ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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Segment・hepta――××××××Resonance

「――――…………ッ!? このっ……動力コアが発光している…………この感じはッ!」

 

 ヴィヴィとジックの距離がフィジカルでもメンタルでもぐぐ~~んと縮まって、なつき度もぐーんと上がった夜から数日が経過した。

 

 深夜の午前二時、丑三つ時に原理や理屈など一切が不明であるが、強制的に目覚めさせられた……? としか言い様のないチャネリングを果たしてしまった?

 

「マスター! 夜遅くに申し訳ありません……起きて欲しいですっ……」

 

「…………Zzz…………がっ、んっ? どしたのヴィヴィ…………」

 

 ホームページ更新と依頼の契約が成立し、バトルでヴィヴィと一緒に戦ったジックは暴睡していてメコンが耳元で呟いたって簡単には起きなさそうであるのに、ヴィヴィが小声でドアを開けた位置からでも要件を口にしただけでキッカリ上体を起こしてしまっていた。

 

 まだ頭の中は覚醒しきってない、衣替えの目安である10月が出番を待ち遠しく思っているので薄生地の寝巻きもバトンタッチの時期だ。

 

「…………わたしの心のテリトリーと干渉するエナジー反応をキャッチしました。何かが響き合っている……不穏な影が迫っている……確証はありませんけど行かなければ……ならないんです……」

 

「それは……もしかして『アイツ』だったりするのかなっ!?」

 

「分かりません……お願いしますマスター! わたしを、連れて行ってください……位置が特定……出来ます……急げば間に合うんです!」

 

常人の感性と乖離してしまっている言動。夜中に起こされて大々的なイベントが告知されている訳でも、流れ星が大量に観測できる期間でもない。

 

 ヴィヴィの受信した電波な妄想寝ぼけたヴィヴィが夢で起きた出来事を並べているだけ。

 

 そうやって切り捨ててしまい、布団の中に戻るのは実に簡単……だけど――

 

「分かった! 行こう! 手持ちの皆も悪いけど起こす! もしも『アイツ』が出現した気配を感じ取れたなら正攻法とか言ってられないし!」

 

 ジックはヴィヴィを信じる!

 

 信憑性が無く破綻した申し出。如何にヴィヴィが誠意を持って頭を下げても普通であれば「さっさと寝なさい」と…………

 

 彼は言わない! 例え何も無くても『ヴィヴィと夜のお散歩出来るなら』とすら、都合良く変換してしまえそうで!

 

 もしも的中はして欲しくないけど――的中してしまったなら仲間は多ければ多いだけいい――

 

……数日前にホウエン警察本部から極秘かつ緊急の発令でジックは任命され、受任したのだ。

 

『ホウエン地方いやっ、ポケモン界に計り知れない破壊と破滅を降り注ぐであろう異世界からの〝侵略者〟の討伐、及び確保に協力して欲しい』

 

 特例中の特例、何とジックも尊敬している中年のマイスターにして数年前まで公式戦での優勝経験が無かった無冠の帝王。

 

 ハウゼン隊長から! 直々に連絡を貰ってしまったのだっ!

 

 警察でも無い訓練も受けてない一般トレーナーへ助けを求めている。

 

 ……政府機関の権限から強要しているのではないが、それだけ警察サイドも『自分達だけでは……』と判断したのだろう。

 

 ジック以外にも今のところ数名承認してくれた一般トレーナーが居るらしい。

 

 数え切れないホウエンに住まうトレーナーの中から、ジックは過去の功績や手持ちとの生活環境や育成レベルなどを調査――突発コンテストの影響もありされ選ばれた一人になった訳である! 

 

 真に光栄、なのだが詳細を伺うに1vs100の状況であるに関わらず警察のエリート部隊を返り討ちにする恐るべき強さを秘めた謎のポケモンを従えているらしい…………

 

(そんなポケモン相手に俺が……勝てるのか……?)

 

 100匹の精鋭ポケモンを赤子の手を捻る様に返り討ちにするポケモンだ。

 

 相手がフルメンバーの6匹ならまだ分かる、だがたったの1匹でしかも無傷で〝全滅〟の十字架を背負わせた存在。

 

 着替え終わったジックは皆をボールに戻しヴィヴィが強烈なエナジー反応を感知した。

 

『ミナモ民宿跡地』へと呂色の景色など眼中に無く、ヴィヴィを信じてVネックのシルエットは空虚へか、それとも一縷の光すら差し込まぬ奈落か。

 

 手探りしていた将来の方向性、行動原理。

 

『自分は今後どうしたい』の断片を一つ――ヴィヴィと一緒に手に入れる夜は深更する。

 

▼▼▼▼▼▼

 

「何処に消えた【Valestein】よ……」

 

 漆黒の帳が下りしミナモシティ南西。

 

 港湾の所在を示し船との接触や暗礁への乗り上げを避ける目印の灯台。

 

 ……あの刻、七月と同じ場所に、同じ二人組!

 


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