼れる仲間が支えてくれる対戦形式ならばっ――――
「させないっ! エセブレバぁッ!」
ギュイイイイイッッ、オオオオオッ……
ヒュイイイイイィ……キィィィィンッ……
メタグロスが必要としている稼働エネルギーを五匹分、十匹分にまで匹敵する粒子を乾いた音と共に溜め込んでいく。
「ッ、ネレグお願い……!」
手甲を融合させ砲撃システムへと力が滾りヴィヴィのスカートを、ツインテールを、蒼いラインが発行しチャージ音が段々と航空騒音機に近い爆弾が落とされた様な音調へ遷移する。
最後に繰り出されたネレグの攻撃をパクって、オニスズメ時代の夢であったブレイブバードを...今ではドリルにプライドと誇りを一任させているので夢でも憧れてもないが...ヴィヴィへ向かおうとしていたメガホーンを吹っ飛ばしシャドボ連激はその身で受け止める! ノーマルが付属しているので地面だけじゃなくゴースト技読みで交代は手慣れた物だ。
同じ要領でダブル・トリプルの複数戦では『自分から攻撃を受け庇っていく』
「ええぃやああああっ!」
「ッ、ぐ! ブレイブバード〝もどき〟で俺の片翼に擦り入れるとはなッ!」
「コッチもねっとうだぁ! そォいっ! ヴィヴィちゃんとご主人に任せられたんだ! 役目は絶対に果たすんだからっ!」
バーベットの攻撃をやり過ごし終わったら、上空からの強襲を企んでいたネレグへアウトサイドループ。
エアロバティックス……曲技飛行を模範し危機回避や姿勢制御からの立て直しを行いつつ、瞬時に反撃態勢に移れる練習はいっぱい重ねて来たジックと一緒に……
避けられないっ、威力よりもスピードを優先させた〝エセブレイブバード〟は翼を折りたたみ低空飛行する飛行最強技であるが、鏡の世界へ入り込んだかの様に高度飛行だってやろうとすれば出来る。
地表につま先を擦らせ羽と火花を散らしながらアッパー曲線で嘴を仕向ける。
結果は片翼の一部を散らしただけ、だがそれでいい彼を撃墜するのが目的じゃないからだ。
「危ねっ!? 勢いは殺せたからギリちょんで回避を――――」
「…………ふいうちっ! 今っ!」
タイプが一致して特殊攻撃力が自分より優れている物が生成し、両羽でやかんを摘まんでから投擲する! パチンコの仕組みと同じ牽引力で加速させたねっとう相手に〝エセねっとう〟では相殺は叶わない。
しかしっ速度自体をある程度落とせるので全力で回避運動すればこうげきは はずれた! となる。
「ヤっバっ! ぁでぁ゙! ぶあぢゃっ!? ぢゃぢゃぢゃァァ~~~!! やっ、あぢィ……! 焼き鳥ったぁ……!」
「爽羽佳ッ!」
…… オーヴェルにもヴィヴィが何をするつもりなのか分からない。あんな攻撃準備動作は75年の人生でも初見だからだ。
でも発動させてはならない、中断させなければ戦況を逆転されると直感しネレグとバーベットに指示を下した。
(チャージ完了まで爽羽佳さんがアシストするのですねっ、際どいかもしれませんが爽羽佳さんから狙わせて頂きましょう)
やかん型水球を躱した直後、敵対心を感知した二つの角が斜め上左右から交差し飛行バランスを崩される。
好機逃さないチームプレー、髪が蒸発しそうな温度のやかんが破裂すれば垂直に落下……を、U字を描き防ぎきる!
(もう、ダメだぁ…………なぁんちゃってぇぇ~! 勝った! 行ったれぇ! ヴィヴィーーちゃーーんっ!!)
「出力104%……! 対ショック態勢完了2……1……発射!」
間に合った、後、自分がする事は
「…………上に……?」
「俺達が照準ではないのかっ……?」
背中を見せたっていいからっ、場外スレスレまで全速前進なこうそくいどうっ!
ヴィヴィが着想したプログラムを上回るオーバーテクノロジー、ラスターカノン。
命に別状は無いがセーフティロックを解除するので、エネルギーの全てを消耗したヴィヴィは暫く行動不能となってしまう。火傷状態なので即ち戦闘不能は免れない。
「違います……アレはっ! ネレグ! バーベット! 逃げてくださ――――」
誤差の修正はまだ行えない、指定した座標全てを覆う広域射撃。
上空へ撃ちだしたエネルギー波が人工衛星となり再射出される『サテライトモード』
集約された圧倒的な蒼の粒子。残念ながらキャンセルが間に合わずチャージ完了を許してしまったヴィヴィのラスターカノンは、前方へ掃射……オーヴェルは速度と範囲を想定し回避よりも防御の姿勢を二匹に指示入れしたのだが砲塔は雲を真っ二つに裂きながら上空へ、大気圏外へと消えていった。
オーヴェルも手持ち達も、物の一瞬ヴィヴィが何をしたかったのか理解が追いつかずとも防御を解く事はしなかった。
二対一の形式に変更してまで溜めに溜めたエネルギーを宇宙へ放り捨てた。表現としてそう置き換えるしか…………
「!!ッ゙ッ――――あ゙あ゙ああああぁ゙ッ゙ーーーーッ゙ッ゙!!?? ギャ、ん…………あぁ゙、ぁ゙……そっ……んなっ……ぁ゙…………」
実はハッタリ? 負け確定だから散り際だけはハイカラに演出を?
そんな訳無いとだろうと怪しむが、ラスターカノンが実質的に不発となり動悸の乱れを覚えながらも、たべのこしである鹿煎餅をポンチョ内側から取り出そうとしたら極太のレーザーに身を焼かれた。
半分以上残っていたHPを一気に削られた彼女は視た、射出の際に『瞳の色が蒼に染まるヴィヴィ』を。
天気予報は晴れで降水確率は0%の晴天を質量断層をブチ貫かせ蒼天へ……そうっ、ヴィヴィの瞳と同じ色へ上塗りさせた。
トクサネ住民は「あの時の様な異常気象が起こった!?」と自宅やポケセンへ駆け込んだが一瞬で平和な晴天へ戻ったので、野生のエスパーポケモンに幻覚スクリーンを悪戯に引き起こされたのだと無理矢理納得し平常な生活を取り戻していく…………
「――――がっ…………ぁ、゙ぉ…………ッ…………なんだ……今の……俺達が知らないラスター……カノン…………ッ、ぅ、マスター……まだ俺は――」
「残…………戦闘エネルギー…………0%…………プログラム……エン……ド……」
大量破壊兵器級威力の衛生軌道上からのビームであったが、鋼タイプなので水複合タイプのネレグはHP 1 で耐えきっていた。
角オブジェはガランッと地面に落ちたグラスの様に先端から落下して砕け散る。
召喚者であるバーベットが瀕死になったので、連動して力を与えていたオブジェもライフラインが切れたのだ。
衛生砲を打ち終えたヴィヴィはバーベッドが力尽きるまでは両腕を真上に掲げて硬直していたが、完全に角が消滅したのを確認したら――気力で倒れるのを遅らせていた――彼女もシステムメッセージを遺して仰向けで倒れ込んだ。
バーベットが瀕死になったので纏わり付いたまま切除できなかった呪詛の鎖『封』と呪札『縛』も紫色の煙となって消滅した。
「ネレグ! はねやすめです!」
手持ちが一匹戦闘不能となり残りのポケモンが窮地に陥っても二の句が継げない貴婦人ではない。
いや、彼女ですら大分困惑気味となって血圧が上昇していると自分で察しせていた。
白執事服が炭色に変色させてでも主人の為に起き上がったネレグの姿を見て平静を取り戻し、回復技を命じたのだが――――
「言ったよね? 『お兄さんは私が倒す』ってさ! つつく!」
充分な加速も回転も必要としない。ぶっちゃけただのつま先蹴り。
後頭部へチョコンッ、1だけ残ったHPを綺麗に削り取って仁王立ちをキメる!
……ヴィヴィも火傷で倒れたので『何だか爽羽佳が三匹全員瀕死にさせた絵面』になってしまったけど勝敗は決する。ジックチームの勝ちだとレフェリーが判定を下した!
「……………………参りました、ジックさん! 爽羽佳さん! そしてヴィヴィさん! 楽しかったです……まるであの頃に戻ったみたいでした……」
ムーンボールとゴージャスボールへ骨身を削る思いで戦ってくれた二匹を労いながら戻す。
自分が最も輝いていた当時、素晴らしいライバルとポケモンに囲まれながら声援を受けていた全盛期。
「もう私は時代の先端ではありません。ジックさんの様な若くポケモンに優しく、確かな親交を築き上げているトレーナーが居てくれるのでしたら未来も安泰ですね……!」
悔しいっ、丹精込めて育て上げた手持ちが後一歩で敗れてしまった。
退避の命をもうコンマ早くしていたら……広範囲のサテライト攻撃ですらギリギリで躱せていたかもしれない。
彼女だって人間、完璧な作戦など立てられないからタラレバはあるが...
「新種の技ではない独自発展させたラスターカノンのバリエーションの一つだったのですね。ふふっ、実にイノベーションでスケールが大きかったですね、そうやって既成観念をどんどん壊してくださいな! あの一撃もチャレンジ、初めて使用したのでしょう? いいですね……一見すれば出たとこ勝負で無鉄砲にも受け取れてしまう挑戦心こそ、ポケモンバトルには必要なのですよ」
常に後身とその世界に理解を示し懐深くいなければならない。
悔しがるのは館の中に入ってからでいい、それ以上に自分の知らない戦術やヴィヴィが昇華させた彼女だけのラスターカノンを拝見できた、そちらの喜びの方がダンゼン強い!
「ほっほぅ! お見事でございますな! ジック殿、差し支えなければバトルビデオとして教材に使用させて頂いてもよろしいですかな?」
「お疲れ様でしたジックさん、手持ちの皆さん。クスクスッ、オーヴェルったら今晩寝付けないわね、バトルビデオを繰り返し鑑賞しながら反省会を開くのよね? クスクスッ!」
どれだけピンチに陥っても最後の最後にはオーヴェルが勝つ。再びポケモントレーナーとして舞い戻ったオーヴェルはバトルビデオ映えする内容ばかりなので教材として提供だけに留まらず、全国のレンタルビデオショップで内容は一切無編集のままラインナップされどのシリーズも高い人気を誇る。
「こちらこそありがとうございました! もうっ、すっごく強くて……強すぎですオーヴェルさん……もちろん! いいよね爽羽佳、ヴィヴィ?」
今のバトルこそどんなシリーズよりも『映えるし見て貰いたい』映像。
自分は負けてしまったけれど関係ない、勝った試合しか提供及び賃貸しない恣意的思考など持ち合わせていない。あるがままの真実としてオーヴェルだって負ける。
クライドはオーヴェル側だけでなくジック側へもげんきのかけらを手渡し、続けてこてまりが彼女の力で生成した氷塊の入ったジンジャーエールを配っていく。
「……signora、有言実行されてしまったか。悪かったな自慢の髪に熱湯掛けて」
「い~~え! バトルなんでお互い様だよー! やっぱ飛行タイプとの対決が一番燃えるねぇ!…………ところでさ、何でやかんなの?」
お嬢ちゃんから、レディにランクアップ。
体力の半分だけ回復、全てが全て完全復活していないのでコサージュや羽の一部が復元しきっていないけど、会話のやり取りなら問題なく行える。
マイナーな鳥ポケモン同士、シンパシーが芽生え戦いの最中でも翼と翼で語り合った。
関心を引かれるようなパラメーターを所有していない自分らを、ここまで強くしてくれたマスターとご主人へと深謝の念を抱きながら羽を仕舞い込んでライバルとの健闘を称え合う。
「…………ねっ、おっ、お願い……あるのっ……友達……になって欲しい…………」
「…………わたしからも、お願いします……!」
「………………んッ、友達……ヴィヴィちゃん…………やった……♪」
こっちもこっちで、ライバルとは別の関係を築き上げていた!
「フッ、人見知りするバーベットが自分から友達を作ろうとするなんてな」
「…………ネレグ、黙って……うるさい、呼吸しないで、息を吐かないで、CO²の無駄遣い……」
ノンアルコール飲料なのに印を結んで召喚した角の一つで横顔を隠し、もう一つの角でからかって来た白執事を強打――サッと簡単に避けられたけど――
ポンチョは概ね復元しているが、メガホーンの一部が破損していたりタイツには腕力で強引に不規則に切りやぶかれた様な破け跡。
ポケモンセンターへ預ければ彼女達が纏う衣装や武具は極微細単位まで元通りとなるが、そこはかとなく『襲われていやらしい事をされた事後』な雰囲気がある……
ちなみに健全な者の反応は『ダメージタイツってファッションもあるのか』である。
お年頃の生徒達は見ることが叶わずさぞや残念だ。
ポンチョ内側から少し汗ばみ振るえている生の手を、目はクルマユに口はソーナンス型にモジュールしたのか『断られたらどうしよう……』の不安をなるったけ隠したレア顔となりながら、 熾烈に競い合った鋼鉄少女に握手を求めていた。
空気を読んだだけじゃない快く本音のままに行為を受け取りヴィヴィは仲間とは別、生まれて初めての『友達』を作ることが出来た!
小柄な二匹だが身長はバーベットの方が数㎝だけ高い。が胸は広辞苑とライトノベルくらいの厚み差がある。
(…………瞳、蒼から深紅に……戻ってる……)
セカイイチよりも赤々とした、高揚に浮ついた表情のまま握手をしながらヴィヴィの瞳を覗いたバーベット。
見間違いでは無かった、確かにヴィヴィの瞳はラスターカノン発射時に海よりも深く、氷よりも透き通り、ブルーダイヤよりも美麗なる光彩に煌めいていたんだ。
念話でのアクセスを許可されていたジックも気がついていた。ザムヤードにバレットパンチを五連射で叩き込んだあの刻と……同じ彼女の瞳。
メタグロスにそんな体質は無かったハズ、変色する条件があるのだろうか?
「ジックさん、貴方達とバトルした数十分は私の75年の人生の中でも僅かな時間でありましたが、決して忘れることも廃れることもない一戦です」
膝上でかたくりこの真似をしてぽんぽん跳ねるおプチを撫でながら「トレーナーバトルで勝利したのだから」と賞金を手渡すオーヴェル。
…………ちょっと表記するのを躊躇ってしまう金額であった。ジックは一度断るも『受け取らない方が失礼ですよ』とヴィヴィから念話で伝わって来たので謹んでサイフの中に収納させて頂いた。
自力での立ち上がりすら困難となってしまったけど記憶力だけは萎えず衰えず、目を瞑れば18年前の4月6日、34年前の9月28日、それがどんなバトルどんな内容どんな対戦相手だったかも鮮明に想い浮かべられてしまう。
あれは20年前、オーヴェルの中でも特にインパクトの強い一戦、ポケモンに人化現象が発見される数ヶ月前の事だ。
あの頃のオーヴェルは〝敗北〟という言葉とは本当に縁が無く、大変お恥ずかしい限りだが「もう誰にも負けないのでは」と思い上がっていた時期があった。
「その鼻っ柱をへし折ってくれた子が居ました。《性別不明のポケモンが好きな子》でしたね…………」
現役絶好調、無敵を誇っていたオーヴェル&こてまりはそのトレーナーが操る氷ポケモンに無敵記録を阻まれた。
氷タイプをも凍結させる『摂氏-273度を下回る冷徹なる絶氷』
「…………最も人化しているでしょうからオスかメス、どちらかの性別となっているでしょう。あの女の子は13歳だったかしら、今頃何処で何をしているのでしょうか……もう一度会いたいわ……」
(全盛期のオーヴェルさんを倒すってどれだけ強かったんだろうそのトレーナーとポケモン…………その敗北が今のオーヴェルさんを形作っているのか)
オーヴェルを真っ向から打ちのめす強さであるのに、そのトレーナーはパッタリと足音が途絶えている。
最強のトレーナーを目指す為に何処かの地方で旅を続けているのだろうか。
それともトレーナー業を辞めてしまったのだろうか。
出身地は『ホウエンではない』と自己紹介の際に、本人が話してくれていたのだが。
「ご主人~~! 頑張ったんだから撫でてー、褒めてー!」
衆目に晒される中でまぁ大胆な!
上空から両手を広げてフリーフォールしてきた羽っ子JKを抱き留めてご希望通りに、トサカをややズラす様な動きで額を撫でる。
「キャ♪ んふっ、ふぅ……♪ いっやぁ~身体はシンドいままだけどやり切った感パナいってぇ。ヴィヴィちゃんとも上手い事力を合わせられたと思う! ねぇ~~え? 撫で褒めるだけじゃあお勘定できないなぁ、帰ったら全身マッサージ……お願いね? ね?」
(分かってるさ! ちょっと爽羽佳、皆が居るから……それ以上は……)
(えぇ~~! 見せつけちゃおーよぉ♪ てかさー〝皆が居なければ〟もっと色々してもいいってコトなのかなぁ? ふへひひっ……)
彼が反撃出来ないからって、ここぞとばかりにグイグイ押しまくってくる。
ライダースーツ越しでもエナメル触感より、むにゅるっ……とBが前腕を撥ね除け軋むくず餅加減。ボリュームは(他の子がデカい的な意味もあり)不足気味かもしれないが、胸と胸をコッツンされる体勢を取られてしまえばそれなりに大きく変化する視覚のマジック。
(……………………ギ、ギギッ……!!)
(あっーー、そろそろ止めトコ。背中に目はないけどヴィヴィちゃんにすンげー睨まれてるって分かるし…………)
血で血を洗いそうなピジョンブラッド。それが焼き餅ヴィヴィの瞳。
異変を感じ取ったミノムシは砂を汗代わりにジャバジャバ溢しながら震えているが、やっぱりおプチは嫉妬心を――本人は至って平静を装っているつもり――隠しきれていないヴィヴィを見てもやんややんや! 頭の葉を回転させながら意味も分からず喜ぶ。
(…………なぜっ、わたしにはしてくれないのですかっ?? アンフェアですっ、わたしだって頑張ったのですから均等にっ……お願いしますよ? マスター??)
…………怖いっ、調子に乗りすぎた爽羽佳は後ろを見ないようにジックからソソソソッ、水平移動でジェラシーの眼差しから逃げ出した。
ご褒美として甘えていた爽羽佳に悪い事をしてしまった自覚はある。別に不平等ではない、手持ちを労う為に彼は応じただけ……
(早くわたしも撫でるのですっ、爽羽佳さんにした事をわたしにもすればいいのですっ)
分かってる、分かっているのだけど。
「…………んっ、ヴィヴィもお疲れ様! えっと、ヴィヴィにもマッサージ、しよっか? 良かったらでいいんだけど?」
ジックが反射的に彼女を撫でたら確実に「ぺしっ」と可愛らしく手を弾かれてしまっていた。
シェルンとのダブルバトル以降はどんな心境の変化なのか? 彼女の方から同じ事をしないのは贔屓である、自分も皆と同じ事をされる権利がある、なのでしなければ許しませんと強要される様に訴えてくる。
「ン゙……あ、っ、あ……ひゃうっ……! もっ、もういいですっ……マッ、マッサージ……そんなエッチに、わたしの身体を合法的に触れるだろうと……その様な考えで提案しているのですねっ、セクハラ、ですっ……!」
「なんでこうなっちゃうんだよォォ~~!!」
撫でろと訴えられれば髪を一往復しただけでもういい、バトルを振り返りながらメンタル面も含めアイテム回復だけでは取り除けない疲労を癒やす手技療法を口にすればセクハラ。
ジックも少し納得が行かないけどヴィヴィには気まぐれな猫の様な一面があるので、おやとしてはワイドガードしなくては。
(……は、ァ……もうッ、マスターは悪い……けど悪くない……ですっ……けどッ、あぁ、理論的な説明が出来ませんっ……)
突然こわいかおする友達にバーベットは声を掛ける。発声練習要らずにアニメ声優役を射止められるロリボイスも、かなり背伸びをしている様な声質となり「ダイジョウブ、デス」と予備電源のみで稼働するロボットな反応には、全然大丈夫ではいと思わざるを得ない。
彼に撫でられた場所を抑えながら、もう片手では友達に手を振りながらオーヴェルの館を後にする。
複雑な胸中のまま、第二の依頼を実行する為向かうは――――
七話のこっからストーリーがジャカジャカ進みます><